掲示板バックナンバー


2011 年

■ 2011 年 1 月 1 日(土) 新年早々から手垢まみれのネタとは… 先が思いやられる

MxMn3–xO4(M: 2 価金属)のナノクリスタルのリートベルト解析に RIETAN-2000 が使われました。

■ 2011 年 1 月 2 日(日) もうしばらくお待ちください

GnuWinsed コマンドが v4.2.1 にバージョンアップしました。MPF_multi.bat 中でフル活用しています。Windows 用 RIETAN-FP・VENUS 配布ファイルの次回更新時には、FastCopy v2.06 とともに、これを同梱します。

■ 2011 年 1 月 3 日(月) なんとも意気の上がらぬ正月

結局、冬休みは家に閉じこもったまま、休養+あまりやる気の出ない汚れ仕事でグダグダ過ごしました。鬱。

■ 2011 年 1 月 4 日(火) 自分だけが繰り出せる荒技

訳あって複数の零点シフトを精密化せざるを得なくなり、RIETAN-FP を改造しました。第 1 相の surface-roughness parameter 以降の全パラメータを後ろに移動し、2 番目以降の零点シフトを空いた場所に挿入。かなり手こずりそうだな、と予想していたのですが、杞憂でした。もともと、新たなパラメータの挿入や不要になったパラメータの削除を想定したフレキシブルな設計となっているためです。後々のことまで考えてコーディングしたのは、我ながら先見の明がありました。

アドホックなプログラミングにまで踏み切ったからには、ぜひとも論文にまとめたいです。アウトソーシング+爆速ライティングで乗り切りましょう。

英文の執筆と添削が滅法速い(つまり爆速)のは自他ともに認める私の特技です。しかし極端なスロースターターなので、平均スピードは人並み以下という深刻な欠点を抱えています。窮地に追い込まれないと潜在能力を発揮しないという困った性格は、この年ともなると矯正しようがありません。

■ 2011 年 1 月 5 日(水) 久方ぶりのバージョンアップ

Windows および Mac OS X 用の RIETAN-FP・VENUS 配布ファイルを更新しました。

RIETAN-FP を v1.81 にアップグレードしました。強度データ形式として General-3 フォーマットを追加しました。General-3 形式の *.int では、 General フォーマットの各行の3番目のデータとして観測回折強度の標準誤差を入力します。この機能は連携先である名工大の井田 隆准教授の要望で付け加えました。昨年 12 月の日本結晶学会年会における講演で「皆さんが今まで使ってきたリートベルト法のやり方は,最尤推定構造を導く方法としては論理的に間違っています」と宣告されたとのことですが、今回追加した機能はその見解の実証に役立つのだそうです。

RIETAN-FP が無批判に受け入れている方法論の過ちを RIETAN-FP の利用によって明らかにするというパラドックス —— 結構じゃないですか。粉末回折の進歩に役立つなら、いくらでもお使いください、という明鏡止水の心境でございます(盗作?)。

その他、いくつかのマニュアル、spgra、spgra.dat、すべての *.ins の雛形ファイルも訂正しました。Windows 用配付ファイルでは sed.exe と FastCopy を最新版と入れ換えました。

■ 2011 年 1 月 6 日(木) バージョンアップの延長戦

井田准教授から RIETA-FP v1.81 が General-3 形式(NINT = 11)のファイルを正常に読み込めないという報告を受けたため、即刻修正。さらに RIETAN-FP_manual.pdf をほんの少しだけ訂正した結果、今日も RIETAN-FP・VENUS 配布ファイルを更新する羽目に陥りました。

4つの PDF ファイルを結合し、なおかつしおりを付けた RIETAN-FP_manual.pdf は Adobe Acrobat X Pro で作成しましたが、操作法が前バージョンからがらっと変わってしまい、かなりの苦戦を強いられました。最新版にこだわるという悪い癖からは、そろそろ卒業すべきですね。

