掲示板バックナンバー: 2006年


2006年

■ 2006年1月1日(日) プログラミング三昧

引き続き、自宅でv0.8bのコーディングに取り組みました。大きな配列の動的割付により、常時占有する記憶領域を極力減らすように変更しました。午前中から夜まで断続的に仕事した結果、テストファイルが正常に処理できるようになりました。後はソースコードを整形するだけです。

元旦にこの難題が片づくとは、嬉しい限り —— 幸先よいスタートが切れました。

■ 2006年1月2日(月) 後片づけ

RIETAN Proのソースコードを徹底的にチェックし、重要課題をきっちり仕上げました。かくしてRIETAN Pro v0.8bが一丁上がり。これほど順調に行くとは予想していませんでした。

v0.8bの製作過程で、これまでzipファイルのまま死蔵していたプログラム(STRUCTURE TIDY)のソースコードを発見しました。今日、実装したばかりの機能を活用するのに必要不可欠なだけでなく、VENUSのユーザーにとっても大いに役立つはずです。ここまで来たら、RIETAN Proとの連携を図るしかありませんね。

■ 2006年1月3日(火) 毎日働きづめだった冬休み

善は急げで、STRUCTURE TIDYをMac OS Xに移植しました。意外に苦戦。一時はあきらめかけたほどです。丸一日かかってしまいました。

実際に試用したところ、至極便利です。これほど有用なソフトを5年あまり放置していたのは、誠に不覚でした。いずれ、STRUCTURE TIDYの入力ファイルを出力するオプションをRIETAN Proに追加することにしましょう。

■ 2006年1月4日(水) STRUCTURE TIDYとの連携を実現

今日から出勤です。RIETAN Proをv0.9bへと一気呵成にアップグレード。STRUCTURE TIDY用入力ファイル*.stiが出力できるようになりました。

「実験化学講座」11巻の校正刷が期日指定で届きました。私の担当分(4章:粉末回折)は56ページに達していました。

■ 2006年1月5日(木) ようやく一段落

RIETAN Pro v0.8bと0.9bにおける追加部分をブラッシュアップするとともに、もはや不要になったKDRREFルーチンを削除しました。なんの未練もありません。

さすがに疲労困憊。しばらくプログラミングは休みたいです。

■ 2006年1月6日(金) 結局、延長戦入り…

ポスドクの英文報告書を添削しつつ、プログラムをあちこち手直ししました。

最近の本掲示版はプログラミング作業日誌と化しています。まったく面白くないでしょう。明日からの三連休も仕事でつぶれそうです。

■ 2006年1月7日(土) 恐るべき長さ

朝から晩まで「実験化学講座」のゲラの校正に没頭しましたが、それでも半分程度までしか進みませんでした。査読意見に従って、1割程度削除したにもかかわらず、この長さ…

次の第6版が上梓されるのは10年以上先です。少なくとも10年間は通用する、充実した内容にせにゃならぬ —— 責任重大です。

私が担当した章「粉末回折」(計56ページ)において、リートベルト法に割いたのは16ページ程度です。すでに書籍、解説、Webページなどで豊富な日本語情報が入手可能なので、意識的に分量を減らしました。

後半では、Pawley法、Le Bail法、最大エントロピー法(MPF法とMEP法を含む)、非経験的構造解析(逆空間法、直接空間法)を扱っています。日本語の書籍で、これらのテーマ(Pawley法を除く)が詳述されたのは初めてではないでしょうか。

校正しながら苦笑したのは、ただでさえ難解な印象を与える58個の数式に加え、

という、よく言えばアカデミック、悪く言えば堅苦しいイメージにぴたりと合致する、格式張った重々しい文体で記述されていることです。約4万の会員数を誇るマンモス学会の重みに押されたせいか、「平成軽薄体」(当掲示板はこの文体で綴っています)の面影は微塵もありません。なんて器用なお方なんだろう、オイラは。

■ 2006年1月8日(日) 今日も丸一日、校正刷と格闘

校正を続行しました。午後になってから、ファイルが一つ必要となり、急遽、チャリンコで自宅—勤務先を往復。図表以外のチェックを終えたら、午後7時になっていました。

■ 2006年1月9日(月) ようやく校了

昨日に引き続き、図表を校正し、索引用キーワードを抽出しました。論文を1報査読した後、さらに校正刷を点検。結局、連休の間、働き通しでした。

昨年の掲示板、10月24日で"Forty Years in Japan"、すなわち「RIETANは日本で40年間使われる」と豪語しました。これが1997年に映画化された"Seven Years in Tibet"をもじったタイトルであるのはいうまでもありません。この本の著者ハインリヒ・ハラーが1月7日に死去したとの報に接しました。享年93歳。ご冥福をお祈りします。

RIETAN Proさえリリースすれば、40年(あと10数年)くらいは確実にクリアできると楽観しています。ひょっとしたら、"Fifty Years in Japan"までも達成するかもしれません。なにしろ、VENUSとの密接な連携(事実上、一体化)やMPF解析という独自の存在意義を備えている上、VENUS中の3D可視化ソフトは将来性抜群ですから。

■ 2006年1月10日(火) 体調、いと悪し

1ヶ月近く休日なしに働き続けたせいか、疲れが蓄積してきました。そろそろ学会の準備に着手しなければいけないのですが…

Blue Sky TeX Systemsは、リリースが遅れに遅れているMac OS X用Texturesの開発途上版を現バージョンのユーザーに無料で配布すると発表しました。これで唯一残っていたClassicアプリケーションを追放できる!RIETAN Proのマニュアルはこの新バージョンで執筆しましょう。

■ 2006年1月11日(水) 出た〜

Yonah搭載のMacが!!!

疲れがぶっ飛んでしまいました。自宅のiMac(ブルーダルマシアン)はもうすぐ満5歳です。新型iMacに買い換えるしかないな、こりゃ。

来週、出張から帰り次第、発注しましょう。

■ 2006年1月12日(木) 豪華(?)プレゼント

RIETAN Proは主要機能一つを残してほぼ完成しています。その機能も、3月末までには実現するでしょう。

私は3月14日に東大(駒場キャンパス)で開かれる中性子によるセラミック材料研究会・第4回研究会でRIETAN-2000の後継ソフト(仮称RIETAN Pro)、次世代3D可視化ソフト、Alchemyについて講演する予定ですが、RIETAN Proのベータ版の試用を所望される出席者には、後日、無償で配布することにいたしました。

すでに出席を通知ずみの方々も含め、配布希望者は私にメールでお知らせください。その際は、Windows版、Mac OS X版のいずれかを指定するよう、お願いいたします。

RIETAN Proはかなり大きなソフトを2本(LAZY PULVERIX + STRUCTURE TIDY = 11,211行)吸収合併しているため、メモリーが少ないマシンでは正常に動かない恐れがあることをご承知ください。

長年、手をこまねいてきたRIETANのバグ(Known problemsに記載)は跡形もなく消え去りました。この不具合に苦しんでいる人にとって、RIETAN Proは救世主でしょう。

救世主はすべてが終わった後にやってくる。
フランツ・カフカ「夢・アフォリズム・詩」より ← 二番煎じ(2005年9月13日参照)

という愚痴が出ているようだったら、ごめんなさい。もっとも、Known problemsでバグを告知して以来5年は経つのに、対症療法用治療薬(LAZY PULVERIX)を送ってくれ、と要請してきた人は皆無だったんだよな。不可思議です。

配布の目的は、もちろん、できるだけ多くの不具合の報告やコメントを受け取ることです。熱心なテストユーザーが数名はいないと、なかなか枯れてくれません。ご協力いただければ幸甚に存じます。

実のところ、一番頭が痛いのはマニュアル(英文)の執筆です。楽しい作業ではないですから、これは。何か、マニュアル執筆のモチベーションを高める妙案はありませんか?

■ 2006年1月13日(金) 修士課程2年の学生が…

中性子によるセラミック材料研究会・第4回研究会における我々の講演「構造精密化・三次元可視化システムのアップグレード」のうち、次世代3D可視化システム(VICS・VENDを統合したプログラム)に関する部分は、門馬綱一君(東北大)に話してもらうことになりました。

RIETAN Proにしろ、可視化システムにしろ、既成ソフトをフルモデルチェンジしたもので、実演入りとなるでしょうから、講演時間が長くなるのは必至です。いずれも作者自身が紹介するのですから、迫力満点。ご期待ください。

■ 2006年1月14日(土) 微妙な味付け

クラリネットの特徴は音色が音域とともに変わることです。そこがオーボエのような一本調子な楽器と違います。とくに、シャルモーと呼ばれる最低音部は劇的な印象を与え、魅力的です。優美にして瀟洒な高音と野趣に富む低音の交錯が独特の味わいを生み出します。

VICSを製作していたとき、私が強くこだわったのは、対称操作、並進、幾何学的パラメータの推定標準偏差などの情報を明示し、かつ配位多面体に関係する種々の物理量やbond valence sumなどが容易に得られるようにすることでした。視覚に訴えるソフトにやや威圧的な雰囲気を添えようとしたのです。シャルモーのような多面性をもたらす効果を意識的に狙ったとも言えましょう。

昨年11月25日の掲示板をご覧ください。幾何学的パラメーター計算ソフトORFFEにキャピキャピ感を付与する、と記されています。上と逆のことを実践したまでです。結構、芸が細かいでしょう。

なお、本掲示版に時折、突拍子もないことを書き込むのは、シャルモーやキャピキャピ感のような調味料を効かそうとして訳ではありません。むしろ、歌舞伎でいう「けれん」に近い荒技を面白半分に繰り出しているだけです。

■ 2006年1月15日(日) RESPONSE TIDY?

230の空間群には様々な結晶格子の設定があります。たとえば単斜晶系の場合a・b・c軸を主軸とする設定、斜方晶系ではa・b・c軸を互いに入れ替えた設定、三方晶系(R格子)における菱面体・六方格子の設定、対称心を含む結晶では、もっとも対称性の高い点と対称心を原点に置く設定、といったような選択が可能です。

RIETAN Proにおいては、単斜晶系ではb軸を主軸とし、斜方晶系はInternational Tables, Vol. Aに等価位置の座標が記載されている設定とし、三方晶系(R)では六方格子を採用し、対称心は原点に置くというルールを採用しました。このような軸設定の単純化により、全空間群における回折指数hklと反射の多重度mを完璧に発生させることが可能になりました。

ただし、論文や結晶構造データベースにおける軸設定は必ずしも上記のルールに従っていないので、RIETAN Proで粉末回折パターンのシミュレーションやリートベルト解析を行う際には、結晶データ(結晶格子、格子定数、原子座標)を変換する必要がしばしば出てきます。International Tables, Vol. Aに記載されている軸設定といえども、例外でありません。

ところが、これが面倒で、かつ間違いやすい作業なのです。一番、安全確実なのが変換行列(「粉末X線解析の実際」 p. 82参照)と並進操作を使う方法ですが、簡単なプログラムを作成しなければなりません。エクセル馬鹿やプログラミング・アレルギー患者には荷が重いでしょう。それに原子座標の標準化、すなわち最適な原子座標の決定は一般に至難の業です。

そこで、E. Parthé先生の勧告に従い、結晶データ標準化プログラムSTRUCTURE TIDYをRIETAN Proに組み込むことにしました。RIETAN Proのビルドに要する時間がぐっと増えたくらい巨大なソフトです。

こうして作成したv0.91bを試用したところ、実に便利で、すっかり気に入りました。掘り出し物ですよ、これは。最も低い評価関数Γを与える原子座標セットを自動的に導き出してくれます。各サイトの多重度とWyckoff記号まで出力するのには、驚かされました。STRUCTURE TIDYを実装してから日が浅いにもかかわらず、STRUCTURE TIDY抜きのRIETANなど使う気がしなくなりました。これほど素晴らしいソフトをなぜ5年も放置していたのか —— 猛省。

かくしてRIETAN Proの重要な用途として、結晶データの標準化が新たに付け加わりました。

Parthé先生からSTRUCTURE TIDY(1992年PCバージョン)のソースコードを送っていただいたのは、5年前です。当時、Parthé先生はジュネーブ大学をすでに引退されていたにもかかわらず、何から何まで懇切丁寧に説明したメールをいただき、感激しました。そのメールの末尾に、「孫が切手の蒐集に夢中なので、日本の切手をいただければ有り難い」と遠慮がちに書かれていたので、さっそく世界遺産(日光の社寺)の記念切手シートを何枚かお送りしました。後日、これまた丁重なお礼メールが届いたのはいうまでもありません。

同じ記念シートを3枚、クリアファイルに保存しておきました。そのクリアファイルは今でも自宅で頻繁に使っていますが、切手シートだけ5年前から同じページに留まっています。それらを眺めるたびにParthé先生の親切な応対を思い出し、心の中で頭を下げています。

私も常日頃、自作ソフトのユーザーをできるだけ丁寧に扱うよう留意しているのですが、所詮は付け焼き刃です。まったく様になっていません(汗)。面倒くさがりと人当たりの悪さは、生まれつきなんだよな。それどころか、軽佻浮薄な性格は隠しようがありません。恥じ入るばかりです。

■ 2006年1月16日(月) 3D可視化ソフトにも恩恵をもたらすSTRUCTURE TIDY

次世代3D可視化システムでは、STRUCTURE TIDYで標準化した結晶データを含むRIETAN Proの出力ファイル*.lstを読み込めるようにする予定です。門馬網一君と相談して、そう決めました。

引き続きRIETAN Proの入力ファイル*.insを書き出せば、標準化した結晶データに基づくリートベルト解析へと直ちに移行できます。つまり、RIETAN Proは結晶データ標準化用コンバータ、可視化ソフトは*.lst → *.insのためのコンバータとして使うという寸法です。

昨日の掲示板に記したように、STRUCTURE TIDYは各サイトの多重度とWyckoff記号も出力するため、可視化ソフトがこれらの重要な結晶学的情報を表示できるようになります(シャルモー効果抜群)。これは商用ソフトにもない高度な機能です。

■ 2006年1月17日(火) もう一息

RIETAN Pro中のSTRUCTURE TIDY—LAZY PULVERIX関連部分を整形し、v0.92bにアップグレードしました。結晶データ標準化部分は安定に動いています。RIETAN Proが標準化した結晶データを直接出力してくれるのは実に便利です。STRUCTURE TIDYをスタンドアローンで使うのは結構面倒です。

RIETAN Proで実現すべき主要機能は、残すところ後一つというところまで来ました。非常事態でも起こらない限り、今年度中に片づくでしょう。

個人的には、ある機能をTinkにぜひ追加したいのですが、あまりにもマニアックなため、一般ユーザーを混乱させる恐れがあります。雛形ファイルでは使用を控え、裏技として隠しておく方がいいんじゃないかな。

RIETAN Proを有償とするか否かを長いこと決めかねていましたが、STRUCTURE TIDYとLAZY PULVERIXを組み込んだ時点で無料とせざるを得なくなりました。もっとも、厳密な意味のフリーソフトウェアとは違います。ソースコードは開発協力者以外には公開しませんし、RIETAN-2000の場合と同様の使用許諾条件付きです。

RIETAN Proにおける主な新機能は、セラミックス基礎科学討論会での講演(1月19日)で初めて公にします。中性子によるセラミック材料研究会・第4回研究会における我々の招待講演では、さらに詳しく紹介しますので、興味のある方はぜひご来聴ください。

■ 2006年1月18日(水) 初めてTXに乗ります(笑)

「笑ってる場合じゃねーよ。つくば市民の癖にTXに乗ってねーなんて、ひきこもりか、お前は。」と罵られそうですが、まさにその通り。昨年秋以降、つくばから一歩も出ませんでした。

今日これから、PowerBookを詰め込んだリュックを背負って高知に向かいます。本当に久しぶりです、娑婆(?)に出るのは。

引きこもりといっても、本掲示版からも窺えるように、ずっとアクティブに働いていたんですよ。週末も祝日も年末年始もずっと仕事。とくにRIETAN Proの完成に目処をつけたのは大きな収穫でした。引きこもっていたからこそ、大規模なアップグレードを短期間のうちに成し遂げることができたのです。

これからも、自分のやりたいことだけ、すなわちコア・コンピタンスに注力していきたいです。やりたくないことをやると(というより、やらされると)、能率が上がらず、ストレスがたまり、精神が腐乱してきます。一個人があれもこれも手を出すと、ろくなことはありません。どれも中途半端になるだけ。

そのためには、降りかかる火の粉は断固払いのけなければなりません。その覚悟は出来ています。

■ 2006年1月19日(木) 電子セラミックス研究の新トレンド

第44回セラミックス基礎科学討論会における私の講演は朝一番だったにもかかわらず、かなり多くの聴衆が集まりました。注目を集めていたのは明らかです。割と滑らかに話すことができ、晴れやかな気分で帰ってきました。

リートベルト解析結果の発表がかなり多かったのは予想通りでしたが、電子状態の計算がルーチンワーク化しつつあるのは意外でした。とくに電子材料の分野で、その傾向が強いようです。電子状態を理解した上での講演は説得力に富んでいます。これからは構造解析と電子状態計算を材料研究のための手段として使いこなせないようだと、時代の流れに乗り遅れたclassicalな材料屋に成り果てるな、と感じました。同時に、VENUSのような結晶・電子構造を対象とする3D可視化ソフトを開発したのは先見の明があった、と意を強くしました。

リートベルト解析にはもっぱらRIETAN-2000が使われていたのに対し、電子状態計算の場合、WIEN2k、VASP、SCAT、CASTEP、Gaussianなど様々なプログラムが使われていました。これらのプログラムを自家薬籠中のものとするには多大な時間を要するのはいうまでもありません。しかし、その努力を怠っていたら、研究のレベルが相対的に低下してしまいます。今時の研究者は学ぶべきことが多すぎて大変だなあ、というのが率直な感想です。

■ 2006年1月20日(金) 悪運の強さ

四国全域で降雪との天気予報は見事にはずれ、雨さえ降りませんでした。JAL1490便は約30分遅れで無事、羽田に到着しました。

■ 2006年1月21日(土) 旅の疲れが残っていましたが…

RIETAN Pro v0.92bに一点だけ気に入らない仕様が残っていたので、3時間ほど費やしてv0.93bにアップグレードしました。これで結晶データの標準化と指数・多重度発生に関連する入力が単純明快になりました。

今や結晶データ標準化機能はRIETAN Proの目玉の一つとみなしています。STRUCTURE TIDYがもたらした付加価値は相当なものです。

■ 2006年1月22日(日) 老朽化したブルーダルマシアンに見切りをつけ、

自宅用PCとして20インチiMacを発注しました。メモリを1 GB、GPU専用メモリを256 MBに拡張した贅沢な仕様です。一昨年の低迷から脱け出し、力強さを取り戻しつつある自分への褒美として買い換えました。2月初めに届く予定です。

Universal binaryが僅少な今、インテルCPU機を業務用に購入するのは時期尚早です。しかし、自宅では主としてアップル製アプリケーション(Safari、Mail、TextEdit、Previewなど)を使っていますから、時宜を得た買い物といってよいでしょう。

■ 2006年1月23日(月) 頭がこんがらかるだけ

1月17日に記した「裏技」の実装は見送ることにしました。私以外の誰も使わぬような機能を追加して、プログラムをますます複雑怪奇にするのは避けるべきだと判断しました。

ちなみに、その裏技とはIfブロックのネストです。止めておくのが無難ですよね。

■ 2006年1月24日(火) MEM解析用出力を追加

喉が痛い。微熱。何年かぶりに風邪を引きました(鬼の霍乱?)。

体調の悪さにもめげず、RIETAN Proをv0.95bにアップグレードしました。単位胞中の総電子数(X線回折)と原子の干渉性散乱径bcの和(中性子回折)を出力してくれるようになりました。後者の場合、正と負のbcの和を別々に出力します。

総電子数を計算できるようにするため、asfdc中のすべての化学種に対し原子番号を与えました。

PRIMAやVENDとの有機的連携がRIETANの最大の強みなので、それと関連する出力が増強され、利便性が向上したのは喜ばしい限りです。

■ 2006年1月25日(水) Amazing feature!

昨日に引き続き、RIETAN Proをv0.96bにアップグレードしました。結晶構造パラメーター一覧表中のデータとしてサイトの多重度+Wyckoff記号(例: 2a、6h、12i)を追加しました。それらのデータはSTRUCTURE TIDYにより取得しています。

■ 2006年1月26日(木) こんなことくらいしかできません

RIETAN Pro v0.97bでは、結晶構造パラメータの一覧を改善するとともに、GSAS形式の強度データファイル読み込み部分のバグを除去し、TYPEを強度ファイルから読み込むように改善しました。

■ 2006年1月27日(金) だめ押し → v0.98b

静養していないため、具合が悪くなる一方です。自ら命を縮めているような気さえしてきました。

今日は、結晶構造パラメータのリストにInternational Tables, Vol. Aに記載されている各サイトの最初の座標を追加しました。空間群P4/mmm(No. 123)を例に挙げれば、2gサイトは"0 0 z"、4iサイトは"0 1/2 z"、8pサイトは"x y 0"と出力されます。特殊点における固定座標が一目瞭然です。PeterseとPalm(1966)の表を用いて異方性原子変位パラメータに制約を付加する場合、最初の座標を使う必要があるため、この出力が座標のチェックに直接役立ちます。

そこまでやらなくても、と呆れられそうですが、これがあるとないとでは大違い。自己満足の極致であると同時に、ユーザーのお役にも立てます。

これほどの離れ業を実現できたのもSTRUCTURE TIDYのおかげです。STRUCTURE TIDYの内蔵は、事前の予想を大きく超える進化をもたらしました。

■ 2006年1月28日(土) 講演申し込み、締め切りました

「中性子によるセラミック材料研究会・第4回研究会」(東大駒場キャンパス、3月14日)の一般講演ですが、現時点で早くも時間枠一杯となってしまいました。招待講演に十分な時間を割り当てるため、やむを得ず締め切らせていただきます。結果として先着順となったことをお詫び申し上げます。

バラエティーに富む講演が集まり、喜んでいます。ご来場をお待ちしております。

なお、私と門馬網一君の講演は中性子回折に話題を限定している訳ではありません。「中性子回折でも威力を発揮します」といったところです。X線回折のユーザーや電子状態の3D可視化に興味をもつ方々もぜひご聴講ください。

RIETAN Proのテスト(1月12日参照)を申し出てくださる人が少しずつ増えてきました。これらの方々は相当得をすると思いますよ。なにしろ正式版のリリースに先だって、進化したソフトをいち早く使えますし、不具合が見つかれば、可及的速やかに修正版をお送りするのですから。

■ 2006年1月29日(日) 自己の欲求のおもむくままに

VICS-II v0.92.2がリリースされました。近日中にVENDの改訂版もアップロードします。

RIETAN Pro用入力ファイル*.insでは

     Select case …
     case …
        …
     case default
        …
     end select

というFortran 90もどきの分岐構文を使えます。たとえば

     Select case NPRFN
     case 0
        PC = 0.002
     case 1
        PC = 7.00
     case default
        PC = 7.00
     end select

と記述します。これはCにおけるswitch文に相当します。

*.ins中では、IfブロックとSelectブロックを使い分けていくことになります。1月23日に記した「Ifブロックのネスト」というのは、「If・Selectブロックのネスト」にほかなりません。もちろんネストといっても、2重ネストまでです。異種ブロックのネストは可能です。

23日にはその実装を見送ると述べましたが、ユーザーが使いこなせるかどうかなんてどうでもいいさ、と心境が変化してきました。自分がやりたいのなら、そしてその力を備えているのなら、躊躇せずやればよい —— それだけのことです。

かなり七面倒くさいプログラミングになるでしょうが、必ずチャレンジしますよ。いつになるやらわかりませんが。

■ 2006年1月30日(月) 9ヶ月ぶりのバージョンアップ

VEND v6.7.3を含むVENUS.tbzをアップロードしました。門馬綱一君によるアップグレードです。

GSASによるフーリエ合成後に出力される3D密度ファイル*.grdの入出力が可能になりました。GSASユーザーの数が僅少な上、MEM解析がルーチン化しつつある日本で、時代遅れなフーリエ合成を実行したいなどという物好きがいるとは思えませんが…

*.grdに対する入出力ダイアログボックスに関係する修正はかなり面倒なので、少々手を抜きました。入力の場合、VEND 3D形式で拡張子*.*edと*.grdをいずれも表示し、ファイル読み込み関数中で振り分けます。出力では、3番目のフォーマットとして*.grdを追加しました。VICS_VEND_manual.pdf中に本フォーマットに付いての記述を追加するとともに、VEND 3Dデータフォーマット(x、y、z方向のデータ数)に関する誤りを訂正しました。

さらに、VASP形式のファイルの入力に関する二つのバグも退治しました。この修正に伴い、VASP形式のファイル*.vaspをsurface colorizationの入力ファイルに使用できなくなりました。開発中の次世代3D可視化ソフトではこの問題を解決ずみなので、そのリリースまでsurface colorizationは封印しておいてください。

VENUSシステムに関するレビュー

が最近ようやく公になりましたが、なぜか二つの図の背景が黄色に変わっており、いたく落胆。たぶんMac OS X用Adobe Illustrator CS2で作成したせいなのでしょうね。またしても少数者の悲哀を味わいました。

ともあれ、本号で唯一の日本人として気を吐いたことを誇りに思います。68ページもあるのに、われわれのレビュー以外はすべて欧米の研究者が執筆していました。

■ 2006年1月31日(火) なにっ!

伝説のロックバンド「サディスティック・ミカ・バンド」(2004年9月6日参照)が29日、木村カエラ(21)を新ボーカルに迎え、17年ぶりに復活 —— だって!

実は私、昨年、古谷龍也君が絶賛していた「saku saku Ver.1.0」のDVDを買ったんですよ。2回観ました。はっきり言って、退屈でした。初回は10数分後に居眠り。2回目も20数分後に居眠り。私には、刺激の少ない脱力系タレントにしか見えませんでした。ピリっときません。「タイムマシンにお願い」には相応しくないですよ。

そのDVDはN嶋茂雄のサイン入り野球帽(2004年2月11日)と同様、拙宅の書棚に死蔵されており、空しく朽ち果てようとしています。どなたか、別なDVD(映画を希望)と交換していただけないでしょうか。

■ 2006年2月1日(水) 古今東西の歴史が雄弁に物語っているように、

愛も友情も尊敬も、何物かに対する共通の憎悪ほどには人間を団結させない。
アントン・チェーホフ「チェーホフの手帖」より

のは冷厳な事実です。「共通の理想」でなく「共通の憎悪」というところがなんとも情けないですが、人間というのはその程度のレベルの生物にすぎないのです。

だから団体行動って好かねーんだよな。個人的には虫酸の走るような、おぞましいことでも、団体(国家、企業、宗教、政党、派閥、etc.)の名の下に強制されますからね。群れの中でしか活動できない人間にだけはなりたくない。神も仏も親分も子分も要りません。Dare to be different! 私は今後も個人プレー至上主義者として、自分の頭で考えながらマイペースで生きていきます。私には超現実主義者の側面もありますから、つまはじきされずに遊泳していく自信があります。

昨日は、If・Selectブロックのネスト(1月29日参照)のコーディングに奮闘しました.「いつになるやらわかりません」という文言はどこかに吹っ飛んだ模様です。基本部分はすでに完成しました。なんという早業! まあ、こういうふうにエネルギーが漲っている間は、忘れられた存在に堕することはないでしょう。

■ 2006年2月2日(木) 近ごろ

風邪は大分よくなりました。

iMacが自宅に届きました。Xbenchによるベンチマークのスコアは60.71でした。ちなみに職場の業務用Power Mac G5(デュアル2.5 GHz)のスコアは100.62です。

プリプロセッサTinkの新機能「If・Selectブロックのネスト」(1月29日参照)を組み込んだRIETAN Pro v1.0bが出来上がりました。

RIETAN Proベータ版の試用希望者は順調に増えています。

BiCoO3の結晶・磁気構造に関するAlexeiの論文がChem. Mater.に掲載されました。

Alchemyに関する論文が受理されました。

「saku saku Ver.1.0」の嫁入り先はまだ見つかっていません(行かず後家になる公算大)。

AbsoftのIntel CPU用コンパイラ(Mac OS X版)の発売を待って、Intel CPU機用RIETAN Proをビルドする予定です。

■ 2006年2月3日(金) 独りよがり?

お気に入りの「saku saku」を酷評されたにもかかわらず、古谷君は自腹で中性子によるセラミック材料研究会を聴講しに来てくれるとのこと。ありがたいことです。もっとも、Windows用RIETAN Proのベータ版(Webでは配布する予定はありません)をいち早く入手できるのだから、元を取ってお釣りが出るでしょう。自分でいうのもなんですが、会心作ですよ、これは。

RIETAN Pro v1.0bの不具合を直しつつ、If・Selectブロックのネスト機能を徹底活用してFapatiteE.insを書き換えてみました。その一部を披露します。ぎこちない形式で、冗長に記述せざるを得なかったファイルが、見違えるようにスタイリッシュな姿に変身。「やった〜!」という達成感があります。

しかし、どう見ても一般ユーザー向けの機能じゃないなぁ。こんなマニアックな文法に則って書かれた雛形ファイルを配布して大丈夫なのでしょうか。

見た目がドラスティックに変わったFapatiteE.insを眺め渡して、つくづく思いました。Tinkには発想の飛躍があります。どんなソフトからも影響を受けていない、完全にオリジナルなCharacter User Interfaceです。ただ、あまりにもぶっ飛んだアイデアに基づく入力形式に一般人がついて来れるか否かが問題なのです。

■ 2006年2月4日(土)  ローギアへシフトダウンすべきか

自宅のiMacは諸設定が完了し、申し分のないスピードで安定に動いています。職場のG5 Macに比べ、プロキシサーバが介在していない分だけWebの受信速度が高まっています。CPUがYonahに変わっても、GUIの外見はまったく同じです。G4やG5のMacからシームレスに移行できます。

RIETAN Proに組み込むべき主要新機能は余すところ一つになりましたが、緊急に処理すべき案件が溜まっているため、しばらく取りかかれそうにありません。疲労が蓄積しており、神経を使うことも重なり、なんとなくぐったりしてきました。リフレッシュの必要性を痛感しています。

現時点で、講演・講義・講習会を5つも引き受けています。人前に立つことを苦にする私にのしかかるプレシャーは相当なものです。元気がなくなってきたのには、こういう状況も影響しているんじゃないかな。

■ 2006年2月5日(日) 光機能材料へのVENUSの応用

産総研 TODAY、Vol. 2、No. 6に「光機能が期待される新型二酸化チタンの創製」という記事が掲載されていました。PRIMA・VENDにより計算・表示した電子密度分布の図が含まれています。

筆者の高橋靖彦氏には、3年前に開催したセラ協ミニシンポジウム「三次元可視化技術のインパクト」(2003年3月24日参照)で招待講演を依頼しました。あのときは、dynabookと液晶プロジェクターを高橋氏の車に積み、泊まりがけで出動しました(そのプロジェクターが役立たずだったのは残念)。今でもVENUSを積極的に活用されている様子が本記事から窺え、うれしかったです。

■ 2006年2月6日(月) 「あゝ! 一軒家プロレス」の方がまし

魁!! クロマティ高校 THE★MOVIE」は聞きしに勝る駄作でした。主人公の名前には思わず「ん?」。部分的にエド・ウッドの「プラン9・フロム・アウタースペース」を思い起こさせるようなシーンあり。ゴリラやロボットだけでなく破壊王まで出演していたのには驚かされました。

口直しに鑑賞した「オペレッタ狸御殿」でしたが、こりゃ豪華版学芸会あるいは隠し芸大会ですな。正直なところ、早く終わってくれねーかなぁ、と願いつつ観ていました。チャン・ツィイーは可愛いし、美空ひばりがデジタル出演という趣向も面白かったですが、自分だけの世界に浸った、遊び半分の作品としか思えませんでした。

■ 2006年2月7日(火) おっと、危ないところだった

某有名ソフトのバグのために、ある種のデータを扱う際、Alchemyが正しい出力を与えないことを突き止め、早速、対症療法を施しました。よくあるタイプのデータだというところが怖い。この不具合に気づく人はほとんどいないだろうなぁ。ほかにもいくつか障害物があるので、素人さんは手を出さない方が身のためです。といっても、なんのことだかわかりませんね。

RIETAN-2000、VICS、VENDがめったに更新されなくなり、RIETAN Proはいつ公開されるかわからない今、当Webサイトの訪問者が激減してもよさそうなものですが、その兆候は現れていません。ということは、毎日更新している本掲示板を眺めにやってくるということですか。しかし、とりたてて貴重な情報を発信している訳でなく、べらぼうに面白い訳でもなし、一般大衆が喜びそうな写真など皆無 —— なんとも摩訶不思議な現象です。

■ 2006年2月8日(水) 拝金主義の果て

午前中は会議でつぶれ、午後はAlchemyの手入れに追われました。

ホリエモンの錬金術がマスコミを賑わしていますが、精魂込めてAlchemy(つまり錬金術)を製作している我々にとって迷惑至極です。私利私欲に走っていただけの犯罪者と自分の財産はことごとく人に与えてしまい、あげくの果ては日々、無償サポート(当事者能力に欠けた●●■■■■の救済も含む)に追われている貧民中の貧民が同名の術を使うというのは不条理きわまりないです。

自己の利益しか眼中にないというのでは、東横インの西田憲正社長もホリエモンの同類です。一昨年、京都の大学に集中講義に出かけたときに、大学の宿舎がすでに満杯だったので、できたてのほやほやの同ホテル京都四条烏丸に宿泊しました。無料の朝食(おにぎり)もちゃんと食べましたよ。最高に便利な場所なのに、どうしてこんなに安いんだろうと訝りましたが、それが禁じ手まで繰り出した「コスト削減」の結果だったとは… 名前が似ている東急インは困惑しているんでしょうね。

防衛施設庁の官製談合も、国民の利益などそっちのけで、我欲を優先させた結果でしょう。防衛施設庁の一部は営利企業化していたということだ。見下げ果てた連中です。

どうして過剰なお金を欲しがるんでしょうね、こういう輩は。

地獄までお金を持っていける訳じゃねーだろ。

と面罵してやりたい。

貧すれど貪せず —— この方がどれだけましかわかりません。まあ、貪欲になりようがないよなぁ。物欲はほとんどゼロ、質素極まりない生活で満足しているのですから。底がほぼ平らになった靴を平気で履いており、通勤手段は古ぼけたチャリンコ。ブランド品はもとより、ホームレスでさえ使っているというケータイすら持っていません。

貧しい人々を救うのは私の使命と心得ています。一方、金持ちが貧乏人たる私にたかろうとするのは断固拒絶するつもりです。独立行政法人に所属する以上、遠慮会釈なくお金(外部資金)を徴収しますよ、そういうところからは。もちろん正規ルートを通じてですけどね。

■ 2006年2月9日(木) Second galley proof etc.

「実験化学講座」11巻の再校が届きました。初校で修正した部分を確認するだけ。楽なものでした。

今日もAlchemyの手直しを続行しました。あらゆるケースに対応するのは無理で、個々のケースにおいて臨機応変に対応する必要がありそうです。いっそ思い切って…

自宅のiMac(Intel Core Duo搭載機)でMac OS X用VICS-IIを実行できることを確認しました。ロゼッタというトランスレータがPowerPC命令をYonah命令に逐次変換するため、少々かったるいですが、プレゼンテーション・論文用イメージの作成くらいは楽々とこなせます。

■ 2006年2月10日(金) 時期尚早かも

昨日の話の続き。ロゼッタが提供されてはいるものの、少なくとも現時点では、インテルCPU搭載Macは業務には不向きです。アップル社以外からUniversal binaryのアプリケーションがほとんど出荷されていないからです。ATOKがまったく使えないのがとくに痛い。AdobeとMicrosoftの超メジャーソフトは依然としてPowerPCコードのまま。現在、私が使っているサードバーティ製Universal binaryはJedit XPCalcFetchだけです。自宅のiMacにはInternet Explorer(職場でのWeb作業には必需品)やStuffIt Expanderすらインストールされていませんでした。Macを仕事に使っているヘビーユーザーは一年くらい買い控える方がよいでしょう。

今後、Universal binary版を取り揃えていかねばなりません。嗚呼、面倒くさい。

STRUCTURE TIDY用の空間群記号の長さが足りないというバグを修正したRIETAN Pro v1.01bをビルドしました。

■ 2006年2月11日(土) そう大したもんじゃありませんが…

RIETAN Proをv1.02bにアップグレードしました。空間群のシンボルが10文字のとき、*.lst中の結晶構造パラメータの一覧表で、多重度+Wyckoff位置の一部が欠落するというバグを退治しました。

対称中心、回転軸、鏡面などの上に乗った特殊点に対する異方性原子変位パラメータ(anisotropic atomic displacement parameter)βijには、当該特殊位置の対称性に対応する制約条件を課す必要があります。たとえばb軸に平行な2回回転軸上のサイトの場合、β12 = β23 = 0という関係が成立します。

RIETAN Proの利便性をさらに高めるため、いずれ、βijに対する制約条件を知るためのデータを上記の一覧表に追加することにしました。もちろん制約の自動付加は容易ですが、ユーザーに制約条件を強く意識してもらうため、そこまでは踏み込むのは避けるつもりです。

実は2005年1月12日の掲示板に、βijについての制約条件を導き出すルーチンを恵んでいただけたらありがたい、と書き込んだのですが、案の定、レスポンスは皆無でした。一年以上待ち続けた挙げ句、自ら片を付けざるを得なくなったという次第。一事が万事、情報・ソフトの流れの不可逆性には慣れっこになってはいるものの、すでに存在しているはずのものを再利用させてもらえないことに苛立ちが募ります。まあ、世間によくある話ですが。

かくなる上は、できるだけ手を抜こうと決意し、単純作業の部分をポスドクに依頼しました。

我が国において結晶学ソフトウェア開発が急速に衰退しつつあるのは誰の目にも明らかです。早急に対策を立てないと、将来に禍根を残すことになるでしょう。いや、もう手遅れじゃないかな、とくに生体高分子と中性子回折の領域は。「そして誰もいなくなった」—— クリスティーの世界ですよ、それじゃぁ。

RIETAN Proの出力*.lstに追加されるデータを以下にまとめておきます:

  1. 一定の規則に従って標準化した結晶軸、格子定数、分率座標
  2. 各サイトの多重度とWyckoff文字
  3. 各サイトの最初の同価位置(International Tables, Vol. A中の記載に準拠)
  4. 各サイトの非等方性原子変位パラメータβij間に課せられる制約条件
  5. 結晶中に含まれる化学種(仮想化学種を含む)の電子数
  6. 単位胞内の総電子数(X線回折)あるいは干渉性散乱径bcの和(中性子回折。正・負別々)
  7. 混合物中の各相のモル分率(単位胞当たりのformula unitの数Zを入力する必要あり)
  8. 無定形相の質量分率(標準物質を添加する必要あり)

どうですか。壮観でしょう。もちろん大学教育での活用も狙っています。ORFFEの出力ファイル*.ffeとVICS-IIの有機的連携(すでに前倒しで実現)同様、強い訴求力を発揮すること、間違いなし。

■ 2006年2月12日(日) FTPクライアントソフトウェア

Mac OS X用のFetch 5がv5.1b2(Universal binary)に、NextFTP4がv4.55にバージョンアップしました。

■ 2006年2月13日(月) フロントランナーからのプレゼント

CPUとOSの64ビット化が急速に進んでいる現状を考慮し、われわれは自作ソフトの64ビットコード化を積極的に推進していく方針です。すでにMac OS X用RIETAN-2000は64ビットコードを配布しています。

現在VENUSシステムの一部として提供しているPRIMAは32ビットコードであり、反射数や単位胞内のピクセル数が非常に多い場合、計算不能となります。32ビットOSが扱えるメモリーの上限(ユーザー領域は2 GB程度)を超えるためです。

そこで門馬網一君にIntel Fortran compiler 9.0 for Linux(無償)によるAMD64・EM64Tコードのビルドを依頼していたのですが、このほどJP-Mineral中のPRIMAのWebページでの配布が開始されました。VENUSのWebページ中のArchive files for the VENUS package(11.2)で、リンクを張っておきました。

十分なメモリーを積み、Fedora Core 4(これまた無償)をインストールしたPC上で動かすといいでしょう。

■ 2006年2月14日(火) 配布ファイルの追加

開発協力者へのアウトソーシングの結果として、現在、VENUSシステムの配布ファイルは

に散在しています。マニュアル類は共通なので、3D Visualization System VENUS: Archive files for the VENUS packageにおいてDocuments.tbzというアーカイブファイルとして別個に配布することにしました。VENUS.tbz中のDocumentsフォルダと同じものです。

なお、大木氏のサイトにはLinux用のRIETAN-2000とVENUSの最新版が最近、出揃いました。

■ 2006年2月15日(水) Constructive solution

異方性原子変位パラメータβijに課すべき制約条件を出力するようにRIETAN Proをアップグレードしました。バージョン番号はv1.03bです。

実のところ、大して手間はかかりませんでした。愚痴と嫌みと自慢話(2月11日)を書き連ねるのに費やした時間の方がよほど長かったんじゃないかな。

ついでに指摘しておきますが、

中のTable 1から制約条件を得る際には、i ≠ jとしたとき、βijでなく2βijが記載されていることに十分ご注意ください。三方晶系あるいは六方晶系の化合物を扱う際、重大なミスを犯す恐れがあります。一方、

中の6.3-表 (a)では、βijの前に係数2がありません。RIETAN-2000のユーザーにとっては、こちらを使う方が安全です。

■ 2006年2月16日(木) 私には分かりかねます

私に答えられるはずもない質問を浴びせられることが時折あります。たとえば次の二つのような質問です:

  1. GSASやFullProfは原点に対称心のない化合物のX線回折データを解析する際、F(h k l)とF(-h -k -l)を別々に計算していないのではありませんか。
  2. FullProfのフーリエ合成用ファイル*.fouでは、異常分散の寄与を取り除かずにFoを出力しているのではありませんか。

いずれもX線回折における異常分散効果と関連する問題です。RIETAN-2000で得た計算結果との違いから、これらの疑いを抱いたとのことです。

いくら私がリートベルト解析プログラムの作者だとしても、GSASやFullProfのソースコードがなければ、軽々しく断定できません。なにかの設定を忘れているだけという可能性もありますし。私はGSASやFullProfのパワーユーザーではないのです。それらのプログラムの作成者に直接尋ねてください、と答えるしかありません。

私に明言できるのは「仮にそれらが事実だとしたら、お話しにならない」ということだけです。1番目の問題は重原子を含む化合物のリートベルト解析に悪影響を及ぼします。吸収端近傍で測定した放射光粉末回折データなら、なおさらです。2番目の疑惑が事実だとしたら、結晶学の初心者が犯すようなミスであり、まともなフーリエ・D合成など不可能です。

上記のことについてご存じの方は、ぜひ教えてください。本掲示板で情報を公開しますので(なにしろ、「粉末回折情報館」ですから)。

そんなことより、むしろ己の頭の上の蠅を追わねばなりません。散々手こずった末、RIETAN Proをv1.04bにアップグレードしました。International Tables, Vol. Aにおいて、正方晶系および立方晶系の空間群では第2設定が「原点に対称心あり」です。そういう場合、STRUCTURE TIDYによる結晶データの標準化の際、「原点をシフトしない」でなく「原点をシフトする」というフラッグを立てていました。