バージョンアップばかりでなく、自分自身も来年度、延長戦入りしそうです。この果てしなき泥沼から脱け出し成仏するのは、いつなのでしょうか。

■ 2011 年 1 月 7 日(金) Windows 用 CD/DVD エミュレーション・ユーティリティ

DAEMON Tools Lite v4.40.1 がリリースされました。

■ 2011 年 1 月 8 日(土) 得手、不得手の落差

某催しのプランを急遽変更、関係者 3 名の了承を取り付けました。次第に形が整い、新鮮味が出てきました。

こういう興行師じみた役割を果たしながらつくづく思うのは、自分は集客・営業・宣伝活動は得意だが、お金を集めるのは苦手だなぁ、ということです。こうした催しで得られた利益は私を素通りしてどこかに飛び去ってしまいますし、自作ソフトはことごとく無償公開してしまう上、外部資金の獲得など二の次三の次なのですから、お金の集まりようがありません。

といって、必要以上にお金(=研究資金)を手に入れても使い道がなく、持て余すだけなんですよね。高温超伝導バブルで泡まみれになったり、ある日突然、大金がころがりこんできたり、身の丈に合わない多額の研究費を提示されたりしたことがありましたが、喜ぶどころか、そのたびに困惑し、うろたえただけでした。詳しい話は省きますが、金は天下の回りものと心得、一人で独占しようとはしなかったので、バブルのクラッシュで吹き飛ばされずに済んだといったところです(苦笑)。

■ 2011 年 1 月 9 日(日) 西川先生の思い出

昨日の朝刊で、元高エネルギー物理学研究所所長、元東京理科大学学長の西川哲治先生が昨年 12 月 25 日に逝去されたことを、遅ればせながら知りました。

若輩者ではありますが、西川先生には超伝導フィーバーの最中に二度お目にかかったことがあります(2003 年 3 月 8 日)。2 回目の面会の際、西川先生が「私の父(注: 西川正治。日本結晶学会初代会長。結晶構造解析に空間群の概念を世界で初めて導入した先達)は結晶学者だったので、結晶学の重要性は十分認識しています。私は父ほど頭が良くなかったので、自分の力でもどうにかなることを研究の対象に選びました。」と述懐しておられたのを今でもよく覚えています。この他、電話でも一度だけお話ししたこともあるのですが、「私は大御所でもなんでもありません。単なる一研究者だと思っています。」と仰っていました。権威を振りかざすことのない、率直で飾り気のない方とお見受けしました。恐らく私は西川先生のごく一面しか見ていないんでしょうが。ご冥福をお祈りいたします。

■ 2011 年 1 月 10 日(月) Superflip の著作者 である Palatinus の論文

VESTA で描いた差密度(+結晶模型)の図が収録されています。

何年か前、Palatinus 氏に国際会議での招待講演を依頼しましたが、その時ついでに「電子密度は VESTA で可視化するといいですよ」と 教えました。その結果、Superflip ばかりでなく Jana2006(彼の師匠のソフトです)と VESTA が連携するまでに至ったのはそのためです。VESTA が国際的に認知された陰には、こうした臆面もない営業努力がありました。

なお、VESTA 3 の最終アルファ版である v2.9.7a が最近リリースされ、ついに Mac OS X バージョン(パスワード不要)も使えるようになりました。ただし今のところ Mac OS X 版は wxWidgets に起因する不具合を抱えていることにご注意ください。

■ 2011 年 1 月 11 日(火) Windows用配付ファイルの更新

秀丸マクロ拡張用 DLL、田楽 DLL v3.20が公開されたのを受け、同 DLL を同梱している Windows 用 RIETAN-FP・VENUS 配布ファイルDV-Xα法計算支援環境のアーカイブファイル(動作チェックは坂根弦太氏に丸投げ)をアップデートしました。

■ 2011 年 1 月 12 日(水) お先真っ暗な借金超大国のリスキーな国債を売りつけるための手練手管

マスコミはほとんど報道していませんが、個人向け国債(変動 10 年)の金利設定方法が見直されました。7 月発行分から新ルールに移行します。

たとえば昨日の長期金利は 1.19 % なので、現行ルールだと変動 10 年物の金利は 0.39 %(= 1.19-0.8)に過ぎないのに対し、新ルールだと 0.79 %(= 1.19×0.66)と倍増します。一見、商品価値が著しく上がるように見えます。

しかし、日本の借金(財政赤字)が右肩上がりで増えているにもかかわらず、消費税率の大幅アップは長く見送られたままです。放漫経営で崩壊した JAL 同然の状況に陥っているのが、今の日本といって過言でありません。国債暴落 → 超円安 → 超インフレ → 日本政府の債務不履行は、ある日突然勃発します(2010 年 10 月 24 日)。もちろん個人向け国債は途中換金できますが、ペナルティーを払う必要があります。円建て資産の保有リスクが高まっている今、国債や円預金はできるだけ減らすのが賢明です。

今日(実際には 1 月 11 日。日付のずれは本掲示板では日常茶飯事)の本ホームページのセッション数は過去 1 年で最高となりました。といっても、掲示板(1 月 6〜12 日分)にとりたてて人目を惹く書き込みがある訳じゃなし —— 珍現象です。

■ 2011 年 1 月 13 日(木) VESTA 3 の普及と宣伝のためのプロモーション

VESTA 3 に関する諸々の作業は、今月中にほぼ終了するでしょう(I hope so)。非連続的進化を遂げた、この次世代版については、門馬君ともども

その他で順次紹介していく予定です。VESTA 3 が NIMS のイメージアップに大きく貢献するものと堅く信じています。

VENUS システムについては、とくに深い理由はないのですが、伝統的に日本セラミックス協会主催の研究集会で発表してきました(2010 年 2 月 13 日)。また VENUS の正式版は同協会発行の CD-ROM 書籍「セラミストのためのパソコン講座」に唯一の配付ソフトとして収録され、同 CD-ROM の完売に貢献しました。

情報機構セミナーでは、RIETAN-FP と VESTA との連携により RIETAN-FP の入力ファイル *.ins を手軽に作成し、幾何学的パラメーターを相互参照し、反強磁性磁気構造を解析する方法について詳しく説明します。

VESTA ばかりでなく RIETAN-FP のユーザーも、いずれか一つで結構ですから、ぜひご聴講ください。

■ 2011 年 1 月 14 日(金) App Store の客引き?

クラウド・アプリケーション Evernote は、今や私にとって必須ツールといって過言でありません。その Mac OS X 用最新版 v2.0.1 はフリーソフトなのにもかかわらず、Mac App Store(Mac OS X 10.6.6 で利用可能)からでないとインストールできません。ところが、ダウンロード方法が直感的でなく、苦戦しました。

試行錯誤を繰り返した結果、Evernote アイコンの右下の [無料] をクリックし、Apple ID とパスワードを入力すると、[無料] が [インストール] に変わるので、それをクリックすればいいということがわかりました。Apple とは無関係な会社が App Store 経由で無料ソフトを インストールするようにした理由が理解できません。面倒なだけです。

■ 2011 年 1 月 15 日(土) ■■ねぇー!!!

コメントは避けますが、上記論文の Fig. 3 と Fig. 4 をとくとご覧あれ。昨年 10 月 25 日に記した iMATERIA の惨状直視時に匹敵する衝撃波が走りました。

私なら、痩せても枯れても★★★論文は絶対▲▲しません。私がこの論文のレフェリーだったなら、即●●です。IUCr 発行の雑誌の◆◆を♥♥すからです。

ちなみに Bish センセイは "Modern Powder Diffration," Reviews in Mineralogy, Vol. 20 のエディターを務めたお方です。嗚呼。

■ 2011 年 1 月 16 日(日) 新しもの好きの自己満足的世界

MacTeX-2010(Mac 用 TeX Live 2010)をインストールし、英語文書はそれに含まれている pdfTeX でタイプセットしています。他方、日本語文書については「LaTeX2ε美文書作成入門」改訂第 5 版付属の DVD-ROM からインストールした pLaTeX 2009 を使っていました。

TeX Live 2010 は pTeX Live 2010 を含んでいます。そこで今日、「MacTeX 2010 で日本語」という Web ページに記載されている手続きに従い、日本語文書を MacTeX-2010 + TeXShop によりタイプセットするよう環境設定を変更し、タイプセットのメニューで TeX + DVI をチェックしてタイプセットしたところ、正常に動作しました。英語・日本語文書とも TeX Live 2010 で統一的に処理できるようになったのは、誠に喜ばしいです。