■ 2006年2月17日(金) 中性子によるセラミック材料研究会・第4回研究会のプログラム確定

RIETAN Proをv1.05bにアップグレードしました。STRUCTURE TIDYによる結晶データの標準化における原点移動に関するバグを取り去り、仮想的化学種を含む化合物において単位胞内の総電子数と干渉性散乱径の総和が正しく計算されないという不具合を解決し、GSAS形式強度データファイルの入力部分を修正しました。

粉末中性子回折技術の進展とセラミックスへの応用」のWebページにプログラムを掲示しました。講演希望者が予想外に多く、締切期日の大分前に講演申込みの受付を停止しましたが、それでも一般講演の時間を14分に短縮せざるを得ませんでした。

今回の集会は中性子回折に焦点を絞った研究発表というよりは、最新の研究・開発動向に関する情報交換のための会合というように位置づけています。中性子回折データをまったく測定・解析していないような発表が2件(8番と9番)含まれているのはそのためです。

私と門馬君の招待講演(10番)では、RIETAN Proと次世代3D可視化統合ソフトの概要を紹介します。これまた中性子回折だけに話題を限定している訳でありません。両者の全貌を把握する絶好の機会となりますので、中性子回折に興味のない方のご来聴も歓迎します。

聴講希望者は必要事項を記入したメールを私にお送りください。入場無料です。

■ 2006年2月18日(土) HGの人気凋落は間近です ← なんのこっちゃ

RIETAN-2000 Rev. 2.2以降ではmicroabsorptionを補正したX線定量分析が可能になりましたが、仮想化学種の使用とは両立しません。そこで、仮想化学種を含む相にも対応したRIETAN Pro v1.06bを作成。9割以上の時間は、以前書いたコードを理解するのに費やしました。

一昨日、GSASとFullProfに関する情報提供を呼びかけたのですが、レスポンスは皆無です。さもありなん。我が国には両ソフトのユーザーがほんのわずかしかいませんから。Collinearでない磁気構造を解析する場合は外国製ソフトに頼らざるを得ませんが、そこまで踏み込むエキスパートはほんの一握りです。

日本においてRIETANのシェアが極度に高い(恐らく90数%)のは、豊富な日本語情報が手に入るだけでなく、十分な機能と実用性を備えているからだと思います。タコなソフトだったら、とうの昔に淘汰され、事実上消滅していたはずです。ソフトに限った話ではありませんが、長く愛用されるものや人気が長続きする人は、他をもって代え難いアドバンテージや魅力を必ず持っているのです(ここでタイトル参照のこと)。

論より証拠、ラザフォード・アップルトン研究所で開発されたリートベルト解析プログラムは、もはやお膝元のパルス中性子源ISISでさえほとんど使われていません。複数の研究者がボロクソに貶していましたから、よほどショボいのでしょう。ご当地ソフトということで最初は皆それに飛びついたのでしょうが、あまりの出来の悪さに嫌気がさし、次第に別なソフトに乗り換えていったんでしょうね。科学技術ソフトウェアの世界はそれくらいシビアです。

パルス中性子源といえば、私がサポートを止めてしまったTOF中性子回折用のRIETAN-TNですら、未だにKENSで測定されたデータのリートベルト解析の大半に利用されているようです(なぜかバグ入りのRIETAN-2001Tに執着する輩までいるらしい。 理解不能な愚行、つーか使用禁止令違反につき、将来のペナルティー賦課必至!)。まあ、作者自身が見放した古ぼけたソフトとはいえ、そう捨てたものではなかった(not so bad)ということなんでしょうね。

GSASではKENSで測定した粉末回折パターンのフィットが良くならない(だからRIETAN-TNを使わせてほしい)というメールがしばらく前に届きました。当たり前ですよ、GSASのプロファイル関数はKENSの装置用に最適化されていないのですから。減速材の材質・形状・温度、poisoningの有無・方法、回折装置の光学系に応じてプロファイル関数を最適化しないと、フィットはなかなか良くなりません。分解能が高い装置だと、なおさらです。

■ 2006年2月19日(日) 科学教育へのVICS・VENDの貢献

坂根弦太氏のWebサイトで、数個のDV-Xα法周辺プログラムが改訂・追加されました。さらに高校生・大学生向けの分子軌道計算入門ページ楽しい電子状態計算も全面的に刷新されました。

坂根氏は今月上旬、岡山理科大の教育用情報処理システムの教育用パソコン340台(秋からは約150台追加)にDV-Xα法プログラムとVENUS(VICS-IIを含む)をインストールされました。来年度に、まず理学部化学科2年「無機化学III」と大学院化学専攻「錯体化学II」の授業で試行的にお使いになるそうです。

VICSとVENDを開発した目的の一つが科学教育への貢献でした。私の勤務先であるNIMSは主として文科省からの運営費交付金で運営されています。したがって、科学教育のためにも直接役立つVICS・VENDの開発は、運営費交付金の使途として理にかなっていたと自負しています。その重要性を認識する先見性に欠けた人たちからは白眼視されましたが、外部の評価と注目度がきわめて高かったのには大いに勇気づけられました。しかし、周知の通り、VENUSの開発は経済的困窮と疲弊へと私を追い込みました。その結果、Rubenをリストラせざるを得なかったのは痛恨の極みでした。残念ながら、現在、我が国で彼ほどの人材を確保するのは困難です。

幸運にも、門馬網一君がVICS・VENDを統合した次世代3D可視化ソフト(VICS-IIはその一部)の開発を引き受けてくれました。GLUTとGLUIで構築した古風なGUIのままでは、短命に終わる宿命でしたから、これほど嬉しいことはありません。wxWidgets(近日中にv2.6.3がリリースされる予定)で全面的にGUIを再構築しますので、今後の進歩と普及が期待できます。老後の楽しみ(?)が一つ増えました。

次世代3D可視化ソフトはもはやNIMSが製作したソフトとは呼べませんが、そんな枝葉末節なことはどうでもいいです。私の使命は、税金を払ってくれた人々・企業に対し、目で見える形の、有用なプロダクトをお返しすることなのですから。

■ 2006年2月20日(月) 重くヤバい

現時点で引き受けた講演・講義の数が6つに増えました。事前の準備にかなりの時間を費やすヤツがほとんどで、許容限界スレスレです。よりによって、6年ぶりにRIETANをフルモデルチェンジするべき、この年に… ソフト開発の撹乱は必至。

かなりの精神的圧迫を受けると同時に、焦燥感に駆られています。鬱。

こんな時は、positive thinkingモードに切り換えましょう。いい年こいてプログラミングに血道を上げており、しかもその産物がバカ受けするからこそ、お声がかかるんですよ。年相応にマネージメントに精を出していたら、研究資金集めに汲々とし、会議・書類・雑用まみれのはず。そういう辛気くさい状況に落ち込むよりよほどまし、と達観すればいいんじゃないの。鬱でなく躁になって然るべき、ということ。

それに無料ソフトのリリースがいくら遅れようが、誰も苦情を申し立てたりしませんよ。デッドラインなどありませんし、生き馬の目を抜くビジネスの世界と比べ、金儲け度外視の世界は暢気なもんです。

■ 2006年2月21日(火) Envy youth

東工大の中山将伸氏が最近完成された第一原理計算(解析編)のWebページを閲覧し、VICS+VENDで作画した美しいイメージに目を奪われているうちに、「Bond Valence Sum (BVS) によるイオン伝導経路の可視化」というタイトルに気づきました。イオンの配列が分かれば、空間上の任意の一点にイオンを置いたときのBVSが計算でき、それらの三次元分布から可動化学種の移動経路が可視化できるとのことです。意表をつかれました。

私は、そういう画期的なシミュレーション技法があるということを寡聞にして知りませんでした。早速、中山氏に問い合わせたところ、BVSのマッピングはすでに論文として発表され、確立した方法とみなされているそうで、文献を3報、教えていただきました。この手法が不定比化合物(たとえば固溶体、空孔を含む物質)や酸化物イオン伝導体にも適用できるかどうか尋ねたところ、nonstoichiometryは工夫次第でいくらでも可視化できるし、陽イオン伝導よりは酸化物イオン伝導のほうがマッピングには適していると思う、という答えが返ってきました。

ついでに、最近はSoftBVのパラメータR0とb(ブラウザでJava使用可とし、SoftBVで求める)からBVSを計算することが多い、と中山氏から教わりました。これまた初耳 —— 恥ずかしい限りです。

この類の仕事は、中山氏のような若手研究者にお任せするしかありませんね。私は粉末回折データから電子密度を実験的に求める方法を洗練させ、さらに構造解析(X線回折による電子密度分布の決定)と電子状態計算を橋渡しするようなソフトを製作しましたが、もはや自らその橋を渡る力は残っていませんでした。もう10歳若かったら、自ら電子状態計算にチャレンジしたことでしょう。已んぬる哉。

いかん、また鬱々としてきたぞ。では、この辺で…

■ 2006年2月22日(水) 自称、最悪のFTPD

Fetch 5によるPower Mac G5(Mac OS X)—Precision Workstation 670(Windows XP)間のファイル転送のため、Precision WorkstationにTiny FTP Daemonをインストールしました。以前はDynaBook G6内のファイルをFetchでダウンロードできなかったのですが、今回はまったくトラブルが発生しませんでした。

Tiny FTP Daemonのホームページを眺めると、見るからに怪しげなソフトとしか思えないでしょう。5年近くバージョンアップされていないWindows 9X用ソフトに過ぎません。しかし、一度慣れ親しんだソフトはとっつきやすい。セキュリティーは甘そうですが、匿名(anonymous)ユーザーの接続を無効にするとともに、転送作業が終わるや否やTiny FTP Daemonを終了してしまうので、安全性に問題はないでしょう。LANの中で使うだけだしね。

「実験化学講座」11巻の刊行が遅れています。丸善によれば、4月発売は厳守するとのことです。

■ 2006年2月23日(木) 見よ! 涙ぐましき努力の跡を

βijに賦課する制約条件に関係するデータを*.lstに追加したRIETAN Pro v1.07bを作成しました。

v1.07bの標準出力FapatiteE.lst中の結晶データ一覧部分を閲覧してみてください。情報量がかなり増えているのが一目でわかるでしょう。"discriptions"はまずかったな。修正しておきます。

NCONの値の前に置かれた*は、実際にβijに課せられる制約条件を示しています。Neは中性原子(仮想原子を含む)1個あたりの電子数です。もちろん純粋な化学種では原子番号に等しくなります。

■ 2006年2月24日(金) Viva iMac!

20インチiMacが自宅に届いてから約3週間になります。安定かつ静粛に稼働中。

アクティビティモニタを立ち上げると、CPU二つの使用率が棒グラフ表示され、OSがほぼ平等にプロセスを割り振っていることが一目でわかります。Core Duo+Radeon X1600のパフォーマンスは素晴らしいの一言です。メインメモリを1 GB、ビデオメモリを256 MBに増設したことも手伝い、もう速いのなんのって。プロキシサーバを介してWebにつながっているNIMSのPower Mac G5に比べ、はるかに高速なブラウジングを楽しめます。iDiskへのアクセス速度も大幅に改善され、本Webサイトを迅速に更新できるようになりました。

デュアルコアによる並列処理に加え、2 MBの2次キャッシュを2つのコアが共有しているのが、体感速度の向上に大きく貢献しているのでしょうね。

Core Duoがここまで凄いと、ノート型PCも欲しくなってきました。しかし、A4サイズの重いヤツしかないんだよなぁ。

■ 2006年2月25日(土) 欲張りすぎ?

VICS-II v0.92.3がリリースされました。

意識的に冗長化したRIETAN Proの出力(2月23日公開)を眺め、VICS-IIを操れば明らかなように、次世代構造精密化・3D可視化システムは科学教育への貢献を願いつつ製作しています。研究だけを指向した、間口の狭いソフトではありません。

たとえば東北大の大山研司氏が製作された結晶構造解析のための空間群のWebページをご覧ください。VICS-IIが結晶学の基礎を学ぶのに役立つことがよくわかるでしょう。

自作ソフトには、さらに娯楽的要素まで注入しています(2005年1月14日参照)。「キャピキャピ感」という軽佻浮薄な言葉を思い出してください。

研究・教育・エンターテインメント —— これら三つの成分を過不足なく混合し、調和の取れたソフトとして熟成させる(1月14日参照)には、相当な力量を要します。自分がそういう多彩な才能に恵まれているとは思えませんが、自作ソフトの完成度の向上に心魂を傾けてきたのは事実です。

エンタメ(円貯めにあらず)のセンスやぶっ飛んだ発想を涵養するには、映画鑑賞が一番。部分プロファイル緩和は「王妃マルゴ」から着想したということは、数年前、どこかに書きました。現時点におけるDVDのレンタル熱望作品は「メゾン・ド・ヒミコ」と「リンダ リンダ リンダ」です。

■ 2006年2月26日(日) 堀江メールの分析

日本中を騒がせた堀江メールがライター三上@仕事場で徹底解析されていました。

Eudoraは昔、私も使っていましたが、今ではライブドア傘下のPRO-Gが販売しています。最新バージョン6.2J発売から5ヶ月も経っていたのに、ライブドアの社長が旧バージョン4.3.2-Jを使っていたとは思えません。それに、情報処理に多少詳しい人は全角の英数字を入力しませんよ。ホリエモンはかつてWebページ製作者だったんです。

こんな、いかにもインチキくさいメールを信じ込んだ民主党の永田議員は、己のバカ・アホ・マヌケぶりを天下に曝したことを恥じ、即刻、謝罪すべきです。

私が使っていたころのEudoraはホリエモンを連想させるような泥臭く鈍重なソフトでした。検索が恐ろしく遅く、メールを受信すると妙なにわとりが現れ、メールを削除すると、空きスペースを時々詰めてやらなければなりませんでした。最新版はどうなのでしょうか。

■ 2006年2月27日(月) 本当は1時間くらいしゃべりまくりたいのですが…

先端科学技術ソフトの開発や結晶学領域でもっともアクセス数の多い粉末回折情報館の維持・運営とかけて、荒川静香選手の得意技(イナバウアー)ととく。そのこころは —— 圧倒的多数の人々にアピールし拍手喝采されるものの、まったくポイントを稼げない。今や防衛施設庁OBの雇用・待遇まで官製談合時のポイントになり、ヤマダ電機に至っては来店ポイントまでプレゼントしてくれる時代だというのに、割り切れない思いです。

ポイントが付かないだけじゃないな。半強制的な無料奉仕に従事させられることさえあるんだから、恐ろしい。RIETAN-2001Tのバグとりには本当に泣かされました。丸々一ヶ月はつぶれましたから。

愚痴はさておき、私と門馬網一君は中性子によるセラミック材料研究会・第4回研究会(3月14日、東大駒場キャンパス)でRIETAN Proと次世代3D可視化システム(VICS・VENDを統合したもの)について紹介することになっています。我々はその研究会を一つの区切りとなるイベントと見なしており、それまでにできるだけソフト開発を前進させ、胸を張って講演するべく奮闘中です。

RIETAN Proは順調に仕上がりつつありますが、主要機能の一つが未実装のまま残っています。現在、山積みになっている仕事の量を考慮すると、同研究会までに当該機能を追加するのは到底無理な情勢です。とはいえ、STRUCTURE TIDYとLAZY PULVERIXの組み込みなどに比べれば、さほど骨の折れるプログラミングではないので、遅くとも4月中旬までには完成するでしょう。

門馬網一君から統合3D可視化システムの進捗状況についての報告を受けましたが、isosurface(等値曲面)のイメージングはsurface colorizationも含め、すでに完成したそうです。言い換えれば、VEND相当パートの主要部分の実装は完了しています。同研究会までに、ダイアログボックスなどのGUIを構築し終え、球棒模型とisosurfaceの重ね合わせ表示などを披露します。VEND使用時と比べ一段と美しくなったisosurfaceを実感でき、ハッピーな気分になるに違いありません。ご期待ください。

■ 2006年2月28日(火) 当分Rosettaにお任せ

Mac用電子辞書ブラウザJamming v3.9がリリースされましたが、Core Duo搭載Macに対応できるのか、対応する場合、その時期はいつ頃になるのかについては、一切未定だそうです。

シェアウェアでさえこんな感じなのですから、スポンサー不在の3D可視化ソフトはなおさら対応が困難です。VICS-IIを先鋒とする次世代ソフトは、もはやNIMSとは無縁といって過言でないのです(もちろん、泉は私人として関与していますが)。いずれはぜひインテルMac上でネーティブコードのVICS-II(と次世代可視化ソフト)を走らせたいですが、その目処は立っていません。

一方、NIMSでの職務として私が開発しているRIETAN-2000(とRIETAN Pro)の方は、AbsoftのMac OS X用Fortranコンパイラがアップグレードされれば、ただちに移植できるはずです。しかし、G4、G5(32ビット)、G5(64ビット)、Core Duo版をすべて配布なんて、やってられねー。どうしたらいいのか。

■ 2006年3月1日(水) 不人気=失敗だ! ← 「恋の門」のパクリ

非等方性原子変位パラメータβijに課せられる制約条件に関する注釈を少しだけ修正したRIETAN Pro v1.08bをビルドしました。

研究者は芸能人やスポーツ選手と違って、人気、実力、実績に依存する所得を得るわけでありません。とはいえ、自分(たち)が開催・講演・講義する講演会・講習会・授業で閑古鳥が鳴いていたら、こりゃー面目丸つぶれ、意気阻喪しますよ。誰だってそうでしょう。お前(ら)の研究・技術・知識は傾聴に値しないと宣告されるようなものですから。己の存在意義を否定されたような暗鬱な気分になりかねません。

だから、昨年7月に開催した日本結晶学会主催の講習会「粉末X線解析の実際」が早々と満員御礼となり、相当数の方々の受講をお断りせざるを得なかったと知ったときは、胸をなで下ろしました。かなりの長さの補助テキストを新たに作成し、当掲示板で何度も宣伝を繰り返した身としては、実に嬉しかったです。その後のプログラミングの励みにさえなりました。

私が世話人を務めている中性子によるセラミック材料研究会・第4回研究会も、十分な数の参加希望者が集まりつつあり、ホッとしています。これまた、当掲示板でしつこく宣伝し続けたのが功を奏したかもしれません。

最後を飾る泉・門馬の招待講演ですが、盛り沢山な内容の割に時間が足りません。老人(?)が無味乾燥な数値データを吐き出すだけのRIETAN Proに関する講釈を垂れるより、若者が見栄えのする統合化3D可視化ソフトをデモする方が受けるに決まっている、と判断し、門馬君が主役、私が脇役という時間配分(3:2)にしました。今や3D可視化は粉末中性子回折における基幹技術なのですから、けっしてアンバランスだとは思いません。

上記研究会は当日も参加登録を受け付けます。しかし、受付を滞りなく進めるため、事前に私に参加希望メールをお送りいただけると幸甚です。

■ 2006年3月2日(木) コスト‐パフォーマンスに不満あり

昨日は講演会・講習会・授業への出席者数について述べましたが、私を日ごろ勇気づけてくれるのは、むしろ本Webサイトのアクセス数の多さです。当掲示板に毎日書き込み続けているのは、訪問者への謝意の表明でもあります。さすがにネタの枯渇は深刻で、同じような話題を繰り返しがちなのは遺憾ですが、これからもなんとか書き続けていく所存です。

予想通り、Core Duoを装着したMac miniが発売になりました。CPUのクロックが低く、GPUがオンボードだというところが今一。価格もやや高めです。

ともあれ、廉価版PCでもコア二つが当たり前、という時代が到来したといって過言でありません。

■ 2006年3月3日(金) 豆知識

キューティーハニー」(2004年11月13日参照)の主題歌って、あの倖田來未が歌ってたんですか。フ〜ン。

■ 2006年3月4日(土)  どこまで言及すべきか

中性子によるセラミック材料研究会の参加申込者は順調に増えつつあります。

一昨日に記した通り、泉・門馬の招待講演における前座(泉)の持ち時間は10分程度です。これでは通常の研究発表と大差ありません。短時間のうちに、大きなインパクトを聴衆に与えるにはどうしたらいいのか。

RIETAN Proで実現する新機能がどうのこうのとまくしたてたところで、絶対アピールしない。時間不足のため省くつもりでいたAlchemyについて述べるとともに、RIETAN Proの将来計画をぶち上げるしかないんじゃないかな。聴衆の間に衝撃波が走りますよ。いや、成田空港の2期工事みたいになったらみっともないから、口をつぐんでいる方が賢明かもしれない。突拍子もない話だし。

まあ当日、その場の雰囲気や時間的余裕を考慮し、臨機応変に決めることにしましょう。

■ 2006年3月5日(日) 64ビット化の潮流

インテルはデュアルコア・64ビットCPU(Merom)を今年後半から投入するとのこと。なんとMeromはノートPCにも搭載可能らしい。

いずれiMacのCPUもMeromに変わってしまうのでしょう。すぐに古ぼけるiMacを買ってしまったような気が…

RIETAN Proや次世代3D可視化ソフト(正式名は中性子によるセラミック材料研究会で公表されるでしょう)がデビューするころは、ちょうど64ビットCPU・OSが広く普及していく時期にあたります。もちろん、われれは両ソフトの64ビット版も提供するつもりです。乞う、ご期待!

■ 2006年3月6日(月) いつまでもこのままという訳には…

当WebサイトはAppleのiDisk上に構築しています。カリフォルニアとの間でデータをやり取りしているため、日米間のトラフィックを徒に増やし、データ転送速度を下げていることになります。FTPによるファイル転送が不可能な上、9,800円という年間利用料金も割高。そろそろ変え時だなぁと感じています。しかし、URLと私用メールアドレスが変わると困るんですね。

ファイルバンクでは、一時的にファイルを格納しておけるだけです。

もう一つ迷いに迷っているのが、当Webサイトの維持運営費や無料ソフト開発・配布にかかわる私的負担コストの一部をカバーするために、広告を導入するか否かという問題です。具体的には、Google AdSenseを考えています。しかし、広告をクリックしてくれる訪問者がどれくらいいるのか。まあ、焼け石に水でしょうね。そんな暗い見通しでは、二の足を踏んでしまいます。

結局、このままかぁ ・・・

■ 2006年3月7日(火) 美女と野獣?

Mac Fan」4月号をパラパラめくっていたところ、一葉の写真(「MACLIFE」1997年2月号所収)にびっくり仰天。長髪のホリエモンの隣にいるのは、なんと有馬あきこさん(2001年11月29日参照)じゃありませんか。有限会社オン・ザ・エッヂの取締役だった由。詳しくは、「オン・ザ・エッヂを創業した彼女が歩いてきた道」(ホリエモン逮捕前の記事)をご参照あれ。

前にも書きましたが、本Webサイトの各ページの最下部に置かれた[Home]、[Next]、[Back]のアイコンは有馬さんの作品です。数年間、同じものを使い続けているので、そろそろリニューアルする必要を感じます。

■ 2006年3月8日(水) MPF法の応用例

VENDで作画したδ-Bi1.4Yb0.6O3の等核密度曲面(Yashima & Ishimura, 2005)が日本結晶学会誌, Vol. 48, No. 1の表紙を飾っていました。

中性子によるセラミック材料研究会・第4回研究会の世話人を引き受けたのはいいけれど、どうせ会場はガラガラなんだろうな、と内心ビクビクしていたのですが、まったくの杞憂でした。参加申し込みのメールが未だに届きます。不思議で仕方ありません。中性子散乱なんてセラミストには敷居が高いに決まっているんだけどと、首を傾げています。

■ 2006年3月9日(木) 大分コチコチになっていました

月曜の夜に、かの有名なWebサイト「物理のかぎしっぽ」の管理人、崎間公久氏と会食する機会に恵まれました。「悪あがき日記」(3月6日)にそのときの感想が綴られています。そこでリンクを張っていただいた結果、当ホームページのアクセス数が一時的に急増しました。流石はアクセスカウントが50万に迫りつつある人気サイトだけのことはあります。

「ソフトウェア開発にかけている時間は100分の1くらい」 —— これは事実です(嘘つけ! もっと少ないぞ)。連日プログラミング三昧と想像している人が多いのでしょうが、まったくの誤解で、通常は研究者としての職務を黙々とこなしています(わざと誤解されるようなことばかり書き散らしているのだから、自業自得)。ただし、私は自宅でテレビを見たり音楽を聴いたりしながら、プログラムや論文・解説を手直しするのが常であり、そういう時間は含めていません。

要するに、極端なスロースタータでして、プログラムにしろ論文・解説にしろ、書き出すまでの時間が人並みはずれて長いのです。これを脳内熟成期間と称しています。いったんスタートすると、猛スピードで駆け抜けます。結果として、平均速度は人並み。ペースメーカーを確保する必要性を痛感しています。

■ 2006年3月10日(金) やった〜! 間に合った!

門馬綱一君から次世代三次元可視化システム(VICS・VEND統合版)のプロトタイプが送られてきたので、早速チェック。事前の予想を超えた完成度の高さに感動しました。とくに等値曲面イメージのqualityの向上には驚かされました。

細かい修正を施せば、3月14日の講演に十分使えます。

死にもの狂いで頑張ってくれたんですね。ただただ感謝するばかりです.

■ 2006年3月11日(土) Mission impossible

毎日、テキストエディターで掲示板に駄文を書き続けるのは相当きついです。引っ込み思案でシャイな性格の私が、そんなに話題が豊富な訳がありません。公表したらまずいことも多いですし。

一方、Blogの制作者の場合、BlogPetのウサギやネコなどを飼い慣らし、日記執筆を代行させることができるとのこと。かくなる上は、本掲示板をblogに模様替えし、三日に一度くらいはペットに書き込んでもらったらいいのではないでしょうか。

そこでBlogPetについて本気で調べてみたんですが、ヤバイです、こりゃ。たとえば、Noel Cafe → Hitori-goto → 2月24日を閲覧してください。よりによって、ご主人様のことを「不美人なワタクシ」とは(なんと2回も)… 裏切り者ですよ、こいつは。

自分もなんと表現されるかわかったもんじゃありません。「墓場入り間近のクソ爺」なんぞと書かれたら、憤りのあまり、本当にあの世に逝ってしまいかねない。やめときます。

■ 2006年3月12日(日) 定員倍増伝説

中性子によるセラミック材料研究会・第4回研究会(東大駒場キャンパス)の聴講希望者がじりじり増えてきた結果、会場に予定していた12号館1224(定員48人)では手狭になってしまいました。すでに事前申し込み者だけでも50名を超えています。

最低限のワークスペース(PCと液晶プロジェクターの置き場、座長、進行係、次の講演者の席など)が必要ですし、出席者は前からきちんと詰めて座ってくれないのが常だからです。立ち見の方々が出るのはできるだけ避けたいです。当日の参加申し込みを断るわけにもいきません。3時間ぶっ通しの研究会で、休憩をはさんでいないため、人の出入りが必然的に多くなります。それに、一人で数人分の存在感を示すあの御仁がお見えになるようで…

そこで急遽、予備教室として確保されていた1号館105(定員96人)に会場を変更していただきました。その位置については会場案内図をご覧ください。12号館とは違う建物となりますので、十分ご注意ください。

当日の参加受付を滞りなく進めるため、できるだけ事前に参加希望メールをお送りくださるようお願いいたします。

ところで、Alchemyや「突拍子もない話」(3月4日参照)はどうしたらいいのか。ネタ多すぎ、持ち時間短すぎなんだよなぁ。とりあえず、同じPCで講演する門馬網一君には両者を最後に置いたスライドショー用PDFファイルを送っておきました。時間が足りないようだったら、闇に葬り去ります。

■ 2006年3月13日(月) 逃げ出す度胸なし

中性子によるセラミック材料研究会・第4回研究会の会場を変更した後、さらに10名を越す方々から参加申込みメールが届きました。広い教室に変えていただいて、本当によかったです。

吾妻ひでお(2005年3月29日・5月19日参照)がメディア芸術祭大賞受賞記念シンポジウムをキャンセルしたとのこと。なんと、その顛末を自身のWebページでマンガ化していました。

「もう人前に出るのはやになったので」 —— ズバッとこう言い切れる人がうらやましい。私も同じ気持ちなので。といっても、明日は失踪などいたしませんから、ご心配なく。

■ 2006年3月14日(火) 肩の荷が一つ下りました

中性子によるセラミック材料研究会・第4回研究会は無事終了しました。開始時間が朝9時と早かったにもかかわらず、最初の講演のときにほとんどの席が埋まっていたのは予想外でした。参加者総数72名。「中性子」と銘打った研究集会にこんなに参集していただけるとは夢にも思いませんでした(これまでは2・30名が精々だったそうです)。大成功といってよいでしょう。

聴衆の多さに気を良くし、Alchemyも「突拍子もない話」も出し惜しみしませんでした。門馬網一君による次世代三次元可視化システムVESTA(Visualization for Electronic and STructural Analysis)の実演は、VESTAが単なるVICSとVENDの統合版に留まらない意欲的なシステムであることを明示していました。すでに実現済みの機能もポリッシュアップされています。ベータ版のリリースが楽しみです。

研究会が終わった後、なんと学生2名に「粉末X線解析の実際」にサインするよう頼まれました(汗)。何か気の利いた言葉を書き添えたかったのですが、情けないことに何も思いつかず、署名だけしておきました。

今回の研究会を通じ、RIETAN-2000とVENUSのユーザーがRIETAN ProとVESTAに寄せる期待の大きさをひしひしと感じました。できるだけ早くベータ版をリリースし、活用していただくよう努力します。

朝5時起きはきつかったです。とにかく疲れました… 慣れないことはやるもんじゃないなぁ。

■ 2006年3月15日(水) 命拾い

昨日午後、セラ協年会で一般講演をいくつか聴講した後、高速バスで帰宅したところ、東工大の西村真一君から「Co Kα特性X線で測定した強度データをRIETAN-2000で解析すると、異常散乱補正項の値が不正となる」というメールが届いていました。今日、調べたところ、Mo Kα特性X線に対する補正項がasfdcから読み込まれていることがわかりました。Rev. 2.2.5にアップグレードした際、各特性X線に番号(NTARG)を割り当て、全特性X線の波長を逆順に並べかえたのですが、asfdc中の補正項を読み込む順番を変更するのを忘れていました。

不幸中の幸いで、もっともポピュラーなCu Kα特性X線の場合、たまたま前から数えても後ろから数えても4番目なので、実害がありませんでした。しかし、他の特性X線で測定したデータを解析した場合は、異常分散補正項が間違っていたことになります。万一ご迷惑をおかけしたならば、お詫びいたします。Cu Kβ特性X線と放射光で測定したデータ、中性子回折データの解析では、なんの障害も起こりません。

早速、このバグを修正したRIETAN-2000 Rev. 2.5をアップロードしました。なお、Windows用配布ファイルに含まれているGnuWin32のファイル表示ユーティリティless.exeはv382からv394にアップグレードされています。

RIETAN Proの方もこのバグを修正し、v1.09bにバージョンアップしました。

■ 2006年3月16日(木) 停滞中

13日に従兄弟の葬儀(研究会の準備のため、欠席)、明日は叔母の葬儀(こちらは出席)です。従兄弟は叔母の長男です。一週間の間に相次いで逝去されました。

私のまわりは仕事や人生からリタイアする人だらけといって過言でありません。いずれは自分の番です。肉体的・精神的にゆっくりと壊れつつあるのを自覚しています。そこで、できるだけ建設的なことに集中したいと願っているのですが、なかなか思う通りには事が運びません。

RIETAN Proも、完成まであと一歩のところで開発がストップしています。焦りの色が濃くなってきました。

■ 2006年3月17日(金) 乗り心地満点

叔母の葬儀で栃木県の田沼町に行って来ました。館林で東武佐野線というローカル線に乗り換えたのですが、一瞬、我が目を疑いました。見るからに豪華な、ふかふかのボックスシートがズラリ。足下も広そう。出発ホームを間違えたのでないかと心配になり、再確認しました。帰りに再び乗車したつくばエクスプレスのペッタンコの座席が惨めに思えてなりませんでした。

■ 2006年3月18日(土) 片手落ち

偽メールに踊らされた永田寿康衆院議員が四面楚歌になっていますが、大量破壊兵器の保持というガセネタを信じ込んだ(ふりをした)ブッシュ大統領とその腰巾着たる小泉首相の責任の方が百万倍は重いはずですが、いかがでしょうか。野党はなぜ徹底的に小泉首相の重大な失態を徹底追及しなかったのでしょうか。「チャップリンの独裁者」の名セリフ「一人殺せば殺人者で、百万人殺せば英雄だ」をどうしても想起してしまいます。

防衛庁では約半数、警察では約4割の職員が私用PCを公務に使っており、それがWinnyによる機密情報流出に結びついたのだそうです。アンビリーバボーな話で、呆れ返りました。防衛施設庁が官製談合で無駄遣いした税金をつぎ込んだら、防衛庁のPC不足は容易に解消するのではないでしょうか。自腹PCの話からは、装置(ハードウェア)を建設して事足れり、データさえ取れりゃいーじゃねーの、ソフトウェアはどっかからもらってくりゃいーさ、なにせ人材がいねーからな、という、我が国の放射光源や中性子源の安直な片翼体制(2005年11月30日参照)をどうしても想起してしまいます。バランス感覚の欠如 —— 省庁こそ違え、薄ら寒い状況は酷似しています。

■ 2006年3月19日(日) 邪道

ついにIntel MacでWindowsを起動するのに成功したそうだ。しかし、セットアップが面倒です。安全性や安定性も気になります。私はまったく手を出すつもりはありません。

■ 2006年3月20日(月) 毎度おなじみの埋め草です

RIETAN-2000で得た成果を発表した論文の数が400報に達しました。ちなみに400番目の論文は

でした。今年の暮れか来年初めには500報に達するでしょう。

■ 2006年3月21日(火) 未来に向けての布石

PRIMA v3.5.5をリリースしました。バッチモードに限り、3Dテキストデータファイル*.den(MEED互換)を出力できるようになりました。Preferencesファイル*.prf中に3Dデータファイルの名前として*.priと入力すればバイナリーファイルが、*.denと入力すればテキストファイルが出力されます。対話モードでは、つねに*.priが出力されます。このバージョンアップに応じて、PRIMA_manual.pdfも改訂しました。

今後、複数のOS上でテキストファイルを処理する機会が次第に多くなると予想されます。そのための準備の一環として、今回のアップグレードを実施しました。たとえば、大容量メモリーを積んだ64ビットLinux機で作成した*.den中の3DデータをMac OS X上のVESTA・Illustratorで可視化・作図するといった役割分担が可能となります。

3月14日の研究会で披露したのと同じバージョンのMac OS X用VESTAを門馬網一君にビルドしてもらったので、PRIMA v3.5.5で作成した*.denを3D可視化してみました。*.priを入力した場合と同一のイメージが表示されたのは言うまでもありません。やはりグラフィックデータを扱うのはMacに限ります。

これからゆっくり時間をかけて、RIETAN Pro-PRIMA/ALBA-VESTAのWindows、Mac OS X、Linux版(32/64ビットコード)を順次提供していきます。そのラインアップがずらりと勢揃いした暁には、我が国独自の解析・可視化ソフトウェアの存在意義は誰の目にも明らかになると確信しています。

■ 2006年3月22日(水) 不毛の一日

Absoft Pro Fortran for Mac OS X v9.2でPRIMAをビルドしてみました。まずは、コンパイラの不具合のためREAD文やWRITE文内のループで不可解なコンパイルエラーが続出し、対症療法を見つけるのに2・3時間を費やしました。2005年9月17日の掲示板に記したのと同じバグでしょう。ようやく得られた実行形式ファイルを走らせたところ、原因不明のsegmentation faultのため、あえなく討ち死に。スタックサイズはきちんと増やしたのですが。このタコなコンパイラには、ほとほと嫌気がさしました。インテルFortranコンパイラMac OS版がリリースされたら、ただちに乗り換えるつもりです。

ついていない —— どうやら、先週レンタルした「リンダ リンダ リンダ」をろくに観ようともせずに返却した罰が当たったようです。

■ 2006年3月23日(木) Alchemyの部分的公開

PRIMA v3.5.6とPRIMA用ファイル変換ユーティリティAlchemyの正式版を含むVENUS.tbz、Documents.tbz、Examples.tbzをアップロードしました。

PRIMA v3.5.6では、観測構造因子|Fo|の推定標準偏差σ(|Fo|)を調節するための係数Eの型を整数から実数に変更しました。また、画面・ファイル出力の一部を少しだけ修正しました。

マルチプラットホーム化戦略(3月21日参照)の一環として、昨年10月以来、河村幸彦氏とともに開発してきたAlchemyのうち、RIETAN-2000関連部分だけオープンにしました。すなわち、MEM解析用バイナリーファイル*.fosをテキストファイル*.memに変換するという機能です。ユーザー入力ファイル*.inp内で指定したEの値に応じて、*.mem中のσ(|Fo|)が変化します。PRIMAによるMEM解析に先立ってFo|とσ(|Fo|)の値がチェックでき、便利です。また、異なるプラットホーム上でMEM解析を行う際には必需品となります。

詳しくは、Examples¥Alchemyフォルダ中のReadme_Alchemy.txtと二つの入力ファイル例fap.inp(X線回折)とgarnet.inp(中性子回折)を参照してください。

実のところ、*.fos→*.memというファイル変換は、半日程度でAlchemyに付け加えた付録に過ぎません。Alchemyの二つの主要機能はRIETAN-2000とは無関係です。それらの機能を利用する際の*.inpのサンプルファイルは、戦略的観点から非公開とします。将来、公開するか否かは未定です。

「Alchemyの二つの主要機能」って、何かって? それは中性子によるセラミック材料研究会・第4回研究会の出席者向けの特典情報です。ここで言明すべきことにあらず。でも、その正体を推測するためのヒントだけ与えておきましょう。AlchemyはVENUSが新たな分野に進出するための橋頭堡にほかなりません。すでにその建設は完了しており、いつでも利用に供せます。

■ 2006年3月24日(金) Alchemy関連の配布ファイルを更新・追加

昨日リリースしたばかりのAlchemyを早々とバージョンアップしました。*.mem中にコメントとして出力される相の番号がゼロになるというバグを解消しました。バージョン番号を付けてなかったので、これをv1.0としましょう。また、実行例やReadme_Alchemy.txtをほんの少々手直ししました。この改訂に伴い、VENUS.tbzとExamples.tbzを更新しました。

さらにMac OS X用Alchemyも追加リリースしました。Macで作成した*.memをWindowsあるいはLinux上でPRIMAにより解析するときに使います。詳しくはAlchemyフォルダ中のReadme_Alchemy.txtをお読みください。

GAMESS用3D可視化プログラムMacMolPltがv5.6にアップグレードされていました。Universal binaryだそうだ。なんという早業! 先を越されてしまいました。

■ 2006年3月25日(土) お役御免

いつの間にやらMac OS X用CD/DVDライティングソフトToast 7 Titanium v7.0.2が圧縮ディスクイメージファイル*.dmgを出力するようになったことを知りました。これまではFreeDMGでMac用配布ファイル*.dmgを作成していたのですが、今後はToastを使うことにします。昨日アップロードしたAlchemy.dmgはもちろんToastで作成しました。

■ 2006年3月26日(日) 20インチiMacのパフォーマンスト

20インチiMacのグラフィック性能を知るために、CINEBENCH v9.5によるベンチマークテストを行ってみました。職場で使っているPower Mac G5とDELL Precision Workstation 670で得られた値とともに、次の表にテスト結果を示します。

20インチiMacPower Mac G5PW 670
CPUIntel Core DuoPowerPC G5×2Xeon
CPUのクロック2.0 GHz2.5 GHz2.80 GHz
CPUの種類デュアルコアシングルコアデュアルコア
使用アプリケーションCINEBENCH 9.5.appCINEBENCH 9.5.appCINEBENCH 9.5.exe
Rendering (Single CPU)308 CB-CPU383 CB-CPU237 CB-CPU
Rendering (Multiple CPU)567 CB-CPU690 CB-CPU441 CB-CPU
Multiprocessor Speedup*1.841.801.86
Shading (CINEMA 4D)356 CB-GFX376 CB-GFX323 CB-GFX
Shading (OpenGL Software Lighting)980 CB-GFX1059 CB-GFX1316 CB-GFX
Shading (OpenGL Hardware Lighting)1692 CB-GFX1750 CB-GFX3696 CB-GFX
OpenGL Speedup** 4.754.6611.45

* Multiprocessor Speedup = Rendering (Multiple CPU) / Rendering (Single CPU)
** OpenGL Speedup = Shading (OpenGL Hardware Lighting) / Shading (CINEMA 4D)

もちろんCINEBENCH 9.5.appはUniversal binaryです。PW 670はQuadro FX 3450というプロ級のGPUを積んでいるので、Shading (OpenGL Hardware Lighting)とOpenGL Speedupが大きくて当然です。一方、Rendering (Single CPU)、Rendering (Multiple CPU)、Shading (CINEMA 4D)の値がiMac > PW 670だったのには衝撃を受けました。昨年暮れに購入したばかりの64ビット(2.80 GHz)ワークステーションが32ビット(2.0 GHz)コンシューマー機に太刀打ちできないとは… Intel Core Duoの性能の高さには、あらためて驚かされました。

■ 2006年3月27日(月) 半年ぶりのバージョンアップ

VICS-IIやVESTAのGUI構築に使用しているwxWidgetsがv2.6.3にアップグレードされました。

■ 2006年3月28日(火) 君子豹変す

宝石や金はことごとく貧乏人に与え、自らは鉛の固まりと化す「幸福の王子」の生まれ変わり(2003年4月14日参照)を自称していた私ですが、さすがに最近は出し惜しみするようになってきました。「つばめ」ならぬインターネットを通じて自分の全財産をばらまくことの愚を悟ったのです。

たとえば、自作ソフトのソースコードはもはや共同開発者以外には配布しておらず、Alchemyは氷山の一角的機能を公開しただけに留めています。MEMのノウハウとテクニックについては、昨年7月に開催した「粉末X線解析の実際」講習会の補助テキストにかなり加筆したのですが、わずかな数の関係者に配布しただけです。MEM解析にチャレンジしたい人にとっては恰好の手引きとなるため、いずれ何らかの形で発表しますが、Web上で公開する気は毛頭ありません。VENUSに至っては、J-PARCユーザーの無断使用を厳禁しているほどです(この独創的かつ建設的な措置についてはLicense agreementを参照のこと)。

我ながら、随分「大人」の対応を取るようになったなぁと感心しています。抜け目なく立ち回るよう心がけた甲斐あって、今や経済的困窮からは完全に脱却しました。

貧すれば鈍する、と誹られるかもしれません。しかし、私の変節を躊躇なく批判できるほど、情報・ソフトを広く無償公開している「聖人君子」がどれだけいるでしょうか。現状でもサービス過剰なくらいではないでしょうか。「一切合切、只だよ。もってけ泥棒!」の時代に戻る気はさらさらありません。自分の頭の上の蠅を追えなくなる恐れがありますから。