■ 2011 年 1 月 17 日(月) VESTA 3 の実用性を向上させる新機能

VESTA v2.1.X は最適平面を決定する機能を備えていません(2010 年 11 月 28 日)。一方、VESTA 3 では次の操作により最適平面を求めることができます。

  1. Edit > Lattice Planes... で [New] をクリックし、新しい格子面を作成する。デフォールトの格子面がグラフィックウィンドウに現れる。
  2. シフトキーを押しながら複数の原子を選択し、Lattice Planes ダイアログ内の [Calculate the nearest plane to selected atoms] ボタン(次のアップデートで [Calculate the best plane for the selected atoms] に変える予定)をクリックする。
  3. グラフィックウィンドウに最適平面が表示され、ミラー指数(実数)と原点からの距離がダイアログ内に表示される。

最適平面を消すには、No., hkl, d, ..... の下で当該格子面を選択し、[Delete] をクリックします。原子が選択された状態を解除するには、グラフィック・ウィンドウ内で shift キーを押しながら各原子をクリックします。

VESTA 3 では、 二次元プロットにおいて実数のミラー面指数 (hkl) の入力が許されるため、上記 (hkl) は 最適平面上の密度分布の可視化にそのまま使えます。

残念ながら、wxWidgets ツールキットのバグのために 今のところ Mac OS X 版ではこの機能は使えません。また Mac OS X 版は 32ビット CPU である Core Duo 搭載の Mac では動かないことも、ここで通知しておきます。

■ 2011 年 1 月 18 日(火) なんとも空しく、張り合いのない労働

VESTA 3 のべータ版公開に向け、そのマニュアルを大急ぎで製作しています。苦役以外の何物でもありません。3 章までしか進んでいないのに、もう 8 ページも増えています。

論文を数報は書けそうな時間を費やしてマニュアルを書き上げても、それを丁寧に読んでくれる人はあまり多くないのが現実です。マニュアルもろくに参照せずに、直接メールで質問してくる人も後を絶ちません(オイラは人間マニュアル?、それとも無償サポート係?)。

そういう現実を知り尽くした上で、なおかつ長大な英文マニュアルを作成しようとするドライビングフォースは何なのでしょうか。さほど利用されないばかりか、一銭にもならないのですから、我ながら説明に窮してしまいます。振られるのを承知の上でラブレターを書くようなものじゃありませんか。

これまた、自己満足(1 月 16 日)に過ぎないのかもしれません。我々の研究についても、論文がほとんど読まれず、しかも実質的に社会の役に立っていないのだとしたら、同じことが言えますね。

ところで、昨日の本ホームページのセッション数は、またしても過去一年で最高となりました。このように最近、訪問者が増えているのは嬉しいですが、その理由が今一つはっきりしないことに当惑しています。

■ 2011 年 1 月 19 日(水) NMR を活用したリン酸アルミニウムの未知構造解析

1 月 15 日に紹介した●●●い論文には■■としましたが、今日は口直しに同じ雑誌(2 月発行)から優れた最新論文を紹介しましょう:

Kanzaki らは NMR により得た構造情報を積極的に活用し、放射光粉末回折データから AlPO4 の高圧相二つ(三斜・単斜晶系)の未知構造を解析することに成功しました。直接空間法による構造モデルの構築には FOX、リートベルト解析には RIETAN-FP、結晶構造の作画には VESTA が使われました。

なお、SDPD という Web ページ(2010 年 2 月 4 日)には FOX を用いた未知構造解析に関する細かいノウハウが惜しげもなく披露されています。放射光や中性子の施設や関連団体がプロモーションのため、近年しきりに開催している講演会や講習会などよりは、よほど有意義ではないでしょうか。

■ 2011 年 1 月 20 日(木) 目新しさを演出するために、そこまでやるとは…

日本真空協会の機関誌 J. Vac. Soc. Jpn.(12 月号)の小特集「中性子ビームを利用した物質・材料研究の最近の動向」のために執筆した解説が J-STAGE で公開されました:

初稿を再訂正した箇所が非常に多かったので、念のために点検したところ、案の定、p. 708左で "Rietveld1)" と "ALGOL" がイタリックになっていました。

実は、RIETAN-FP v1.8 で実現した collinear 磁気構造(化学的単位胞 ≠ 磁気的単位胞)の解析機能は、この解説で採りあげるべき材料とするべく、渋々追加しました。RIETAN-FP のマニュアル RIETAN-FP_manual.pdf 中の Chapter 7 は本解説の 2 節を英訳し、補足したものにほかなりません。本末転倒も甚だしいです(汗)。

かつて「日本造船学会誌」に寄稿したり、繊維学会、化学工学会、三鉱学会、DV-Xα 研究協会主催の研究集会で招待講演したことのある私ですが、日本真空協会からお声がかかるというのは想定外でした(笑)。

■ 2011 年 1 月 21 日(金) 斃れて後已む

あちこちガタが来ている体に鞭打ち、重い荷物を背負って、先の見えない暗い道をトボトボ歩くのは、本当につらいです。日暮れて道遠し。途中で倒れるのは分かっていますが、少しでも先に進むしかありません。

■ 2011 年 1 月 22 日(土) 頭の上の蠅も追えぬ身で

ヨーロッパの某中性子源の研究者から何度目かの質問メールが届きました。RIETAN-FP と VENUS を使う解析の詳細について教えてほしいとのことです。入出力ファイル一式をチェックし、こちらで再解析しないと、適切な返答は無理です。しかし、そこまで踏み切ると、必然的に守秘義務を伴う共同研究ということになり、全面的にコミットせざるを得なくなります。共著の論文が増えることと引き替えに失う時間がもったいないというのも事実です。

あれこれ迷った末、結局、協力することにしました。自主技術を輸出するのも一興と思ったからです。しかし、そんな人助けに乗り出すどころじゃないんだけどなぁ。

■ 2011 年 1 月 23 日(日) 不運不遇の人生

毎日新聞の「日曜くらぶ」に連載されている篠田節子の「銀婚式」を読むのが日曜朝の楽しみとなっています。幸運から見放された中年男、高澤修平の悪戦苦闘の物語です。連載 37 回目にしてようやくタイトルの意味がわかり、胸にジーンと来ました。

私がこの小説を読み続けているのは、「失敗に失敗を重ねた」主人公と自分の人生をオーバーラップさせているからだと思います。いわゆる「身につまされる」ってヤツですね。フィクションではありますが、ぜひともハッピーエンドで終わってほしいです。

■ 2011 年 1 月 24 日(月) イメージングプレートで測定した X 線回折強度

イメージングプレートで測定した放射光粉末回折データの読み取り時に、デバイーシェラー環に沿って回折強度を積分すると、最強反射のピークにおけるカウントが数百万にも達することがあります。このように極端な高強度データをリートベルト法で解析すると、フィットの良さを示す尺度 S(= Rwp/Re)が異常な値となる上、Igor Pro や RIETVIEW などが *.itx の内容を正常に自動プロットできなくなる(手動なら大丈夫)ことにご注意ください。対策としては、S を目安として、カウントに適当な係数を掛けて調節するしかありません。

VESTA v2.1.6 がリリースされました。門馬君は VESTA 3ベータ版の公開を準備しつつ、現行安定版もメンテナンスしています。

■ 2011 年 1 月 25 日(火) かつての目標をはるか下に見下ろして

RIETAN-2000 を使用して得た成果を発表する際、引用すべき文献(カウンター代わり)

のボリュームとページが間違って引用されるケースが非常に多いことを昨年 9 月 24 日に指摘し、その時点での正確な被引用数についての調査結果を示しました。あれから 4 ヶ月、本日における被引用数は 1,402(=1033+121+248)にまで増えました。この数字に RIETAN-FP に関する論文(これまたカウンター代わり)の被引用数を足すと、現時点での