といっても、すでに身も心もボロボロ、鉛の固まり同然だよなぁ。処世術を身につけるのが遅すぎた感は否めません。

■ 2006年3月29日(水) もうぐったり

職場で使用している6台のPCを対象として、DNSサーバのアドレスを変更し、MACアドレスを登録し、DHCPサーバからIPアドレスを取得するように変更し、コンピュータ名を自動的に取得し(Windowsの場合はそれを登録)、FTPクライアントソフトの設定を変更する、という作業を試行錯誤で一挙に行いました。Macの場合はいとも簡単なのですが、Windows機の場合、面倒くさいのなんのって。OSの出来の悪さに閉口しました。無線LAN内蔵機では、TRACERTなんていうコマンドまで繰り出して奮戦。今後の登録に備えて、一連の設定を全部メモっておきました。

その間を縫って論文1報を査読し、審査意見をエディターに送付。

帰宅したときは、もうよれよれ。大食い王決定戦でギャル曽根が猛然と食いまくる様を呆然と眺めました。すごすぎる…

JP-MineralでVICS-II v0.92.4とPRIMA v3.5.6 for x86_64 Linuxがリリースされました。

■ 2006年3月30日(木) 非常勤講師(東工大長津田キャンパス)

7月5日に東京工業大学大学院総合理工学研究科(材料物理科学専攻)において材料物理科学特別講義第二の授業を行うことになりました。タイトルは「結晶構造の精密化と三次元可視化」です。

東工大で講義するのは4回目(学部1回、大学院3回)です。恐らくこれが最後でしょう。昨年夏に他の二大学で行った集中講義と同様に、黒板とチョークを使った古典的教授法を一部採用する予定です。

■ 2006年3月31日(金) 今月の推薦書

最近読んだ本の中で抜群に面白かったのが梅田望夫の「Web進化論」(ちくま新書)です。「情報発電所」、「分身」、「あちら側」と「こちら側」、「ロングテール」という言葉に接し、目から鱗が落ちました。

それを読んでいる最中にGoogleによる検索での順位が気になり、「粉末回折」をサーチしたところ、当Webページが先頭でした。粉末回折情報館の面子を保つことができ、安堵しました。

また、「粉末中性子回折」および「中性子 and 材料」の検索において、もはや当ホームページでのリンクが切れた中性子によるセラミック材料研究会・第4回研究会がトップに立つという快挙(?)を成し遂げました。

ちなみに「電子状態」を検索してみると、坂根弦太氏の楽しい電子状態計算がトップに現れます。「電子状態計算」と「電子状態 分子軌道」でも同じ。すごいことですよ、これは。なにしろ、Googleによる検索結果での順位は、世界的に評価の確立したページランク・アルゴリズムによる一種の格付けにほかならないのですから。

■ 2006年4月1日(土) いずれなんとかしたいのですが…

門馬綱一君のおかげで、少なくとも自分はMac OS X用VESTA(アルファ版)により等値曲面を3D可視化できるようになりました。いずれ、ベータ版が公開されるでしょう。

問題は、おバカコンパイラ(3月22日参照)でビルドしたMac OS X用PRIMAが異常終了してしまうことですが、Alchemyが*.mem、Windows・Linux用PRIMA v3.5.5以降が*.denを出力する機能をもつので、MEM解析だけ他のプラットホームで実行するという手が使えます。*.memと*.denはテキストファイルなので、portabilityがあるのです。Macユーザーは当面、こんなところで我慢してください。

■ 2006年4月2日(日) ソロモンの栄華も野の百合の装いに如かず

けばけばしいネオンがまたたく銀座の目抜き通りで数本の桜が咲き誇っている様を眺め、聖書の一句を思い浮かべました。

■ 2006年4月3日(月) Mac Fan5月号: 肝心の中身はつまらなかった

3月7日に引き続き、「Mac Fan」ネタです。本屋で5月号の表紙を見たとたんに購入を決意。思わず「花とアリス」(岩井俊二監督)のラストシーンを連想しました。

ついでに「花とアリス」について講釈を垂れておきましょう。この映画では、女子高生二人の、ドラマチックとは言いがたい日常の描写がダラダラ続き、次第に眠気を催してきます。しかし、けっして「やおい」的作品ではなく、終わり近くに、目の覚めるような名場面がバッチリ用意されています。監督自作のバックグラウンド・ミュージック入りでね。岩井監督はわざと冗長で、あくびの出そうなシーンを延々と積み重ねた節があります。確信犯的技法といってよいでしょう。それが名場面をこの上なく引き立てています。

なお、その名場面は「紙コップ」のエピソードを除けば、実話だそうです。「トップランナー」で、蒼井 優自身がそう語っていました(2005年6月24日参照)。

■ 2006年4月4日(火) 異変

この2・3日、粉末回折情報館へのアクセス数が異常に増えていることに気づきました。アクセス解析記録から、その原因はただちに判明しました。「ギャル曽根」を検索すると、一時は当ホームぺージがかなり上位にランクされていたらしいのです(今は大分、順位が下がった模様)。最近の訪問者が検索したキーワードを調べてみると、「ギャル曽根」が「泉富士夫」を上回っているではありませんか(汗)。「ギャル曽根」については3月29日の掲示板にちょこっと記したにすぎませんが、その御利益(?)たるや、凄まじいものがあります。

ともあれ、これが契機となって、粉末回折に興味を抱く人が多少なりとも増えてくれれば嬉しいです。

■ 2006年4月5日(水) 牛歩の如き歩み

新年度に入りました。これから、数多くの新人がRIETAN-2000やVENUSの習得に多大な労力を払うのかと思うと、胸が痛みます。しかし、3月28日にも記したように、世間一般の常識に照らせば、現状でも過剰サービスを提供しているのに相違なく、自責の念にかられたりはしていません。第一、ユーザーをいくら支援しても、勤務先での業績ポイント(これでボーナスの額が決まります)はまったく増えないのです。無償ソフトの作者に商用ソフト並のサポートを要求するのは御門違い。弁護士、弁理士、税理士、司法書士などの場合と同様、なんらかの専門家が非専門家に提供するサービスは有償であって然るべきではないでしょうか。

とにかく私が最優先で取り組むべき課題は、唯一残っている新機能をRIETAN Proに組み込み、そのベータ版を配布することです。これをサボっていたら、私の存在意義が薄れてしまいます。「隗より始めよ」ということで、昨日はIntel Fortran Compiler for Windowsをv9.0.030にアップグレードしました。259 MBもの巨大ファイルをダウンロードするのには、30分くらいかかりました。いずれ、Intel製Mac OS X用Fortranコンパイラも購入する予定です。

■ 2006年4月6日(木) 救いの女神

「うわ〜、助かった〜。神様って、いてはんねんなぁ」と、歓喜の声を上げたくなりました。

■ 2006年4月7日(金) 今後はMacさえあれば十分?

3月19日にIntel MacでWindowsを動かす方法が見出されたと記しましたが、今度はApple自身がBoot Camp(Macs do Windows, too.)のパブリックベータ版を配布し始めました。製品版は次期Mac OS X, Leopardの一機能として提供される予定です。随分、思い切ったことを…

■ 2006年4月8日(土) Linux用Alchemy

信州大学の大木 寛氏にお願いし、Linux用Alchemyをリリースしていただきました。Linux上でMEM解析を実行したい方はご利用ください。

■ 2006年4月9日(日) 政府関係者お断り

2月22日以来、FTPサーバソフトとしてTiny FTP Daemonを使ってきましたが、いくらなんでも「最悪のFTPD」を自称しているソフトは好ましくないなと思い、War FTP Daemonに乗り換えることにしました。そのフリーソフトをインストールした後、私にはそれを使う資格がないことに気づきました。Software License Agreementにgovernmental institutionsは使ってはならない、と明記してあるからです。ただちにアンインストールしました。

なんでも、このソフトの作者Jarle Aase氏(スキンヘッド、ゲイ、独身)は冤罪のために政治犯として2年間、刑務所にぶち込まれていたという過去があり、政府あるいは政府が運営している機関にはWar FTP Daemonを絶対に使わせたくないらしいのです。

The software may be used to break domestic laws, if the laws conflicts with human rights, freedom of speech, freedom of religion, or violates the integrity or dignity of citizens.

とも述べています。

まあ、この激烈な使用許諾条件に比べれば、サイトライセンスを取得するか、私の捺印入りの紙切れ一枚さえ入手すれば、J-PARCでVENUSを使ってもよろしいというのはユルすぎるんじゃないかな、と感じました。しかし、3月28日にも記したように、それはあくまで、巨額の血税が注ぎ込まれつつあるJ-PARCに対し結晶学ソフトウェアの自主開発(蒐集にあらず)を督促するための建設的措置にほかならないのですから、比較しても意味がありませんね。枯れ木に花を咲かせようと努めるのは前向きかつ創造的な行為であり、リベンジでもリスクヘッジでもありません。みかけは枯れ木でも、地面の中でしっかり根を張っているのなら、必ずそれなりのアウトプットを出してくることでしょう。I sincerely hope so.

ということで、結局、Tiny FTP Daemonに立ち戻ることに相成りました。削除しないでよかった!

■ 2006年4月10日(月) 「プリシラ」以来の傑作おかま映画★★★★★

昨日ゲイの話題が出たばかりですが、偶然、ホモの老人ホームを題材とする「メゾン・ド・ヒミコ」のDVDを鑑賞しました。引き込まれるように最後まで一気に観た映画は久しぶりです。柴咲コウの目力にしびれました。「ピキピキピッキー!」のエピソードも秀逸。

一番気に入ったのは、バスガイドのコスプレ姿の柴咲コウ、オダギリジョー、おかま老人数名、その他が「また逢う日まで」をバックに、輪になって踊るシーンでした。その唐突さと明るさは「少林サッカー」の素っ頓狂なダンスシーンの影響を受けているような気がしました。

■ 2006年4月11日(火) 長澤まさみファン以外にはお薦めできない、ありきたりの青春映画★

実は「メゾン・ド・ヒミコ」に引き続き、同じ犬童一心監督の「タッチ」も観たのですが、箸にも棒にもかからぬ駄作で、落胆しました。ガラにもない仕事はするもんじゃありません。まるで、いやいやながら引き受けた泉先生の講演みたいに投げやりな凡作でした。

家出中学生、心臓病・痴呆症の老人、身体障害者、ゲイといった日陰者や社会的弱者を撮らせたら遺憾なく実力を発揮する名監督も、高校野球・美少女・(変形)三角関係・不可能事への挑戦という手垢まみれの題材に軽率に手を出した結果、見事にコケてしまいました。長澤まさみはジュビロ磐田の初代監督の娘なんですよね。お天道様の下でプレーするスポーツに似つかわしい健康的な若手女優です。でも、犬童監督に野球は絶対似合いません。

先の知れた展開、ベタなセリフ、お涙ちょうだい —— これに最後までつきあった自分を恥じています。

■ 2006年4月12日(水) 軌道修正

最近の当掲示板はいよいよ雑駁さを増すばかり。「ゲイ」なんて言葉が3日連続で飛び出すのは顰蹙ものです。こんな体たらくでは評判が落ちるなぁと反省しております。ここらでアカデミックな話題を持ち出さないと、誰も寄りつかなくなってしまいます。そこで今日は、イメージアップのために、科学情報を6つまとめて提供しておきましょう:

VICS-II v0.92.5がリリースされました。

DV-Xα & VENUS:楽しい電子状態計算のWebページで、 F01作成から、makef05実行、DVSCATによる計算、周辺プログラムの実行までを全自動で行えるシステムが公開されました。二酸化炭素、水、ベンゼン、メタンなど17種の典型的な分子に対する実行例のファイルが入手できます。もちろん、引き続き分子模型や電子状態の計算結果をVENUSで3D可視化することも可能です。エディターによるテキストファイル編集の手間が省けるため、分子の電子状態を手軽に調べるのに役立ちます。

9月8日に岡山で開催されるDV-Xα分子軌道計算講習会には、坂根弦太氏による「DV-Xα法計算結果の三次元可視化」の講義が含まれています。結晶学以外の分野でVENUSがここまで普及してきたのは嬉しい限りです。

XX Conference on Applied Crystallography(XX CAC)が9月11〜14日にポーランドのビスラで開催されます。私はInternational Programme Committeeのメンバーとなっており、招待講演も依頼されています。XX CACに引き続き、Giacovazzo先生やLe Bail先生らが講師を勤めるSummer School on Polycrystalline Structure Determinationなどが9月14〜16日に催されます。前回のCACと同様に、超大物(Giacovazzo先生)の直後に講演する羽目に陥るのではないかと、怯えています。

International Conference on X-Ray and Related Techniques in Research and Industry(ICXRI-2006)が11月29・30日にクアラルンプールで開かれます。私はInternational Advisory Panelのメンバーになっています。

Intel Fortran Compiler for Mac OS v9.1が発売になりました(68,250円)。いずれ購入するつもりです。

■ 2006年4月13日(木) めんどくせー

今年度は、それぞれWindowsとMac OSしか知らないポスドク2名と研究することになりました。ということは、とりもなおさず、ポスドク同士で教え合うのが無理なケースが多いということを意味します。一方、Mac用RIETANはUNIXアプリケーションそのもので、Mac用のPRIMAはありません(その理由については3月22日の掲示板を参照のこと)。ボス(= 私)はWindows、Mac OS、UNIX、いずれもOKですが、OSの操作やアプリケーションの使い方を人に教えるのを好まず、「学生じゃないんだから、自分で勝手に覚えなさい。」という基本姿勢をとっています。促成栽培は嫌いですから。

もちろん、自分もぜひソフトを作りたいという意欲があるなら、懇切丁寧に教育しますよ。その気があり、しかも十分な実力を備えているなら、ポスドクとして雇用したいので、ご一報ください(本音:いるわけねーだろ)。

ざっとこんな状況です。とにかくPC環境についてはエントロピー高すぎだな、こりゃ。

日本の中性子業界に目を転じると、ほとんどの研究者がMac党です。Windowsをいじらせたら、赤ん坊同然。一方、学生や若手研究者の場合、Windowsしか使えない人が圧倒的に多い。今後、中性子散乱を広く普及させていくにあたって、このギャップが大きな障害となるかもしれません。

■ 2006年4月14日(金) Fortranコンパイラの乗り換え

昨年12月末で販売を停止したCompaq Visual Fortranに見切りをつけ、Intel Visual Fortran Compiler for Windows v9.0.030を使い始めました。開発環境はMicrosoft Visual Studio .NET 2003です。Fortranプログラムをビルドするための手続きを調べ、詳細な記録を作成し、手始めにAlchemyをビルドしてみました。

諸設定は*.vfproj(Visual Fortran Project File)、*.sln(Microsoft Visual Studio Solution Object)、*.suo(Visual Studio Solution User Options)という三つのファイルに保存されます。以後、*.vfprojをダブルクリックするだけで、Visual Studio .NETが立ち上がり、プロジェクトが読み込まれます。

Compaq Visual Fortranでの経験があるので、難なくビルドの方法を習得できましたが、不慣れな人にとっては相当手強い開発環境+コンパイラだと思われます。

■ 2006年4月15日(土) 前途多難

Intel Visual Fortran Compiler for WindowsでRIETAN Pro v1.09bをビルドしてみましたが、SUBROUTINE LAZY中で特定の配列(COMMON領域POSITの最後の配列)にアクセスしたとたんに異常終了してしまいます。最適化レベルを下げてもダメ。整数変数を文字型変数として使う古くさいソースコードのせいなのか、コンパイラのバグのためなのか、はっきりしません。かなりの精神的打撃を受けました。ピンチです。

Mac OS X用Firefox 1.5.0.2日本語版(universal binary)がリリースされました。自宅のiMacでWebメールソフトが俊敏に動くようになりました。

■ 2006年4月16日(日) 自作ソフト配布ファイルを保存するサーバの変更

RIETAN-2000とVENUSの配布ファイルは、アップロード/ダウンロード時の破損を防ぐため、一昨年以来、quasi.nims.go.jpというサーバに居候していました(2003年7月9日参照)。ところが、セキュリティー強化のため当該サーバが近日中に外部からアクセスできなくなると聞いたため、私的ディスクスペース、すなわち私のiDiskに配布ファイルを移しました。ダウンロードや解凍がうまくいかない場合は、早急にお知らせいただければありがたいです。

今後は、カリフォルニアのApple社のサーバから配布ファイルをダウンロードすることになり、ファイル転送がかなり遅くなりますが、ご容赦ください。

■ 2006年4月17日(月) Intel Visual Fortranの騙し方を会得

ついにIntel Visual Fortran Compiler for WindowsによるRIETAN Proのビルドに成功しました!!!

実は、Compaq Visual Fortranでもビルドしてみたのですが、SUBROUTINE LAZYだけでなくSUBROUTINE GENREF中でも特定の配列(IPOINT)にアクセスすると異常終了することがわかりました。どうやら、両Visual Fortranに共通するバグのようなのです。これには、あせりましたよ。大多数の人たちが使いたがるWindows用RIETAN Proがリリースできない恐れが出てきたのですから。いずれ、64ビットWindows用やIntel Mac用のRIETAN ProもIntel Fortran Compilerでビルドしようと目論んでいた私にとって、死活問題といって過言でありません。

せっぱつまった気持ちで休日出勤し、試行錯誤を粘り強く繰り返した末、意表をついた対症療法を見出しました。こんなバグに直面したら、ほとんどすべての人々は途方に暮れ、おろおろするだけでしょう。長年の経験と勘で難局を乗り切った自分を誇りに思います。

上記の対症療法を施した最新版がv1.1です。もちろんMac OS Xにも移植します。

■ 2006年4月18日(火) Harima International Forum

Harima International Forum "Powder X-Ray Diffraction — From Organic to Macromolecules —(6月8・9日)に関する情報を講演と講習のお知らせに掲示しました。私と門馬網一君(今年度、東北大学大学院博士課程に進学)はRIETAN ProとVESTAによる構造精密化と3D可視化について実演入りで1時間にわたり講演します。ふるってご参加ください。

3月14日に開催した中性子によるセラミック材料研究会・第4回研究会と同様に、私と門馬君はHarima International Forumをソフト開発の重要な節目とみなしています。上記の招待講演をできるだけ充実したものとするべく、精一杯努力するつもりです。

なお、中井 泉日本結晶学会・行事委員長の依頼により、その直後に東京で開催される日本結晶学会講演会「粉末X線回折法による構造解析 ー 医薬品、タンパク結晶への応用」についても、同じWebページでお知らせしています。

■ 2006年4月19日(水) 方針変更

Intel Visual Fortran Compiler for Windowsの信頼性が今一なこと(4月15・17日参照)を考慮すると、RIETAN Proの開発は慎重に進めていかねばなりません。今後、プログラムが膨張していくと、原因不明のエラーが新たに発生する可能性があります。また当分、雑用がかなり多い上、来月中旬以降は居室のある並木地区研究本館のアスベスト除去工事が始まり、じっくり腰を据えて仕事できない状況に追い込まれます。

そこで、RIETAN Proに対する最終機能の追加は当面棚上げし、最新バージョンv1.1Xbを可及的速やかに配布希望者(中性子によるセラミック材料研究会・第4回研究会出席者から募集)に送付することにしました。RIETAN Proにおいて新たに実現した機能に関するメモと実行例を二つ(単相・多相試料)添付する予定です。

■ 2006年4月20日(木) 切り捨て御免

Intel Visual Fortran Compiler for Windowsを用いて、DynaBook G6(Mobile Pentium 4-M、2.2 GHz)で動くRIETAN Pro v1.1bの実行形式ファイルのビルドを試みました。コンパイル・オプションを色々変えてビルドしたコードの実行を繰り返した結果、

ということがわかりました。そうか、2004年2月にリリースされたPrescotコアPentium 4より前のCPUでは、SSE3は利用できないんだ。そこで、上記のオプション設定からSSE3だけを抜いたPentium 4(hyper-threading technology対応あるいはdual core)用32ビットコードをベータ版として配布することに決めました。3年半前に購入したノート型PCで完動するくらいですから、それで一向に構わないでしょう。2002年以降に発売されたほとんどのデスクトップ機で実行可能なはずです。マルチスレッド・パラレル化・Pentium 4最適化コード —— 素晴らしい!

もちろん、極端に古いPCや貧弱なPCでは動きません。新しいPCをボスにねだるときの口実にするといいですよ。「こんな時代遅れのPCでは次世代のRIETANが走りません。」とかなんとか言ってね。そうだ、人助けだと思って、断固HT technology or dual core用コードだけを配布しよう。

将来、正式版をリリースするときは、SSE3活用64ビットコードも配布するつもりです。

■ 2006年4月21日(金) あわてて飛びつくと …

Intel Fortran Compiler 9.1 Mac OS 版のキャンペーン価格は89,250円ですか。年末までに購入すれば十分でしょう。PRIMAはこれでビルドすることにしましょう.

■ 2006年4月22日(土) A(I)とID(I)の徹底チェック

RIETAN Proをv1.11bにバージョンアップしました。拡張March—Dollase関数(三つのMarch—Dollase関数の線形結合)における選択配向パラメーターと精密化の指標の入力値を詳しく調べ、不合理な値を検出したら、エラーメッセージを出して終了するするよう改善しました。

■ 2006年4月23日(日) うっかりミス

昨日は休日出勤して、RIETAN Proをデバッグしました。多相解析のときだけ必要となるデータを単相解析でも読み込むようになっていたバグを修正し、v1.12bにバージョンアップしました。

このバグはIntel Visual Fortran Compiler for WindowsでビルドしたRIETAN Pro v1.11bのテストユーザーからの報告で初めて明らかになりました。このように、複数のコンパイラやプラットホームを用いるデバッグやテストは効果的なことが多いです。

このコンパイラを飼い馴らし、RIETAN Proを可動させるには相当手こずりました。しかし、もう大丈夫。今後はすべてのOSがIntelのCPUに対応する以上、Intel製コンパイラへの乗り換えは必須の投資でした。Intel Visual Fortranのマスターは自分を磨いたことにほかならず、誇らしい気持ちで一杯です。

■ 2006年4月24日(月) 埋め草の昔話

眼鏡を新調しました。先代の眼鏡は、8年前にチェルノゴロフカの固体物理研究所を訪問したとき、その宿舎で誤って眼鏡を破損し、帰国後に急遽購入したものでした。思い起こせば、当時は精力的でした。モスクワでの国際会議が終わった後、電車でドゥブナに移動してフランク中性子物理研究所を訪問し、さらに車に何時間も乗ってチェルノゴロフカに向かったのですから。もちろん、両研究所で講演しました。今はもう、そんな元気はありません。

眼鏡が壊れて物がよく見えないはずなのに、慌てず騒がず、平然と帰国したのだから、大したもんです。むしろまいったのは、シェレメティエヴォ空港の電光掲示板が壊れていて、自分の飛行機の出発ゲートがわからなかったことでした。

■ 2006年4月25日(火) RIETAN Proに対する付加価値の説明

RIETAN Proに盛り込んだ新機能に関する日本語説明書New_features.pdf、書き終わりました。計10ページです。全10節のうち,

という2つの節では、第44回セラミックス基礎科学討論会での講演要旨(A4、2ページのAbstr.pdfを配布ファイルに含める予定)を参照せよと述べるに留め、手を抜きました。いずれもRIETAN-2000とVICS-IIに前倒しで投入済みの機能です。

単相と多相のひな形ファイルも作成し終わりました。ベータ版リリースの準備はほぼ整いました。

NextFTP4がv4.60にバージョンアップしました。

■ 2006年4月26日(水) To the happy few

RIETAN Proをv1.13bにバージョンアップしました。格子定数と空間群の記号から導かれる結晶系が互いに異なるときのエラーメッセージが正常に出力されないというバグを退治しました。

本バージョンは十分安定に動いているようなので、セラ協サテライト集会(3月14日)の参加者から募ったベータ版配布希望者と開発協力者にWindows版を送付しました。配布希望者への約束を果たせて、肩の荷が降りました。万一、当方のミスでこのベータ版が届かない方がおられましたら、ご連絡ください。

結局、マルチスレッド・パラレル化のコンパイル・オプションをオフにしてビルドしたPentium 4用最適化コードも配布ファイルに含めました。配布ファイルに含めたNew_features.pdfとAbstr.pdfはいずれも相当詳しく記述されており、引用文献が計30もあり、なによりも自分自身の役に立ちます。

今後しばらくは機能の追加を控え、RIETAN Proの安定性の向上に注力していくつもりです。といっても、すでに某パワーユーザーがルーチンに使っているくらい完成度が高いので、深刻なトラブルはまず生じないでしょう。反射の指数と多重度の発生に問題を抱えていたRIETAN-2000よりまし、といって過言でありません。RIETAN Proをいち早く入手するというadvantageを得た方々はラッキーです。

RIETAN Proというのは、あくまで仮称です。正式名では、"RIETAN "の後ろに大文字のアルファベットを2つ置くつもりです。近日中に決めることにしましょう。

■ 2006年4月27日(木) 英文Webページの改良

Multi-Purpose Pattern-Fitting System RIETAN-20003D Visualization System VENUSのWebページでギリシャ文字と"Å"を見られるようにしました。

RIETAN Pro配布ファイル中の*.insと*.batに誤りが見つかったため、昨日、配布し直しました。

RIETAN Proの実行形式ファイルRIETAN.exeが古谷龍也君のVAIO(VGN-TX91S、CPU: Pentium M 超低電圧版 753)で動いたそうです。

■ 2006年4月28日(金) 着実な前進

RIETAN Proのために、asfdcに記録されている原子量を原子量表(2005)の最新値に更新しました。

汎用IA-32コードを含むPentium 4用最適化コードとしてRIETAN Proをビルドするようコンパイル・オプションを変更しました。Intel Visual Fortran Compiler for Windowsについては、まだまだ学ぶべきこと多し。

門馬綱一君からMac用VESTAのuniversal binary化(つまりPowerPCおよびIntel Core DuoをCPUとするMacで実行可能なコードのビルド)に成功したという朗報が届きました。このように、RIETAN ProとVESTAの開発は順調に進展しています。

それにしても、すごい来客数だなぁ。ひょっとしたら、1日あたりのアクセス数の最高記録樹立かもしれない。最近は、掲示板に堅苦しい記事を書き込んでいるだけなのですが。RIETAN Proのベータ版リリースの反響なんでしょうか?

■ 2006年4月29日(土) 最底辺機?

ThinkPad s30上でRIETAN Proが走ったという報告をいただきました。600 MHzのPentium III搭載のノート型PC(10.4型ディスプレイ)というレガシーPCで実行可能になったのは、RIETAN.exeに汎用IA-32コードも含めたおかげです。

■ 2006年4月30日(日) 休日出勤(得意技?)の成果

昨日は、Mac OS X用開発ツールXcode 2.2.1をインストールし、さらにRIETAN Proをv1.14bにバージョンアップしました。Selectブロック中で、"case 2-4"というように二つの整数をマイナスでつなぐことにより整数変数の範囲を指定できるようにNew Tinkを拡張しました。ちょっとした改善ですが、意外と*.insの読みやすさにつながります。

"case 2,4,6"や"case 1-3,5"という、より複雑な場合分けも可能にしたらどうか、という意見もあるでしょう。実際問題として、そこまで徹底する必要はまったくありません。そんな場合分けをしないで済むように整数変数の値を割り当てていますから。

■ 2006年5月1日(月) Portability of *.pri

門馬綱一君からuniversal binaryのMac用VESTA(もちろんアルファ版)が送られてきました。PowerPC搭載MacでもPRIMAが出力する3D密度バイナリーファイル*.priを読めるようにした、とのこと。半信半疑のままPower Mac G5上で試用してみたところ、確かに等電子密度曲面が正常に表示されました。せっかくPRIMA v3.5.5以降でテキスト形式の3D密度ファイル*.denも出力できるようにしたのに、徒労に終わった?!

■ 2006年5月2日(火) こういう事態って、喜ばしいことなんでしょうか?

Appleから.Macメンバー(つまり私)あてに届いた警告メールの一部: お客様の今期の(半月あたりの) .Macデータ転送容量は、設定上限の75%に達しました。この割合でデータ転送を続けると、割り当てられた容量を超過してしまう可能性があります。(中略) 保存容量を追加購入してデータ転送容量を増加することをご希望の場合は、こちらをクリックしてください。

要するに、配布ファイルをすべてiDiskに移した結果、ファイルのダウンロード容量が急激に増し、制限値に達しそうだということでしょう。それほどトラフィックの多いWebサイトを運営しているなら、もっと利用料金を支払え、ということですか。う〜ん、もう個人負担の限界ですよ。いよいよAdSenseを本Webサイトに導入しようかな。

■ 2006年5月3日(水) やはり64ビットOSをインストールすべきか?

Intel Visual Fortran Compiler for WindowsでRIETAN Proをビルドすると、パラレル化したコードの実行がPrecision Workstation 670(CPU: 2.8 GHz Xeon)上で極端に遅くなります。摩訶不思議な現象。64ビットCPU(デュアルコア)と32ビットコードという不釣り合いな組み合わせがパフォーマンスの低下を招いているとしか思えません。

そういえば、Windows updateもいやに遅いなぁ。

■ 2006年5月4日(木) こいつには苦労させられます

Intel Visual Fortran Compiler for WindowsでビルドしたRIETAN Proを実行すると、SUBROUTINE ASFDC中で読み込んだ各化学種の原子番号が、そこから戻る前にあらぬ値に変わってしまうことに気づきました。明らかに同コンパイラのバグのためです。そこで、局所整数配列に一時的に原子番号を格納することによってこの障害を回避したv1.15bを作成し、多少加筆したNew_features.pdfとともにアップロードしました(ベータ版配布者にはダウンロード用HTMLファイルを送付済み)。

枯れたというに程遠いIntel Visual Fortranで、肥大成長したRIETAN Pro(= RIETAN-2000 + STRUCTURE TIDY + LAZY PULVERIX + 拡張New Tink + …)をビルドするのは、地雷原を横断するようなものです。地雷を避けながら恐る恐る歩む必要があります。もっとも、地雷を踏んでしまっても命を失う訳でありません。時間を失うだけです。私は地雷除去に通暁しているので、相当手早く解決しますが、一般人にとっては至難の業でしょう。多少、余計な実行時間がかかっても、Compaq Visual Fortranを使うことをお薦めします。

■ 2006年5月5日(金) ジュノームの謎

東京では「熱狂の日」音楽祭(ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン)が開かれていて、モーツァルト関係の公演が200も予定されているとのこと。いくらモーツァルト好きの私といえども、全然出かける気がしません。ゴールデンウィーク中はつくばに引きこもるのが常ですし、200公演と聞いただけでげんなりです。数が多ければいいというものではないでしょう。

仮に私がその音楽祭で1曲だけ聴くとしたら、何を選ぶでしょうか。定番は除くとすれば、ピアノ協奏曲第9番 変ホ長調(K.271)ジュノームがいいですね。私見によれば、円熟期に作曲された第20番以降のピアノ協奏曲にも劣らぬ傑作です。

余談ですが、ジュノームという女性が誰かという謎が解けたのは、ほんの2年前です。モーツァルトの友人でフランス人のジャン・ジョルジュ・ノヴェルの娘ヴィクトワール・ジュナミ(Victoire Jenamy)だそうです。

違うジャンルからもう一つ、セレナード第9番 ニ長調(K.320)ポストホルンも大好き。白眉は管楽器が活躍する第3・4楽章です。

RIETAN-2000用GUIプログラムCRietan2000がv1.4にバージョンアップされていました。PRIMAによるMEM解析やVENDによる3D密度の可視化もGUIを通じて実行できるようです。

■ 2006年5月6日(土) 288×11 = 3168個のデータ

休日出勤して長大な論文を査読し、審査意見を送付。帰宅後に、原子散乱因子f(sinθ/λ)を11個の係数で表現するための係数をasfdcに追加しました。計288個の原子・イオンに対する係数が

に記載されています。これらの係数からf(sinθ/λ)を計算すれば、0〜6 Å-1という広いsinθ/λ範囲において、十分な確度で原子散乱因子を近似できます。

例年通り、「連休こそ稼ぎ時」の様相を呈してきました。

■ 2006年5月7日(日) 連休最終日も出動

善は急げ。新しいasfdcから原子散乱因子の係数を読み込むように改善したRIETAN Pro v1.2bをさっそく作成し、その機能についての説明を書き加えたNew_features.pdfとともに秘密Webページ用にアップロードしました。二つの実行例でR因子がわずかながら減少したのは、原子散乱因子を11個の係数から計算することにより、その確度が向上したためでしょう。

もうよれよれです。連休が終わったらぐったり、というのも切ない話だなぁ。

■ 2006年5月8日(月) Bond valence parameterのCIF

「粉末X線解析の実際」サポートページで配布しているbond valence parameterのCIFファイルを2006年バージョンに更新しました。

4年前に上梓した書籍のWebページを未だに改訂しているのだから大したものです。ロングセラーとなっているのもむべなるかな。

■ 2006年5月9日(火) 嵐の前の静けさ?

今のところ、RIETAN Proベータ版の本体に関する不具合の報告は皆無です。信頼性が高いというよりは、本格的に使用している人がまだ少ないためでしょう。

そろそろ重い腰を上げて、RIETAN Proの説明書New_features.pdf中にAbstr.pdfの内容も含めることにしました。その結果、全14ページ、引用文献36にまで膨張しました。

午後は、NIMS(千現)でリートベルト法に関する講義(みたいなもの)。 Applications of Synchrotron Radiation to Materials Analysis、7章の別刷(あるいはそのコピー)をテキストとして配布し、その内容を解説していくという変則スタイルを取りました。30名弱の聴衆が集まったため、急遽、広い部屋に会場を変更しました。回折強度の理論式に関する説明の途中で時間切れとなり、残りは後日ということになりました。次回は日本語の解説(上記の文献とほぼ同じ内容)を配布する予定です。

■ 2006年5月10日(水) なんてこった!!!

5月2日に記した .Macデータ転送容量に関する警告がまた送られてきました。連休の間はアクセス回数が大幅に減少したはずなのに、この始末。以前使っていたサーバがまだ外部からアクセスできるようなので、配布ソフトをそこからダウンロードするようにHTMLファイルを急遽書き換えました。

この応急処置にもかかわらず、最悪の場合、5月15日まで当Webサイトがアクセスできなくなる可能性は十分あります。あらかじめご了承ください。

それにしても、トラフィック過多でアクセス停止措置の対象となったなんて話は聞いたことがありません。自作ソフト関連の配布ファイルが頻繁にダウンロードされているのは事実でしょうが、制限に引っかかるとは夢にも思っていませんでした。ともあれ、抜本的な対策が必要です。

某新聞社の記者が今晩、わざわざ東京から取材に来られます。ご苦労様です。インタビューの内容はもちろんマル秘。

■ 2006年5月11日(木) 枡野浩一の本

あるきかたがただしくない」(朝日新聞社)、変なタイトルだなぁ、と訝りましたが、長訓読み選手権で出題されるような、れっきとした漢字の一つなんですね。ほかにも「かみがすくないさま」、「にくにくしげにみる」、「ほねとかわとがはなれるおと」なんて漢字があるのだから、驚きです。

どうせ、元妻(漫画家、南Q太)が失踪してしまい、月に一回息子に面会させるという約束を守ってくれない、という愚痴をこぼしまくっているのだろうと予想して読んだところ、やはり元妻がその約束を守らないことに対する嘆き節で終始一貫していました。それらの部分を削除すると、本書はおよそ2割は薄くなりそうな勢いです。

今や3分に1組が離婚、5組に1組は結婚2度目だそうで、珍しい話でもなんでもありませんが、かくのごとき執着心はどこから湧き出てくるのでしょうか。横着かつ飽きっぽい私には、想像もつきません。

2005年11月1日の掲示板に記した通り、私は枡野浩一が毎日新聞に連載していたコラム「日曜日の名言」を愛読していました。本書は、対談相手がむらやまじゅんのコラム、3ヶ月分だけを収録しています。そこで紹介された映画9本のうち4本も観たのですから、映画ガイドとして非常に有用だったことだけは確かです。

そういえば、最近、吾妻ひでおの「失踪日記」(2005年3月29日、5月19日、12月30日、2006年3月13日参照)がまたしても手塚治虫文化賞(マンガ大賞)を受賞しましたが、この奇書についても「日曜日の名言」で知ったのでした。

今晩、「お客様の今期の .Macデータ転送容量は、設定上限の90%に達しました。」というメールがApple社から届きました。前代未聞のアクセス禁止措置がとられる可能性が高まっています。その場合、本Webサイトは5月15日まで閉鎖されます。

■ 2006年5月12日(金) RIETAN-FPと命名

いつまでもRIETAN Proという仮称のまま放っておく訳にいきません。知恵を絞った末、"RIETAN-FP"と名付けました。"FP"が何の略かを述べるのは避けておきます。

Intel Visual Fortran Compiler for Windowsがv9.1.024にアップグレードされました。Visual Studio 2005との統合を果たすとともに、Fortran 2003規格の大半が追加されたとのこと。長時間かけて自宅でインストーラをダウンロードし、インストールしました。とりあえずv9.1.024でRIETAN Pro(= RIETAN-FP) v1.2bを再ビルドし、配布ファイルを更新しておきました。

■ 2006年5月13日(土) 実験化学講座, 11巻、ついに刊行!

Multi-Purpose Pattern-Fitting System RIETAN-2000: PDF documents, articles, and books中の項目(y)として、次の文献を追加しました:

9,135円という価格ですから、個人で購入するには高価ですね。図書館あるいは研究室に常備しておく類の書籍だと思います。

4章は刷り上がり55ページでした。実際には勢い余って約75ページ相当分(!)の原稿を書き上げたので、約20ページ分をえいやっと削除したことになります。たとえば、TOF粉末中性子回折に関する部分は泣く泣く取り去らざるを得ませんでした。それらの箇所は、いずれどこかで再利用を計ることにいたしましょう。

これで印刷中の書籍は一つ(同じく丸善発行)に減りましたが、近い将来、執筆・編集にかなりの日時を費やさざるを得ない大仕事が待ちかまえています。さらに、現時点で依頼講演・講義が6つもたまっているという事実が精神的余裕を失わせています。正直なところ、浮き足立ってますよ。なにしろ人前に立つのが大の苦手ときていますから。馬齢を重ねるにつれ、そういう情けない性向にますます磨きがかかってきました。

プログラミング、執筆、講演、講義 —— まるで、チューブの底にこびりついた歯磨きを強引に絞り出しているような気がしてなりません。あまり無理矢理アウトプットを出そうとすると、チューブが破れてしまいます。そういう羽目に陥らないようにするにはどうしたらいいのか、ひそかに自問自答しています。

■ 2006年5月14日(日) 本Webサイトの一時的閉鎖を当面、回避

この週末あるいは月曜日に、.Macのデータ転送容量の上限に達するのが確実になったため、結局、iDiskの最大容量を1024 MBに倍増しました。これで、1ヶ月あたりの最大転送容量は10 GBに増えます。一年につき、6,000円の負担増です。

いつアクセス不能になるかわからぬサーバに緊急避難させていた配布ファイルは、私のWebサイトからダウンロードするよう変更しました。

経済的負担を伴う私的Webサイトで、自作ソフトや粉末回折などに関する科学情報を提供することにこだわる理由は単純です。私にとって科学技術ソフトの製作が正真正銘の「仕事」であるのに対し、自作ソフトの配布や科学情報の発信は自己満足のための「個人的趣味」にすぎないからです。その証拠に、RIETAN-2000やVENUSがいくら広く使われようが、それらの改良に日夜努めようが、本Webサイトがどれほど多くの専門知識を与えようが、NIMSにおける業績評価ポイントは一向に増えません。NIMS外部でいくら公共的研究・知識基盤としての知名度や評価が高まっても、内部では(公式には)評価してくれない —— こういう不条理な現実があります。

といっても、私はそれで一向に構わない、と達観しているんですよ。外で通用しない、内輪の評価なんて眼中にありませんから。

■ 2006年5月15日(月) なにっ! iPodケータイだって!