RIETAN-2000/FP に関する論文の被引用数 = 1,500

となります。結晶学関連の国産ソフトでは、前代未聞の実績でしょう。学術研究への貢献をここまで積み上げたという事実には感慨深いものがあります。

4 年前の 1 月には被引用数 1,000 を大目標としていた訳で、その 1.5 倍もの数値を達成し、VENUS システムもさらなる発展を遂げ、広く普及した今、いつあの世に逝ってもいいんじゃないでしょうか。もう私に残された時間はごくわずかですし、今後のプロデューサー、ネゴシエーター、プロモーターとしての仕事の成果は「おまけ」のようなものです。将来「置き土産」もそれなりに立派だった、と評価してもらえれば、これに過ぎる喜びはありません。

■ 2011 年 1 月 26 日(水) 前車の轍を踏まぬためのアドバイス

1 月 21 日の掲示板で「日暮れて道遠し」と嘆きましたが、これまで私が 90 数パーセントは独学で研究に必要な諸々の知識を習得してきたことが、そういう羽目に陥ったことの主因なのは明白です。要するに、私には師匠と呼べるような人がいないのです。結晶学然り、粉末回折然り、プログラミング然り、応用数学然り、英語論文執筆然り —— 何もかも自己流といって過言でありません。当掲示板の文章まで、平成軽薄体と呼ぶ俺様ルールに則って書き込んでいます。

自分一人の力には自ずと限界があります。つまずいたり、挫折したり、勘違いしたり、遠回りしたりの連続です。良き指導者に教えを請い、手取り足取り教えてもらったら、より早く、より先にまで進んでいたに違いありません。

人の一生は一度しかありません。研究に割り当てるべき時間をもっと大切にすべきだった、と反省しています。

逆に、他人に対してはなけなしの知識をことごとくアウトプットしたはずです。自作ソフトとそれらのマニュアルは恰好の教育用ツールとなり得ますし、数え切れないほど多い解説、講習会、授業を通じて啓蒙・教育活動を展開してきました。(近年は控えていますが)共著者の論文は「過剰品質」と言われかねないくらい徹底的に添削し、英文執筆の要領を教え込んできました。他者からのインプットが足りなかったことは、悔やんでも悔やみきれません。

スタートが遅すぎたのも不運でした。私が結晶学やプログラミングを学び始めたときは、とうに 30 を過ぎていましたからね。おまけに、当時の旧無機材研のコンピュータ資源はあまりにも貧弱でした。深刻なハンデでしたよ、これらは。

顧みれば、三次元グラフィックを操るのが面白そうだと唐突に言い出し、VICS と VEND をゼロから作り始めたのは、無謀の極みでした。なにしろ Ruben も私も OpenGL については、ずぶの素人だったのですから。こうして失われた大量の時間は、二度と戻ってきません。もっとも、今日 VESTA が世界中で活躍しているのは VICS と VEND あればこそ、なのですが。

■ 2011 年 1 月 27 日(木) ルールタビーユに匹敵する名探偵?

「無機材料の構造解析にも従事しましたが,その類の仕事には疲れるだけでなく飽き飽きし,きっぱり足を洗ってしまいました。」(2009 年 2 月 7 日; 伏せ字は取りやめ)と言い放ったことさえある私に、「SDPD (Structure Determination by Powder Diffractometry)のご指導と,論文への共著をお願い出来ませんでしょうか?」という依頼が 1 週間ほど前に舞い込んできました。藁にも縋る思いなんでしょうが、こういう一筋縄で行かないお手上げ事案に首を突っ込むのは禁物です。なにしろ、今は VESTA 3 のマニュアルつくりと国際共同研究(1 月 22 日)に励まなければならないのですから。

普段なら「よりによってオイラに助けを求めてくるなんて、いい度胸してるねぇ。あいにく、そんなことには興味ねーよ」と無慈悲に突き放すところです。しかし依頼者の窮状は察するに余りあり、そこまでダイレクトに引導は渡せません。とりあえず、放射光粉末回折データセット一式を送ってもらい、逆空間法による未知構造解析システム EXPO2009 でざっと再解析してみました。

化学組成と単位胞の体積から、単位胞内に存在する 3 種類の原子の数はわかっています。それぞれの原子の X 線散乱能はかなり違います。 EXPO2009 で Le Bail 解析を実行し、得られた積分強度を直接法で解析すれば、それら 3 つの原子(の一部)が浮き彫りになるはずです。

ところが、解析結果をチェックしてみると、もっとも電子数が多い原子だけ見つかっていないではありませんか。摩訶不思議です。直接法の場合、重い原子ほど検出しやすいのが常識ですから。締め切った密室(単位胞)に決まった数の大人、少年、幼児がいたのに、扉を開けてみたら、大人だけが忽然と姿を消していた、というに等しいです。当惑しました。いかにも直接法向きの回折データなのに、敬愛する Giacovazzo 先生の偉大なソフトが、そんな訳の分からぬ構造モデルしか導き出してくれないとは…

以後の紆余曲折は省略しますが、結局、その構造は見事に解けました。ただし、まだ論文としてまとめていないので、当該物質やその構造解析に関与した人たちについては口をつぐむことにします。

図体が大きい大人が雲散霧消したかのように見えた理由が判明した今、この解析は、ガストン・ルルー作「黄色い部屋の秘密」における最初の事件を解決したようなものだったな、と感じます。完全に密閉された部屋の中で、スタンジェルソン博士の令嬢が血の海に倒れ伏していたのはまぎれもない事実ですが、犯人捜しは無駄骨に終わりました。その事件の真相と同じく、謎解きが終わってしまうと興味索然、「なぁんだ」感が募るだけです。先入観念に囚われている限り、難事件、すなわち困難な構造解析の解決は覚束ないということを、あらためて痛感しました。蛇足ではありますが、「研究過程でつまずいたら、発想を転換してみるとよい」と申し添えておきます。

■ 2011 年 1 月 28 日(金) 飄然と去る

昨日記した新化合物の構造解析ですが、「興味索然」とまで言い切ったからには、この時点できっぱり手を引くべきです。今後の解析の指導、論文の共著者になること、いずれも固辞しました。依頼者が自分の手柄にすればいいだけのことです。

他にも未知構造をもつ関連化合物のデータが二組残っていますが、今回の解析を参考にすれば、それらの結晶構造はなんとか解けると踏んでいます。人助けができて良かったです。

■ 2011 年 1 月 29 日(土) 片言隻語を咎めるなかれ

S&P が日本の長期国債を AA- に格下げしたことへのコメントを求められた菅首相が「そういうことに疎いので、(コメントは)ちょっと改めてにしてください」と前財務相らしからぬ発言をしたため、失笑を買っています。

ニュースウォッチ 9 で青山裕子アナが「音楽のヒットチャートを席巻(せきまき)する人気グループ、嵐」と読み違えた失態が、結婚決定→幸せボケではないかとバカ受けしています。

いずれのケースも動画までアップされ、馬鹿阿呆呼ばわりされたのですから、可哀想です。人間、神様ではないのですから、ときには間違いを犯しますよ。「そんなこと(注:無機材料の未知構造解析)には興味ねーよ。」という I 先生の確信犯的暴言の方がよほど問題じゃないでしょうか。I 先生にその真意を尋ねたところ、「個別の事案に首を突っ込むと、最優先の課題にフォーカスできなくなるという心情から発した言葉ですので、大目に見てください。」と弁解していました。そして、「久保田祐佳アナが "キネマ旬報" を "キネマしゅんぽう" と読んだのは、小栗 旬のファンだからじゃないかねぇ。」と、強引に話題をそらしました。「久保田はブラタモリの方が良い味出してるよ。」とのことでした。

I 先生は今、「RIETAN-FP によるリートベルト解析」入門セミナー(3 月 28 日)の参加者に教える未公開技術のテストに余念がないのだそうです。RIETAN-FP にせよ、VESTA にせよ、様々な催しに間に合うよう機能増強を図ってきました。こういうイベント駆動(event-driven)型ソフトウェア開発の体質に改善の兆しは見られません。