しかし、ケータイはいらないな。iPodはそろそろ買い時かもしれない。

■ 2006年5月16日(火) 「おみやげ」を進呈

RIETAN-FP(仮称:RIETAN Pro)のベータ版を配布し始めてから、プログラム自体の不具合に関する報告は皆無なので、配布範囲をさらに広げることにしました。

6月8・9日に開催されるHarima International Forum "Powder X-Ray Diffraction — From Organic to Macromolecules —の参加者で、なおかつRIETAN-FPのベータ版の試用を希望される方は、バンケットの折りにでも私に名刺(メールアドレス入り)をお渡しください。後日、ダウンロードの方法を通知いたしします。

■ 2006年5月17日(水) ざっとこんな感じ

Harima International Forumにおいて私と門馬綱一君はおよそ3:2の時間配分で講演しますが、私はRIETAN-2000の目玉機能(とくにMPF)とRIETAN-FPに組み込んだ新機能について話す予定です。5月10日に記した新聞記者来訪の目的も、そのとき述べましょう。RIETAN-PFや関連ソフトの実演も含めたいですね。

今週から、ようやく重い腰を上げ、準備を始めました。別件を片付けながらの作業なので、遅々として進みません。

■ 2006年5月18日(木) RIETAN-FPベータ版の配布開始

RIETAN-FP v1.21bをこれまでとは別なサイトにアップロードしました。といっても、単に*.lst末尾に出力されるプログラム名とバージョン番号を変更しただけです。説明書(New_features.pdf)も少しだけ修正しました。依然としてバグは報告されていません。

■ 2006年5月19日(金) 第2回リートベルト法入門講座のお知らせ

5月25日(木)の15:30にNIMSの共同研究棟(並木地区)4階ゼミナール室で開催します。千現地区でないことにご注意ください。

前回(5月9日参照)、配布した英文テキストをご持参ください。前回講座の欠席者は私に申し出ていただけば、コピーを用意します。次回は日本語のテキストを追加配布します。講義はともかく、両テキストはそれなりの値打ちがあります。

■ 2006年5月20日(土) おめでとうございます

赤坂研究室ニュースによれば、RIETAN-2000のパワーユーザーである永嶌真理子さん(現在、キール大学に留学中)が2006年の日本鉱物学会奨励賞を受賞されることに決まったそうです。赤坂先生と永嶌さんには、4年前に「粉末X線解析の実際」の書評を書いていただきました。受賞対象となった論文の別刷も以前、拝受しております。RIETAN-2000が永嶌さんのご研究に貢献したのは光栄の至りです。

いや〜、RIETAN-2000のユーザーは優秀な研究者が実に多いですね(2005年7月12日参照)。作者自身は???ですが…

運動不足解消を兼ね、チャリンコで石丸電機に行き、「メゾン・ド・ヒミコ」(4月10日参照)のDVDを買ってきました。どうせろくに観ようとしないに決まっていますが、持っていないと気が済まぬということで… ← 愚か

■ 2006年5月21日(日) 時期尚早

最近、Default Folder Xがv3.0でuniversal binary化を果たしました。FetchFruitMenuのuniversal binary版もベータテスト中です。

一方、Adobeの諸製品やMicrosoft Officeのような巨大アプリケーションのuniversal binary化はかなり先のようです。ATOKとStuffIt ExpanderがIntelプロセッサ搭載Macで使えないのにも困っています。また、個人が細々とつくっているシェアウェアのuniversal binary化は遅々として進んでいません。現時点では"Intel Mac"が業務用に適していないのは明らかです。

■ 2006年5月22日(月) 認知症サーバ

NIMSのメールサーバが、れっきとした独立行政法人の某研究者から届いたメールをスパムとみなすのはなぜでしょうか。もちろん研究のことしか書いてないんですが…

■ 2006年5月23日(火) 魔法の呪文

短いアニメを挿入することにより、独特の趣を添える ーー こういう巧妙な手法を取り入れた映画が増えているような気がします。本掲示板で過去に言及した映画だけとっても、「キル・ビル」然り、「下妻物語」然り、「茶の味」然り、「メゾン・ド・ヒミコ」然り。

本当は私たち、戦いたくないの

(シュルシュル、ズドゥーン、炎) ← 敵の攻撃

よーし、こうなったらピキピキピッキー☆

と呪文をとなえながら、両手を上げ腰をくねらせた独特のポーズをとったレインボー戦士。「メゾン・ド・ヒミコ」中のアニメはここで終わっていました。

このパターン、いくらでも再利用可能ですね。「本当は私、講演したくないの」とか、「本当は私、●●●なんかに関わり合いたくないの」とか、「本当は私、こんな汚れ仕事やりたくないの」とか。

といっても、いくら「ピキピキピッキー☆」と叫んだところで、普段通りのトホホな自分がいるだけで、魔法のパワーが炸裂する訳でありません。「本当は私、… ないの」という愚痴どまり。なんとも味気ない現実ではありませんか。

■ 2006年5月24日(水) 目的意識の欠如

先日、某TV番組を見ていたところ、「自分が世の中に受け入れられなくなったら、リタイアするしかないなぁ」と言い切っていた人がいました。格好良すぎ。そこまで厳しい心構えでいたら、それこそ大半の人がリタイアしなければならないはずですが…

自分は皆の期待に応えているのか、と自問してみました。私の場合、明らかに方向性が違います。人の評価など、あまり眼中にありません。自分にとって楽しいこと、興味深いこと、頑張れば自分にもできそうなことだけやっていたら、結果として世のため、人のためになっていた ーー という感じ。ですから、たとえ自分の挙げた成果が世に通用しなくなったとしても、平気の平左でしょう。何かに一心不乱に打ち込んでいるのだったら、事の成否にこだわらなくてもいいのではないでしょうか。

それをけしからんと批判されたら、「では、あなたはどれだけ世の役にたつことを実践したのですか」と問うまでのことです。

■ 2006年5月25日(木) 訂正

"物質の構造 III 回折"、 第5版 実験化学講座、 11巻中の図4.18に誤植がありました。式(4.55)中の"ξi"を"ζi"で置き換えた形の式が含まれていますが、ここには式(4.55)と同一の式を置かねばなりません。再校で訂正したのですが、修正されずに印刷されてしまいました。

Mac OS X用FTPクライアントソフトFetch 5.1b3がリリースされました。秀丸エディタがv5.16にアップグレードされました。

■ 2006年5月26日(金)  第2回リートベルト法入門講座

なんと、共同研究棟4階のゼミナール室が聴衆で満杯になりました。想定外。座席の余地がないので、配布テキストだけもっていった方もおられたそうです。

しかし肝心の講義は散漫散乱みたいな感じで、今一ピリっと来ませんでした(涙)。みんな、貴重な時間が無駄になったと怒っているんじゃないかな。申し訳ありませんでした。今後はこういうことのないよう気をつけます。

■ 2006年5月27日(土) 非局在化人間

結局、自分にとって特性X線、放射光、中性子(原子炉)、パルス中性子、粉末回折、リートベルト法、MEM、3D可視化はいずれもone of themにすぎませんでした。パルス中性子に至っては情け容赦なくリストラし、現時点において数の内に入っていません。

それぞれ利点・欠点があって目移りしますし、飽きっぽく気が散りやすい性格ですし、腐れ縁を断ち切れなくなるのはご免ですから、一極集中しなかったのは賢明でした。結果として、リスクヘッジにもなっていました。この期に及んでは、どれを切り捨てたところで実害なし。

できることなら、心機一転、上のどれとも無関係なことにチャレンジしたい。しかし、そんな余裕など到底ありません。先が短い上、処理すべき事柄が次々に舞い込んできます。やんぬるかな。

"物質の構造 III 回折"、 第5版 実験化学講座、 11巻(5月13・25日参照)を拾い読みしているうちに、収束電子回折(CBED)によって決定したLaCrO3の結晶構造と変形電子密度分布をVICSとVENDで視覚化した図があることに気づきました(p. 451、図9.17)。結晶構造図はCrとOの熱振動楕円体も含んでいます。東北大学多元物質科学研究所の津田健治氏の研究成果です。

RIETANやVENUSのようなソフトは私の分身にほかなりません。分身はなんと電子回折の世界にまで足を踏み入れていたんですね。ここまで非局在化すれば、言うことなしです。

CBED図形の回折強度データの解析は、リートベルト法における粉末回折パターンをCBEDの二次元ロッキングカーブに、運動学的回折強度計算を動力学的回折強度計算に置き換えたものに相当します。リートベルト解析と同様に、結晶構造パラメーター(x, y, z, g, U, Uij)を精密化できます。またCBED図形の定量解析で得られる静電ポテンシャル分布をポアソン方程式で変換すれば、電子密度分布も求まります。CBED図形の解析結果の3D可視化にVICSとVENDが役立つのは当然のことなのです。

津田氏がCBED図形の解析ソフトをゼロから書き上げたのは、素晴らしいと同時に驚くべきことです。大規模なアプリケーションを自ら製作する結晶学者は、日本ではきわめて稀ですから。大分前になりますが、非線形最小二乗の技法について、津田氏にアドバイスしたこともありました。それが多少は役立ったのなら、身に余る光栄なのですが…

■ 2006年5月28日(日) そろそろIntel Macに目を向けるべきか

Mac OS X用開発環境Xcodeがv2.3にバージョンアップされました。長時間かけて915 MBにも達するインストーラをダウンロードし、Xcodeをインストールした後、RIETAN-FP v1.21bをビルドしたところ、G5用64ビット版が共役方向法による収束のチェックの最中に異常終了するようになってしまいました。32ビット版はG4・G5を問わず大丈夫ですが、G5用コードの方がG4用コードより遅いという奇妙なベンチマークテスト結果が得られました。要するに、実用になるのはG4用32ビットコードだけ、ということです。

ちなみに、RIETAN-FPベータ版本体へのクレームは依然として皆無です。

■ 2006年5月29日(月) Tiny changes

Intel Visual Fortran Compiler for Windowsのコンパイル・オプションのうちParallelizationをNoにして、RIETAN-FP v1.21bをビルドしました。少なくともRIETAN-FPにおいてはParallelizationが高速化に結びつかないことが判明したためです。さらにNew_features.pdfも修正し、ベータ版の配布ファイルRIETAN-FP.tbzを更新しました。

■ 2006年5月30日(火) 早くもマイナーチェンジしたIntel Visual Fortran

最新版v9.1.025をインストールし、RIETAN-FP v1.21bを再ビルドしてみましたが、昨日V9.1.024でビルドした実行形式ファイルとサイズがまったく変わりませんでした。このため、RIETAN-FPの配布ファイルの更新は見送りました。

■ 2006年5月31日(水) 依頼講演のお知らせ

茨城県中性子利用促進研究会の活動の一環として、今年度からNIMSがデータ解析技術研究会を運営していくことになりました(私はメンバーでありません)。6月22日に第1回データ解析技術研究会が三菱総研本社ビルで開催されます。できるだけ多くの方々に参加していただくよう、都心での開催が選択されました。

私は「粉末回折による構造解析への古典的・現代的アプローチ」というタイトルで講演します。古典的アプローチとはリートベルト法、Pawley法、Le Bail法、現代的アプローチとは最大エントロピー法、MPF法、最大エントロピー・パターソン法を指します。最新のトピックスとして、マルチバンクで測定したTOF粉末中性子回折データのMEM解析を取り上げます。中性子回折だけでなく、(放射光)X線回折に関する話題も織り込むほか、話をただ聞いただけに終わらないよう、テキストも配布する予定です。近頃は、手元に残り、後日役に立つ資料を聴講者に渡すよう心がけています。X線・中性子回折データのリートベルト解析やMEM解析に関する質問や相談も、時間が許す限り受け付けましょう。

他にも二つの講演が予定されています。当日の御来聴をお待ちしております。

民間企業、大学、独立行政法人など、どのような組織に所属されておられる方でも、事前に中性子利用促進研究会コーディネーターの神田氏まで連絡さえしておけば聴講できます。学生の参加も歓迎します。例によって、参加者にはRIETAN-FPベータ版(Windows用およびMac OS X用)をダウンロードする資格を与えることにします。ご希望の方は親睦会のときに名刺をお渡しください。

なお、データ解析技術研究会の委員として登録すれば、今後、年に3回程度開催していく研究会に出席するための旅費を支給できます。希望者はNIMSの北澤英明氏まで申し出てください。

■ 2006年6月1日(木) RIETAN-FP用asfdcを改訂

RIETAN-FPベータ版の配布ファイルを更新しました。asfdc中に追加した全化学種の原子散乱因子を近似するための係数3168個(5月6日参照)をすべてチェックし、誤りを正しました。また、RIETAN-FPの実行形式ファイルをIntel Visual Fortran v9.1.025でビルドしたものに置き換えました。

■ 2006年6月2日(金) 木村カエラや土屋アンナはどうでもいいですが、

私は川尻松子と同い年だし、あの中島哲也監督の最新作なので、「嫌われ松子の一生」、もう観るしかありません。

松子は53才で撲殺されるとのこと。早死にする人はうらやましい。某氏のご託宣によれば、私はすでに運という運をすべて使い果たしており、その反動で、今後ありとあらゆる災厄が次々に襲いかかってくるのだそうです。そうだとしたら、サッサとあの世に逝く方がいいじゃありませんか。

しかし、真の幸運に恵まれたことなど、これまであったかな。首を傾げてしまいます。むしろ、幸運から見放され続けた人生だったように思えてなりませんが …

松子は男運が滅法悪く、しかも男が変わるたびに生活も趣味も人格も一変するのだそうですが、それってチェーホフの「可愛い女」と同じじゃないですか。そういうタイプの女って結構多いんですかね。あっ、オイラはこういう話題は苦手なんだった。やめとこ。

■ 2006年6月3日(土) 購入手続きが面倒なだけですが

Default Folder X 3.0へのアップグレードは有償だったんですね。そろそろお金を払ってよ、というメッセージが出るようになったので、v2.0.4にバージョンダウンしました。当面は、これで十分。

それにしても不思議で仕方ないのは、大昔に1度シェアウェア料金を払っただけの秀丸エディタの最新版が追加料金なしに使えることです。気前よすぎ。これで、食っていけるんでしょうか。

■ 2006年6月4日(日) 噛み合わぬ会話

おぼろげな記憶をたどりながら、昨年、或るうら若き女性(A)と私(B)が実際に交わした会話を再現してみました:

A: 私、当面は学生として、いずれは社会人として、きちんとやっていけるかどうか自信がありません。
B: 誰だって、あれこれ心配しながら生きているんじゃないですか。いずれ社会人になって、結婚した後、過去を振り返れば、なんとか乗り越えてきたな、と思えるはずですよ。
A: 結婚するつもりはありません。子供は嫌いですから。
B: ・・・・・・

結婚はもとより、子供まで敬遠?! まあ、個人の自由ですが。かくして、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供数の推定値)は1.25にまで落ち込んだそうな。

■ 2006年6月5日(月) 「嫌われ松子の一生」 ★★★★★

笑えて、泣けて、毒気があって、あまりにも悲惨なのにどことなく暖かみがあって、しかもパワフルという不思議な傑作映画でした。語るべきことが多いので、今後、何回かに分け、少しずつ小出しにしていきましょう。

■ 2006年6月6日(火) コピー & パクリ

川尻松子が転落の第2段階でトラップされた作家志望の青年、八乙女徹也の部屋の壁には、彼があこがれる太宰 治の写真が張ってありましたが、畳の上に散乱している原稿用紙は太宰治の遺族の許可を得て、本物の原稿をコピーしたものだそうです。そこまでやらなくてもいいと思いますが。

八乙女が鉄道自殺した際の遺書には、ただ一言、

生れて、すみません。

と書かれていましたが、これはもちろん太宰 治作「二十世紀旗手」のエピグラフのパクリです。遺書が盗作とは、よほど独創性のない男だったと見えます。ご存じない方が多いでしょうが、このあまりにも有名なエピグラフは、寺内寿太郎の「遺書」("かきおき"と読む)という一行詩を、太宰が無断でパクったものです。パクリの連鎖ですね。

■ 2006年6月7日(水) 柴咲コウには似合わぬ名言

人の価値というのは人に何をしてもらったかじゃなくて、人に何をしてあげたかだよね。

という別れのメッセージを残して、笙(松子の甥)の恋人、明日香はウズベキスタンへと飛び立ちました。

頭を下げるしかない言葉ですが、マザー・テレサのようなご立派な方でない限り、そういう殊勝な心がけは絶対、長続きしませんよ。所詮は匹夫の勇。自分が好きで好きで仕方ないことを人にしてあげるのなら、話は別ですが。

だから、私は教育者になろうと思ったことは一度もありません。自分にとって、教育は賽の河原の石積みの如きものですから。自作ソフトは積極的に配布しました。プログラミングは趣味にかなっていましたから。実に賢明な身の処し方だったと自負しています。

■ 2006年6月8日(木) 奈落の底に墜落する寸前、つかの間の幸福

えーと、この日はHarima International Forumで講演しているはずなんですが、そんなことより、この際、「嫌われ松子の一生」にスペースを割当てることにしましょう。

松子がルンルン気分で「水色の恋」を歌うシーンは感動的でしたが、これって天地真理同様、いずれ二目と見られぬ肥満体に成り果てることを暗示していたのでしょうか? ともあれ、中谷美紀の方が天地真理より歌唱力があることは確かです。

■ 2006年6月9日(金) 黄金杯

川尻 笙と龍 洋一は、どん底まで落ち切った上、荒川の河川敷であえない最後を遂げた松子を神格化します。松子が天国への階段を上っていくシーンすらありました。

救いがたいほど愚かな女が次々と悲惨な目にあった挙げ句、最後は殺されるが、神に祝福されつつ聖女として昇天する —— こういうストーリーはJ. Wassermannの短編「黄金杯」とよく似ています。森 鷗外の名訳があるので、興味のある方はぜひお読みください。口語訳ですが、ヒロインが死刑台で処刑される結末部分は、思わず感嘆の声を上げたくなるような漢語調の美文です。

■ 2006年6月10日(土) ご機嫌斜め

Harima International Forum、無事終了し、先ほど帰宅しました。

ところで、5月10日に1時間余りにわたって日本経済新聞の記者のインタビューを受けましたが、6月5日(月)の日経産業新聞(10面)にそれに関連する記事が掲載されました。顔写真入り(汗)。他の新聞のための記事作成を提案する電話で知りました。旧聞になる前にお知らせしておきます。

自然科学系の主要学術誌に2000年から2005年8月までに掲載された論文が他の論文にどれだけ引用されたかを日経が調査したところ、私は材料科学分野で日本人として3位にランクされたのだそうです。1位は井上明久東北大学金属材料研究所長、2位は堀田善治九州大学教授でした。

ベストスリー入りは身に余る光栄ですが、それはそれとして、「嫌われ松子の一生」に関する書き込みが本日で途切れたのが残念でなりません。10日間くらいぶっ通しで書きまくろうと張り切っていたのに… もういい加減にせい、という神の思し召しなのでしょうか。

といっても、実のところ、本掲示板の日付は単なる区切りでしかなく、実際の日付と異なることの方が多いですから、ご注意ください。たとえば6月5〜9日の分は先週末に、本日の分は6月5日夜に書き殴ったものです。

■ 2006年6月11日(日) また顔写真載るの嫌だしな

昨日ちょっと触れた「他の新聞」用記事の作成、 きっぱりお断りしました。自分の仕事をさも偉そうに得々と語るなんて、オイラには似合わねー、ってことで。

■ 2006年6月12日(月) 新作ソフトで存在感をアピール

Harima International Forumの主題である有機化合物の未知構造解析は自分には縁遠いのではないか、と危惧していたのですが、実際に参加してみると杞憂でした。

確かに逆空間法や直接空間法で構造モデルを構築する技術は持ち合わせていませんが、構造精密化以降の諸プロセスについては独壇場でした。抑制条件付きリートベルト解析の安定性と収束性の高さ、MEM/リートベルト法による構造モデルの修正(= MPFの前座)、MPF法による電子・原子核密度分布の決定、3D可視化技術では、欧米の研究者を圧倒しています。一般に、共有結合性の高い結合からなる有機化合物では、MPFによりR因子が顕著に減少します。非局在化した電子を含むπ電子系化合物では、MPFがとくに有効です。

私たちは、主としてMPF法、RIETAN-FP、VESTAについて講演しました。RIETAN-FPでは有機化合物のリートベルト解析において結合距離・結合角に対する抑制条件を手軽に付加できるようになりましたし、VESTAはVICS+VENDよりはるかに軽い上、使い勝手とパフォーマンスが向上しています。ORFFEとVESTAとの連携は、抑制条件つきリートベルト解析にうってつけです。自信を深めて、つくばに帰ってきました。

とはいえ、逆空間法や直接空間法による構造モデル構築のための国産ソフトを自主開発する必要性は痛切に感じます。このまま座視していると、単結晶やタンパク質のX線構造解析と同様、国産ソフトウェア開発の息の根が止められる事態になりかねません。なんらかの方策を講じるべきではないでしょうか。

■ 2006年6月13日(火) 貴重なノウハウ

Harima International Forumにおける招待講演者だったMargiolaki博士(ESRF)と歓迎パーティーの席で、立ち話をしました。彼女がイギリスの大学の学生だったとき、Rietveld Mailing ListにRIETANに関する質問を投稿したことがあると伺ったときは、一瞬ひやっとしました。私のことだから、面倒くさがって何も回答しなかったのではないか、と思ったからです。ところが、実際には私からすぐに丁寧なレスポンスが届いたのだそうで、彼女は私に大変感謝していました。嗚呼、過去の自分は結構まめだった!

その後、ESRF・ILL利用者用宿舎のドアが開けにくい、という話題で盛り上がりました。彼女も、初めてそこに泊まったときは、相当苦労したのだそうです。

今後、同宿舎を利用する方々のために、ドアの開け方(閉め方)を伝授しておきましょう。まずドアのノブを垂直に立ててから、鍵を回します。次にノブを右回しにいっぱいに回すと開き(閉まり)ます。鍵を回す方向は、開けるときと閉めるとき、互いに逆だったはずです。

■ 2006年6月14日(水) 人生は一瞬の夢

嫌われ松子の一生」が「可愛い女」と「黄金杯」をミックスしたような映画だということを6月2・9日に指摘しました。参考までに、森 鷗外訳「黄金杯」の最後、主人公のサラアが無実の罪で絞首刑に処せられるところ(6月9日参照)を書き写しておきましょう。

サラアが最初に台に昇る順序であつた。見物に来た心なき下等社会の人も皆息を詰めて、サラアが台の上に立つたのを見て居たが、此人達は此女(をなご)の安んじて死に就く麗はしい容貌を長く忘れる事が出来なかつた。サラアの痩せた項(うなじ)に縄が掛けられたとき群衆の中にはサラアが虚空に向つて接吻の真似をするのを見たと云ふ者もある。此一瞬間には太陽も雲間から顔を出して覗いて居つた。人間の誠の性命は、把捉すべき実在の上に見えるものではない。死すべき運命を以て生れて来る人間の霊魂をば何に繋(つな)ぐ歟(か)。其的(まと)は唯煙である。夢である。そこで、禍福、幸不幸と云ふことは空しき名のみになつてしまふのである。

上映時間2時間10分に及ぶ「嫌われ松子の一生」のエッセンスは、「人間の誠の性命は、・・・」以降の文で語り尽くされています。

■ 2006年6月15日(木) 恐るべき記憶力

Harima International Forumの参加者であり、なおかつRIETAN-FP(ベータ版)の試用を希望されている方々に、ダウンロード用HTMLファイルをお送りしました。

RIETAN-FPは第1回データ解析技術研究会の出席者にも提供します。同研究会では,MEMおよびMPF法に関する詳細なテキストとマルチバンクで測定したTOF粉末中性子回折データのMEM解析(!)に関する最新資料も配布します。誰でも聴講できますので、奮ってご参加ください。

今後、異方的なプロファイルの広がりの補正式(Stephens, 1999)をRIETAN-FPに組み込む予定です。この式については、一つだけ疑問点が残っていたのですが、たまたまHarima International ForumにStephens教授も招待されていたため、それについて質問しました。その結果、疑問が払拭されたので、いずれまとまった時間を得たら、当該機能をRIETAN-FPに追加するつもりです。

Stephens教授に「以前、ブルックへブン国立研で一度お目にかかったことがありますが、覚えていますか。」と尋ねたところ、ちゃんと覚えていてくれました。これは意外でした。NSLSの粉末回折装置を見学させていただいたのは10年以上前でしたから。

なお、RIETAN-FPの不具合は依然として報告されていません。

Fetch 5.1とFruitMenu 3.6がリリースされました。結局、Default Folder Xはv3.0にアップグレードしました。いずれもuniversal binaryです。

■ 2006年6月16日(金) 第5版 実験化学講座、Vol. 11

「物質の構造 III 回折」の冒頭から14ページまでがここで閲覧できます。

■ 2006年6月17日(土) 過剰サービス?

第1回データ解析技術研究会のテキスト(14ページ)、完成しました。昨年7月に開かれた日本結晶学会主催「粉末X線解析の実際」講習会で配布した補助テキストに比べ、MEM解析のノウハウが多少増えています。(a) RIETAN-FPとVESTAに関する資料(2ページ)、(b) TOF粉末中性子回折データのMEM解析に関する資料(4ページ)と合わせて計20ページ。講演時間不足と弁舌の才の欠如を補って余りある貴重なお土産となるにちがいありません。

講演だろうが授業だろうが、PowerPointと液晶ディスプレイを使ってしゃべるだけでは絶対ダメ(翌日には忘れ去られる)、後に残るものを必ず渡す、というのが私の信念です。現時点で数名の学生から聴講の申込みがあったそうなので、先端構造解析の教育にも貢献するでしょう.

来聴者の関心を考慮し、古典的アプローチはリートベルト法、現代的アプローチはMPF法だけ取り上げることにしました。すでに広く普及しており、豊富な日本語情報も入手可能な前者については、ごく簡単に触れるだけです。放射線の種類については、パルス中性子にはこだわりません。むしろ特性X線や放射光の話の方が圧倒的に多いです。

パルス中性子回折関係の講演だけじゃ、閑古鳥が鳴くだけですよ。話題がマイナーすぎます。使用経験者が非常に少ない上、敷居が二重(中性子 and エネルギー分散型回折法)に高いですから。第一、強力パルス中性子源の共同利用が実質的に始まるのは、ずっと先じゃないですか。これまで数回開催した「粉末X線解析の実際」講習会が100名を大きく上回る参加者を集め続けてきたのは、明らかにポピュラーな実験室系粉末X線回折に焦点を絞っていたためです。

上記のテキスト・資料を配布し、RIETAN-2000より高機能かつ安定なRIETAN-FPベータ版を進呈し、交通至便な都心で開催し、研究会のメンバー(デューティなし)には旅費を支給し、しかも無料で聴講できるとは、アンビリーバボー。スポンサー様(茨城県)も依頼者様(データ解析技術研究会)も来聴者様もRIETANのエンスー様も満足していただけると確信しています。

■ 2006年6月18日(日) 極め付けの名セリフ

嫌われ松子の一生」中の白眉は、なんといっても、同棲中のヤクザ(龍 洋一)から松子を引き離し、立ち直らせようと必死に説得する沢村めぐみに向かって、松子が

わたしは、洋くんといっしょなら、地獄でも、どこへでも、ついて行く。

と叫ぶシーンです。そう言い切った後の中谷美紀の笑顔は最高にカッコよかった。

あっさりホリエモンを見限った手下や、ヤバくなってきた村上ファンドからスタコラサッサと逃げ出した福井日銀総裁にも同じタンカを切ってほしかった。松子の方が人間としてよほど立派ですよ、この連中よりは。

■ 2006年6月19日(月) ALWAYS 三丁目の夕日 ★★★

ベタな下町人情映画にすぎませんでした。アナクロの極致。古くせー、趣味に合わねー、って感じ。世の中の裏の裏まで知ってしまったオジさんには、たわいなさすぎる脱力系ストーリーです。

私は原作者の西岸良平と同い年、一平や淳之介より1学年上くらいです。いわば完全な同時代人。そういう私にとって少々違和感があったのは、小雪扮するヒロミです。この時代に、ああいうバタくさい顔で、スタイル抜群の(大人の)女性はほとんど皆無でした。浮いてましたよ、完全に。

あの容姿だったら、身売りして●●●●●●にならずに済んだんじゃないかな。米倉涼子がダンボールハウス(2005年1月14日参照)に住まなくてもよかったようにね。

■ 2006年6月20日(火) Merom搭載機が欲しい!

一澤帆布製リュックに重量級ノートパソコンを詰め込み、エッチラオッチラかついで行くのも、第1回データ解析技術研究会(6月22日)で7回目になりました。今回はDynaBookを使用。重いんだよな、これが。肩に食い込みます.会場に到着したときはヘロヘロかもしれません。6月17日に記したテキスト数10部の運搬は、人にお願いせざるを得ませんでした。来月5日には、東工大での集中講義のため、すずかけ台まで遠征。そろそろ、もっと軽いマシンに更新すべきですね。

現在の基本方針として、依頼された講演・講義・執筆は、スケジュールが許す限り引き受けることにしています。愚痴をこぼしながらね。この年で、未だに色々なところからお声がかかるのは希有かつ名誉なことと心得なければなりません。それらを敬遠するようになったら、自分の存在意義が薄れるのだと達観しています。

とはいえ、準備に相当な時間を費やし、消耗するんだよなぁ。当日が近づくにつれ浮き足立ち、一つ片付くたびにぐったり。RIETAN-FPのリリースは後ろにずれ込んでいくばかりです。

■ 2006年6月21日(水) 閑古鳥は鳴かず

言い忘れておりましたが、第1回データ解析技術研究会の来聴者には、スライドショー用PDFファイルを一定期間(6月23日夜から1週間程度)、公開することにしました。講演の冒頭でそのURLをお教えいたします。ここまで徹底的に情報提供サービスに努める人は、中性子利用促進研究会の中に絶対いないはずです。過剰サービスといって過言でありません。

なお、同研究会には事前の予想をはるかに超える参加申込みがあったそうです。

念のためにお断りしておきますが、私はJ-PARCの旗振り役を担うつもりは、これっぽっちもありません。第一、データ解析技術研究会のメンバーですらないのです。JRR-3MもPFもSPring-8も同じこと。昨日記したように、内外からの依頼に関する方針に則って講演を引き受けただけのことです。今回も今後も、自分の仕事のことしか話さないという姿勢を貫きます。

■ 2006年6月22日(木) 一意専心

ワールドカップに熱狂する人々を尻目に、己が全力を傾けるべき課題に熱中したい。現下の最重要事になかなか取り組めない状況下で、どう振る舞ったらいいのか。いっそ、会議も書類も雑用もことごとく放置する一極集中モード入りしようか、と思案しています。

■ 2006年6月23日(金) 業務完遂

第1回データ解析技術研究会は成功裡に終了しました。中性子利用促進研究会の個別研究会(単独主催)としては前例のないほど多くの参加者が集まったとのこと、めでたい限りです。できたてのほやほやの研究会であるにもかかわらず、この快挙。NIMSの存在感とパワーを数値データとして見せつけたといってよいでしょう。

■ 2006年6月24日(土) 誘蛾灯?

第1回データ解析技術研究会での講演に使用したPDFファイルを所定の位置にアップロードしました。

同研究会の間に言葉を交わした方々が異口同音におっしゃっていたのは、私のホームページでその開催を知ったということでした。当掲示板でのリンクを通じて中性子利用促進研究会やそのWebページの存在を初めて認知した人が圧倒的に多かったようです。1個人が私費で維持・運営しているWebページの方が、多額の活動資金をもち、多くのメンバーを抱えている組織のWebページよりずっと有名で、訪問者もはるかに多いのは驚くべきことです。

催し物について本掲示板に繰り返し書き込むと、客が吸い寄せられる。集客能力抜群 —— 昨年7月の「粉末X線解析の実際」講習会(2005年7月7日参照。約200名の参加申込があった由)や今年3月のセラ協サテライト集会(定員倍増伝説:3月12日参照)など、過去の経験から、それは明らかです。私自身が当掲示板を一種の広告媒体として利用している面も多分にあります。毎日更新という、血のにじむような(?)努力はけっして無駄になっていません。

今回は少しでも参加者数を増やすため、パルス中性子離れを強調した宣伝にひたすら努めました。現時点でビームが出ていないパルス中性子なんぞを前面に押し出したら、お客が減り、ひいては自分たちが意気消沈するだけ。このような深謀遠慮が第1回データ解析技術研究会を盛会とするのに貢献しました。参加者は大台(50人)を超えた模様です。

私が担当する第3回データ解析技術研究会ではさらにエスカレートし、パルス中性子の話はもはや影も形もなくなります。いずれ当掲示板でお知らせしますので、ご期待ください。いや、その前に、当該業界にとっては役立たずという理由で、お役御免となる恐れが多分にあります。そういうことならそれでよし(やれやれ、助かった)、ということで…

■ 2006年6月25日(日) 鋭い指摘

名セリフを叫んだ後の松子の笑顔が素晴らしかったと6月18日に記しましたが、某氏からツッコミが入りました。中谷美紀だからカッコいいんで、光浦靖子に「地獄の底までついて行く。」って宣言されたら震え上がるんじゃないですか、とのご託宣です。

竜ヶ崎桃子曰く

人は見かけだもの。

ということですか… いつもは多弁な私ですが、本件に関するコメントは差し控えておきます。

■ 2006年6月26日(月) 酔うと口数が減るはずなんですが

第1回データ解析技術研究会の後、大手町から八重洲地下街まで歩いて、5人で軽く飲んだのですが、恥ずかしながら、研究と無縁な話のオンパレードになり果てました。実は昨日書き込んだネタも、そのとき私がしゃべりまくった与太話の一つにほかなりません。

そのときのメンバー3人から届いたメールには、それぞれ「なんか泉先生ぽくてとても楽しかったです」、「ほとんど置いてけぼりの勢いでお話伺えて楽しかったです。」、「泉先生の人柄も、失礼かも知れませんがユーモア(?)というかおしゃべり(笑)な方でとても楽しい一時を過ごす事ができました。」とあり、古谷君のブログには「いろいろ話をしましたね。楽しかったですね。」と書き込まれていましたが、楽しければいいというものでないでしょう。年相応に学識や教養の一端も披瀝しておかないと、みくびられるよなぁ。お笑い芸人じゃないんだから。

皆様のイメージ通りの「泉 富士夫」を演じるのには飽きました。次に飲む機会があったら、もっと格調高く、アカデミックな話題を出すようにいたしましょう。いや、手遅れだな。

研究会を東京で開くと、大半の出席者にとって便利なだけでなく、終わった後、知り合いと遊べるのがいいですね。そもそも、新幹線の駅や空港の存在しない茨城で催すっていうのは、要するに開催者が楽をしたいからでしょう。そういうあからさまな手抜きをしていたら、当然、客が減りますよ。もちろんJ-PARCなどを見学するなら、話は別ですが。将来の顧客を取り込むのが主目的なのでしたら、原則として東京で開催するのが筋だと思いますが、いかがでしょうか。

■ 2006年6月27日(火) 3ヶ月間塩漬け状態

今年3月以降に私の講演を聴かれた方はご存じだと思いますが、AlchemyはRIETAN-2000/FP、GSAS、FullProfと組み合わせて使う強力なテキスト・コンバーターです。RIETAN-FPと同様に、量子ビームプロジェクトの前倒し的業務として製作しました。VENUSの一部として配布しているものの、現時点ではGSASとFullProfとの連携に関する情報は秘匿しています。

AlchemyはGSASとFullProfに含まれる数個のバグを巧みに避けながらデータを処理するよう設計されています。GSASやFullProfのバージョンが変わると、バグが修正されたり、出力ファイルのフォーマットが変更されたりする可能性がありますから、年に一度くらいは手入れしてやらなければなりません。これが、GSASとFullProfの出力ファイル処理の方法を秘密にしている主な理由の一つです。

ソースコードを公開すれば、ユーザー自身が比較的容易にAlchemyのメンテナンスを行えるはずですが、今のところ、そこまで踏み切るつもりはありません。しかし、波及効果の大きいユーティリティなので、いずれは誰かにメンテナンスを託すべきですね。

もちろん共同研究の相手先には使用法を公開します。一緒にデータ解析するのでしたら、必要に応じ、容易にソースコードを修正できますから。

■ 2006年6月28日(水) 人気あり過ぎも困りもの

研究本館2階東半分のアスベスト除去工事が迫っているため、不要物品多数を廃棄するとともに、PC3台を共同研究棟2階に移動しました。とりあえず、デスクトップ型PC2台が正常に動作することを確認。やれやれ。

帰宅後、メールをチェックしたとたんに、びっくり仰天。.Macアカウントの保存容量を2 GBに増やしたばかりなのに、「お客様の今期の .Macデータ転送容量は、設定上限の75%に達しました。」というメッセージがAppleから届くとは。6月16日以降の配布ファイルのダウンロード容量が予想外に多かったのでしょう。弱ったなぁ。

ということで、ひょっとしたら6月30日に、本Webページがアクセス不能となるかもしれません(7月1日には回復)。ダウンロードは控えめに!

■ 2006年6月29日(木) まあ、こんなもんでしょう

Core Duoプロセッサー搭載機を用いたSpec2000ベンチマークテストで、インテル製コンパイラーが他のコンパイラーに圧勝しました。インテルにとってCore Duo用最適化はお手のものですから、当然と言えば当然です。

■ 2006年6月30日(金) 得意技は

なんといっても、もろもろの人集めですね(6月24日参照)。私が本気モード入りすると、相当な数の人が集まるのは、過去の経験から明らかです。常に大賑わいというほどでもないのは、デフォールトが手抜きモードだからです(笑)。いつもいつも、サービスに努めるわけにはいきません。神通力は、ここぞというときにだけ発揮するべきです。

もちろん、本Webサイトはウルトラ本気モードで維持・運営しています。だからこそ、毎日大勢の人が訪問してくれるのです。

しかし、せっかく人を集めても、コンテンツ(講演・講義の中身、テキストや配付資料、サポート、サービスなど)がショボいと、次第に人が逃げていきます。人気凋落はあっという間。その辺を十分意識すべきですよ、●●さん。

■ 2006年7月1日(土) 有機・粉末結晶構造解析研究会

このたび、SPring-8利用推進協議会の活動の一環として設立された有機・粉末結晶構造解析研究会のアドバイザーを引き受けることになりました。6月12日に記したように、RIETAN-FPは有機化合物のリートベルト解析、ひいてはMPF解析に威力を発揮するはずなので、多いに貢献しうると判断しました。

同研究会の設立趣意書はここで、同研究会への参加募集および第1回研究会開催の案内はここで閲覧できます。

なお、第1回研究会の直前にSPring-8講習会ソフトウェアDASHを用いた有機粉末結晶構造解析が開かれます。SPring-8のユーザーには、SPring-8サイト内に限り、化学情報協会との契約がなくてもDASHを使用できるという特典が今年度から与えられています。有機化合物のab initio構造解析に興味のある方々はぜひご参加ください。

■ 2006年7月2日(日) 天才からおバカさんへ

「嫌われ松子の一生」、内山理名主演でTBSがドラマ化ですか。内山理名って、以前、新5000円札発行記念ドラマ「樋口一葉物語」で一葉を演じた女優ですね。う〜ん、合わねーな、という予感が…

松子ネタはもう飽き飽きしたでしょうから、明日は一葉をめぐるエピソードでも紹介することにいたしましょう。

■ 2006年7月3日(月) 無縁仏にならずにすんだ三文小説家

樋口一葉は東京朝日新聞の小説記者、半井桃水に師事し、一年二ヶ月の間、大衆小説の執筆術を学んだ。一葉の日記には、桃水に対する恋情と別離の悲哀が縷々と綴られている。

和田芳恵の「一葉の日記」(1956年刊行)によれば、和田は永井荷風から、一葉は桃水の妾だった、と聞いたという。それはなんの根拠もない噂ではなかった。一葉は一時期、桃水から月々の生活費(15円程度)を得ていたのである。ただし、一葉の日記にはこの事実は一切書かれていない。手元不如意となった桃水が弟子の畑島桃蹊を通じて読売新聞の小説記者、尾崎紅葉に一葉を託そうとしたとき、その旨を紅葉の玄関番であった星野麦人に伝えたという。荷風はそれを麦人から聞いたのであった。当時も今も、男が独身の若い女に月々の仕送りをしているとしたら、特別な関係にあると見なされてもしかたあるまい。

結局、一葉と桃水との絶交に伴い、紅葉に紹介するという話は立ち消えになった。

一葉の死後、桃水は見事なくらい、一葉との交際について沈黙を守った。死して何も弁解できぬ一葉の名誉を重んじた、男らしい態度であった。

桃水は大正末年に66歳で亡くなった。彼の墓は駒込養昌寺にある。もはや弔ってくれる親族は絶え、墓は無縁となったが、一葉との交際が広く世に知られ、見学者が多いことから、今も保存されている。


「情けは人のためならず。」を地でいったようなエピソードですね。

「一葉の日記」は色々な意味ですごい本です。周知のように、一葉の晩年は「奇跡の14ヶ月」と呼ばれ、光り輝くような傑作が次々に発表されました。以前の未熟な作品と比べて不連続に出来映えが向上した理由は、意外なところにありました。これについては、執念とも言えるような綿密な調査結果に基づき、同書、「二十三歳」の章に、かなり直截に書かれています。ネタばれにならぬよう、ここでは伏せておくことにしましょう。

和田芳恵は「一葉の日記」により日本芸術院賞を受賞しました。私がWeb上の古本屋から購入した「一葉の日記」には、毛筆で「謹呈 和田静子」と書かれた紙片がはさまっていました。和田静子は和田芳恵の妻に間違いありません。2003年10月25〜27日に記した「文士の生きかた」には、無頼派文士である和田芳恵との生活で静子が嘗めた辛酸の数々が赤裸々に描かれています。

■ 2006年7月4日(火) 何年か先のダメ出しを回避するための有益な助言

6月8日のHarima International Forumで私は某J-PARC関係者の講演の座長を務めました。その講演で彼は、J-PARCで使用するリートベルト法プログラムを独自に開発すると述べておられました。そこで、私は建設的なアドバイスを一つだけ与えました。すなわち、中性子回折のもっとも重要な目的の一つである複雑な磁気構造解析の機能をぜひ組み込んでほしいという提案です。

RIETANにはcollinearな磁気構造(の一部)しか解析できません。RIETANは私が自分自身の研究用に開発したソフトであり、私は磁性材料にはまったく興味がなかったため、必然的にそうなりました。

J-PARCに建設されるTOF粉末中性子回折装置は低角バンクを備えており、磁気散乱の寄与を含む面間隔の大きな反射の強度を消衰効果なしに測定できます。背面バンクや90度バンクなどで同時に測定したデータとドッキングし、リートベルト法で一度に解析できるようにする必要があります。巨額の予算を費やす施設が提供するソフトが一般的な磁気構造を解析する機能を欠いた中途半端なものだったとしたら、話になりません。我が国における磁気散乱の専門家(と呼ぶに値する人)まで総動員して、その機能を実現すべきです。

ところが、某氏の答えは、GSAS、FullProf、RIETANのような優れたソフトがあるのだから、それらを使えばいいではないか、というような情けないものでした。そこで、「それらのソフトで採用しているプロファイル関数がJ-PARCの装置で測定した回折データの回折プロファイルによくフィットするとは限りません。それに、ユーザーは複数のソフトを使うのを毛嫌いするんですよ。」と指摘したところ、答えに窮しておられる様子だったので、その議論を打ち切りました。

とにかく、私が公式な討論の場でこういう前向きの注文をつけたことをここに明記しておきます。常識的に考えて、無視する訳にいかない、もっともな意見でしょう。当該リートベルト解析ソフトが完成した暁には、私の要求がかなえられているか否かをぜひチェックしてみてください。

後で考えたら、もう一つ注文を付けておくべきでした。粉末X線回折装置で測定したデータすら解析できないようなリートベルト法プログラムでは、実用価値ガタ落ちです。最低限、それくらいはやってくれないと。上述の通り、ユーザーは複数のソフトを使い分けるのを嫌うからです。そんなマニアックな暇人はほとんどおりません。事前に粉末X線回折計で測定したデータを解析して、中性子回折実験に値する試料か否かくらいチェックしておくのが筋ですしね。あのBill David(DASHの作者、ラザフォードーアップルトン研究所)が開発したTOF粉末中性子回折専用リートベルト解析ソフトでさえ、お膝元のパルス中性子源ISISでほとんど見向きもされていないという厳しい現実を忘れてはなりません。前車の轍を踏むのは絶対避けるべきです。

さらに付け加えるとしたら、幾何学的構造パラメーター(原子間距離、結合角など)の計算とCIFの出力も必須です。前者では分散ー共分散行列を非対角項まで使って誤差を厳密に算出すべきです。

もう一つ重要なのは、誰がプログラムを作成したか、ということです。結晶学の高度な知識と高いプログラミング能力を兼ね備えた逸材なんて国内には数えるほどしかいませんから、このチェックも大切です。一つのソフトに習熟するには相当な時間を費やさなければならないのですから、有象無象がでっち上げた信頼性の疑わしいソフトに飛びつくのは愚かです。

上記のアドバイスに従わぬ低機能ソフトが十分枯れきらない内に、リリースされたらどうするか。話は簡単。そんなショぼすぎ・ヤバすぎの腐れソフトには見向きもせず、(たとえプロファイル関数がJ-PARCの装置に最適化されていなくても)実績ある外国製ソフトで解析するか、原子炉に設置された粉末回折装置で測定したデータをRIETAN-FPで解析するようお奨めします。

おっと、"One more thing"。圧倒的に需要の多いWindows版をまずリリースするのが筋ですよ。さもないと、ユーザーは二の次三の次、自分たちのマイナーな計算環境(Mac)しか眼中にない、との誹りを免れません。

■ 2006年7月5日(水) 最後の講義?

東京工業大学大学院 総合理工学研究科(材料物理科学専攻)において材料物理科学特別講義第二の講義を行いました。その直前の昼食会で、本当に久しぶりに応セラ研の神谷利夫助教授にお会いしました。懐かしかったですね。

■ 2006年7月6日(木) 無償アップデートとはありがたい

CD/DVDライティングソフトToast 7 Titanium v7.1 Updateがリリースされました。Universal binaryのソフトがまた一つ増えました。

■ 2006年7月7日(金) ラボノート???

ソウル大、神戸大、東大/産総研、阪大で研究成果の捏造が続々と発覚し、最近は早大、M女史の一件(投資信託でなくテルビウム錯体の方)が学会も巻き込んでテンヤワンヤの大騒ぎに。捏造は内部告発されないと、まず表沙汰になりませんから、氷山の一角なんでしょうね。

ある消息通から伺った話では、テルビウム錯体に関する研究成果が胡散臭いというのは、4年も前に2ちゃんねるで暴露されていたんだそうです。この伝説のスレあのスレなどは、一時、その黒い噂でもちきりだったとのこと。その辺のことは、7月3日の天漢日乗に要領よくまとめられています。

ところが日本分析化学会は迂闊にも、「希土類錯体ラベル剤を用いる超高感度時間分解蛍光検出法の開発」の業績を理由に2005年度学会賞(いわば同学会のお墨付き)をM女史に授与するという愚を犯してしまいました。選考委員の先生方は「便所の落書き」なんかに目を通している暇はなかったということですね。それに、泣く子も黙る総合科学技術会議の議員かつ次期IUPAC会長に賞を与えなかったら、後が恐いじゃありませんか。現在、同学会は授賞取り消しや学会除名も含む処分を検討中です。

ともあれ、一連のスキャンダルの余波で、ラボノートをつけなきゃならぬ羽目に陥りました。しかしプログラミングの場合、どうすればいいのでしょうか。

私はフローチャートをまったく作成しません。あらかじめ頭の中で構想を練り、いきなりキーボードをチャカチャカ、ソースコードの手入れは帰宅後(たいていテレビを見ながら)、ってパターンで、ずっと通してきました。ノートもへったくれもありません。今更、そのパターンを変えるのは無理というもの。それに、ラボノートにテレビ番組の感想が紛れ込んでいたら、変ですよね。

各バージョンごとにソースコードをDVDに保存していますから、これでいいんじゃないですか。そもそも、特許を取得するような仕事はしてないし、プログラミング過程でねつ造なんて、ありえないのでは…

■ 2006年7月8日(土) Oh, mistake!

近着の日本結晶学会誌、3号中の

はインパクト抜群のレビューでした。ここまで痛烈に他の研究グループの成果を批判している例はまれです。ぜひ一読されるよう、お奨めします。

赤坂らは単結晶X線解析などの結果から、高田(現、理研)、西堀、坂田(名大)らがPhys. Rev. Lett.の論文2報に報告したSc2@C84とSc3@C82の結晶構造はいずれも間違っており、これらはそれぞれSc2C2@C82とSc3C2@C80と表現すべき金属・炭素内包フラーレンだということを明らかにしました。

不完全なフラーレン骨格構造モデルのバイアスがかかった電子密度分布をMEM/リートベルト法で決定したため、回折強度への寄与が相対的に少ない内包C原子は検出できなかったということでしょう。Scはさほど重い金属でないのに、この体たらくとは… MEM解析にMEEDを使った研究では、MEMサイクル中に総電子数が入力値から逸脱していくという致命的なバグの影響も少しは受けたかもしれません。

さらに赤坂と永瀬は理論計算の結果から、高田、坂田、西堀らの報告したEu@C82とGd@C82の結晶構造はきわめて不安定であるばかりでなく、エネルギーの極小点にも対応しないため、これらの構造解析結果も疑わしいと指摘しています。

赤坂と永瀬は

粉末X線回折によってこれまでに数多く報告された金属内包フラーレンの構造は、再検討が望ましい
かもしれない。このためにも、単結晶X線構造解析の進展が今後ますます重要になるものと思われる。

と結論しました。言い換えれば、高田、西堀、坂田らが多数報告してきた金属内包フラーレンの結晶構造を単結晶法で再解析すれば、彼らがMEM/リートベルト法で解析した結晶構造の誤りが今後さらに露見する可能性があるというのです。

MEM/リートベルト法の能力を過信してはなりません。私たちが繰り返し指摘してきたように、MEM/リートベルト法は直前のリートベルト解析で採用した構造モデルのバイアスを大なり小なり反映した電子・原子核密度分布を与えます。複雑な結晶構造モデルの不完全さを常に指摘してくれるほどの能力は持ち合わせていないのです。

粉末回折の限界をわきまえ、他の物理的・化学的手法や理論計算も併用して綿密に結晶構造を解析しないと、こういう粉末構造解析の評判を落とす深刻なミスを犯しかねません。粉末回折の専門家として、残念至極です。これをもって他山の石とすべきですね。

われわれは結晶学と電子状態計算の「相分離」を憂い、両者を橋渡しするべく3D可視化システムVENUSを製作しました。粉末回折だけに頼っていたら、複雑な結晶構造の解析がしばしば困難になるということを、よく認識していたからです。電子状態計算と自ら格闘する力はもはや残っていなかったものの、仕事の方向性は誠に正しかったと自負しています。高田、西堀、坂田らの重大な過ちの露見は、粉末回折の狭小な世界にしけ込んでいるとろくなことはない、という警鐘をガンガン鳴らしています。

彼らの論文で首を傾げざるを得ない点は、MEM/リートベルト法の有効性を謳っているにもかかわらず、最終リートベルト解析で得た結晶構造データ(占有率、分率座標、原子変位パラメーター)を報告しようとしないことです。おまけに、リートベルト解析の詳細(使用プログラム、プロファイル関数、バックグラウンド関数、幾何学パラメーターに対する制約条件など)がなぜか記載されていません。素性の知れぬ名無しの権兵衛のプログラムなんてあり得ないはずですが。一方向から眺めた単一レベルの等電子密度曲面だけを示し、はい一丁上がりで、学術論文の態をなしていると言えるんでしょうか? オイラがレフェリーだったら、絶対クレームつけるぞ、そんな粗雑な書きっぷりでは。

■ 2006年7月9日(日)  そんなの、絶対観るもんか

周防正行監督の新作は、電車内で痴漢に間違われ、起訴された青年の話(仮題:それでもボクはやってない)だそうです。11年も沈黙した挙げ句、痴漢がテーマとは…

■ 2006年7月10日(月)  物質・材料分野の若手研究者へのお知らせ

物質・材料研究機構 リクルートセミナーが8月29日に開かれます。NIMSへの就職を望む若手研究者の方々はぜひご参加ください。

なお今年度は、中性子散乱の研究者を採用する予定となっていることもお知らせしておきます。中性子回折の専門家は積極的に応募されるようお願いいたします。

中性子回折分野の研究員やポスドク(NIMSポスドク研究員)としての雇用に関する問い合わせにも応じます。遠慮なくご連絡ください。

■ 2006年7月11日(火)  初めてのバグ退治

ダメ出しの前倒し(7月4日)、捏造疑惑(7月7日)、解析ミスの連発(7月8日)といった鬱陶しい話題が続いていますが、人は人、自分は自分。この辺で、前向きの姿勢を打ち出しておきましょう。

RIETAN-FP v1.21bで多相試料を解析すると、最初の相に対する多重度+Wyckoff文字が全相で出力されるというバグをテストユーザーの一人が報告してくれました。RIETAN-FP本体の不具合が見つかったのは、これが初めてです。

STRUCTURE TIDY用の一時ファイルを相の数だけ繰り返しオープンしていたのが原因でした。早速、このバグを退治したv1.22bをアップロードし、テストユーザーに通知しました。

最近、電子状態計算プログラムのファイル入力と関連して統合3D可視化システムVESTAのアルファ版を研究者3名にテストしていただいたのですが、三人とも心から感動しておられました。VICSとVENDの組み合わせより便利で、GUIの使い勝手と描画品質が著しく向上しており、しかも軽快に動くからでしょう。Surface colorizationを施した等値曲面はとりわけ美しくなりました。

年末ごろ、RIETAN-FPとVESTAに関する講演会(あるいは講習会)を東京で開く予定なので、なんとかそれまでに両者を完成させたいと願っております。

■ 2006年7月12日(水)  最新地図ソフト

平成の大合併やTXの開通などで古い地図が役に立たなくなってきたので、プロアトラスX3を購入し、長時間かけてiMacにインストールしました。郵便番号や住所による検索は実に便利です。iPodで地図を活用できるとのこと。いずれiPodも買うことにしましょう。

■ 2006年7月13日(木)  どうしてそんな大金を…。たった50回ぽっちの引用で…

7月7日に記した消息通によれば、M女史の例の論文(Analytical Chemistry掲載)はたった50回ぽっちしか引用されておらず、しかも引用者のほとんどは中国人(注: 当該論文の筆頭著者は中国人で、疑惑の渦中にあるバイオ関連企業が早大に寄付した講座の客員助教授)で、self-citationを除けば、先進国の研究者による引用はごく一部なんだそうです。捏造論文か否かは別として、その程度の論文を錦の御旗に掲げて巨額の外部資金を獲得していたとは、開いた口がふさがりません。日本分析化学会学会賞も含め、いったいどんな方々が審査したのでしょうか。それに、総合科学技術会議議員やIUPAC会長って、抜群の業績がなくても就任できるんですか? 不条理だなぁ。

そういえば、"Analytical Chemistry"って、何文字かを抜くと、"An alchemist"(錬金術師)になるんですね。余った研究費を横領し(流用にあらず)、投資信託で元手を増やしたのは、まさに錬金術師の手口。前にも愚痴った(2月8日参照)けど、自作ソフトにAlchemyなんて人聞きの悪い呼称を付けるんじゃなかったよ、まったく。

「たった50回ぽっち」なんて毒づくと、そういうお前はどうなんだ、とツッコミを入れられかねませんね。このグラフをご覧ください。RIETAN-2000で得た成果を発表する際に引用すべき論文は、過去半年だけでも73回引用されています。まさに絶好調。だから、大目に見てやってくださいよ、「たった50回ぽっち」程度の表現は。

たった50回ぽっち —— 「富豪刑事」の観過ぎかなぁ(2005年1月18日参照)。いや、過去に7億1500万円もの競争的研究費を獲得したという富豪教授の目玉論文に対しては、3桁(100回以上)の引用は要求して然るべきではないでしょうか。

嗚呼、また重苦しいネタに戻っちまった。近頃、オイラは舌鋒鋭すぎだな。

■ 2006年7月14日(金) 悲願

昨日、披露したグラフを眺めて痛感するのは、科学技術ソフトウェアの普及には長い年月を要する、ということです。RIETAN-2000をリリースしてからちょうど6年ですが、引用回数/年は未だに単調に増加し続けています。Web、解説、単行本、講習会、授業などを通じ、6年前から絶えず豊富な情報を提供してきたつもりなんですけどね。

とにかく、この勢いが衰えぬうちにRIETAN-FPの正式版をリリースし、その改善・宣伝・普及に努めなければなりません。そして、私の目の黒いうちに総引用回数1000回(!)の偉業を成し遂げるべく、微力を尽くしたい。リタイアには間に合わないでしょうが。VESTAは私がいなくなった後も滞りなく改良が進展するでしょうし、引用回数さえ1000回に到達すれば、思い残すことは何もありません。

昨日の本ホームページの訪問者数は過去最高レベルでした。影も形もないソフトのダメ出し(7月4日)、M女史のスキャンダル(7月7・13日)、多発的解析ミスの露見(7月8日)のどれが関心を呼んだのでしょうか。

■ 2006年7月15日(土) 久々のアップグレード

Igor Proがv5.05にバージョンアップしました。

■ 2006年7月16日(日) あれっ、まずい

RIETAN-FPの不具合を自ら見つけました。多相試料のシミュレーションでは、重量分率の計算はスキップすべきでした。実害のない些細なバグではありますが、v1.23bとしてアップロードしておきました。

■ 2006年7月17日(月) 高度なスパム防止技術の導入

本ホームページのHTMLファイル中に含まれる私用Eメールアドレス(掲示板の直前)をHTMLエンティティ化したコードに変更しました。全角文字を使うなんて原始的な手段ではリンクを張れませんし、進化したロボットだと半角に変換してしまうかもしれませんから。この方式にはブラウザ上でのコピー&ペーストも有効になるという利点があります。

ここまで高度な技術を駆使しても、メールアドレスをspamロボットに収集されてしまうのだったら、あきらめるしかありません。

■ 2006年7月18日(火) Voice approval

香川大学工学部材料創造工学科の石井研究室のホームページにVENDで作成したと覚しきH2@C60の波動関数のアニメーションが。その直下の金属内包フラーレンについて最近の話題をクリックすると、あっ…

このような形で拙文への共感を明示してくれるとは… 感激です。

石井知彦先生には昨年のDV-Xα研究会(2005年8月4日参照)の折にお目にかかり、ご講演も拝聴しましたが、病み衰え、老いさらばえた私の目から見ると、颯爽とした青年科学者といった第一印象でした。ぐんぐん人を引っ張っていく感じ。随分、学生に人気あるでしょうね。

DV-Xα研究会での招待講演では、急遽、石井研のMacをお借りしましたが、石井研のWebページのURLを見ると、iMacをサーバに使っておられるようです。Macファンなんですね。

■ 2006年7月19日(水) 複雑な構造を粉末法で解析するときは十分ご注意を(内情暴露)

フラーレンの構造解析の誤り(7月4日参照)と関連し、さらに述べておきたいことがあります。やはり粉末回折は「分相応」のことにだけ適用するのが身のためです。放射光を使おうが、強力パルス中性子を使おうが、反射の重畳に伴い構造情報が部分的に失われることに変わりはありません。

(別に粉末回折に限った話ではありませんが、)放射光や強力パルス中性子源の関係者は、ともすれば予算獲得、組織維持、顧客(産業界も含む)引き寄せのために、手前みその誇大な宣伝を繰り広げがちだということを指摘しておきます。大風呂敷を広げたい放題の世界。そうでもしないと、巨額の装置建設・維持運営費が捻出できないという背に腹は代えられない事情。話半分、時には話一桁下くらいのフィルターを通して見聞きするのが賢明です。

フラーレンや有機化合物のように非対称単位内の原子が非常に多い化合物を扱う際には、粉末回折の能力ギリギリのところで遮二無二突っ走る訳ですから、危なっかしいところが多分にあります。原子間距離や結合角などに制約・抑制条件を付加しないと、ありえないような幾何学的パラメーターを与える原子座標に収束するのが常です。他の物理的・化学的手段や電子状態計算を積極的に併用し、結晶構造情報を補強してやらないと馬脚を現す恐れが強まります。Sc2@C84とSc3@C82の場合は、金属内包フラーレンなのか、金属・炭素内包なのかは、NMRで綿密に調べるべきでした。

おまけに、非対称単位内の原子の多い結晶では、リートベルト解析において局所的極値(local minima)に落ち込む可能性が一層高まります。制約・抑制条件つきの非線形最小二乗計算を行うと、初期分率座標近くの局所解で収束してしまうことが多いのです。われわれは、論文に報告されている有機化合物のリートベルト解析結果の大半が局所的極値に相当する結晶データを報告しているという感触を抱いています。Harima International Forumでは、その実例を二つ示しました。救いようのないほど悲惨だった方の論文(フラーレン二量体に関するActa Crystallogr.の論文)は、なんと国際結晶学連合、Commission on Powder Diffractionの元委員長(村上世彰の言葉を借りれば、プロ中のプロ)らがESRFで測定した粉末X線回折データをGSASで解析して発表したものでした。この信じ難い失態については、また後日ということで…

■ 2006年7月20日(木) 再登場キボンヌ → 拒否

「ハチャメチャ情報館」時代のRIETANの日本語Webページが読みたくて読みたくて仕方ない、何が書かれていたのか気になって夜も眠れぬ、と訴えてきた方がおられたので、ハードディスクの片隅に眠っていた旧angle_dispersive.htmlを見つけ出し、添付ファイルとしてお送りしました。

日本語VENUSのWebページと同様に復活を希望する旨の返礼メールが届きました。そこで、「せっかく某マンモス学会編、某一流出版社発行、ハードカバー、9,135円という、いかにも権威ありそうな書籍の4章全体を分担執筆させてもらって(モザイク入りの図を使った同学会年会特別講演の失態を償い)名誉挽回したばかりなのに、また奇人変人呼ばわりされるのは真っ平です。」と答え、お断りしておきました。

返事は… ありませんでした。

まあ、今さら陳列はいたしませんが、ぜひ眺めてみたいという方には上記のHTMLファイルを差し上げます(再配布は禁ず)。

■ 2006年7月21日(金) Google Earth v4.0.1694.0

Mac OS X用Google Earthはv4.0.1563以降、universal binary化していたんですね。Googleは、主要ソフトのuniversal binary版を当分リリースできそうにないMicrosoftやAdobeよりよほど底力があります。

■ 2006年7月22日(土) インテル・コンパイラへの全面的移行

Windows用のRIETAN-FPとPRIMAがIntel Visual Fortran Compiler for Windowsでビルドできたので、Intel Fortran Compiler for Mac OSを注文しました。これで、インテルCPU・Mac OS X用のRIETAN-FPとPRIMAを高い最適化レベルでビルドできるでしょう。

やたらに高価格なのに信頼性が今一だったAbsoftのFortranコンパイラから足を洗えて、嬉しいです。

■ 2006年7月23日(日) 悪文解釈

7月8日の掲示板をお読みになった方が、今年の1月7〜9日に開催された第30回記念フラーレン・ナノチューブ総合シンポジウム(フラーレン・ナノチューブ学会主催)の講演要旨のコピーを送ってくださいました。

西堀らは講演2P-9で、Sc2@C84とSc3@C82がそれぞれSc2C2@C82とSc3C2@C80であることを認めました。その要旨には、"Our previous structural studies of Sc2@C84 and Sc3@C82 had fallen into a local minimum"と記述されていました。主語と述語がそっぽを向き合っている、論理性に欠けた文です。研究が局所的な最小値に落ち込む訳がないので、リートベルト法で求めた解が局所的な最小値に落ち込んだ、という意味なのでしょう。もう一つ、この英文をダメ出ししておくと、二つの構造精密化に言及しているのですから、"a local minimum"でなく"local minima"とすべきです。

粉末回折の専門家からみると、"Our previous structural studies ....."という文言は稚拙な言い繕いにすぎません。最終リートベルト解析における構造モデルが間違っていたのに決まっていますから、大域的最小値(global minimum)に到達する可能性は、限りなくゼロに近いです。たとえ原子間距離や結合角に制約(抑制)条件を課していなかったとしても、フラーレン骨格中の二つのC原子がリートベルト解析の過程で骨格の内部にスルスル移動していくとは到底思えません。

上の文を添削してみましょう。"Our previous structural studies of Sc2@C84 and Sc3@C82 were erroneous because we adopted insufficient structural models in our final Rietveld refinements."という直截的表現では、いかがでしょうか。

要するに、上記二つの化合物は金属・炭素内包フラーレンである、ということで、すでに決着していました。今後、Eu@C82やGd@C82など、他のフラーレンの結晶構造の再解析が強く望まれます。大した手柄にはならないでしょうが。

■ 2006年7月24日(月) ようやく整ったiMacの日本語環境

ATOK 2006 for Macを自宅のiMacにインストール。これで当ホームページ更新の手間が多少省けるはずです。

■ 2006年7月25日(火) ハチクロとiPodとParallels Desktopとメロム

ハチミツとクローバー」、DVDで観りゃ十分と思っていましたが、断固、観ようと決意しました。お気に入りの蒼井 優が出演するからではなく、菅野よう子が音楽を担当しているからです。

第2世代のiPod nanoが来月初めに発表されるようです。これはもう買うしかない!

Parallels Desktop for Macにはびっくり仰天。インテルMac上でMac OS XとWindowsが同時に動く。しかも、Windows用ソフトのパフォーマンスはほとんど落ちないそうだ。たった79.99ドル。ここまで凄いと、買うしかない! 再起動が必要なBoot Campなんて眼中にありません。

9月に渡欧する際には、軽量ノート型PCをもっていくつもり。Merom搭載機は間に合わないかなぁ。いずれにしろ、PCをかついで動き回るのはまっぴらなので、恒例の大学訪問は止めておこう。そうだ、パスポートを更新しなくちゃ。

以上、最近の関心事を四つ並べました。この脳天気さ加減は尋常でありません。

自慢じゃありませんが、上昇志向ゼロ、やりたくないことは極力避け、実社会からは能う限り遊離するよう心がけ、自分の好きなことにだけのめり込むという勝手気ままな生活を享受していると、中高年特有の鬱病なんぞに罹る恐れはなきに等しいです。

結構じゃないですか、それで済んでいるんだから。惰眠などむさぼっていませんし、十二分に科学技術の発展に貢献していると自負しています。こういう自己完結型状況にもっていくのには、長年にわたって相当苦労したんですよ。

大体、会議、書類、雑用などなど、他の人でもやれることをオイラに押しつけたら、貴重な人材の無駄遣い。マータイさんのMOTTAINAI精神に背くことになりますよ、●●さん。← 今日の掲示板、要するにこれが言いたかっただけです(枕詞、長すぎ)。

■ 2006年7月26日(水) 多機能電卓ソフト

MacユーティリティとしてPCalc 3を復活させました。

■ 2006年7月27日(木) マイクロソフト、iPod対抗のデジタル携帯音楽プレーヤーZuneを年内に発売

いやはや、ズーンなんてネーミングは最悪。この響きの悪さは相当なもの。売る気あるんかいな。それに、タイミング遅すぎ。

でもね、安直な後追い企画と切り捨てるのはどうかな。一般に、マイクロソフトのソフトはタコですが、ハードは結構いいんですよ。なにしろOEM製品ですから。私も一時、マイクロソフト・ブランドのマウスを愛用していました。

■ 2006年7月28日(金) 残るはマニュアルだけ

RIETAN-FPの配布ファイルRIETAN-FP.tbzを更新しました。

STRUCTURE TIDYが見積もる二つの標準化パラメーターΓとCGの定義をNew_features.pdf中に記述するとともに、RIETAN-FP用バッチファイルsetupDD2.batとDD2.batを収めたBatch filesというフォルダを追加しました。

RIETAN-FPに組み込む予定だった最終機能は正式版には含めず、後日、マイナーチェンジの折に追加するよう方針を変更しました。目下v1.23bが安定に動いており、Intel Visual Fortran Compiler for Windowsの信頼性が今一なことを考慮すると、この辺でRIETAN-FPの肥大化にストップをかけておくのが無難です。

RIETAN-FPにしろ、VESTAにしろ、多くの人々の注目を集めているのは間違いありません。両者は互いに密接に結びついているので、相乗効果も期待できます。いずれも巨大な波及効果を及ぼすのが確実なので、できるだけ完成度を高めてからリリースするつもりです。

■ 2006年7月29日(土) Viva STRUCTURE TIDY!

今日は、RIETAN-FPに実装したSTRUCTURE TIDYの恩恵に浴しました。某化合物の結晶データを標準化し、最小の標準化パラメーターΓを与える分率座標に変換しました。負の座標がなくなり、原子同士が比較的近くに集まり、実にすっきり。この結晶は対称中心をもたない空間群に属し、どれか一つのサイトのz座標を固定しないと解が不定となるのですが、STRUCTURE TIDYはそういう事情もきちんと理解した上で、O5サイトのzをゼロに固定すればよいと教えてくれました。科学技術ソフトのパフォーマンスに感動したのは久しぶりです。

STRUCTURE TIDYの威力を味わうや否や、それは必需品と化していました。もうRIETAN-2000には戻れません。Parthé先生のお薦めに従い、年末年始を返上してRIETAN—STRUCTURE TIDY—LAZY PULVERIXを一心同体にした自分は偉かった!

■ 2006年7月30日(日) Minor changes in RIETAN-FP

RIETAN-FP v1.24bをリリースしました。

空間群の入力において、"International Tables for Crystallography"のボリューム名として'A'だけを受けつけるようにしました。ボリューム名が'I'の場合、ただちに実行を停止します。RIETAN Proの仕様に沿った改良です。

結晶構造データはシミュレーション・モード(NMODE = 1)で標準化するよう変更しました。これで、*.intが存在しない場合のエラーを防げます。

MPF(NMODE = 2 and 3)を実行する際、各構造パラメーターのID(I)が1に設定されていたとしても、ゼロとみなすよう変更しました。MPFでは構造パラメーターに対するID(I) = 1を無視するというメッセージが出力されます。構造パラメーターの数が多いとき、一々ID(I) = 0に変えるのが面倒だという声に応えました。

なお現在、MEM解析の利便性向上を目指し、RIETAN-FPとPRIMAを改造中です。外部協力者による綿密なテストに合格した後、RIETAN-FPのテストユーザー向けにリリースします。

■ 2006年7月31日(月) かったるい。★★

昨日は若い女性が大半の観客に混じり、「ハチミツとクローバー」を鑑賞。途中で出たくなりました。よって、コメントなし。

アキハバラ@DEEP」(2005年9月20日参照)が9月2日に公開されることを予告編で知りました。

■ 2006年8月1日(火) DV-Xα分子軌道計算講習会のお知らせ

私は去年の4月にDV-Xα研究協会に入会したばかりの新参者ですが、昨年の8月にDV-Xα研究会が東工大で開かれた折に招待講演を依頼されました。遺憾ながら、その後は年会費を払っているだけの幽霊会員になり果てております。少しは協会のために貢献せねばならぬと思案し、DV-Xα分子軌道計算講習会(9月8日10:00〜16:00)における3D可視化の実習についてここで紹介し、参加を呼びかけることにしました。

同講習会では、坂根弦太氏が「DV-Xα法計算結果の三次元可視化」の実習を担当されます。次のような内容になると坂根氏から伺いました:

  1. 教育用DV-Xα計算システムを用い、参加者全員でベンゼン(C6H6)を対象とする計算を行う。
  2. VICS-IIでF01を読み込み、球棒模型を描き、c6h6.vcsを保存する。
  3. F08Eに記録されたベンゼンの分子軌道のエネルギー準位を見て、どの分子軌道を可視化するか、参加者がそれぞれ指定する。
  4. 自分で決めた分子軌道をVENDで可視化する。等値曲面の値を変え、大きさを調整した後、平滑化する。Opacityを60%程度に変更して、等値曲面の内部を透視する。c6h6.vcsを読み込み、球棒モデルを重ねて表示する。好きなところにスライスを挿入し、断面を観察する。
  5. VESTAの実演(坂根)。ベンゼンの等電子密度曲面を静電ポテンシャルで彩色する。

教育用DV-Xα計算システムは、原子番号と原子間距離を入れるだけでF01とF25を準備し、makef05でF05を作成し、SCATによる電子状態計算を実行し、引き続きcontrdallで全分子軌道の*.scaファイルを作成するための全自動処理系です。

contrdallは阪大の水野正隆氏が作成されました。比較的小さな分子を対象とし、すべての分子軌道の*.scaファイルを全自動で作成してくれる教育用ユーティリティです。分子軌道の名称がそのままベースネームになります。分子軌道数が100個までという制限はあるものの、SCATとVENUSの橋渡し役として有用な、初心者向きの傑作ソフトです。

VESTAがVICS-IIとVENDを統合した次世代3D可視化システムであるのは言うまでもありません。正式版の公開前ではありますが、受講者の目を楽しませるとともに、VESTAのパフォーマンスを宣伝してもらうため、特別に実演を許可しました。VESTAには、比較的少ないピクセル数でも静電ポテンシャルで彩色した等電子密度曲面を美しく表示できるという利点があり、実習の最後を飾るデモンストレーションにうってつけです。

DV-Xα分子軌道計算講習会はこのような魅力的な実習も含んでおりますので、電子状態計算にチャレンジされたい方はふるってご参加ください。

なお、坂根氏は8月26・27日に開催される日本教育情報学会第22回年会でも、「DV-Xα分子軌道計算プログラムと三次元可視化システムVENUSの大学基礎化学教育での活用」と題して講演されるそうです。かつて創造的破壊行為としてのプログラミングにも記したように、VICSとVENDは研究ばかりでなく科学教育にも役立ってほしいという願いを込めて製作しました。その夢がVESTAとして結実しつつあるのは、喜ばしい限りです。

■ 2006年8月2日(水) Invited article for the IUCr Computing Commission newsletter

という件名のメールが届きました。IUCrのCommission on Crystallographic ComputingからOn-line Newsletter of the IUCr Crystallographic Computing Commission(Compcomm Newsletter) No. 7のために何か記事を執筆してほしい、という依頼です。

にべもなく断ろうと思いました。なにしろ9月下旬以降は、どこに出しても恥ずかしくないRIETAN-FPのマニュアルの製作に打ち込もうと、心に決めておりましたので。

一応、同newsletterのバックナンバーを閲覧してみたところ、なんと日本人の著者は皆無でした。ご立派な放射光・中性子源を取り揃えている国なのに、こんな体たらくとは… 恥ずかしい限り。どうして日本人はこういう国際的なアピールの場を敬遠するのでしょうか。いや、アピールすべき技法・ソフトがないのか?

今回の依頼は、日本人も一人くらいは気を吐いてほしいという期待が込められているのでしょう。こういう国辱的状況を直視したからには、もう後には引けません。依頼講演・講義・執筆に関する基本原則(6月20日参照)も遵守すべきです。重い腰を上げ、執筆を受諾することにしました。何をテーマとするかは、これから決めます。

思い起こすに、RIETAN-2000のリリース前後にはかなりの数の依頼執筆(PDF documents, articles, and booksに列挙)が集中し、それが原因で(配布ソフトに添付する)マニュアルを書き上げるタイミングを逸したのでした。今回はそういう本末転倒な事態に陥らぬよう、十分配慮するつもりです。

■ 2006年8月3日(木) RIETAN-FP—PRIMAの同時アップデート

RIETAN-FP v1.3bおよびそれと組み合わせて使用するPRIMA v3.6を含むRIETAN-FP.tbzをアップロードしました。いずれも7月28日にリリースされたばかりのIntel Visual Fortran Compiler for Windows v9.1.028でビルドしました。PRIMA v3.6はRIETAN-FP専用バージョンでありRIETAN-2000互換でないこと、v3.5.6以前のPRIMAはもはやRIETAN-FP互換でなくなったことにご注意ください。

更新内容は以下の通り:

  1. MEM解析用ファイル*.fos(RIETAN-FPが出力、PRIMAが入力)と*.fba(PRIMAが出力、RIETAN-FPが入力)がテキスト形式に戻りました。これについてNew_features.pdfに追記しました。
  2. 中性子回折データのシミュレーション時に発生する多相用雛形ファイルCu3Fe4P6E.insの不具合を解決しました。
  3. PRIMA v3.6の実行形式ファイルPRIMA.exeをPRIMAフォルダに収めました。
  4. PRIMA v3.6に対応したPRIMA_manual.pdfをDocumentsフォルダに追加しました。
■ 2006年8月4日(金) 超有名圧縮・解凍ソフト

Lhaplusが1年ぶりにバージョンアップされました。

作者のSchezo氏曰く、「あまり良くない病気にかかっていて無理ができません。治ればいいのですが...。」 お大事に。

■ 2006年8月5日(土) 善は急げ

Compcomm Newsletter(8月2日参照)への寄稿、共著者とタイトルをさっさと決め、依頼者に通知しました。内容の充実を図るのはもとより、カラーの図を多用した、人目を引く記事にするつもりです。Commission on Powder Diffraction, IUCr Newslett., No. 32に発表したVENUSに関するレビューの続編と位置づけていますが、もっとプログラミング寄りの話にします。

■ 2006年8月6日(日) Mac OS X用RIETAN-FP

をアップロードしました。もちろんv1.3bです。まあ、これを使う人は僅少だとは思いますが…

G4用に最適化した32ビットコードだけが含まれています。もちろんG5機でも動きます。64ビットコードは動作がやや不安定なので、配布を見合わせることにしました。

Igor Pro v5.05Aへのアップデータが公開されました。

■ 2006年8月7日(月) 新超伝導体LaOFeP

東京工業大学応用セラミックス研究所細野・神谷研究室は層状化合物LaOFePがTc = 4 Kの超伝導体であることを発見しました。この研究成果はJ. Am. Chem. Soc., ASAP Articleとして閲覧できます。

このような新奇性の高い超伝導物質のリートベルト解析にRIETAN-2000が使われたのは光栄の至りです。そういえば、神谷氏とは東工大での集中講義の折に、昼食会でお会いしたばかりでした(7月5日参照)。今後、ご研究が益々発展するよう祈っています。

RIETAN-2000はもともと、科学技術庁の超伝導マルチコア・プロジェクトの一環として開発しました。新超伝導体の構造解析に利用されたのは、そういう意味でも有意義なことです。

■ 2006年8月8日(火) これじゃORFFEがまともに動きません

Windows・Mac OS X用RIETAN-FP v1.31bをアップロードしました。ORFFE用入力ファイル*.xyzの末尾に出力されるORFFE命令の前のスペースがTinkにより取り去られるという深刻なバグを修正しました。Tinkを拡張した際、書式を指定して整数を読み込む唯一の箇所のことをケロっと忘れていました。信州大学の大木 寛氏のご指摘に深謝します。

このほか、New_features.pdf中の7節に加筆しました。

上記の不具合発生の原因となったTinkの拡張(Selectブロックの追加、If・Selectブロックの二重ネスト)ですが、個人的には今回導入した新機能のうちで一番気に入っています。なにしろTinkは他に類をみない独創性あふれるcharacter user interfaceであり、両追加機能はTinkを一層パワフルにするものなのですから。

Tinkとは「ピーター・パンとウェンディー」に登場する妖精の名前です。RIETANの前処理系をTinkと名付けた理由は以前どこかに書いたはずです。それが見つかり次第、当掲示板で紹介しましょう。

■ 2006年8月9日(水) げてもの好き以外お断り

昨日記したTinkという呼称の由来は、理学電機ジャーナル、27巻、1号に掲載された解説の5節に書かれていたことがわかりました。リガクのWebサイトの最上部で"会員ログイン"をクリックし、必要なら新規登録すれば、e-ジャーナルで閲覧・ダウンロードできます。

上記のレビューにざっと目を通してみたところ、研究と無関係な夾雑物がかなりの割合で混入した破天荒な代物でした。さすがに10年も経つと、こういう奇を衒ったものは読むに堪えなくなります。

■ 2006年8月10日(木) 電子状態計算の教育用ツール

坂根弦太氏が教育用DV-Xα計算システム(8月1日参照)をリリースされました。分子軌道計算を始めるための環境作りからダウンロードできます。もちろんcontrdallも含んでいます。同Webページには、「はじめての電子状態計算」に付属するCD-ROMと教育用DV-Xα計算システムの配布ファイルeduDVs.zipから電子状態計算に必要なソフト一式をインストールする手続きがていねいに記述されています。

教育用DV-Xα計算システムはDV-Xα分子軌道計算講習会(9月8日)で使用されます。

坂根氏によれば、文科省の方針に沿って大量のPCが大学教育用に導入されているものの、限られた予算では科学技術ソフトウェアの購入がままならず、最新PCの強大な計算能力があまり有効利用されていないのが現実だそうです。DV-Xα法のプログラムとVENUSは無償なので、なけなしの金をつぎ込む必要はまったくありません。おまけにこれらは研究の現場で大活躍している本格的システムなのですから、学生が将来、大学や企業で研究するようになったとき、直接役立ちます。波及効果抜群といって過言でありません。教育、研究、(産業界での)研究開発のいずれにも貢献しうるというのは実に素晴らしい!

■ 2006年8月11日(金) 期待はずれ

MacPeople9月号によれば、Parallels Desktop for Macのパフォーマンスはネイティブ動作時の50〜60%とのこと。現時点では、マルチコアのエミュレーションに未対応で、しかもグラフィック・アクセラレーションが無効だそうです。やはり再起動必須のBoot Campに頼るしかないのか…

■ 2006年8月12日(土) 初心者用無料スクール ← 早い者勝ち

10月3日(火)に東京工業大学大岡山キャンパスにおいて

第14回セラミックス基礎秋季教室「コンピュータシミュレーションと機能セラミックス研究」

主催: 日本セラミックス協会関東支部、協賛: 東京工業大学21世紀COEプログラム 産業化を目指したナノ材料開拓と人材育成

が開催されます。学生を中心とする初心者向けの講座です。比較的入手しやすく使いやすい構造解析、分子シミュレーション、第一原理計算プログラムの原理と使用法を平易に解説するとともに、セラミックスの設計・開発への応用についても述べます。これから分子動力学計算や電子状態計算にチャレンジしてみたいという学生や研究者にはうってつけの勉強の機会となるでしょう。

計3時間にわたる講義は東京工業大学応用セラミックス研究所の神谷利夫氏が担当されますが、RIETAN-2000によるリートベルト解析に関する部分だけ特別に私が受け持ちます(刺身のつま?)。VICS-IIVEND、VESTA(事前デモンストレーション)による3D可視化についても話します。

特筆大書すべきなのは、本教室がすべての人々にオープンであり、受講料は不要で、しかも4・50ページもあるテキストが配布されることです。参加希望者は同教室のWebページで参加登録してください。申込者が100人に達し次第、参加申込みを締め切ります。

DV-Xα分子軌道計算講習会(8月1・10日参照)といい、セラミックス基礎秋季教室といい、初心者向き講習会でVENUSを取り上げていただけるようになったのですから、感無量です。膨大な時間と手間を費やしてきた甲斐がありました。

■ 2006年8月13日(日) RIETAN-FPテストユーザーへのお知らせ

PRIMA v3.6aとAlchemy v1.1を含むRIETAN-FP.tbzをアップロードしました。いずれもRIETAN-FPと組み合わせて使うよう改善されています。変更点についてはReadme_win.txtをお読みください。RIETAN-FPはv1.31bのままです。

ついでにもう一言。RIETAN-FPについては、安定性の向上とともにテストユーザーを段階的に増やしていく方針です。セラミックス基礎秋季教室(8月12日参照)の参加登録者にはRIETAN-FPのダウンロードと試用を許可することにしました。RIETAN-FPの使用を希望する参加登録者は、私にその旨を記載したメールをお送りください。折り返し、配布ファイルRIETAN-FP.tbz(Windows用)とRIETAN-FP.dmg(Mac OS X用)のダウンロード法をメールでお知らせします。もちろん同教室開催前にダウンロードしても構いません。

といっても、ちょっと客層が違うような気が…

■ 2006年8月14日(月) またまた講習会のお知らせ

9月11日(月)に名古屋工業大学において日本結晶学会講習会「微粒子の大きさと構造を正しく評価するには」が開催されます。主として、電子顕微鏡、X線小角散乱法、広角X線回折法を利用して微粒子のサイズと構造を評価するための基礎から最新までの技術を詳しく講義します。奮ってご参加ください。

以上、日本結晶学会の行事幹事、中井 泉氏(東京理科大)の依頼により掲示し、リンクを張りました。多少なりとも当該講習会の宣伝になれば嬉しいです。

中井氏はポータブル粉末回折計を持参して、トルコ、エジプトに1ヶ月以上も考古調査に出かけるんだそうだ。ヨーロッパに1週間出張するのでさえ面倒くさがる私とは、えらい違いです。中井氏とは、彼が大学4年のとき、水熱合成の実験法(水溶液入り貴金属チューブの溶接法とか)を教えて以来の付き合いですが、当時からエネルギッシュだったなぁ。

今日の本当の日付は8月9日です(このアバウトさ加減は実に見事)。第14回セラミックス基礎秋季教室の参加登録を受け付け始めてから、まだ2日しか経っていませんが、すでに登録者は50名を突破したとの情報が入りました。同教室のホームページへのアクセスも、間もなく1000回を越しそうな勢いです。参加登録はお早めに。

■ 2006年8月15日(火) そして皆ポシャった

7月25日に記した四つの関心事がその後どうなったかというと、

  1. ハチミツとクローバー → 観るには観たものの…(7月31日参照)
  2. iPod nanoの新モデル → WWDC 2006では発表されず(涙)
  3. Parallels Desktop for Mac → 今一だと判明(8月11日参照)
  4. Merom搭載軽量ノート型PC → ヨーロッパ出張には絶対間に合わないので、Core Duo搭載のデルXPS M1210を発注(残念)

といったところです。あれもこれも自分の思い通りにならないところは、ハチクロの学生諸君と同様。ところで、この映画、深刻なスランプに陥ったはぐみ(蒼井 優)を仲間たちが「お前は一人じゃないんだよ。」と鼓舞するところが大昔のTVドラマ「愛という名のもとに」のラストシーン(あの世に逝ったチョロまで復活し、皆で神宮外苑の銀杏並木を闊歩するというのは笑えました)そっくりだと気づいたのは私一人でしょうか。もっとも、「愛という名のもとに」自身が“「セント・エルモス・ファイアー」という映画のパクリなんだそうですが。

いくら挫折しようが平気の平左で、滅法打たれ強いのが、高度成長期に育った食い逃げ世代の特徴です。WWDC 2006で発表されたばかりのMac Pro(3 GHz Xeon)の見積もりを早速依頼し、ショボくれた状況の打開を図りました。主として、インテルCPU搭載Mac用アプリケーション開発とテストのために使います。職場にインテルMacがないのでは話になりません。

■ 2006年8月16日(水) 4ヶ月ぶりのアップグレード

VICS-II v0.92.6がリリースされました。いくつかの修正に加え、VESTAの新機能の一部がバックポートされました。

■ 2006年8月17日(木) 急ピッチで開発が進むVESTA

門馬綱一君からVESTA v0.97が送られてきました。Harima International Forumに引き続き、DV-Xα分子軌道計算講習会XX Conference on Applied Crystallography第14回セラミックス基礎秋季教室などでの予告デモンストレーションに向け、電子状態計算家の要望も取り入れつつ鋭意開発中のアルファ版です。

彼がこのソフトに注ぎ込んでいる情熱をひしひしと感じる、見事な出来映えとなっています。この統合ソフトの充実した諸機能、使い勝手のよさ、軽さを一度でも享受すれば、GUIが貧弱で鈍重なVICSーVENDペアは未熟かつ時代遅れの骨董品としか思えなくなるでしょう。

Isosurface表示後に結晶構造データのファイルを読み込めるようになったのは、大きな進歩です。これまでは、表示前にファイルを入力せざるをえませんでした。

v0.97に未実装なのは2次元データの可視化くらいです。これは枝葉の部分にすぎませんから、VESTAはもう九分通り完成したといって過言でありません。

なお、第14回セラミックス基礎秋季教室の登録者は、8月7日の参加登録開始直後から猛然と増え始め、4日目にして早くも登録者数が80名に達したそうです。

実のところ、今日は8月11日。私の誕生日です。本掲示板の日付、ついに一週間先にまで達してしまいました。新記録(珍記録?)樹立です。

ともあれ、後20名で満員御礼となります。参加登録はお早めに。

■ 2006年8月18日(金) PowerPC版は今後、切り捨てに方針決定

Xcode 2.4を長時間かけてダウンロードし、Absoft Pro Fortran for Mac OS X v9.2でRIETAN-FPを再ビルドしてみたのですが、64ビット・アプリケーションの不安定さに変わりはありませんでした。

■ 2006年8月19日(土) 吾妻ひでお「うつうつひでお日記」

「失踪日記」(2005年3月29日、5月19日)を執筆していた2004年7月から2005年2月の間、毎日つけていた漫画日記。まえがきには「事件無し、波乱無し、貧乏、神経症 (中略) こんなやつだけにはなりたくないという意味で、皆さまの心を癒す安らぎの書になるのではないでしょうか」とあります。

特徴は随所に脈絡もなく美少女の絵が挿入されていることです。私の趣味には合いませんが、始皇帝陵の兵馬俑同様、これほど膨大な数になると誠に壮観です。

なお、「失踪日記」の刊行後まもなく執筆を依頼された続編は、2006年6月現在、1ページも描いてない由。RIETAN-FPのマニュアルも2006年8月現在、1行も書いていませんが、これに比べれば、可愛いもんです(笑)。

といっても、RIETAN-2000への追加機能に関する詳細な文書を提供しているので、RIETAN-2000のユーザーだったら、RIETAN-FPを容易に使いこなせるでしょう。

■ 2006年8月20日(日) シェアウェアなのにSFTPに未対応とは…

Windowsユーティリティ中のシェアウェアNextFTPをフリーソフトウェアFileZillaに入れ替えました。LinuxサーバへのアクセスのためにSFTPクライアントソフトが必要になったからです。FileZilla Serverも公開されているので、いずれ試してみるつもりです。

Mac OS X用のFetchもSFTPに対応しています。セキュリティー強化のためNextFTPも早急に対応すべきです。

■ 2006年8月21日(月) wxWidgets v2.7シリーズ

VICS-IIやVESTAのGUI作成に使用しているwxWidgetsがv2.7.0にアップグレードされました。開発版と銘打っているのは今後のv2.7.X同士の互換性を保証していないためで、安定性に関する問題はまったく見つかっていないとのことです。

■ 2006年8月22日(火) 満員御礼目前

第14回セラミックス基礎秋季教室への参加登録は、あと2名で締め切りとなります(8月15日16:37の時点で)。お盆休みとぴったり重なったにもかかわらず、わずか8日でここまで到達するとは。恐いもの見たさに私を拝みに来る人はごく僅かでしょうから、今やビッグネームとなった神谷利夫氏の人気が上々ということですね。

注: 8月16日朝に登録者が100名に達したため、参加登録を締め切りました。本教室がこれほど注目を集めたのは、時代の流れに沿った意欲的な企画だったからだと思います。今後、材料科学の研究者・技術者向けに同様な講習会を再び開催するといいですね。

■ 2006年8月23日(水) 究極のプロレスファン

NHK教育テレビ、「知るを楽しむ」という番組の「ジャイアント馬場 — 巨人伝説」第2回をたまたま観ました。精神科医の香山リカがジャイアント馬場に関する蘊蓄を傾けていたのにびっくり。第4回まで一人で語り続ける予定です。

香山リカは4歳のときに羽田空港で「お嬢ちゃん、危ないよ」とジャイアント馬場に抱き上げられて以来、ジャイアント馬場の試合を見続けてきたんだそうだ。そして3年前には、週間プロレスでおなじみのフミ・サイトーと結婚した由。

私としては、香山リカにジャイアント馬場より「お父さんのバックドロップ」や「あゝ! 一軒家プロレス」について解説してもらいたいです。なにしろ、プロレスについては、それらの映画以外は無知なもんで。

そういえば、ジャイアント馬場を一度だけ間近で見たことがあったっけ(2004年11月15日参照)。遠い昔の話で、記憶もおぼろです。

それにしても、自分の専門外のことで4回も講釈を垂れるというのは凄すぎます。私は同じ教育テレビ、中学生向けの地理の番組で1分くらいしゃべったことがありますが、それだけで精一杯でした。

仮に自分が一つのテーマについて4回にわたって語り尽くすとしたら、いったい何を選ぶでしょうか。「あの世に逝く前にもう一度観たい4本の映画」はどうかな。1回目は●●・●●、2回目は▲▲▲▲、3回目は■■■■■(局所的)、4回目は —— う〜ん、後が続かない。これ以上は無理だ。

上の3本の映画の題名(字数は合っています)を三つとも当てた方にRIETAN-FPのダウンロードを許可しましょう。過去の掲示板を丁寧に調べれば、答えは歴然としています。応募者は私にメールをお送りください。

■ 2006年8月24日(木) 10年有効のパスポートに更新

16,000円也。10年間使いまくった後、あの世に逝くべき、ということか。

ところで、昨日のクイズですが、即日、正解者が二人現れ、RIETAN-FPのダウンロード権をあっさりゲットしました。易しすぎたかな。少なくとも3回目はわかりにくいだろうと思ったのですが、(局所的)というヒントでバレてしまったようです。

■ 2006年8月25日(金) Elaborate animated GIF files

教育用DV-Xαシステムによる窒素(N2)とベンゼン(C6H6)の計算結果に基づき、HOMO、LUMO、静電ポテンシャルで彩色した電子密度を逐次表示していく、手の込んだGIFアニメーションが公開されました。坂根弦太氏の制作物です。アニメーション化前の画像はいずれもVESTAで作成されました。

なお、坂根氏も講師の一人となっておられるDV-Xα分子軌道計算講習会(9月8日)は、まだ定員まで余裕があるそうです。参加費は、43学協会の正会員が10,000円、学生会員が5,000円です。VENUSによる電子状態計算結果の3D可視化の実習とVESTAの予告デモンストレーションも含まれておりますので、奮ってご参加ください。

■ 2006年8月26日(土) アホバカソフトを飼い慣らすのは一苦労

Microsoft Wordで文献を挿入、削除、移動した際、本文中とReferences中の文献番号を自動的に付け替える方法は、2005年6月26日の掲示板にメモ代わりとして書き込みました。

本文中に[2—5]というように文献番号の範囲を入力するためのノウハウが長いこと不明のままだったのですが、このたび裏技で解決しました。一週間後にはケロっと忘れるのに決まっているので、電子メモ帳にしっかり記録。

Wordで書くよう強制されたProceedingsの原稿に上記のテクニックを早速適用しました。

■ 2006年8月27日(日) 「下妻物語」のパロディ・コメディ

某■■■映画では、ロリータ・ファッションが根っから好きなメガネっ娘のコズエと矢沢C吉語録を座右の書とする元ヤンのレイナが●リ●ル「○○○宅急便」で一緒に働くんだそうだ。○○○頭はレディース愛死天留(あいしてる)の元総長サエコ。つまり、桃子(深田恭子)→ コズエ、イチゴ(土屋アンナ)→ レイナ、舗爾威帝劉(ポニーテール)→ 愛死天留、亜樹美(小池栄子)→ サエコという対応関係。観る気しねー。

パロディーなんかでなく、「下妻物語」をオーソドックスにリメークしてほしい。とりあえず桃子役は新垣結衣ってことでいかがでしょうか。イチゴ役は見当つきません。木村カエラじゃ、ヤンキー役は無理でしょう。「GO」に出演したころの柴咲コウなら適任ですが、もう手遅れ。亜樹美は佐藤江梨子かな。

それはさておき、営利目的のセミナーの講師とか啓蒙書執筆とか、気が進まん。いや、その前に暇がない。丁重にお断りしておこう。

■ 2006年8月28日(月) せいぜい★★

空中庭園」、そう悪い作品ではないけど、好きになれません。鬱陶しい。自分の母親に「死ねば。」を連呼とは。

阿修羅のごとく」もそうだったけど、辛口ホームドラマってどうも苦手だな。

■ 2006年8月29日(火) テストユーザー向けダウンロードページ

VESTAを配布するためのWebページが門馬綱一君のWebサイト内にオープンされました。現時点では、テストユーザーにだけ公開しています。

開発途上版とはいえ、RIETAN-FPとVESTAはすでに研究開発の現場でガンガン使いまくれるくらいrobustです。将来は、heavy-duty use指向のWindows・Mac OS X用64ビット・アプリケーションもリリースします。

ここまで来れば、もう9合目に達したようなもの。抑制条件を自動付加したリートベルト解析、超高速MEM解析、MPF、結晶構造・ピクセルデータの3D可視化を相互連携により実行しうるRIETAN-FPーVENUS(VESTAを含む)は、21世紀初頭に築かれた金字塔として長く輝きを放ち続け、我が国における研究・教育に多大な貢献を果たすと確信しています。

■ 2006年8月30日(水) CHINTAIのコマーシャル

枡野浩一(5月11日参照)がバカっぽい短歌を披露していました。相方は加藤あい。さすがに元妻と息子に関する愚痴をこぼす時間的余裕はなかったようです。

■ 2006年8月31日(木) v0.97.1 → v0.97.4

門馬綱一君から添付ファイルとして送られてきたVESTA、早くもバージョン番号が0.97.4に増えていました。酷暑の中、しゃかりきになって奮闘しているんだなぁ。

■ 2006年9月1日(金) VESTAがますます凄いことになってきた!!!

門馬綱一君はVESTA v0.97.5において、メモリー効率の改善により251×251×251ピクセルの巨大3Dデータを対象とする等値曲面の計算に要する時間を22 sから3.5 sに激減させました。これは6.3倍の高速化に相当します。小規模な計算ならば瞬時に終了。

VESTAはVENDに比べレンダリングの質も大幅に向上しています。とくに等値曲面の平滑性と半透明な等値曲面内のオブジェクトの視認性は、見違えるほど改善されました。

嗚呼、VENDはついに「おもちゃ」を通り越して「ガラクタ」になり果ててしまいました。すでにVICSはVICS-IIの登場により廃物と化しています。諸行無常。VICSとVENDは迷わず成仏してくれ。

なお、VESTAはDV-Xα分子軌道計算講習会8月1日10日25日参照)で披露されます。その時点での最新版が実演に使われるでしょう。3Dレンダリングの質が大幅に向上し、等値曲面関係の処理が見違えるほど速くなったVESTAをぜひ見物してください。受講申し込みは8月31日まで受け付けています。

なんだか「粉末回折情報館」協賛みたいになってきたなぁ。そうだとすると、ちとまずくないか、他の記事の中身が… アカデミックな雰囲気など微塵もないじゃありませんか。

■ 2006年9月2日(土) プレシャーかかりすぎ

XX Conference on Applied Crystallographyのプログラムに目を通したところ、9月12日午前の基調講演が前回と同じく

という順番になっていました。未知構造解析 → 結晶構造の精密化と3D可視化と続くためスムーズにつながるのは事実ですが、世界的に有名な大御所の直後では荷が重い(汗)。VESTAの派手なデモンストレーションで聴衆の度肝を抜くことにしましょうか。

EXPO 2006はすでに完成したのですね。直接空間法も一部取り入れた超弩級ソフトに肥大成長を遂げたと予想しています。

■ 2006年9月3日(日) 最終ステージに突入

VESTA v0.97.6がリリースされました。ついに二次元マップを描けるようになりました。この機能はまだ荒削りで、多くの改良すべき点が残っています。しかし、ここまでたどり着けば、後は比較的楽です。門馬綱一君、連日のバージョンアップご苦労様でした。

RIETAN-FPにしろVESTAにしろ、今後の課題はマニュアルの作成と宣伝・普及活動です。すでに3つの催しで紹介しましたし、来月にはXX Conference on Applied Crystallography9月2日参照)で講演します。さらに現時点で開催が決まっている講演・講習会だけで4回、開催する可能性がきわめて高いのが1回。営利目的の企画は辞退したんですけどね。特性X線、放射光、中性子、電子状態計算の催しからお声がかかっています。一部は門馬君の協力を仰ぎ、なんとか乗り切るつもりです。

このように、ほぼ同時期に完成するRIETAN-FPとVESTAのペアは、相乗効果も手伝って、空前の大ヒット間違いなし。忙しくなりそうです。

それはそうと、本掲示板で講演会や講習会のお知らせと宣伝がやたらに増えるのはまずいなぁ。バラエティーに富んだ情報を提供していかないと、広告塔の役割を果たせなくなります。ネタ探しが本当に大変。ここで取り上げてほしいという話題がありましたら、ぜひ教えてください。

■ 2006年9月4日(月) 増刷通知

粉末X線解析の実際」(朝倉書店)の第7刷が刊行されました。大学や企業で粉末X線回折やリートベルト法を使い始める人たちが毎年購入するとみえ、事前の予想を超えたロングセラーとなっています。

本書は(特性X線を用いる)実験室系粉末X線回折に焦点を絞っています。もともとX線分析研究懇談会主催の粉末X線リートベルト解析講習会で配布するテキストを増強して単行本にしたのですから、大学や企業の内部で日常的に使われているポピュラーかつ有用な研究手段をターゲットとするのは当然の成り行きでした。リートベルト解析プログラムについては、国内で圧倒的なシェア(> 90 %)を誇るRIETAN-2000だけを詳述しました。このような実需要を見据えた思い切りのよさが好調な売れ行きの主因でしょう。

ただし、リートベルト法やRIETAN-2000に関する記述一つとっても、本書だけで十分とは到底言えません。紙数が限られている以上、致し方ないのです。しかし、粉末回折情報館(とくにここに列挙した文書、解説、論文)や第三者のWebサイト(たとえばHERMESデータ解析に関する情報RIETAN-2000(+VENUS)による結晶構造解析)が本書に欠けているコンテンツを補完してくれるので、情報不足に苦しむ恐れはまずないはずです。事実、ときどき私のところに届く質問には、「〜のどこそこに書いてあります。」と回答することが多いです。

単行本だけで事足れり、じゃ駄目なんですよ。なにもかも詰め込める訳でありませんし。大体、第2版以降が刊行されないのでは、必要に応じて内容をアップデートできないじゃないですか。売れ行きが悪く、初版止まりの学術書がほとんどでしょう。Webは学術書の中身不足と老朽化を補うインフラストラクチャーとしての役割を立派に果たせます。もっとも、著者自身がそこまで実践している例はほとんど見かけませんが。

■ 2006年9月5日(火) 2段相転移

もっとも大事なことは、発展性のある分野において独創的なコア技術をもつことだ。
「独創する日本の起業頭脳」(集英社)より

発展性のある分野に身を投じなければダメ、独創的でなければダメ、コア技術と呼ぶに値するものでなければダメ。論理積ですから、ハードルは恐ろしく高いです。

物質ばかりでなく、人間も相転移を起こすことがあります。自分の場合、1977年ごろ1回目の一次相転移が、20年後くらいに2回目の二次相転移が起こりました。2回目の相転移以降は、無意識のうちに上記のような文言をブツブツ呟きながら研究してきたような気がします。思い通りになったかどうかは別として。

その結果得られたアウトプットが斯界から認知され、諸分野で活用されているのは嬉しい限りです。たとえば、RIETAN-2000を利用して得た結果を報告する際、引用するよう要請している論文の引用回数は8月28日現在、451に達しています。

そこまでたどりつくために犠牲にしたりあきらめたりしたことが多いのも事実で、あまり胸を張ってばかりはいられません。しかし、己の才の貧しさと気力・体力のなさを思えば、もう十二分に働いたな、というのが率直な心境です。

■ 2006年9月6日(水) 無用の長物?

VENUS license agreementを一部変更しました。VICSとVENDを使用して得た結果を発表するとき引用すべき文献を指定しただけです。といっても、VICS-IIがリリースされた今、VICSの利用者は皆無でしょうから、この文献は事実上VENDを利用した場合にしか引用されないはずです。

実際問題として、一度VESTAを使うと、VENDには戻れません。isosurfaceレベル変更に要する時間、isosurfaceの平滑性、isosurface内部の結晶模型の視認性(二つのopacity parameterのおかげ)、等値曲面上の彩色の美しさ、GUIの使い勝手の良さ、どれをとってもVESTAはVENDを凌駕しています。もはや廃物同然のVENDのlicense agreementを明記しても仕方なかったかな。

いずれVICSとVENDの後継ソフトであるVICS-IIとVESTAに対するlicense agreementも明記すべきですね。J-PARCに対する規制を実施しており、VICS-IIについては引用すべき文献がないという状況も考慮すると、VENUSシステムを構成する各ソフトのlicense agreementはいずれ明快な形で提示し直さねばなりません。こりゃー大変だ。

■ 2006年9月7日(木) お粗末、Microsoft Update

DELLのモバイル・ノートPC(XPS M1210)が届きました。ネットワーク関係の諸設定を行った後、Microsoft Updateでチェックしたところ、49個もの更新プログラムのダウンロード・検証・インストールが必要だと判明しました。いったんは更新を開始したものの、長時間かかりそうなので、途中でキャンセル。

それにしても、Microsoft Updateによる更新って、どうしてこんなに遅いんでしょうか。

■ 2006年9月8日(金) グレース・ホッパー曰く

私にとって、プログラミングは果敢な知的探求という意味をもつ行為である。

私もまったく同感です。しかし、果敢な知的探求の賜と呼ぶにふさわしいプログラムの製作は至難の業です。

RIETAN-FPやVESTAにおける差別化技術の開発が知的探究活動の名に値するか否かは、今後、両者がどれだけ広く普及し、実際に活用され、研究・開発・教育に貢献するかにかかっています。今のところ、前評判は上々です(9月3日参照)。

VESTAで思い出しましたが、以前から本掲示板で宣伝に努めてきたDV-Xα分子軌道計算講習会(9月8日)は、地方開催の講習会としては前例がないほど多くの参加申し込みがあったそうです。開催直前まで参加登録を受け付けますので、参加希望者はお早めにお申し込みください。

■ 2006年9月9日(土) A souvenir for participants

門馬綱一君と相談し、DV-Xα分子軌道計算講習会中の坂根弦太氏が担当される講義と実習において、VESTAを全面的に使用することを特別に許可しました。これに伴い、VICS-IIとVENDの使用は取りやめになりました。

講習会当日は、実習に用いるパソコンにVESTAをインストールする必要があるので、VESTAを焼いたCD-Rを参加者数分だけ配布し、参加者ご自身にVESTAをハードディスクにコピーしてもらいます。そのCD-Rは、講習会のお土産としてお持ち帰りいただけます。

いくらVENUSシステムの過渡期とはいえ、3世代の3D可視化ソフト(VEND、VICS-II、VESTA)の使い方を30分で学ぶのは相当大変だ、ということに配慮しました。GUIが互いにまったく異なるVICS-IIとVENDの使い方を今更覚えても、数ヶ月後には無駄になってしまいます。また、9月6日にも記したように、VENDとVESTAとではisosurfaceなどの計算速度とrendering qualityの差が大きすぎて、当面はVENDをお使いください、というのも気が引けます。

VENDの出来が今一なのか、はたまたVESTAが秀逸なのか —— どちらもイエスですね。率直に言って、3Dグラフィックスについてはずぶの素人(つまりRubenと私)が劣悪な経済状況の中、ゼロから拵えたVICS・VENDの完成度が飛び切り高いはずがありません。進化の止まった、時代遅れのツールキット(GLUT+GLUI)でGUIを構築するという過ちを犯したのも痛手でした。Javaに飛びつくという愚行に走らなかったのが、せめてもの慰めです。

とはいえ、VICS・VENDが存在していなかったら、VESTAは影も形もなかったに決まっています。VICS・VENDは歴史的使命を立派に果たし、終焉の時を迎えつつあるというのが妥当でしょう。

3D可視化ソフトがこのように変更になりましたので、今すぐにでもVESTAを試用してみたいという方は、ぜひ本講習会に参加してください。昨日も書きましたが、開催日(9月8日)の直前まで受講申込みを受け付けています。

■ 2006年9月10日(日) 山田 優がケバいので、

アキハバラ@DEEP、観に行かないことにしました。レンタルDVDで十分。

■ 2006年9月11日(月) 百円ショップ・アイテム

雨さえ降らなければ、古ぼけたチャリンコで通勤しています。ダイソーで買った200円のミニバッグをかごに入れて。

万一、通勤途上で事故にでも遭って怪我をしたり、最悪の場合、あの世に逝ったりしたとき、傍らに転がっているのがその黒いミニバッグだとしたら、あまりカッコいいもんじゃないなぁ。まあ、お似合いといえばお似合いですが。なにしろチープなもの、只のものが何より好きという性癖の持ち主ですから(2002年3月23日2004年5月15日参照)。

そもそも、私が愛してやまない映画って、皆、いわゆる負け組、敗残者、社会の底辺で喘いでいるような連中が出てくるヤツです。犬童一心の作品(「タッチ」を除く)がその典型例。吾妻ひでおの「失踪日記」を高く評価するのも、その延長線上にあります。心情的には、自分もその一員のつもりです。なにしろ、上昇志向や物欲が限りなくゼロに近い人ですから。

ショッピングも下降志向に合わせないと、バランスがとれません。断固、百円ショップの常連たるべし。今年の11月で11歳となるシビックは、断固、車検を取るぞ!このクルマ、やけに頑丈で、一向に壊れそうにないんだよね。

■ 2006年9月12日(火) Windows用VESTA v0.98

がリリースされました。

DV-Xα分子軌道計算講習会の参加者全員に、この最新版を焼いたCD-Rが進呈されます(9月9日参照)。2D表示機能の完成度がまだ高いとは言えませんが、3D可視化ソフトとしては十分安定かつ実用的に使えるはずです。

なお、上記講習会は9月に入ってからも参加者が増え続け、講演者やサポート要員も含めると、総勢56名に達したとのこと。盛り上がってますねぇ。ボランティアとして客引きに精を出してきた甲斐がありました。異業種との協調を計るという戦略は今後も続行していきます。

XX Conference on Applied Crystallographyでも、短時間ながらVESTA v0.98を実演するつもりです。Giacovazzo大先生(9月2日参照)のオーラを吹き飛ばすには、これしかありません。

■ 2006年9月13日(水) VENUSライセンス合意の改訂

VENUS license agreementを9つの条項に分け、理解しやすい形に書き改めました(9月6日参照)。

VENUSのユーザーはこれらのルールを遵守するようお願いします。判断に困るようなことやわかりにくいことがありましたら、遠慮なくお問い合わせください。

■ 2006年9月14日(木) 赤い酸素

四半世紀にわたり謎だった固体酸素ε相の結晶構造がついに解明されました。詳しくは産総研のプレスリリースSPring-8のプレスリリース、あるいはPhysical Review Lettersオンライン版をお読みください。

放射光粉末回折データのリートベルト解析にはRIETAN-2000が使われたとのこと。誠に光栄です。

■ 2006年9月15日(金) 嗚呼、面倒くさい…

今回のヨーロッパ出張では、出発前に成田空港近くのホテルに1泊。飛行機の乗り継ぎのためにフランクフルトに2泊。内、帰国前夜の1泊は某見本市開催期間中につき、割り増し宿泊料金(140ユーロ)。なんてついてないんだ。

先月入手したばかりのノート型PC(+電源)は意外に重かった。これを担ぐのかと思うと、うんざり。

チェコとスロバキアに近いポーランドの保養地Wislaにたどり着かねばなりません。大体、その道中で英語が通じるんだろうか。

XX Conference on Applied Crystallographyでは、自分の基調講演以外に、まったく専門外の電顕に関するセッション(4件、2時間20分)の座長まで要請されています。厄介な役が回ってきたもんだ。ろくに質問が出なかったらどうしよう。

上記の会議終了後にバスでKatowice駅へ行き、その後タクシーで空港に向かうのですが、フランクフルト行きのルフトハンザ機に搭乗するための時間的余裕があまりありません。

今まで大過なく30回もの外国出張をこなしてきたのだから、今回も大丈夫、どうにかなるさ、と自分に言い聞かせるしかありません。どんなつらい目に遭おうが、すべて何らかの意味で自分にとってプラスになると達観しましょう(2003年3月13日参照)。

9月16日の帰国まで当掲示板は夏休みといたします。といっても、もう帰国前日の15日まで書き進んでしまいましたが(今日の実際の日付は9月7日)。よくもまあ、埒もないことを連日、書き散らしたもんです。

■ 2006年9月16日(土) 畏友、逝去

ヨーロッパ出張を無事終え、帰国しました。旅行にせよ、研究集会にせよ、終始、危なげなく振る舞いました。年の功かな。

ヨーロッパ渡航前日(9月8日)に宿泊した成田のホテルで、アルゴンヌ国立研究所のJim Jorgensenが9月7日に死去したとの報に接しました。Jimは特殊環境下におけるTOF粉末中性子回折の権威でした。

1989年以降の彼との交流、彼から蒙った恩恵、彼にかけた迷惑など、語り出したら切りがないのですが、パルス中性子の世界からきれいさっぱり足を洗った者がとやかく言える筋合いではありません。冥福を祈るのみです。

■ 2006年9月17日(日) DV-Xα分子軌道計算講習会、成功裏に終了

9月8日に開催されたDV-Xα分子軌道計算講習会でのスナップ写真が岡山理科大学・錯体化学研究室の近況報告(9月8・22・28日分)と香川大学・石井研究室のWebページに掲示されています。VESTAによる三次元可視化の実習の様子も窺えます。

さらに、その講習会で使用した教育用分子軌道計算システムEduDVの簡易マニュアルも閲覧・ダウンロードできるようになりました。VESTAがリリースされた暁には、VESTAに関する章も公開されるそうです。

坂根弦太氏が担当した3D可視化の実習(30分)では、

  1. ベンゼンの分子軌道計算(ノンスピン版)
  2. ベンゼンの球棒モデル表示
  3. ベンゼンのHOMOの等値表面表示
  4. ベンゼンの静電ポテンシャルマップ
  5. ベンゼンのHOMOマップ
  6. 酸素の分子軌道計算(スピン版)
  7. 酸素の球棒モデル表示
  8. 酸素の有効スピン密度の等値表面表示

という一連の操作を余裕をもって遂行できたとのことです。もちろん等値表面のレベルや透明度を変えたり、断面を観察したりした上での話です。統合化3D可視化システムVESTAならではの能率と操作性の良さが見事に実証されたといって過言でありません。

■ 2006年9月18日(月) さらなる進化を遂げたEXPO

XX Conference on Applied Crystallographyにおいて、Giacovazzo先生からEXPO 2006では直接法に直接空間法(モンテカルロ法、シミュレーティッド・アニーリング)の手法を一部導入することにより、重原子が含まれていない物質の構造モデルがはるかに導出しやすくなったと伺いました。もちろん直接空間法より高速です。

未知構造解析に興味のある方々には、EXPOの利用を推奨します。指数づけからリートベルト解析までの諸プログラムがパッケージ化されており、絶えず改良が進められています。アカデミック・ユーザーなら無償ですし、民間企業でも直接空間法プログラムDASHの一桁下の価格でライセンスを購入できます。

■ 2006年9月19日(火) VESTA v0.98.1のリリース

RIETAN-2000/FPを利用した粉末回折パターンのシミュレーションが実行できるようになりました。我が国における粉末回折の世界で3D可視化を主要なキーワードにするという戦略に沿って、RIETAN—VESTA間の連携を一層強化しました。RIETAN-2000/FPのシミュレーション機能がGUIを通じて利用できるようになったことの意義も大きいです。

また、本バージョンからコンパイラをVisual C++ 2005に変更しました。

■ 2006年9月20日(水) 結局、倍以上に肥大

第14回セラミックス基礎秋季教室では4・50ページもある講義テキストを受講者全員に配布すると8月12日に書き込みましたが、その程度の厚みには留まりませんでした。結局、講義テキストのページ数は126に達しました。目次からわかるように実用情報満載で、このテキストだけでも十分値打ちがあります。神谷利夫氏にとって電子状態計算は研究手段のone of themにすぎないのですが、種々のシミュレーションソフトに関する造詣の深さには圧倒されました。

それにしても、テキストの印刷代には相当お金がかかりそうです。スポンサーが後ろに控えているにせよ、受講料不要とは太っ腹だなぁ、と感心しました。

■ 2006年9月21日(木) Mac Pro、届きました

CPUは、3.0 GHz デュアルコアXeon 2基。BTOで組んだ、この重装備マシンでIntel Fortran Compiler for Mac OSを使う予定。残念ながら、当分いじっている暇はありません。

VESTAがv0.98.2にバージョンアップされました。C++コンパイラの変更に伴い発生した深刻な障害を取り除きました。

現在、VESTAのメニューおよびサブメニューを改名・再編成中です。次のバージョンでは、現在のメニューに比べ、より合理的なメニューシステムに変わります。

■ 2006年9月22日(金) RIETAN-FPの配布ファイルを更新

Windows版のアーカイブファイル名がRIETAN-FP.tar.bz2に変更になったことにご注意ください。

RIETAN-FP、PRIMA、Alchemyのバージョンは変わっていませんが、Windows版だけIntel Visual Fortran Compiler for Windows v9.1.029で再ビルドしました。

さらに、DocumentsフォルダにXX Conference on Applied CrystallographyのProceedings(Solid State Phenom.)用の論文、Proc_XX-CAC.pdfを参考文献として追加しました。2節がRIETAN-FP、3節がVESTAに関する記述です。2節には、7月19日の最終段落に記した「局所的極値に相当する結晶データを報告」した二論文で使われた放射光粉末回折データの再解析結果を報告しました。RIETAN-FP—PRIMAによるリートベルト・MPF解析によるR因子の激減は衝撃的です。

Documentsフォルダ中のNew_features.pdfもわずかながら修正しました。

■ 2006年9月23日(土) 正式版リリース前に早くもお声が…

7月1日に記したように、SPring-8利用推進協議会の活動の一環として有機・粉末結晶構造解析研究会(代表:大橋裕二東工大名誉教授・JASRIコーディネーター)が今年度に発足しました。その第3回研究会において、私と門馬綱一君がそれぞれRIETAN-FPを用いたリートベルト解析とVESTAによる3D可視化に関する講義と実習を行うよう要請されました。今年の12月ごろ東京で開催する予定です。

日時、場所などが正式に決まりましたら、あらためて本掲示板でお知らせいたします。参加をご検討いただければ幸いです。

■ 2006年9月24日(日) StuffIt Expander 11.0

がリリースされました。今のところ、英語版だけです。ようやくIntel MacでもStuffIt Expanderが使えるようになりました。Universal binary版の開発にこれほど手間取ったのはなぜでしょうか。

■ 2006年9月25日(月) ページランク技術に基づく格付け

Googleによる"粉末回折"、"粉末中性子回折"、"三次元可視化"、"3D Visualization"という四つのキーワードの検索において、本Webサイトが首位に立っていました。"3D Visualization"はなんと「Web全体からの検索」でのトップ獲得です。"3D可視化"では2位でした。

■ 2006年9月26日(月) さらに厚みを増した配布テキスト

第14回セラミックス基礎秋季教室(10月3日、東京工業大学大岡山キャンパス)の講義資料目次に計62ページの第二分冊「分子シミュレーション法 基礎と応用 — ナノ構造物性とマクロ物性の架け橋 —」(河村雄行)と「多目的パターンフィッティング・システムRIETAN-FPの新機能について」(泉 富士夫)などが追加されました。両分冊を合わせると実に188ページ。今後長く語りぐさになりそうなボリュームです。多少手を入れれば、単行本になりますよ。いっそ、そうしたらいかがでしょうか。

■ 2006年9月27日(水) 負荷かかりすぎ

Wisla滞在中は、これまで見たこともないような素晴らしい部屋に宿泊させてもらい、おいしい料理をたらふく食べ、excursionのディナーではダンスまで楽しみ(?)、英気を養ってきたにもかかわらず、最近、どうも体調が優れません。疲弊感がいつまでも消えない。軽い風邪も引きました。色々な方々(自作ソフトのユーザーも含む)の期待に添うべく精一杯頑張っているのが、心身への重い負担になっているようです。リフレッシュの必要を感じます。

「ストロベリーショートケイクス」でも観ようかと思いましたが、遠くまで出かける気力などないので、魚喃(なななん)キリコの原作「strawberry shortcakes」を何回かに分けて読みました。

4人の女性(フリーター、デ●●ル嬢、OL、イラストレーター)の鬱屈した日常を淡々と描いた作品。一種の悽愴感が漂っている絵は見事ですが、若い女性の一喜一憂や意識の流れの細かい描写には没入できず、最後まで読み通すのが苦痛なほどでした。もっと元気の出るコミックはないのかなぁ。

■ 2006年9月28日(木) 準備中

今週初めから、第14回セラミックス基礎秋季教室での講演に使うPDFファイルを少しずつ作成しています。DELL XPS M1210のスクリーンの横/縦比が1.6とやや横長なので、各ページの大きさもそれに合わせて作り直し。私はAcrobat Readerで無造作にスライドショーを行うのを常としています。PowerPointやKeynoteの類は一切使いません。プレゼンテーションに凝る気が毛頭ないのです。

プルダウンメニューなどを改善した次期バージョンのVESTA(今週末にリリースする予定)のデモンストレーションも実施する予定ですが、時間が足りなかったら省略する可能性もあります。ブーイングを浴びるだろうなぁ、そうなったら。

PDF作成と平行して、12月ごろに東京で開催予定の講演会(9月23日に記した有機・粉末結晶構造解析研究会とは別口)も立案中です。日時・会場・プログラムが確定したら、本掲示板でお知らせします。

同時期に二つ開催というのはさすがに負担が重く、かなり浮き足立っています。有料セミナーでの講義と啓蒙書執筆をお断りしたのは賢明でした(8月27日参照)。

このRIETAN-FP・VESTA人気がバブルにすぎないのか、当分持続するのかは見当がつきません。今はただ、正式版のリリースを準備するとともに、種々の依頼を順次片付けていくのみです。

■ 2006年9月29日(金) Mac Pro、萎え〜

未だにMac Pro(9月21日参照)を放置しているのは、我ながら驚くべきことです。これまでの自分だったらありえないような異常事態といって過言でありません。

年をとるにつれ花粉アレルギーがいつのまにやら直ってしまったように、Mac倦怠期入りしたのか。いや、単に疲れがたまっているだけ —— と思いたい。久しぶりに風邪を引いたのは、そのせいかもしれない。体調が回復したら、早速Intel Fortran Compiler for Mac OSをインストールすることにしましょう。

■ 2006年9月30日(土) 画面キャプチャーにしか使ってませんが

コーレル株式会社がCorel Paint Shop Pro Photo XIを発売していたことに気づきました。商品名に"Photo"が追加されたのは、写真編集・加工ソフトとしての位置づけを強調するためだそうです。Adobe Acrobat 8 Professionalとともに乗り換えアップグレード版を注文しておきました。

■ 2006年10月1日(日) ぜひ予定に入れておいてください

本年12月に催される二つの集会(9月23日9月28日参照)の開催日と場所が次のように確定しました:

  1. 有機・粉末結晶構造解析研究会、第3回研究会: 12月14日(木)、国立大学財務・経営センター キャンパス・イノベーションセンター(東京都港区芝浦3-3-6)
  2. 第3回データ解析技術研究会: 12月18日(月)、三菱総合研究所(東京都千代田区大手町2-3-6)

いずれもRIETAN-FPによる構造精密化(リートベルト・MPF解析)とVESTAによる結晶構造と電子密度の三次元可視化を中心テーマに据えています。交通至便の地を選んでくださった関係者の方々に感謝します。

ご存じのように、RIETAN-FPとVESTAの正式版はまだリリースしておりません。それにもかかわらず、今年に入ってからすでに4回講演を依頼され、明後日の第14回セラミックス基礎秋季教室でも手短に紹介する予定なのですから、RIETAN-FP—VESTAの同時進行的開発がいかに相乗効果を発揮しているかが如実にわかります。我が国の粉末回折の世界において電子・核密度分布の三次元可視化が今や必須テクノロジーとなったことも反映しているに違いありません。上記二つの集会では午後の時間枠を独占し、RIETAN-FPとVESTAに関する、より詳細な情報を提供します。両者に共通の「おみやげ」も用意いたしましょう。

有機・粉末結晶構造解析研究会は放射光粉末回折データを対象とした実習を含む講習会、データ解析技術研究会は三つの講演を含む講演会です。私と門馬綱一君が両研究会で講師を勤めるのは言うまでもありません。中性子回折に関する話は前者で皆無(当然ですが)、後者でさえごく一部ということをあらかじめご承知ください。データ解析技術研究会での講演の内容には、スポンサー様の期待はあえて無視し、X線回折に対する需要の旺盛さと中性子回折に対する一般的関心の薄さをドライに反映させました。逆に言えば、両者は放射光や特性X線で測定した粉末回折データの解析と3D可視化に関心のある方々には見逃せない研究会でしょう。

プログラムなどの詳細については、後日、本掲示板で再びお知らせいたしします。

■ 2006年10月2日(月) MOTTAINAI精神の発露

第14回セラミックス基礎秋季教室でのスライドショーに使うPDFファイルLecture.pdfが完成。スライド総数39枚、ファイルサイズ56.1 MBに達していました。昨日リリースされたばかりのVESTA v0.98.3の実演を押し込むには、相当な数のスライドをスキップせざるをえません。

せっかく大作を拵えたのに、死蔵するのは心残りです。参加者にこのPDFファイルを差し上げることにしましょう。最初のスライド(講演タイトル)にWebページのURLを書いておきましたから、そこでダウンロードしてください。ただし再配布はご遠慮ください。約1週間後には削除します。

VESTAはv0.98.3で完成度が一段と上がりました。本バージョンではメニューシステムを刷新し、

となるように再編成しました。2D Windowは2D Data Displayと改名し、Displayメニューの下に移動しました。ただし、まだ上記のルールに従っていないメニュー(たとえばProperties)が残っています。ViewとDisplayが似たような意味の単語なのも気になります。今後、さらに合理的で、直感的に理解しやすいメニューシステムにするべく磨きをかけていくつもりです。

最近、CrystalMakerのデモ版を少々使ってみたのですが、VEND相当部分が完全に欠けていることから華がなく、もはや時代遅れだなと感じました。結晶構造しか視覚化できないソフトには、もう戻れません。

■ 2006年10月3日(火) CD/DVDエミュレーション・ユーティリティ

DAEMON Tools v4.0.6がリリースされました。私は多数のCD-ROMをiso形式のイメージファイルに変換し、DAEMON Toolsでマウントしています。CD-ROMのバックアップにもなりますし、アクセスが数百倍は高速化します。これらのイメージファイルはMac OS X上でも容易にマウントできます。

ノート型PC用ソニー製リチウムイオン電池の回収騒動が広がっています。不運にも、私名義のノート型PCのうち1台がこれにひっかかってしまいました。面倒だなぁ。そういう目にあった人はソニー製品を買い控えるようになるでしょう。品質管理が不行き届きなのは電池だけでないかもしれませんから。身から出たさびとはいえ、ソニーのイメージダウンと損失は甚大だと思われます。

■ 2006年10月4日(水) 秋季教室、無事(?)終了

昨日開催された第14回セラミックス基礎秋季教室では、201講義室が多数の出席者(参加登録者+日本セラミックス協会関東支部役員)でオーバーフローし、急遽、隣の講義室まで使わせてもらい、スクリーン二つで講義しました。

予想通り、私の講義は時間不足で、かなりドタバタしました。おまけにAcrobat Readerのバグのため、ポインターを動かしているうちにページが変わってしまうことが多く、少々見苦しい講義になってしまいました。レーザーポインターを使えれば、こんな目に合わずに済んだのですが(スクリーン二つのため無理)。対症療法を発見したのは帰宅後でした。

しかし、スライドショー用のPDFをダウンロードするためのWebページを教えたし、VESTAのデモンストレーションもなんとか含めることができました。さらに分厚いテキストも配布したのですから、リートベルト解析や周辺技術に関する情報を得るには好適な講義だったはずです。

ところで、3月14日のサテライト集会の時と同様に、「粉末X線解析の実際」にサインするよう学生に頼まれたのですが、署名だけというのも芸がないですね。何か一言、気の利いたことを書き添えるべきです。宿題としておきましょう(二度と頼まれなかったりして)。

■ 2006年10月5日(木) 脳天気な悩み

フラガール」、観に行くか、止めておくか —— 迷いに迷っています。

一昨日の第14回セラミックス基礎秋季教室で一緒に講演した神谷利夫氏が昨日、東京工業大学挑戦的研究賞を受賞されました。受賞テーマは「酸化物半導体特有の電子構造を利用した光電子デバイスの開発」です。応用セラミックス研究所では初めての受賞とのこと。おめでとうございます。

■ 2006年10月6日(金) 厳密にはフライングですが…

VESTAは正式版リリース前にもかかわらず、どんどん活用され始めています。9月8日のDV-Xα分子軌道計算講習会でVESTAによる3D可視化の実習が大好評を博したのはご存じの通りです(9月17日参照)。来年の1月24日(水)に東京工業大学大岡山キャンパスで開催されるDV-Xα分子軌道計算講習会でも、やはりVESTAを用いた実習が行われます。年に2回ずつ開かれている同講習会の定番メニュー化しそうな情勢です。相対論版DVSCATが公開された今、500名を超える会員を擁するDV-Xα研究協会でVESTAが広く使われるようになることがもたらす相乗効果は相当大きいはずです。

さらに、私が知っているだけでも、VESTAの利用法やそれで描いた図が2冊の書籍に掲載されることになっています。上梓され次第、当掲示板でお知らせします。私自身も近い将来、分担執筆する書籍でVESTAを紹介するつもりです。

また12月に開かれる二つの研究会(10月1日参照)の参加者には、RIETAN-FPに加えVESTAのダウンロード権を与えることにしました。両ソフトの正式版がそれらの研究会までにリリースされる可能性はゼロなので、いち早く試用したいという方はぜひご参加ください。

VESTAの勢いは長年にわたって持続するでしょう。研究ばかりでなく教育にも大いに活用されるに違いありません。無料で、普通のWindows機で実行でき、コマンド不要のGUIを備えたソフトであり、かつエンターテインメント性が高いことが大学教育の場において有利に作用します。学生自身のPCに自由にインストールできるのもVESTAの強みです。粉末回折データの解析に比べるとマーケットがはるかに巨大ですから、いずれはRIETANを越える知名度を獲得すると予測しています。

■ 2006年10月7日(土) 自分自身があの世に逝きそうな気が…

アルゴンヌ国立研究所のHinks博士から、Jim Jorgensen(9月16日参照)を追悼するためのシンポジウム"Opportunities in Neutron Powder Diffraction"が12月9日に同研究所で開かれるとのメールが届きました。10月1日の掲示板だけ見ても、その時期に渡米するのは到底無理なのは明らかでしょう。これらだけ片付ければ十分という訳ではないし、相変わらず体調がすぐれないので、今回は残念ながら欠席します。

昨日は終日大雨でした。雨の日は履き古した靴を履いて出勤するのが常ですが、ついに靴の底に空いた穴から水が侵入するようになってしまいました。もう捨てるしかありません。自分の体もあちこちガタが来ていて、この靴と同じようなものです。いつまでもつのか —— そう長くないような気がしてきました。

■ 2006年10月8日(日) ソニー製がペケなのはリチウムイオン電池のみにあらず

年末商戦に向けて発表されたブルーレイ・ディスク(BD)対応レコーダーの録画容量:

いずれも約30万円です。勝負になりません。HD DVD対応の東芝製品でさえ30 GBだというのに…

プレイステーション3の量産が当初より遅れ、出鼻をくじかれたのは、BDドライブに用いる青色半導体レーザーのチップが当初、白石工場で安定に生産できなかったためです。要するに製造技術が確立されていなかった、ということ。

ソニー製薄型テレビの液晶パネルが韓国製というのも情けない。肝心要の中核部分をサムスン(過去に国産技術がここに大量流出したのは周知の事実)に製造してもらい、愛知県稲沢市の工場で組み立て、「亀山モデル」ならぬ「稲沢モデル」と称して販売しているのだそうだ。なりふり構わずとは、まさにこのこと。ものつくりの技術力低すぎ、同時にプライドなさすぎ。

別にソニーの悪口を書き散らしたい訳でも、最近迷走気味のソニーを発奮させたい訳でも、嫌韓で凝り固まっている訳でも、デジタル放送録画用にBDレコーダーを買いたいという訳でもありません。PCのハードディスクに記録したデータを片面2層BDにバックアップするためのドライブを購入するか否かを検討中なので、こういう情報に興味があるだけです。ソニーの重大な失態を知り、BDドライブに飛びつくのは時期尚早という結論に傾きつつあります。

■ 2006年10月9日(月) ユーザーに要求される能力

トヨタはプリウス開発にあたってMathWorksのテクニカル・コンピューティング環境MATLABを徹底活用しました。今やクルマの開発、とくに信頼性の確立には優れたシミュレーションソフトが必要不可欠です。ところがMATLAB一つとっても、それを駆使するには相当な知識・能力・経験が要求されます。別にMATLABに限らず、あらゆる高度な科学技術ソフトについて同じことが言えます。一つのプログラムの使用法やノウハウをマスターするのに2年や3年かかるのは普通でしょう。逆に言えば、業務遂行に欠かせないプログラムを知り尽くしたエキスパートたることが大きな強みになる時代なのです。リストラの憂き目にあうのを防ぐためにも、有用な科学技術ソフトを知悉しておくべきでしょう。

過去の経験によれば、プログラムの習得速度は個人差が甚だしいです(プログラミング能力ほどではありませんが)。見知らぬ土地で車を運転するのに似ており、「方向音痴」の人はなかなか上達しません。きちんとマニュアルに明記してあることを質問してくるような不注意な人がこれに該当します。漫然と弄っているようじゃ、ダメなんですよ。一般に、人を当てにせず、自分の頭で物事を考え、情報収集能力が高く、自力でどんどん前進していける人が素早く上達します。不具合の発見やベータテストで頼りになるのは、大抵こういう人たちです。

10月3日に開かれた第14回セラミックス基礎秋季教室における神谷利夫氏の講演を聴いて感心したのは、多数の分子動力学や電子状態計算のソフトウェアをスイスイ使いこなしていることでした。恐らく計算法(とくに原理、難解な数式、アルゴリズム)を理解する能力が非常に高く、ソフトを使いこなしていくためのカンが発達し、しかも新しい技術を習得するための精神的バリアが低い方なのでしょう。論より証拠、彼の講演の最中にVESTAに追加すべき機能を指摘されてしまいました。

粉末回折データの解析という狭い分野に話を限っても、何本ものプログラムを使い分けていく必要があります。また複雑な不整合構造や磁気構造の解析ともなると、独力で解析する力量をもつ人材は我が国には一握りしかいません。高度な科学技術計算ソフトを開発するのは至難の業ですが、それらを存分に使いこなすのでさえ、そう生易しいことではないのです。そこで、今後ますますソフトウェア理解・習熟能力の高さが重要となってくるのは間違いありません。

最先端のソフトウェアを何本も駆使していくなんて能力的・時間的に無理だ、という人はどうしたらいいのでしょうか。話は簡単です。優秀な専門家の頭脳を借りればいい。教えを乞うか、丸投げするかは難度、時間的余裕、マンパワーに応じて決めればいいでしょう。何もかも自分でやる訳にはいかないのですから、それで一向に構いません。他者と円滑にコミュニケーションをとり、援助を取り付け、順調に成果を産み出すのも能力の一つです。半可通が意味のないことや馬鹿げたことをやって失笑を買うより、よほどましではありませんか。

■ 2006年10月10日(火) 我が物顔

10月7日の悪あがき日記、面白かった。

■ 2006年10月11日(水) VESTA in action

「VESTAは正式版リリース前にもかかわらず、どんどん活用され始めています。」と10月6日に書き込んだばかりですが、VESTAで作成した図二つを含む論文が早くも発表されました:

■ 2006年10月12日(木) 新高速バス路線

土浦・つくば〜大宮駅線が10月1日に開業しました。自宅近くのバス停で乗車できるため、つくばから山形・仙台・盛岡や新潟・長野方面に向かうとき、便利です。本数が少ないのが難点ですが、移動日に乗る分には問題になりません。今後、機会があったらぜひ利用したいです。

■ 2006年10月13日(金) 予想通り、

「嫌われ松子の一生」(TBS、木曜21時)はNHKの朝ドラみたいに退屈でした。ずっと観る気にもならず、他のチャンネルと行ったり来たり。脚本も演出も映画と比べると、月とスッポン。画面をどぎつく彩っていた装飾(花)がない。派手なミュージカルもない。それに主演女優(7月2日参照)が地味すぎます。もう二度と観ない!

■ 2006年10月14日(土) データ解析技術研究会に関する速報

10月1日に記した第3回データ解析技術研究会(2006年12月18日午後、東京)における講演3件が確定したので、お知らせします:

  1. “次世代パターンフィッティング・システムRIETAN-FP” 泉 富士夫(物材機構)
  2. “統合三次元可視化システムVESTA” 門馬綱一(東北大)
  3. “ゼオライトおよび関連物質の非経験的構造解析” 池田卓史(産総研)

一般ユーザーにとって時期尚早なパルス中性子関係の話題は皆無ですから、ご安心ください。今すぐにでも活用できそうな技術情報ばかりです。

目玉は池田氏の講演(70分)です。結晶構造の精密化や3D可視化ばかりでなく、X線回折強度測定から構造モデルの導出に至るまでの一連の測定・解析に関する知識が一挙に得られます。これから未知構造解析にチャレンジしようとする方々にとっては、魅力的な講演でしょう。

興味をお持ちの方はスケジュールに入れておいてください。二ヶ月以上先の研究会なので、本日のところは、とりあえずこれだけ。より詳細な情報は今月末ごろ当Webサイトに掲示します。

■ 2006年10月15日(日) 自分の性癖、よく把握してます

そろそろMac Proを使い始めますが、既存のPower Mac G5と使い分けたいので、使用経験のないuniversal binaryを優先的にインストールする方針です。まずはCocoaアプリケーションといきたいところ。そこで、TeXShop-2.10beta2MacTeX(TeXLive-teTeX)を先兵として送り込み、橋頭堡を築くことにしました。数式と引用文献だらけの長大な英文文書をこの組み合わせで執筆しようという訳です。地味で面倒な苦役ですが、ソフトの目新しさと使いやすさにつられて最後までやり遂げると踏んでいます。あの出来の悪い腐れソフト(MS Word)だったら、すぐ投げ出してしまうに決まっていますが…

トレーニングを兼ねて、自宅のiMacにインストールしてみました。早速、ひな形のファイルをtypesetしたところ、生成したPDFファイルが自動的にプレビューウィンドウに表示されました。あっけないほど簡単。TeXShopの開発には複数の日本人も参加しており、メニューの大半やHelpなどが和訳されています。編集ウィンドウ(エディター)は日本語も表示してくれます。DVIファイルでなくPDFファイルが直接出力されるというMacスタイルを採用しているのが、とくに気に入りました。

ひな形のLaTeX文書ファイルを変更していて気づいたのですが、英文を書く場合、

¥usepackage[english]{babel}

という一行をプリアンブルに入れておかないと、エラーとなります。TeXShopの使用にあたって注意すべき点はそれだけでした。

残念ながら、TeXShopで日本語文書を書くチャンスはほとんどないはずです。日本語文書のほとんはWordで書くことを要請されるからです。学会や出版社などからの依頼原稿には、たいていそういう制約が付いています。だから当面、pTeXはインストールしません。

■ 2006年10月16日(月) Windows用gnuplot 4.2rc1

ここからダウンロードできます。正式版のリリースも近いでしょう。

■ 2006年10月17日(火) 苦しい言い訳

国策に沿った研究が所管官庁や所属組織から歓迎され、予算も人も付きやすいのは明白です。過去・現在・未来、不変の一般法則。しかし、そんな自発性に欠けたトップダウンの仕事ばかりに精を出していると、必然的に実社会から遊離し、大なり小なり税金を無駄遣いし、雑用にまみれる羽目に陥り、ひいては世のため人のため自分のためにならないので、大型装置・施設を必要とせず、コスト-パフォーマンス最高で、しかも実際に社会に貢献すると信じている仕事、すなわち科学技術ソフトウェアの自主開発に能う限り注力する —— これが私の研究スタンスです。

国策の遂行に取り込まれぬよう極力努めているのですが、成り行き上そうも行かないことが多く、昨年夏以来、苦闘を続けています。もちろん本掲示板や依頼講演などでは、自発的な仕事の成果をもっぱらアピールしています。

(私にとって)余計なことをやらずに済むなら、RIETAN-FPのリリースは疾うに完了したはずですが、未だにその目処が立っていないのはご存じの通り。営利企業の社員でないのだから、いくら遅れようが構わないのでしょうが、少々焦り気味の今日この頃です。

■ 2006年10月18日(水) TeXShopに感動

Mac用TeX文書作成環境TeXShop-2.10beta2を本格的に使い始めました(諸般の事情からPower Mac G5上で)。MacWiki - TeXShopで豊富な日本語情報が得られます。

ベータ版ですが、安定に動いています。エディターとpreviwerの使い勝手(とくにCommand+クリックによるsynchronizationと入力時自動スペルチェック)が良く、typesetは超高速で、快適そのもの。これが無料とは信じ難い。LaTeXだったら過去の蓄積(知識、経験、LaTeX文書ファイル、書籍)が相当あります。Wordアレルギーの私がさしたるストレスなしに英文ドキュメントを書き上げるには、やはりLaTeXに頼るしかありません。

どんな知的レベルの人にもぴたりと適合するワープロなんてないんですよ。WordがダメなのはDTPに不向きな一般ピープル向けソフトなのにもかかわらず、めったに(あるいは絶対に)使わない機能がやたらに多く、どこでどんな機能が使えるのかがわかりにくく、しかも印刷出力(とくに上付き・下付き文字と数式)が汚すぎることです。文献、数式、章・節・項の相互参照機能も劣悪。少なくとも私には、使い勝手が悪く、鈍重で、美的センスに欠けたおバカソフトとしか思えません。おバカ映画は大好物ですが、おバカソフトには反吐が出ます。こんな駄作が世にはびこるとは —— 圧倒的多数のユーザーがそれで満足しているということなんでしょうね。「悪貨は良貨を駆逐する」の典型例。

■ 2006年10月19日(木) LaTeX2εは日々進化していた!

我が輩はLaTeXに詳しい、と自慢したばかりですが、それは過去の話で、今となっては間違いだということが判明しました。

プリアンブルに

¥usepackage{txfonts}

あるいは

¥usepackage{pxfonts}

という行を入れると、数式も含めた全文がそれぞれTimes系とPalatino系のフォントに変わるんだそうです。同じくプリアンブルに

¥usepackage{bm}

と書いておけば、数式モードにおいて¥bmというコマンドでイタリック・ボールドの書体を指定できるようになります。行列やベクトルを表すのに使えます。

こういう技は知らなかったなぁ。恥ずかしい。

■ 2006年10月20日(金) 己の魂が宿るもの

連日、LaTeX文書にかかりっきりです。昨日はAMS-LaTeX packageを使ってみました。行列(pmatrix環境)や複数行にわたる数式(split環境)の記述に役立ちます。

大分気合いが入ってきたので、このまま最後まで突き進めそうです。今月と来月は居室に引きこもり、雑用は放置し、これに集中します。

いったい何を書いているのか —— 別に隠し立てするつもりはありません。12月14・18日に開催される二つの集会(10月1日参照)の参加者に進呈するRIETAN-FPのマニュアルです。両集会の後も少しずつ改訂を重ねていくため、ベータ版の配布ファイルに含めないことにします。

このドキュメントはこれまであちこちに散在していた情報を一挙に得るのに有効なため、大いに歓迎されるものの、すべて英語で書かれていることで英語を苦手とする人たちを落胆させるでしょう。

RIETAN-FPは商用ソフトでなく、しかも自分の分身の如き存在なのですから、私の好みに忠実に従うことにしました。日本語だろうが英語だろうが執筆に要する時間は同じようなものですし、漢字、仮名、英数字、ギリシャ文字などが混在した文書はあまり美しくないというのが私の持論です。そう、国際的に使われてほしいから英語で書くのでなく、単に見た目がきれいだからそうするまでのことです。要するに純然たる個人的趣味の産物。人様のことなど眼中にありません。

ソフトは自分の分身 —— 肉も血もないソフトにも己の魂が宿っています。だからこそ、VENUSはJ-PARCでの只働きを拒絶しているVENUS license agreement、12.2参照)のです。太字の文、主語が「私」でなく「VENUS」であることに注目してください。

よくよく考えるに、ソフトそのものだけでなくマニュアルも自分の分身です。だからこそ、RIETAN-FPのマニュアルは腐れワープロソフトで書かれるのを嫌がっている10月18日参照)のではないでしょうか。ウ〜ン、納得。

■ 2006年10月21日(土) もちろんジョークですが…

当ホームページの最近3000件のアクセスを解析したところ、Mac OS Xの割合が瞬間的に10%にまで落ち込んでいました(Mac OSは0%)。すぐに11%に戻りましたが、遠からず一桁台に定着すると予想しています。Macファンとしては寂しい限りです。

かくなる上は、Windows・Linuxユーザーにはできるだけ訪問を控えるよう要請し、Macユーザーには少なくとも朝昼晩1回ずつ閲覧してもらうしかありません。ぜひ協力してください。

■ 2006年10月22日(日) 絵に描いた餅、机上の空論

橘木俊詔は「格差社会」(岩波)において、不平等化が拡大している日本社会への処方箋として、

  1. 同一労働・同一賃金の考え方の導入
  2. 最低賃金の引き上げ
  3. 公共部門によるニート・フリーターの職業訓練と職の斡旋
  4. 地方支援策としての企業誘致の基盤作り、医療・介護施設の充実、農業生産の効率化、自立支援
  5. 奨学金制度と公教育の改革
  6. 生活保護・失業保険制度の見直し
  7. 所得税の累進度の引き上げ
  8. 消費税率の引き上げ(15%程度)と累進性の導入による年金改革

を提案しました。

これらの一見もっともな政策が実際に有効か否かはさておき、いずれもすみやかに実現するとは思えないものばかりです。たとえば参院選を来年夏に控えた与党が、それまでに消費税率を上げる可能性は事実上ゼロです。1、7、8のような既得権を奪う政策も打ち出しにくいでしょう。それに、本書は今や773兆円にも達する日本の借金の返済には無頓着です。借金を少しでも減らすのが最優先すべき課題でしょう。政府支出の増加を伴う政策を禁治産者同然の国に提案しても、次第に格差是認の姿勢を顕わにしつつある安部政権下で、すんなり実現するはずもありません。

政府が手をこまねいているうちに経済・地域・階層格差が一層拡大していくような気がします。それがグローバル化の大波に飲み込まれた日本社会の現実です。

■ 2006年10月23日(月) Power Mac G5上でTeXShopを使いまくる日々

忘れていたことを次第に思い出してきました。新たに覚えたことも多い。快調に飛ばしています。この調子だと、Mac Proは来年までほこりをかぶっていることになりそうです。

長く複雑な数式を入力するときのコツ:少数の部分に分割し、それぞれ少しずつ入力してはtypesetし、エラーが出なくなったことを確認後、次に進む(Slow and steady)。Typesetは瞬時にして終わるので、かなり能率的。

■ 2006年10月24日(火) タイトルからして汚すぎ

のだめカンタービレ」、笑いがすべってますね。上野樹里嫌い(2004年10月28日参照)だから、けなしている訳じゃありません。どうもクラシック音楽とお笑いは相性がよくないようです。

それはそうと、研究本館(並木地区)1階の掲示板に1年以上貼られたままになっている上野樹里のポスター、いくらなんでも、もう剥がしてくれたんだろうなぁ。最近、研究本館にほとんど足を踏み入れてないので、分かりません。明日、調べよう*。


*(注) 案の定、依然として掲示されていました。隣の柔ちゃんのポスターともども、ぜひ処分してほしい。

■ 2006年10月25日(水) いよいよ山場

本日からプロファイル関数のsubsectionに取りかかります。モデル関数に含まれる他の因子・関数はすべて書き終えました。このsubsectionが片付けば、リートベルト解析の章は峠を越したことになります。

MEM・MPF解析の章については、すでに詳細なLaTeX文書(Multi-purpose pattern fitting system RIETAN-200中の14(s))が存在しており、それを再編集するだけで済みます。TeXShopのおかげで、フラストレーションはほとんど溜まっていません。次第に展望が開けてきました。

大分ペースが上がってきたので、次の週末はかつての得意技(休日出勤)を繰り出す予定です。

■ 2006年10月26日(木) 対症療法(メモ代わり)

TeXShop実行中にtypesetを行い、入力ミスのためにエラーが発生したとしましょう。たとえLaTeX文書ファイル*.tex中の誤りを適切に修正したとしても、正常にtypesetできないことがあります。

そういう場合は、ファイルメニュー中の"作業ファイルを削除"を選ぶか、control-command-Aを押して補助的ファイル(*.aux、*.logなど)をゴミ箱に捨ててやると、正常にtypesetできるようになります。詳しくは、

TeXShopヘルプ → 上級向けのヘルプ → 作業ファイルを削除する

をお読みください。

■ 2006年10月27日(金) Firefoxのメジャーチェンジ

Internet Explorer 7正式版の出荷に先だってFirefox 2がリリースされました。

■ 2006年10月28日(土) VESTAの懐の広さを再認識

単結晶X線解析では直接法により位相問題を解いて近似構造を導出した後、フーリエ・D合成を通じて電子・差電子密度の空間分布を調べるのが常套手段となっています。また、重原子法ではパターソン関数の分布を知る必要があります。二次元マップを何枚もプロットし、それらを一枚一枚チェックするのが常です。VESTAのような3Dグラフィックソフトを用いれば、パターソン関数、電子・差電子密度の三次元分布を手軽に理解でき、構造モデルの構築や修正の能率が大いに上がります。

単結晶X線解析用ソフトウェアはSHELXの一人勝ちがすっかり定着したといって過言でありません。また、WinGXは、SHELXで得た解析結果からパターソン関数や電子・差電子密度のファイル*.fouを出力する機能を備えています。そこでエジンバラ大学極限環境科学センターの小松一生氏にお願いし、*.fouをファイル*.grdに変換するためのプログラムfou2grdを彼のWebサイトKom's homeで公開していただきました。What's newでリンクが張られています。小松氏は門馬綱一君の所属する研究室の先輩です。

もちろんVESTAは*.grdを直接読み込み、3D可視化できます。

VESTA(VEND)の活躍する舞台は結晶構造解析や電子状態解析の世界に限定されてはいません。VESTAは原理的に平行六面体中の任意の物理量の空間分布を視覚化しうることを強調しておきたいです。単位胞だけが平行六面体だという訳ではありません。メモリーが許す限り、実質的に地球規模の大きさの箱でも扱えます。門馬君と私がVESTAの開発に熱中している一因は、この種のソフトがエンターテインメント性に加え汎用性に富むことに気づいたことです。

■ 2006年10月29日(日) Good timing!

フラガール」を観に行くのはあきらめ、土日ぶっ通しでTeXShop三昧。

Intel Macにも対応したpLaTeXインストーラpLaTeX Quickが登場しました。

皆様のご協力の甲斐あって、本ホームページのMac OS Xによるアクセス割合がなんと13%にまで回復しました(10月21日参照)。Macユーザーの積極的な訪問を歓迎します。

■ 2006年10月30日(月) 須藤俊男先生の思い出

TeXShopでRIETAN-FPのマニュアルを作成している間に、これまで営々と書きためてきたファイル(HTMLも含む)がいかに膨大な量に達しているかを再認識しました。これらのファイルに散在した情報を集大成すれば、非常に有用かつ教育的な文書が完成するはずです。

須藤俊男先生の名著「粘土鉱物学」(岩波書店)の大半はご自分の研究成果からなっていたそうです。昔はそういうスケールの大きい博覧強記の学者が少数ながらおられました。そこまでいかなくても、過去の情報資産をなんらかの形でまとめて世に送り出すのは有意義だと思われます。いつの日かそうしたい —— とは言ってみただけのことで、浅学非才かつ怠惰な私は、結局それらを放置したまま朽ち果てるんでしょうな。面倒くさくて、やってられません。

20数年前の話ですが、須藤先生からのご依頼で、RIETANの前身のプログラムを使ってsuriteという南米産粘土鉱物の粉末X線回折パターンのシミュレーションを行ったことがあります。当時、先生は東京教育大を定年退官されていたため、非常勤講師として講義しておられた早大でお会いしてsuriteに関するお話しを伺いました。当時、先生は結石や胆石などの生体が造り出す鉱物に興味をもっておられ、それらのお話も伺ったと記憶しています。

その後、先生の構築された構造モデルに基づいて計算し、XYプロッターでプロットしたのですが、なぜか実測のパターンとのフィットが悪く、結果としてうまくいきませんでした。先生にはありのままを報告いたしました。普通だったら、それで互いに縁が切れるところですが、以後、先生から毎年、年賀状が届くようになりました。それは先生がお亡くなりになるまで途切れることなく続きました(追悼文はここ)。驚くほどまめで律儀なお方でした。自分のところに届くメールに返事も出さないことが多い私とは大違いです。恐らく、先生はときどき色々な雑誌に掲載される私の解説をお読みになり、激励の意味で年賀状を送ってくださったのではないでしょうか。

須藤先生が描かれたsuriteの構造モデル図(何枚かの紙を貼り合わせた、かなり大きな図面)は研究室の棚のどこかにしまい込んだはずなのですが、見当たらなくなってしまいました。何回か探したのですが、どうしても見つかりません。今となっては、惜しい物をなくしたという気持ちで一杯です。それを額に入れて拝んでおけば、もう少しましな仕事ができたような気がします。

■ 2006年10月31日(火) 第3回データ解析技術研究会

第3回データ解析技術研究会に関する情報を講演と講習のお知らせに掲示しました。

茨城県中性子利用促進研究会の活動の一環ではありますが、「茨城県」および「パルス中性子」とは事実上没交渉な講演ばかりを取り揃えましたので、ご注意(安心?)ください。中性子回折は化学結合を視覚化できませんし、一般に未知構造の解析に適していませんから、必然的にそうなります。もっとも、RIETAN-FPは粉末中性子回折装置(具体的にはHRPD)のトライアルユースには使えるので、そこでは威力を発揮するでしょう。

12月14日に開催される有機・粉末結晶構造解析研究会、第3回研究会(近日中に詳細をお知らせします)では、理研の橋爪大輔氏とともにRIETAN-FPとVESTAの実習を行います。一方、データ解析技術研究会ではその代わりに産総研の池田卓史氏の講演が入っています。RIETAN-FPとVESTAのベータ版、RIETAN-FPのマニュアルをお土産として差し上げるのは、両者に共通です。もちろん両方、出席されても構いません。奮ってご参加下さい。

RIETAN-FPのマニュアル、少しずつページ数が増えてきました。本掲示板で配布を大々的に予告した以上、まじめに取り組まざるを得ません。学生だって、試験がなければ勉強しないでしょう。

見るからに私が夢中になりそうなソフト(TeXShop)を使ったのも、執筆が着実に進んでいる要因です。あの愚鈍なワープロソフトなんぞで書いたら、間違いなく挫折していたと思います。自分をコントロールする術をようやく会得したようです。

■ 2006年11月1日(水) 足踏み

Beqを等価等方性原子変位パラメーター、βを異方性原子変位テンソル、Gを格子の基本テンソルとすると、

Beq = (4/3)(βG)tr

といく関係が成立します。ただし、trは転置行列を表しています。

RIETAN-FPのマニュアル執筆の過程で上の式が記述されている書籍を探しているうちに、ざっと2時間が過ぎてしまいました。予想外なことに、Giacovazzo先生編の"Fundamentals of Crystallography," 2nd ed.(Oxford Univ. Press)に書かれていました。

私にはソースコードに文献を明記する習慣があります。RIETAN-FP中のβ→Beq変換サブルーチンには文献を記載した注釈行は見当たりませんでした。コーディング時(10数年前?)に自分で上の式を導いたとしか思えません。まあどうでもいいか、そんなことは。

■ 2006年11月2日(木) RIETAN-FPの目玉

マニュアルの執筆ですが、ようやく抑制条件つき最小二乗の箇所までたどり着きました。将来的には単なるRIETAN-FPのマニュアルに留まらず、リートベルト法、パターン分解、MEM解析、MPF解析全般の解説書兼プログラミング教本にまで育てていくつもりです。昨日の書き込みからその意気込みが伝わって来ませんか。その式は、正格子と逆格子の基本テンソルから、格子定数と関係する種々の物理量を簡単に導くことができる、ということを示す箇所に記述しました。

RIETAN-FPでは、有機化合物のように非対称単位内の原子が多い化合物において幾何学的パラメーター(結合距離と結合角)に抑制条件を課すのが飛躍的に容易となり、実用性が増しました。サイト数が非常に多くても、通常はたった数行で全抑制条件を指定できます。RIETAN-2000では一行に一つの幾何学的パラメーターに対する抑制条件しか指定できませんでしたから、計100行を越すほどの抑制条件を入力せざるを得ませんでした。

また、金属原子の配位数とイオン半径(無機化合物)やC、H、N、O原子などの共有結合半径(有機化合物)を念頭に置いて抑制条件を一括付加できるようになりました。これはRIETAN-FPだけの機能のはずです。

いずれも、各サイトのラベルをメタデータ化するというアイデアの導入により実現しました。

多数の抑制条件を付加してGauss-Newton法やMarquardt法でリートベルト解析を行うと、最小二乗計算が悪条件となり、初期パラメーター近傍の局所的解に落ち込む危険性が増します(7月19日参照)。粉末回折の分野における最新トレンドは有機化合物のab initio構造解析ですが、過去に論文として発表された有機化合物の構造解析結果の多く(大抵がGSASやFullProfを使用)が局所的最小値に落ち込んだ解を発表していると推定しています。RIETAN-FPでは共役方向法が利用できるので、その恐れは比較的少ないでしょう。有機・粉末結晶構造解析研究会では、RIETAN-FPのこれらのメリットをとくに強調するつもりです。

■ 2006年11月3日(金) ノクターン第2番 変ホ長調 Op.9-2

最近、毎日のようにこの曲を聴いています。優雅ですなぁ。といっても、シャワートイレが自動的にかき鳴らすだけですが…

■ 2006年11月4日(土) My God.....

誰でもそうですが、いくつかのジョブをマルチタスクでこなすのが常となっています。もちろん多重度には波がありますが、最近、ジョブ数が異常に増えています。実のところ、RIETAN-FPのマニュアル執筆はone of themにすぎません。時間が細切れ。そして帰宅後も週末も仕事、仕事、仕事、…

私は聖徳太子ならぬ唯の凡人ですから、マルチタスクを円滑に処理できません(一点に集中するのなら比較的得意ですが)。肉体的疲労、脳の記憶容量のオーバーフロー、ジョブの切り替えのオーバーヘッドのため四苦八苦しており、半ばパニック状態です。

明日締切のCommission on Crystallographic Computing, IUCr Newsletterの原稿提出、到底間に合いそうにないため、エディターに懇願し、11月6日に延ばしてもらいました。優先順位のトップにこれを据え、3連休の間になんとか片付けよう、という目論見です。この原稿、newsletterに相応しからぬ長さに肥大してきました。相当な力作です。

以上、仕事の遅延、会議・会合の欠席、メール未返答、論文査読の辞退&放置、etc.の言い訳でした(^^;)。

■ 2006年11月5日(日) これは便利

TeXShop使用中には、頻繁にCommand-control-Aを押す必要があります(10月26日参照)。このショートカットは実に押しにくいので、Menu Masterを購入し、Command-Dに変えてしまいました。TeXShopのおかげでRIETN-FPのマニュアルが順調に執筆できているのですから、10ドルの投資は惜しくありません。

LaTeXのverbatim環境と¥verbコマンドが入出力ファイル中の行や文字列の記述に適しているため、Tinkに関する章はスイスイ書き進めそうです。

■ 2006年11月6日(月) それはそうと、

「ハチミツとクローバー」10巻、どういうふうに終わったんだ? 読んだ人がいたら、教えてくれい。

■ 2006年11月7日(火) CCC Newsletter

ついに昨晩、

の原稿をエディターに送付しました。wxWidgetsによるGUI構築、C++によるオブジェクト指向プログラミング、VESTAで新たに採用したアルゴリズムや画像処理技術(cell index method、linear combination of two opacity parameters、revised method of calculating isosurface geometryなど)、追加機能を中心とし、8つの節にわたってVESTAの全容を概説しました。

門馬ー泉間で幾度となく原稿をキャッチボールしているうちに原稿がどんどん長くなっていき、それに応じて英文添削に要する時間も増え、往生しました。他の仕事も山積みで、3連休はまったく休めませんでした。あのおバカワープロソフトで原稿を作成するよう要請されていたため、余計なストレスがかかり、疲労困憊。

酸素分子のup spinとdown spinの電子密度をcontrd拡張版で個別に計算し、有効スピン密度を表示した図は、なんと昨日の午前中に作成しました。拡張版を急遽お送りいただいた坂根弦太氏のご協力を感謝します。

正直なところ、日本語の解説より書き甲斐がありました。世界が相手ですし、日本人として初めてこのNewsletterに執筆したのですから。それにも増してうれしいのは、長さに制限がないことでした。思う存分書きまくれました。

ご存じのように、VICS・VENDの英文マニュアルは相当充実したものですが、VESTAのマニュアルはいつ作成できるか、定かでありません。そこで、VICS・VENDにない機能やVESTAにおける改良点はすべて、本記事に明記するよう留意しました。これさえあれば、VESTAを支障なく動かせるはずです。これを一読すれば、VICS・VENDがVESTAに比べ「おもちゃ」にすぎない理由がよく理解できるでしょう。VICS・VENDがタコなのでなく、VESTAが凄すぎるのです。

本記事は12月に東京で開催される二つの研究会(10月1日参照)

  1. 有機・粉末結晶構造解析研究会、第3回研究会: 12月14日(木)
  2. 第3回データ解析技術研究会: 12月18日(月)

の参加者に、RIETAN-FPのマニュアル(鋭意、執筆中)とペアの形で配布します。RIETAN-FPのマニュアルはまもなく50ページを越しそうな勢いなので、紙の形でお渡しするのは無理かもしれません。

■ 2006年11月8日(水) 快調そのもの

RIETAN-FPのマニュアル、標準入力ファイル*.insの説明をほぼ書き終え、ついにA4、50ページの壁を越えました。他の仕事を次々に処理しながらここまで来たのですから、上出来です。

11ポイントのComputer Modernフォントで、行送りが5mm。かなりぎっしり詰まった状態で50ページなのですから、すでにかなりのボリュームです。

私はもともと日本語にしろ英語にしろ、執筆や添削の速さには密かに自信を持っていました。それが最近、年のせいか、とみにのろくなったと感じ、少々落胆していました。ところが、実際は全然衰えていないじゃありませんか。TeXShop様様です。近年、Wordでの執筆を強制される機会がとみに増え、やる気が失せると同時に能率が落ちていたのを、筆が遅くなったと勘違いしていたということが今回判明した訳で、大いに喜んでいます。

あちこちに散在していた情報を一つの文書に集約すると、自分自身も忘れていたような多くの事柄をすっきりした形で提示できます。貴重な資料となるに違いありません。

■ 2006年11月9日(木) MacBook (Core 2 Duo) ついに発売

本当はこれがほしかったんだよなぁ。15.4インチ機種の重量は2.54 kgか。もう少し軽くするのは無理でしょうか。

■ 2006年11月10日(金) 久々のアップロード

阪大の水野正隆氏が作成されたWindows用contrdの最新版を3D Visualization System VENUSで公開しました。

9月8日に岡山理科大で開催されたDV-Xα分子軌道計算講習会では、教育用分子軌道計算システムeduDV(坂根弦太氏作)とVESTAを記録したCD-Rが参加者に配布されました。このたび公開したcontrdはeduDVに同梱したものと同一です。この最新版では、これまでVENUSのWebサイトで配布していた旧版が下記のように改訂されました:

2番目の改良の結果、両者の差分(有効スピン密度)をVESTAで容易に視覚化できるようになりました。

なお、来年の1月24日に東工大で開催されるDV-Xα分子軌道計算講習会では、その時点でのVESTAの最新版を用いたDV-Xα法計算結果の3D可視化の実習が行われます。11月7日に書き込んだCommission on Crystallographic Computing, IUCr Newsletter掲載の記事(あるいはその増補改訂版)も提供する予定です。電子状態計算と3D可視化に興味をお持ちの方は奮ってご参加ください。

■ 2006年11月11日(土) 忘却の彼方

RIETAN-FPのマニュアルを書いていて、自分でも忘れていたことが多いのに驚きました。たとえば標準出力ファイル*.lst中のRR、d1、d2、E(SCIO)、反射リスト中のIobsに出力される4つのマーク('-'、'W'、'H'、'G')、情けないことにほとんど覚えておりません。もちろん、きちんと調べてマニュアルに明記しておきました。

■ 2006年11月12日(日) 置きみやげ? 遺産? 白鳥の歌? まあ、どうでもいいや

俗塵にまみれて生きていくうちに、男女を問わず世知辛く打算に走るようになり、事志と違い大した事業も成し遂げぬまま、脂ぎった中年のオジ、オバを経て、ついには皺だらけの薄汚いジジイ、ババアに成り果てる —— 大方の人間の一生を要約すれば、こんなところです。最終ゴールは名誉も地位も資産も持ち込み不可の冥土。あの世に逝ったとたんに忘れ去られます。諸行無常。

身も蓋もない言い方ではありますが、事実は事実。ごまかしも言い繕いも通用しません。

もちろん私とて例外でありませんが、一度しかない人生、なんとか一味違う振る舞いをしたいと願っているのも事実です。現在、作成中のRIETAN-FPもそのマニュアルも、そういう願望の顕れにほかなりません。葬式不要、戒名不要、神も仏も信じぬ私でも、多少は人生の意義というものを考えています。

週末の間中、ほとんど休息を取らずにがんばったおかげで、どうやらマニュアルが67ページに達しました。次の週末前までに80ページにするのが当面の目標です。interruptさえかからなければ、難なく達成できるでしょう。

■ 2006年11月13日(月) メールアドレスのエンティティ化

私のところに届くメールの9割以上はスパムメールです。本ホームページでは、スクリーン上でコピー&ペーストまでできるよう半角英字で私用アドレスを堂々と晒し、しかもそれをクリックするだけで私にメールを送れるようにしていますが、ここでURLとアドレスをエンティティ化したせいか、私用アドレスにはスパムはあまり届きません。ほとんどがNIMSのアドレス宛です。Webページ中でメールアドレスを全角文字や画像にしている人が多いですが、このテクニックを使えば、まず大丈夫です。

スパムメールがかなり多いので、肝心なメールを捨てている恐れが多分にあります。日本語で具体的にメールの内容を件名に書いていただけば、まず大丈夫でしょうが。

■ 2006年11月14日(火) 気になっていた不具合が解決

TeXShopで気づいていた唯一の不具合、すなわち*.texを再オープンする際、編集ウィンドウのサイズと位置が変わってしまうという障害が実質的に回避できることがわかりました。編集ウィンドウを最適なサイズと位置に設定した後、環境設定... → 書類で「いつも同じ位置で開く」を選択し、「現在の位置に設定」ボタンをクリックするだけです。

これでもう完璧。文句なし。最良の道具を自家薬籠中の物とすることができ、満足しています。

昨晩の時点におけるマニュアル執筆の進捗状況は67 + 5 = 72ページ。順調といってよいでしょう。モデル関数に含まれるパラメータの一覧表は既製のものがそのまま使えますし、多数の引用文献も加わりますから、いずれ100ページを越すのは確実です。Made in Japanの科学技術計算ソフトで、100ページ超の英文(和文にあらず)マニュアルが付属しているものって見たことがありません。皆さんはご存じですか? ほとんどdomesticなソフトしかないんじゃないかなぁ。情けない話だけど。

■ 2006年11月15日(水) 8合目に到着といったところ

疲労のためか、昨日は体調が悪く、77ページで力尽きました。

今日締切の別件を最優先で片付けなければならず、マニュアル作成にあまり時間は割けませんでしたが、どうにか81ページまで進みました。

■ 2006年11月16日(木) VESTAに関する発表

11月20〜23日につくば市で開催されるAsCA'06において、門馬綱一君と私は次のポスター発表を行います:

ポスターはほぼ完成しました。Core timeには私もその場に立ち会うようにしますので、ぜひお立ち寄りください。

■ 2006年11月17日(金) 風邪を引かないようにしなくては

第3回有機・粉末結晶構造解析研究会の開催通知がSPring-8利用推進協議会のWebサイトに掲示されました。第3回データ解析技術研究会の前週、12月14日(木)に東京で開催されます。RIETAN-FPとVESTAの実習を含むため、 定員が40名と、やや少なめになっています。

ご存じの通り、両研究会ではRIETAN-FP、そのマニュアル(鋭意作成中)、VESTAの最新版などを参加者全員に差し上げる予定です。スポンサー様のおかげで、両研究会とも無料となっております。師走の忙しい時期ではありますが、奮ってご参加ください。

■ 2006年11月18日(土) 急がば回れ

RIETAN-FPのマニュアル、引用文献の数が100を軽く越えるので、文献データベースファイル*.bibを作成し、TeXShopからBibTexを呼び出して処理することにしました。*.bibはTeXShop内で編集できます。Menu Masterを活用し、ほとんど左手だけで4つの操作を連続的に実行できるよう工夫しました。

なお、BibDeskというMac OS X用BibTeX文献マネージャーも併用すると、大量の文献を容易に維持管理できます。入力ミスのチェックにも有効です。

今晩、88ページまで進みました。来週の目標は100ページの大台に乗せることです。

■ 2006年11月19日(日) International Tables原理主義者

結晶学の専門用語(日本語)がかなり乱れているのはここに書いた通りです。私は結晶学用語については、とにかくバイブル("International Tables for Crystallography")に忠実に従うよう心がけています。

RIETAN-FPのマニュアルつくりに精を出している過程でInternational Tables, Vol. Cを調べていた際、いわゆるanomalous dispersion(異常分散)は異常な現象でもなんでもないのだから、"anomalous"などという無意味な形容詞はつけるべきでないということ、X線分散の補正項Δf'とΔf''中の"Δ"は不要であるということを知りました。比較的最近出版された日本語の書籍をあたってみましたが、熱振動に関係する物理量の場合と同様、すべてがInternational Tables通りになっているものは皆無でした。

もちろん私は今回もバイブル尊重の態度を貫きました。こういう形式的なことで独自性を貫いても仕方ありません。ついでにmass absorption coeffcientもmass attenuation coefficientに書き改めておきました。英語で書いたおかげで、訳語に悩まずに済んだのはラッキーでした。

■ 2006年11月20日(月) LaTeX賛美の弁

RIETAN-FPマニュアル用LaTeX文書ファイル中で¥maketitleの直後に

¥pagenumbering{arabic}
¥tableofcontents
¥listoffigures
¥listoftables

という4行を挿入するだけで、目次と図表の一覧が5ページにわたり全自動で出力されました。これで一挙に96ページに到達。LaTeXの偉大さにあらためて感嘆しました。

どの言語でプログラムを書くのかが本質的に重要なのは言うまでもありません。たとえばJavaで書かれたメモリー大食いの3Dグラフィックソフトなんて最悪です。VICSとVENDでそういう愚を犯さなかったのは幸運でした。また、時代の流れを読み、VESTAをオブジェクト指向言語C++とwxWidgetsで書いたのは実に賢明でした。

同様に、大量の数式と引用文献を含む、100ページ超の文書は、WordでなくLaTeXで執筆するのが筆者にとっても読者にとっても最良の選択です。多数の引用文献をWordの貧弱な相互参照機能で処理するのは苦役以外の何物でもありません。Wordの数式エディターで拵えた薄汚い数式を次々に見せられるのも、たまったものでないでしょう。

といっても、どこからの依頼でなく、自発的に書いたからこそLaTeXを選択できた訳です。あの低品質ワープロソフト(Word)での執筆を強制するような風潮は愚劣極まりないと思います

■ 2006年11月21日(火) 完成間近の次期バージョン(VESTA)とマニュアル(RIETAN-FP)

AsCA'06での発表のため門馬綱一君がつくばに来ているので、VESTAのメニュー項目に関し最終的な打ち合わせを昨日行いました。12月に開催する二つの研究会(11月17日参照)までにはVESTAを必ずバージョンアップします。ご期待ください。

AsCA'06でのVESTAに関するポスター発表ですが、なんとタンパク質の構造解析に関するポスターで周りを囲まれていました。しかもポスター会場の一番奥という辺境の地。プログラム開発に関する発表がほとんどないため、そうなってしまったのだそうです(さもありなん)。座視するに忍びず、客引きまでして、顔見知りの方々に当該ポスターのところまで来ていただきました。われわれがいろいろな意味で希有な存在であることを再認識しました。

ポスター発表のコアタイムが終わるや否やNIMSに戻り、マニュアル執筆を続行。これまた、両研究会に間に合わせなければなりませんので。といっても、時々邪魔が入り、98ページ(引用文献130)までしか進みませんでした。

■ 2006年11月22日(水) 杞憂

12月14・18日の二つの研究会、内容と配布物が相当重複しており、なおかつ同時期に東京で開催するため、参加者が二分されるのは必至です。内心、閑古鳥が泣くような羽目に陥ったら嫌だなぁ、とビクビクしていました。私がいつも参加者数にこだわるのは、集客能力の無さの露呈が己の存在意義の否定に直結し、活力とやる気を失わせるためです。私はいつも自分の存在意義と研究成果の波及効果を意識しつつ仕事しています。そういう意味では、反響の少なさは死活問題といって過言でありません。

案に相違し、第3回有機・粉末結晶構造解析研究会の方は開催日の約1ヶ月も前に(なんと募集受け付け開始の2日後に!)早々と満員御礼になりました。安堵するとともに、予想を超えた人気の高さに驚きました。

第3回データ解析技術研究会もすでに十分な数の参加者が集まったそうです。こちらはまだ参加登録を受け付けています。RIETAN-FPとそのマニュアル、VESTA、池田卓史氏のご講演のテキスト(かなり充実したものです)も配布します。参加希望者はお早めに登録するようお願いします。

第3回データ解析技術研究会において、われわれは即戦力の解析技術・ソフトについてだけ語ります。何年も経たないと使えない(あるいは予算も獲得できていないような)パルス中性子散乱用装置や、影も形もないソフトウェアには一切言及しませんので、ご心配なく。そんな先走った(あるいは絵に描いた餅の如き)内容では、半月も経てばケロっと忘れ去られるに決まっていますし、第一、ろくにお客が集まりません。人は眼前に置かれたものにしか興味を示しませんから。

■ 2006年11月23日(木) これも時代の流れか

11月19日にInternational Tablesについて記したばかりですが、オンライン版が登場するそうです。Vol. A〜Gまで、総計6000ページがHTMLおよびPDFの形で提供されます。

CD/DVDエミュレーション・ユーティリティDAEMON Tools v4.08がリリースされました。

■ 2006年11月24日(金) 一ヶ月余りにわたる苦闘の末、

RIETAN-FPのマニュアル、ようやく100ページの大台に乗りました。現時点で、総ページ数103、引用文献136。95%完成といったところ。最近、とみにペースが落ちてきたので、ページ数はもうさほど増えないでしょう。もっとも、モデル関数に含まれるパラメーター一覧を付け加えますから、近日中に110ページを越すのは確実です。

今後、RIETAN-FPのようなソフトを自主開発しようという人に参考になるような記述を少しずつ追加していきたいです。今日も、逆格子の基本テンソルG*の要素の標準偏差から格子定数の標準偏差を計算する方法、MEM解析における信頼度因子の計算法、混合物の平均線吸収係数の計算法(これが結構面倒)、Willの2段階法("Powder Diffraction: The Rietveld Method and the Two-Stage Method"が今年、上梓されました)に関して追記しました。粉末回折用ソフト開発の教則本としての利用も期待しています。

プログラマーという人種は文章を書くのが苦手(あるいは好きでない)と、相場が決まっています。私とて例外でありません。プログラマーたる者、マニュアルや駄文を書く暇があったら、プログラミングに精を出し、天賦の才を最大限に発揮すべきだというのが私の信念です。まして100ページ超のマニュアル製作ときたら、東洋の島国の住民にとっては強制収容所での重労働並の苦役なのですから。原稿料もNIMSの業績ポイントも稼げないというのも割り切れない話です。利益なき繁忙とはまさにこのこと。

といって、他人が書ける(あるいは書いてくれる)はずもない訳でして、このジレンマから逃れる術はありません。

■ 2006年11月25日(土) VENUSの波及効果の一例

産業技術総合研究所が構築中の電気化学デバイス用導電性固体材料データベースでは、結晶データをCIFとしてダウンロードできます。同データベースの使用方法(G. 三次元結晶構造図の表示方法)には、VICS-IIによるCIFの3D可視化手順が詳しく説明されています。

以上、同研究所ユビキタスエネルギー研究部門研究部門の野村勝裕氏からお寄せいただいた情報を紹介しました。

■ 2006年11月26日(日) ついに日の目を見ました

VESTAに関するレビューを掲載したIUCr NewsletterがWeb上で公開されました:

VESTAに投入した先進的GUI構築・画像処理技術に関する必読文献となるでしょう。

やはり英文レビューは和文のものと比べて、満足感が倍増しますね。RIETAN-FPのマニュアルと平行してこれを書くのは、本当に大変だったなぁ。門馬綱一君にも自分にもご苦労様でした、と言いたいです。

12月に開催される第3回有機・粉末結晶構造解析研究会と第3回データ解析技術研究会ではRIETAN-FPのマニュアルとともに、このレビューも配布すると11月7日に書き込みましたが、すでに誰でもどこでもいつでもダウンロード・閲覧できる以上、もはやその必要はなくなりました。その文言を取り消します。

■ 2006年11月27日(月) 

RIETAN-FPの英文マニュアルに"Parameters contained in the model function in RIETAN Pro"(9ページ)を追加したところ、ページ数が115ページ(引用文献142)に増えました。大分前に腐れソフトで作成した文書なので、本体に比べ見栄えが悪いですが、当面これで勘弁してもらいましょう。来月開催の二つの講習会ではRIETAN-2000とRIETAN-FPの違いを知るための文書「多目的パターンフィッティング・システムRIETAN-FPの新機能について」(18ページ)も付録として添付しますので、すでに総計133ページに達しています。

RIETAN-FPの英文マニュアルは今後も肥大成長を続け、私が病気になったり、あの世に逝ったりしない限り、最終的には150ページを越すでしょう。どれだけの年月を要するか定かでありませんが、とにかくこの世に遺産として残していきます。

■ 2006年11月28日(火) 2007年発行の本がなぜ…

固体無機化学の良書としてあちこちで推薦してきた書籍の第2版が届きました:

■ 2006年11月29日(水) ついに索引までも…

RIETAN-FPのマニュアルに索引を付けました。TeXShopはMakeIndexを呼び出す機能も備えています。機械的な作業なので、意外と疲れませんでした。

図表一覧と索引の作成時に、ある種の数式(一部数式で表現した化学式)はエラーを引き起こします。今回はRB(LaTeXでは"$R_¥mathrm{B}$"と記述)を索引に入れて痛い目に遭いました。それを索引から除いたら、何ごともなかったようにタイプセットしてくれました。

RIETAN-FP_Manual_11.27.texというLaTeX文書ファイル名だと、MakeIndexが異常終了することもわかりました。RIETAN-FP_Manual.texと改名したところ、問題解決。これがわかるまで、ざっと1時間は費やしました。

昨日はさらに、逆格子の基本テンソルG*の成分6個に関するブラッグ角θの偏導関数を追記しました。それらは微分係数を使う非線形最小二乗法(Gauss-Newton法、修正Marquardt法)に必要不可欠です。表紙の変色した昔のノートの片隅に、式の導出法が詳しく書かれていました。たとえばa*b*cosγ*(= F)に関する偏導関数は

∂θ/∂F = hkd2tanθ

となります。この式を導いたときは、予想外に単純かつ美しい式なので、心から感動しました。(逆)格子定数を含む、おどろおどろしい式となるに違いないと思い込んでいたのです。こうして、逆格子や基本テンソルを使うことの利点が、当時まだ30代だった私の頭に刻み込まれました。

ともあれ、こうした奮闘努力の結果、現時点での英文マニュアルの総ページ数は123(引用文献143)にまで増えました。第3回データ解析技術研究会で配布するマニュアル+付録が140ページを越すのは確実です。

ここまでたどり着けたのはTeXShopのおかげです。鬼も金棒がないと、腕力を振るえません。

しかし、最近の掲示板、TeXShopとマニュアルの話ばっかりで、殺風景なこと極まりなし。マニュアルつくりに没頭した挙げ句、「フラガール」も、あの「エコール」も見逃してしもうた —— 半年後にDVDで鑑賞することにいたしませう。

■ 2006年11月30日(木) 副題: 不可能に挑むナノテクノロジーの錬金術

第14回セラミックス基礎秋季教室で東工大の神谷利夫氏と一緒に講演したとき、今年の夏に執筆した書籍にVESTAで作成した図を何枚か使ったので、出版されたら謹呈する、とおっしゃっていました。最近、その本 —— 細野秀雄・神谷利夫著「透明金属が拓く驚異の世界」(サイエンス・アイ新書) —— が恵送されてきました。

私は当該分野の門外漢であり、専門的なことはよくわからないのですが、本書は非常にわかりやすく懇切親切に書かれており、すらすら読めます。現在、全力で取り組んでいる研究について語るのですから、迫力満点です。筆者のお二方が透明金属の開発に注いでいる情熱がひしひしと伝わってきます。材料科学分野の好著として推薦します。

傍目に見ても、細野・神谷研究室のアクティビティーの高さは群を抜いています。Nature・Scienceに4報も掲載され、教官から学生まで毎年のように賞を取りまくり、その勢いとどまるところを知らず、といった印象。今度、神谷氏に会ったら、この本にサインしてもらいましょう。

論文はもとよりVESTAで作成した図を含む書籍まで活字になったにもかかわらず、VESTA正式版のリリースには至っておりません。二次元データの可視化機能がまだ不十分ですし、マニュアルがありません(11月26日に記した英文レビューがマニュアル代わり)。同じく未完成のRIETAN-FPともども、可及的速やかに世に送り出す必要がありますね。いずれも年末年始が勝負時でしょう。

■ 2006年12月1日(金) とりあえず目次でも眺めてください

12月に開催される二つの研究会で配布するRIETAN-FPの英文マニュアル、ほぼ完成しました。これが目次です。このマニュアルに三つのWordファイルを追加した計147ページ(最終的にはもう少し増える見込み)の文書を配布します。

第3回有機・粉末結晶構造解析研究会(12月14日)の方はWeb上での配布となりますが、第3回データ解析技術研究会(12月18日)では、この文書を印刷・製本してくれるそうです(スポンサー様はNIMS)。これに非経験的構造解析に関する池田卓史氏のテキストが別途追加になります。

このマニュアルは今後も随時アップデートしていきますので、あくまで両研究会向けバージョンという位置づけです。もちろんRIETAN-2000のユーザーにも直接役立ちます。

目次を眺めればわかるように、RIETAN-FPは単なるリートベルト解析プログラムではありません。今やリートベルト法はごくルーチンな研究手段に成り下がり、それで得た成果をいくら発表したところで、とりたてて注目・評価されるような時代ではなくなりました。一般大衆用解析手段といってもいいでしょう。使えて当たり前、使ったところで手柄になる訳でないので、私はもはや、あまり重視していません。まして、リートベルト解析だけ実行する気など、さらさらありません。材料屋や物性屋はともかく、結晶学者にとっては、「商売」にならないのです。個人的には、MPF解析によるR因子の激減や華麗な3Dグラフィックに魅了された結果、古典的な構造精密化法にすぎないリートベルト解析の魅力は急速に色あせてしまいました。

厚化粧しまくってはいるものの、所詮は単なるリートベルト解析プログラムにすぎないGSASとFullProfのためにAlchemyを作成したのも、一部、そういう心情から発しています。人様のソフトとはいえ、付加価値を付けてやろう、と仏心を出したわけです。余談ですが、両ソフトのフーリエ・D合成用出力を利用するだけのデータ処理なのに、数個のバグに苦しめられ、なんとか切り抜けはしたものの、完成まで数ヶ月も費やしました。FullProfに至っては、■■■に関する■■■な■■が■■■いるのに■■としました(武士の情けで伏せ字に)。これらのバグが修正されるや否や、逆にAlchemyは正常に動作しなくなるので、メンテナンスが欠かせません。これがAlchemyの使用法をオープンにしない理由の一つです。

RIETAN-FPの目玉は言うまでもなく、VENUSとの連携による電子・核密度分布の3D可視化と(まだほとんど使っていませんが)MEP解析です。これらの先進的技法をマスターした人は幸せです。飽きもせずリートベルト解析を繰り返すしか能のない研究者を尻目に、当分の間、多くの収穫を手にすることができるでしょう。

第3回データ解析技術研究会の開催は当Webサイトなどでひそやかに通知するに留めていますが、もっと人目に付く学協会の会誌やWebサイトで宣伝してもらえば、150人以上は軽く集まったんじゃないかな。これが無料とは —— 太っ腹もいいところです。

と言っているところに、事務局から知らせが —— 会場が満員御礼になる恐れが出てきたとのこと(11月29日5:30現在)。想定外。参加者の二分(11月22日参照)もなんのその、といった勢いです。もっと広い会場を用意しておくべきだった! 参加希望者は、何をさておき事務局に申し込むようお奨めします。

■ 2006年12月2日(土) Mac OS X用PDFファイル表示ソフト

PDFViewはAdobe Readerより動作が軽快だそうです。v0.13.1以降はプレゼンテーション・モードでスライドショーが行えるようになりました。さっそく講演用に使いたいところですが、MacBookをもってません。残念。

そういえば、第14回セラミックス基礎秋季教室で講演したとき、プレゼンテーションのためにDellのノート型パソコンをカバンから取り出したら、Macじゃないんですか、と怪訝な顔をされました。どうも、泉 = Mac至上主義者、とレッテルを貼られているらしい。いくら私がMacのエンスーでも、重い物を持ち運ぶのは嫌ですよ。

■ 2006年12月3日(日) 再利用可能なセリフ

小泉前首相曰く、「政治家は常に、使い捨てにされることを覚悟しなければならない。甘えちゃいけない。」

「政治家」は何にでも置き換えられるなぁ。良い悪いは別にして。

■ 2006年12月4日(月) 外見がかなり変貌

門馬綱一君がVESTA v0.98.4をアップロードしました。第3回有機・粉末結晶構造解析研究会(12月14日)での実習用にv0.98.5をリリースするための先駆け版です。第3回データ解析技術研究会(懇親会は会場が手狭なため、すでに申し込みを締切ました)の参加者にもv0.98.5を配布します。

メニュー、パネル、ダイアログボックスがかなり変更になると同時に、ツールバーが新設されたため、戸惑うかもしれません。わかりやすく自然な名称や構造になるよう努めました。"Overall Appearance"というダイアログボックス名は、門馬君と私が知恵を出し合って決めた会心作です。

2次元データの可視化機能については、いずれ改善します。

テストユーザーの皆様、不具合の指摘やコメントをぜひお寄せください。

■ 2006年12月5日(火) 人のことをとやかく言えるほど、几帳面じゃありませんが、

一年以上前に原稿を送った単行本(分担執筆)の編集者から手紙が届きました。未だに原稿を提出しないセンセイがおられるため、編集作業に取りかかかれないとのこと。ご同情申し上げます。実のところ、当該書籍のことはケロっと忘れていました。えっ、それ、なんのこと、といった感じ。

まあ、一周遅れ程度のことで驚いたり、怒ったりしませんよ。かつて同様な理由で、出版が2年も遅れた書籍に関わり合ったおかげで、バッチリ免疫ができてますから。グズなことにかけては業界でも札付きの大センセイがずるずる原稿提出を引き延ばしていた、という裏事情を後で知りました。結局、そのお方はにっちもさっちも行かなくなり、別な人が執筆を肩代わり。出版されたときには、私が担当した章はすでに内容が最新でなくなっていましたとさ(涙)。

家訓: 責任を持ってきちんと実行できない可能性のある仕事を安請け合いしてはならない。

■ 2006年12月6日(水) むしろお祝いをもらいたいくらいの心境ですが、

RIETAN-2000を使用して得た成果を発表するとき引用するよう要請している論文の引用回数が、1ヶ月後くらいに500を超える見込みです。Co酸化物超伝導体発見に関するNature掲載の論文(Takada et al., 2003)に激しく追い上げられており、いずれ追い抜かれるのは確実ですが、現時点における2000年以降の引用回数で、NIMSのトップに君臨しているはずです。当掲示板のネタの枯渇に苦しんでいるとき、何度も助けられた話題ですが、なにかお祝いでもした方がいいのでしょうか。

といっても、単なる通過点に過ぎないしなぁ。

最近、切実に感じるのは、自分の書いたものを人に読んでもらうのと、人を集めるのは本当に大変だ、ということです。いずれも、人を引きつける魅力がなければアピールしません。地味なテーマやショぼい内容ではシカトされるだけ。一時、カー娘の試合に多くの観客(いい年こいたオッサンまで!)が押し寄せたのは、マリリンを拝みたいからでしょう。

研究(者)だって、同じこと。光り輝くような魅力がなければ、人気が高まりません。某業界関連集会が一向に盛り上がらず(精々、参加者数2・30名)、「笛吹けど踊らず」状態に陥っているのは、一般に馴染みがなく、講演者の知名度と宣伝が不足しており、しかも研究内容に華がないためです。研究者たる者、自分の論文がどれほど引用され、自分の講演(講義)を聞きにどれだけ多くの聴衆が参集するか、チェックを怠ってはいけませんね。

■ 2006年12月7日(木) RIETAN-FP配布ファイルのアップロードを完了

もちろんSPring-8利用推進協議会第3回有機・粉末結晶構造解析研究会の参加者に配布するためのアーカイブファイルです。

RIETAN-FPの実習用にバッチファイルDD2.batを大改造し、使い勝手を改善しました。

ファイル閲覧用GNUユーティリティless.exeはあまりにも使いにくいので、エディターTeraPadで*.lst、*.dst、*.insを一度に開くよう変更。*.itx中のデータは独田地獄斎(Dr. Hell)作のパターン表示ソフトRIETVIEWで表示することにしました。高品質のグラフは後ほど、gnuplot(貧乏人)、Igor Pro(金持ち)、Excel(かつてのポスドク)などでプロットすればいいさ、というスタンスです。Igor Proは起動が遅く、gnuplotは操作性が悪いんですよ。日々の解析では、高速なRIETVIEWを使う方が快適で、能率が上がります。画面でざっと眺めるだけだったら、これで十分。

もちろんDD2.batをほんの少々編集すれば、他のエディターやグラフ作成ソフトを使用するよう簡単に変更できます。

RIETAN-FPもv1.32bにアップグレードしました。単位胞の体積の標準偏差が正常に計算できるようになりました。

ESRFで測定された[Cr(C7H8)2]C60とD-Sorbitolの放射光粉末回折データの再解析で使ったファイル一式も配布します。リートベルト解析だけでなく、MPF解析の結果も含まれています。XX-CACのプロシーディング(Proc_XX-CAC.pdf)に記載した再解析例二つです。局所的な最小値に落ち込んだ原著論文のリートベルト解析(それぞれGSASとFullProfを使用)に比べ、R因子が劇的に向上する様を目の当たりにすることができます。放射光ユーザーにとって、貴重な解析例兼他山の石となるに違いありません。*.ins中の注釈が日本語なのも歓迎されるでしょう。

なお、配布ファイルにはPRIMAとAlchemyの新バージョンも含まれていますが、これらは従来のVENUSシステムの実行形式ファイルと置き換えて使用するということをお断りしておきます。今回の実習には使いません。

結局、RIETAN-FP関係のPDFファイルは計149ページに落ち着きました。アーカイブファイルRIETAN-FP.zipには116個のファイルが含まれており、28.3 MB(解凍すると58.0 MB)ものサイズに膨れあがりました。

英文マニュアルRIETAN-FP_Manual.pdfについては、参加者の方々にお願いがあります。今回、私はこの長大な文書を推敲する暇がほとんどありませんでした。マニュアル執筆中には他の仕事に忙殺され、TeXShopに慣れるのにも、相当な時間を費やしました。英文校閲にも出していません(有料英文校閲サービスを利用した経験が皆無)。この文書から、私の英作文能力や文書執筆への集中力が推し量れるでしょう(汗)。

このような事情から、RIETAN-FP_Manual.pdfには英文・数式の誤り、不適切な専門用語、理解し難い箇所、スペルミスが多数含まれている恐れがあります。お気づきの方はぜひご一報ください。どんな些細な間違いでも結構です。どうか、お助けください。ご指摘の点はただちにRIETAN-FP_Manual.pdfに反映させることを約束します。

VESTA v0.98.5もすでに完成しています。こちらの配布ファイルVESTA-0.98.5.zip(1.9 MB)は門馬綱一君のWebページからダウンロードしていただきます。そこにはCommission on Crystallogr. Comput., IUCr Newslett., No. 7(11月26日参照)とAsCA'06におけるVESTAに関する発表のポスターのPDFファイル(14.9 MB)へのリンクが張ってありますので、それらもダウンロードしてください。後者にはVESTAで出力した図が多数含まれており、その全貌を理解するのに好適です。

第3回有機・粉末結晶構造解析研究会に参加される方には、一両日中にRIETAN-FPとVESTAのダウンロード用Webページに関するメールをお届けするよう手配いたしました(注: 12月8日10:47に事務局からメールが発信されました)。

なお、第3回データ解析技術研究会の出席者にも、同じアーカイブファイル(多少、改訂される予定)を配布します。同研究会の事務局からの連絡によれば、参加登録申込者が100名に達するまで受け付けるそうです(12月15日現在、まだ受け付けています)。ただし12月4日に記したように、懇親会への参加はすでに締め切りました。

■ 2006年12月8日(金) また、この二人が…

Dr.コトー診療所2006」を何気なく見ていたところ、蒼井 優が夫(忍成修吾)のDVに悩む看護師の役を演じていました。思い起こせば、「リリィ・シュシュのすべて」(2005年5月30日参照)で、蒼井 優は忍成修吾に援助交際を強制され続け、ついには死を選んだのでした。二人とも中学生役でしたけどね。こういう手垢のついた配役というのも芸がないな、と感じました。もっとも、こんな余計なことまで知っている人はほとんどいないでしょうが。

■ 2006年12月9日(土) 忘れがちな規則(メモ代わり)

LaTeXでは大文字+ピリオドで一つの文が終わるときは、大文字とピリオドの間に"¥@"を挿入しなければなりません。さもないと、ピリオドの後ろの空白(つまり文と文の間隔)が単語間の間隔になってしまいます。たとえば文末が"RIETAN-FP."の場合、"RIETAN-FP¥@."と入力します。

終日雨。外出する気にもならず、4つのパターンフィッティング法の比較表(Table S-6)をTeXShopで作成し、RIETAN-FPのマニュアルを2ページ増やしました。これで、RIETAN-FPに関する文書ファイルの総ページ数は151ページに増えました(注:11日朝にアップロードし直しました)。今後も配布ファイルの中身は随意改訂していくことをお断りしておきます。

■ 2006年12月10日(日) 少しは軽くなったのかな

両研究会とも盛会となったのは喜ばしい限りですが、実のところ、オイラは大勢の人の前でしゃべるのが大の苦手なんだよね。顔が引きつり、舌がもつれ、脂汗が流れ、しどろもどろになりかねません。そういう姿を想像したら、意気消沈してしまいました。鬱。

といっても、今更、失踪する訳にはいきません(それこそリストラの対象)。気を取り直して、リリースされたばかりのAdobe Reader 8をDELL XPS M1210にインストール。これでスライドショーを行います。

メモなど取らずに済むように、両研究会でのプレゼンテーションに用いるPDFファイルを参加者全員に進呈します。講演タイトル(1枚目)の下にURLを記しておきますので、各自ダウンロードしてください。

■ 2006年12月11日(月) I will do whatever takes my fancy

先日、すでにリタイアされた、ある大先生と電話で数分間お話しする機会があったのですが、70才を超されたにもかかわらず某社団法人の専務理事としてフル回転で働いておられるとのこと。お前もワシを見習って、今後もずっと頑張れ、と暗にプレシャーをかけられたような気がいたしました。

まあ、己の好きなようにしますよ。人は人、自分は自分。一大組織を取り仕切っておられる方を見習う気など、毫もありません。年末以降は、当面やるべきこと2件(プログラミングと執筆)を片付けることに全力を尽くすだけです。

■ 2006年12月12日(火) 本日発売

奥村晴彦著「LaTeX2ε美文書作成入門」(技術評論社)は、ほぼ3年ごとに改訂されているLaTeX2εの平易な解説書です。この度、第4版が出版されました。もちろん購入するつもりです。

■ 2006年12月13日(水) SENDAI光のページェント

金欠で苦況に陥っているそうだ。安っぽいイルミネーションの数が減るのは、喜ばしい限り。街路樹に電球をぶら下げるのは悪趣味、どこかの猿真似、樹木の虐待、電力の浪費。こんな愚行を繰り広げるのはもういい加減に止めたらどうだ、と叫びたくなります。別に仙台に限った話じゃないけどね。

昨日の午後、第3回有機・粉末結晶構造解析研究会用の圧縮ファイルを配布しているサーバが突然コケてしまい、あせりました。管理者に調べていただいたところ、イーサネットケーブルとハブとの接触不良だったことが判明し、無事復旧しました。明日以降、同研究会の出席者が私の講演で使ったPDFファイルをそこからダウンロードしますし、さらに来週月曜日以降には、第3回データ解析技術研究会の出席者の大半が一斉に配布ファイル+講演用ファイル(計80 MB強)をダウンロードする見込みなので、正常に稼働してくれないとブーイングが噴出してしまいます。

ところで、英文マニュアル(RIETAN-FP_Manual.pdf)の誤りを指摘したメール、期待に反し、まったく届きません。少なくとも数人は報告してくれるだろう、と踏んでいたのですが…

完璧からは程遠いはず。なにしろ、大急ぎで書き殴り、ろくに推敲してないのだから。ということは —— いたずらに威圧感を与えるだけで、誰も読まないってこと? 徒労に終わったか。

VESTA v0.98.6がリリースされました。マイナーなバグの修正です。ただし、明日開催される有機・粉末結晶構造解析研究会の実習ではv0.98.5を用います。

■ 2006年12月14日(木) キャピキャピの女子高生(前作) → 齢九十を越えたお爺さん(最新作)

12月8日に「リリィ・シュシュのすべて」について記したばかりですが、現在公開中の岩井俊二監督作品は、なんと「●●■物語」だそうです。嗚呼。

■ 2006年12月15日(金) 第3回有機・粉末結晶構造解析研究会、無事終了

私の講演は時間不足で、後半は端折らざるを得ませんでした。演習の方は、とにかく4つの解析例が全参加者のノート型PC上で問題なく動くようにするのが目標でしたが、さしたる障害もなく達成できました。

門馬綱一君のVESTAに関する講演と実習は非常に好評でした。VICS+VENDという叩き台が存在したとはいえ、博士課程1年の学生がこのように大規模かつ高度な3D可視化プログラムを作成したことは、驚きをもって迎えられたのでないでしょうか。

事務局から、実質的に1日半で満員御礼となり、その後にもかなり多くの方々が参加を申し込まれたと伺いました。会場が少し狭かったのかもしれませんが、演習まで実施するとなると、40名くらいが限度でしょう。ともあれ、本研究会の人気が上々だったのには、大いに元気づけられました。

■ 2006年12月16日(土) 少しはバランス感覚を働かせないと…

昨年夏開催した日本結晶学会主催「粉末X線解析の実際」講習会以来、私が積極的に関与・宣伝してきた講演会・講習会はしばしば満員御礼となり、参加登録をお断りした方々には大変申し訳ないと心を痛めてまいりました。一昨日に開催したばかりの第3回有機・粉末結晶構造解析研究会は、その一例にほかなりません。会場の教室を急遽変えてもらって、事前の予想を超えた数の聴衆をなんとか全員収容したこともありました(定員倍増伝説参照)。

12月10日にも書き込んだ通り、私は先天的・後天的に人前で話すのが苦手です。どうしてこんなにお客が集まるのか、はなはだ理解に苦しみますが、閑古鳥が鳴くよりはよほどまし。これまでの私の仕事が再評価されたのだと勝手に解釈し、素直に喜んでおけばいいでしょう。

ところで、これらの研究集会をすべて東京で開催してきたのは、関東偏重の誹りを免れません。ワシらの地元まで出向いて来いと言わんばかりの茨城での開催など論外ですが、たとえ交通の便の良い東京で催したとしても、地方からの出張は経済的・時間的に困難なことが多いと察します。

幸運にも、関西で粉末構造解析や3D可視化などの講演会を開催しませんか、という提案がありました。もちろん、一も二もなく賛同。来年4月末に開催することになりました。現在、内容と場所を策定中です。十分広い会場を確保するとともに、できればRIETAN-FPとVESTAの実習も付随的に実施したいですね。ちょうどそのころ、RIETAN-FPとVESTAの正式版がリリースされるでしょうから、時宜を得た催しとなるに違いありません。企画が確定しましたら、改めて本掲示板でお知らせします。

■ 2006年12月17日(日) DD2.batの障害

第3回有機・粉末結晶構造解析研究会の準備をしている最中に、RIETAN-FP用バッチファイルDD2.batの不具合に気づきました。*.insと*.intのペアが置かれたフォルダにサブフォルダが存在すると、DD2.batのダブルクリックしたとき、サブフォルダ中の*.insと*.int(もしbasenameが同じものがあれば)を読み込んでしまうのです。*.insと*.intを含むフォルダの絶対パスを記録したファイルをチェックしたところ、両者がサブフォルダの一つの中に格納されていることになっていました。そのサブフォルダを一時的にデスクトップへ移すと、何事もなかったかのように正常動作します。どうも、コマンドプロンプトのバグに起因するトラブルのような気がします。

そこで、有機化合物の解析例二つのフォルダの階層構造を変えて、配布ファイルをアップロードし直しておきました。当面、*.insと*.intの存在するフォルダにはサブフォルダを置かずにご使用ください。

■ 2006年12月18日(月) 自称、宝の山

今日これから第3回データ解析技術研究会で講演するため外勤します。参加者に配布する文書・ファイルは昨日までに勢揃いしました:

  1. RIETAN-FP v1.32b
  2. [Cr(C7H8)2]C60とD-Sorbitolの放射光粉末回折データのリートベルト・MPF解析例
  3. PRIMA v3.6a(RIETAN-FP専用版)とそのマニュアル
  4. Alchemy v1.1
  5. RIETAN-FPの英文マニュアル+RIETAN-2000との違いを詳述した日本語文書+XX CACのproceedings掲載の論文、約150ページ(製本済みの印刷物)
  6. VESTA v0.98.6
  7. VESTAについての論文を掲載したCommission on Crystallogr. Comput., IUCr Newslett., No. 7のPDFファイル(IUCrのWebページへのリンク)
  8. VESTAに関するAsCA'06での発表に用いたポスター(PDFファイル)
  9. 私の講演(スライドショー)に用いるPDFファイル
  10. 池田卓史氏の講演に関する詳細なテキスト「粉末回折データからの未知結晶構造解析」(PDFファイル、35ページ)

5番は明日、参加者に直接お渡しします(その改訂版が配布ファイルに含まれています)。それ以外は、われわれのWebサイトからダウンロードしていただきます。

このリストを眺めて、喉から手が出るほど配布物を欲しくなった方は、たとえ参加登録してなくても、明日、早めに会場に来てみてください。少なくとも当日欠席した人の分くらいは空席が生じるはずです(100%の保証はできませんが)。万一参加を断られたとしても、上記のファイルのダウンロード法くらいだったら、後で私にメールをお送りくだされば、喜んでお教えします。

では、会場でお会いしましょう。

■ 2006年12月19日(火) 肩の荷がまた一つ降りました

第3回データ解析技術研究会、盛会裡に終了しました。約90名の参加者が集まったそうです。単独研究会開催の行事としては、過去に類を見ない別格の数字に相違ありません。参加費が無料なのにもかかわらず、ソフトと製本済みマニュアルをプレゼントという特典つきなのですから、気前が良すぎます。

企画を立てた本人が言うのもなんですが、中身の濃い豪華な講演会だったと思います。とりわけ、最後の池田卓史氏の講演は情報量が豊富で、迫力満点でした。実際に結晶解析で実績を挙げている若手研究者の講演を含めたのは正解でした。近日中に、彼から放射光粉末回折データの再解析例をもう一つ頂戴し、配布ファイルに追加する予定です。ご期待ください。

RIETAN-FPのマニュアル(なんとカラー印刷!)には度肝を抜かれた、という人が多いです。印刷所に支払った金額を聞いて、びっくり仰天、ずいぶんお金がかかるんですね。背表紙を見てください。"NIMS"の4文字が燦然と輝いています。運営費交付金を有効利用(社会還元)したということで、NIMSは賞賛を浴びるに違いありません。

もっとも、私は当該マニュアルの執筆と二つの研究会の準備に疲れ果てて体調を崩してしまい、まいっています。寄る年波には勝てません。また年末年始にがんばるつもりです。

昨日記した目録に記載のファイルをダウンロードするためのWebページをメモし損なった方は、私にメールをお送りください。直ちにお知らせします。

今日、RIETAN-FPのマニュアルと池田卓史氏のテキストをマイナーチェンジしました。このように、しばらくの間、必要に応じて配布ファイルを更新することがあります(更新の日付に注目してください)。年内にはすべて消去するつもりです。

■ 2006年12月20日(水) NIMSの研究者の方々へ

12月21日(木)の午後、千現地区第一会議室において量子ビームセンター第7回中性子散乱セミナーが開かれますが、私は第3回データ解析技術研究会における講演のダイジェスト版(40分)を発表します。詳しくは、desknet'sの12月19日の掲示をご覧ください。

その際、第3回データ解析技術研究会の参加者に差し上げたRIETN-FPのマニュアル(印刷物)を希望者に進呈します。本セミナー用に約40部確保してあります。

もちろんRIETAN-FPのダウンロード用Webページも私の講演の冒頭で明示します。上記マニュアルのPDFファイルはそこで配布しているファイルに含まれているため、ご自分で印刷することも可能です。ちなみに、マニュアルの誤りや不十分な点の指摘は未だに届いていません。

昨日は本ホームページへのアクセス数がやけに多かったのですが、なぜでしょうか。ご覧の通り、とりたてて人目を引きそうなことは何一つ書き込んでおりませんが…

■ 2006年12月21日(木) My success story

本日の中性子散乱セミナーでの講演が終えました。結局、今年の依頼講演・講義・セミナーはNIMS内部向け3つを含め計11でした。ほぼ月1回のペースで、こなした勘定になります。私のprinciple(営利目的の催しには関与せず)に合致せず、お断りしたのが二つ。己の年を考慮すると、異例な過密スケジュールといって過言でありません。門馬綱一君にも4回ほど協力してもらい、一部の催しではお土産をどっさりプレゼントし、なんとか乗り切りました。

「中性子」という空恐ろしそうな用語は客を激減させるのが落ちなので、中性子関係の集会ではひたすら中性子隠しに走りました。敷居の高そうな「パルス中性子」はもちろん禁句。現時点では仲間内の人たちしか興味をもっていない回折法を看板に据えたら、悲惨な有様になります。閑古鳥がギャアギャア鳴きわめく中で、うなだれながらJ-PARCの前宣伝に励むのは真っ平。それに、J-PARCにおけるVENUSの使用規制を事前通告しているくらい、心が遠く離れているんだよね。

結局、この戦略は大成功。勝てば官軍です。

それにしても、オイラはなんて客引きがうまいんだろう。道を間違ったような気が…

今年は、待望の「第5版 実験化学講座11 回折」がようやく上梓され、RIETAN-FPとVESTAの開発がぐんぐん進展し、RIETAN-FPのマニュアルも完成したほか、先の見通しも立ち、慢性的な体調不良を除けば、順風満帆の年でした。

来年度の行事については、すでに事実上決まっているのが2件、依頼される可能性が高いのが2件、といったところです。今年よりは減るでしょうが、別な仕事で忙しくなりそうです。なお4月末に関西で開催する粉末構造解析の講演・講習会の企画立案は、とんとん拍子に進んでいます。日時と講演者はほぼ確定しました。十分広い会場を確保し、なおかつすべての人々にオープンな催し(もちろん無料!)とするつもりです。

■ 2006年12月22日(金) 由緒正しき略号

RIETAN-FPのマニュアルの引用文献における雑誌名を統一的方法で記載しようと思い立ちました。Chem. Abstr.が採用している略記法を調べたところ、ここが見つかりました。結局、書き換える必要があったのは、次の雑誌でした:

都市名に加え、国名まで書くのだとは知りませんでした。ちなみに、Scienceは次の通りです:

■ 2006年12月23日(土) ガクッ

18日に開催した第3回データ解析技術研究会の参加者(学生)からメールが届きました。タイトルは「見つけました!」。ああ嬉しい、ついにRIETAN-FPのマニュアルの誤りを報告してくれる奇特な人が現れたと思いきや —— 「といっても、マニュアルのミスではありません。Wikipediaで"物質・材料研究機構"を検索したら、泉先生のお名前がのってました。」だってさ。やれやれ。

「そんなことはどうでもいいから、マニュアルの誤りを捜してください。」と返事しておきました。大体、素性の分からぬ名無しの権兵衛が書いたフリー百科事典なんて信用できません。どうせ、便所の落書き(2ちゃんねる)に毛の生えたようなヤツでしょう。

間違い探しは、本気で頼んでいるのです。何卒よろしくお願いします。よくあるパターンは、主語が複数形(単数形)なのに動詞が単数形(複数形)というヤツです。数式の間違いも多少あるでしょう。なお、ときどき配布ファイル中のマニュアルを更新しているので、念のため、それを参照してからご通知ください。

■ 2006年12月24日(日) 二人のマリア

昨晩NHKハイビジョンで観たHV特集の梗概: ザルツブルグの裕福な貴族ゲオルグ・フォン・トラップの次女として生まれたマリアはカラヤンと同時期にモーツァルテウム音楽院でピアノを学んだ。トラップ氏はオーストリアを襲った金融恐慌のため全財産を失ってしまい、マリアはトラップ家12人の一員としてヨーロッパ各地を巡業する旅芸人(家族合唱団)となった。オーストリアを併合したナチスの迫害から逃れるためアメリカに亡命した一家は、アメリカでも家族合唱団の仕事を営々と続け、辛酸をなめ尽くしたものの、バーモント州に自力で家を建てるまでに至った。家族合唱団の解散後、マリアは宣教師としてパプア・ニューギニアに渡り、30年もの間、キリスト教の布教に努めた。生涯独身を貫いた。マリアは現在、92歳。アメリカでパプア・ニューギニア出身の養子とともに元気に暮らしている。

要するに、「サウンド・オブ・ミュージック」のモデルとしてあまりにも有名なトラップ家の次女についてのドキュメンタリーです。血のつながらぬ母は、映画でジュリー・アンドリュースが演じたマリア・フォン・トラップにほかなりません。自由奔放な義母は修道女を志したものの、修道院の厳格な生活になじめず挫折し、トラップ家の家庭教師となり、当主と結婚しました。穏和で、つつましく、信心深い次女のマリアが義母に替わって神に仕える道を選んだことになります。

久々にTVで感動的なドキュメントを観ました。トラップ家の二人のマリアは、「生き生きと生きよ」というゲーテの箴言通りの素晴らしい人生を送ったんだなぁ、と感じ入りました。

ザルツブルグ、零落、アメリカ移住からの連想ですが、モーツァルトの代表的オペラ「フィガロの結婚」、「ドン・ジョバンニ」、「コジ・ファン・トゥッテ」の台本を書いたロレンツォ・ダ・ポンテの生涯もマリアに負けず劣らず波瀾万丈でした。後年、ヨーロッパで食い詰めてアメリカに渡り、各地を転々とした後、ニューヨークに落ち着きました。最後の生業は何だったと思いますか。なんと、コロンビア大学教授としてイタリア語とイタリア文学を講じたのです。「ドン・ジョバンニ」のアメリカ初演とマンハッタンのオペラハウスの建設に尽力した後、1838年に89歳で没しました。

■ 2006年12月25日(月) 新たな息吹を感じる研究成果

エジンバラ大学極限環境科学センターの小松一生氏に、水酸化アルミニウムの結晶構造に関する論文のPDFファイルを送っていただきました:

前者はgibbsiteの高圧相η-Al(OH)3の単結晶X線解析と分子動力学シミュレーションに関する論文です。後者では、高圧安定相δ-Al(OD)3の粉末X線回折データから直接法(EXPO)で構造モデルを導き出し、リートベルト法(RIETAN-2000)で構造を精密化するとともに、MEM(PRIMA)により電子密度分布を決定しています。

上記の論文2報はVENUS(VICS-II、VEND、VESTA)で描いた美しいカラーの図を計9つ含んでいます。それらの内、δ-Al(OD)3の水素結合ネットワークをVESTAのワイヤーフレーム・スタイルで描いた図が掲載号の表紙を飾りました。

なお、η-Al(OH)3の結晶構造モデルが1934年にMegawにより提案されていたというエピソードを小松氏が12月25日の日記に記しておられますので、一読することをお奨めします。

■ 2006年12月26日(火) TeXShopに触発されて…

MacユーティリティTeXShopを追加しました。このアプリケーションだけアイコンが一回り大きくなってしまいましたが、RIETAN-FPのマニュアルが完成したのはTeXShopのおかげなので、それでも構わないでしょう。

TeXShopからは、コマンド入力で起動するタイプのアプリケーション(TeX、LaTeX、BibTeX、MakeIndex)の統合GUI環境について実に多くのことを学びました。

この経験をRIETAN-FPに生かすべく、今朝から断続的にWindows上でのRIETAN-FP実行支援環境の実現を目指した試行錯誤を続けました。その結果、夕刻までに

がメニュー項目の選択あるいはキーボード・ショートカットを押すことにより実行できるようになりました。あまりにもあっけなく実現したので、拍子抜けしてしまいました。上述のリストに*.fosのMEM解析や*.denに記録した電子・原子核密度データの三次元可視化を追加するのは、いとも簡単です。

今後じっくり時間をかけて、このテクニックをブラッシュアップしていくことにします。

■ 2006年12月27日(水) 昨日の続き

今日は

のメニューを追加し、実行してみました。もちろん、ちゃんと動きました。*.insと*.denを逐次VESTAで読み込むと、それぞれ別なウィンドウに結晶模型と電子密度の等値表面が表示されます。

入力ファイルをエディターで作成・編集した後、コマンド(+引数)を打ち込んで起動するタイプのアプリケーション(RIETAN-FP、TeX、SCAT、Gaussianなど)には、この技法が有効です。入出力ファイルを周辺ソフトで処理する場合は、さらに便利です。コマンドを打ち込まずに済むので、今時の若者向き。しかも、好みに応じて色々な統合環境が構築できます。冬休みの間にもう一種類トライしてみるつもりです。

これだけ書けば、もうピーンと来た人が多いんじゃないかな。RIETANやVENUSのユーザーの中には、すでに活用している人もいるかもしれない。

来年4月末に関西で開く講習会(参照)では、このテクニックを教えることにしましょう。まあ、そう大したもんじゃないけどね。

■ 2006年12月28日(木) 相変わらず年中無休

本日は御用納めですが、私は年末年始はかき入れ時と言わんばかりに働く予定です。26日27日に記した仕事を続行するつもりで、そのために必要な書籍を2冊購入しました。

門馬綱一君は冬休みの間にVESTAの完成度を高めるべく努力するそうです。年頭にリリースするVESTAの最新版は、DV-Xα分子軌道計算講習会(1月24日、東京工業大学)における「DV-Xα法計算結果の三次元可視化」実習用に提供することを約束しています(10月6日参照)。すでに参加申込みを締め切ったところをみると、同講習会は盛況のようです。

■ 2006年12月29日(金) えっ、ホント?

今度は"泉富士夫"と"RIETAN"がWikipediaの項目に加わったそうだ。う〜ん。これって、名誉なことなんでしょうか?

■ 2006年12月30日(土) 早くも二つめが…

12月27日に「冬休みの間にもう一種類トライしてみるつもり」と書き込みましたが、短時間の内に基本技術を会得しました。もうどうということはありません。Windows上で2種類のRIETAN-FP+周辺ソフト統合環境を構築する目処がつきました。これで年末年始のノルマは達成。いい気分で正月が迎えられます。

一番苦労したのは、runコマンドの引数(文字列)の記述法でした。わかってしまえば、どうということはありませんが。

TeXだろうがSCATだろうが同じことです。前者はすでに色々な実行環境が作成・配布されています。いずれSCAT用の統合環境でも作りましょう(なにせ正会員なもんで)。

■ 2006年12月31日(日) HyperTeXの活用

RIETAN-FPのマニュアルを電子マニュアル化しようと思い立ち、hyperrefパッケージを使うことにしました。プリアンブル中に最後の¥usepackage宣言として

¥usepackage[colorlinks=true, pdfstartview=FitV, linkcolor=blue, citecolor=blue, urlcolor=blue]{hyperref}

という行を入れるだけで、HyperTeXの仕組みが利用できるようになります。TeXShopのhyperrefパッケージはMac OS X 10.4.X(Tiger)に導入されたPDFKitをフルに活用しており、章・節・項、図、表、数式、引用文献、索引、ページ、URLへのリンクを張ったPDFファイルを作成してくれます。もちろん目次、図表一覧でも自動的にリンクが張られます。

Webページとメールアドレスへのリンクをクリックすると、それぞれブラウザが当該Webページを開き、宛先入りの新規メールの入力待ちとなります。PDFファイルをAdobe Readerで閲覧すると、階層化したしおりが表示でき、目的箇所に素早くジャンプできます。

これだけの高度化を1時間足らずで実現。TeX・PDFテクノロジーの融合の素晴らしさに心から感動しました。本年の最大の収穫はTeXShopの習得と決まりました。なにしろ、RIETAN-FP実行支援環境構築のヒントまで与えてくれたのですから。