■ 2011 年 1 月 30 日(日) 元の木阿弥

MacTeX-2010TeXShop により日本語文書をタイプセットできるようになったと 1 月 16 日に報告しましたが、その後、この方法だとマージンが正常な PDF ファイルが得られないことが判明しました。結局、pLaTeX 2009 に復帰せざるを得ませんでした。

教訓: 安定に動いているソフトはそのまま使い続けるべきである。

この経験則を守らなかったために、これまで何回も痛い目に遭ってきました。にもかかわらず、今後も同じ過ちを性懲りもなく繰り返すのでしょう。

■ 2011 年 1 月 31 日(月) Cd1-xCaxO 固溶体のバンドギャップに関する研究

には RIETAN-2000+PRIMA のペアにより粉末 X 線回折データから計算した CdO, Cd0.4Ca0.6O, CaO の電子密度を VESTA で可視化した 3D・2D イメージが 6 つ含まれています。

Scopus によれば、PRIMA による MEM 解析の結果を報告する論文は、これで 120 報に達したそうです。

余談ですが、Cd2+ イオンはイオン半径がほぼ等しい Ca2+ イオンと置換しやすいことが知られています。骨の主成分であるヒドロキシアパタイトも例外でなく、俗にイタイイタイ病と呼ばれる骨軟化症の原因となっています。ヒドロキシアパタイトには配位数の異なる二つの Ca サイトが存在します。両サイトへの Ca2+ イオンの分配は X 線リートベルト解析の恰好のテーマです。Ca と Cd は X 線で見分けやすいですからね。 事実、

では、放射光粉末回折データのリートベルト解析により Cd2+イオンは Ca2 サイトを選択的に置換すると報告されています。

■ 2011 年 2 月 1 日(火) RIETAN-FP はまだまだ発展途上

「RIETAN-FP によるリートベルト解析」入門セミナーの参加者に教える未公開技術を検証中と 1 月 29 日に記しましたが、これまでに

  1. Cu Kα(fluorapatite)
  2. Cu Kα1(BaSO4
  3. 放射光(Cimetidine)

で測定した三つの粉末X線回折データに適用してみました。まだ慣れていないため多少手間取りましたが、最終的にはどれも満足すべき結果が得られました。とくに放射光データの解析は絶好調です。解析の手順を Evernote にしっかりメモしておきました。

さらにテストを重ねないと断言はできませんが、過去 10 年余り、お手上げのまま放置してきた問題がほぼ解決したようです。そうだとしたら、RIETAN-FP の利用価値が一層上がることになります。

更なる進化の方向性もおぼろげながら見えてきました。●●●●の■■です。それが幻想でないことを祈っています。

目から鱗が落ちた感じがするアイデアを着想したきっかけは、なんとヨーロッパの中性子源(1 月 22 日)との共同研究でした。「人助けは自分への褒美」ということですね。

■ 2011 年 2 月 2 日(水) 偉大なことはすべて単純だ(チャーチル)

昨日テストした解析手続きは 2 ステップからなっており、少々面倒なので、今日は思い切ってそれを単一ステップに簡略化してみました。昨日と同じ三組のデータでテストしたところ、順調かつ迅速に収束。内二つでは、昨日よりも Rwp が向上しました。

これまで手こずっていた解析がスイスイ片付くようになったのは、ほんのちょっとした工夫の賜でした。メモの必要もないくらい単純なことです。RIETAN-FP はまったく改良していません。そのノウハウを会得するや否や、再び「なぁんだ」感(1 月 27 日)に襲われました。

RIETAN-FP を作った自分がその優れた潜在能力を活かし切れていなかった —— 発展途上(未熟)なのは RIETAN-FP でなく自分自身だったのです。今後も RIETAN-FP の熟成を継続していこうというモチベーションが湧いてきました。

■ 2011 年 2 月 3 日(木) 言論統制を敷いている国の不適切な措置

某国の某大学の某研究者から、当方のソフトを配付している Web ページにアクセスできないというメールが届きました。ネット規制の網にかかっているとしか思えません。不条理な話です。なにしろ、某国を批判した覚えなどありませんからね。

無用の摩擦を避けるため、今日のところは「某国」とだけ書くに留めます。それにしても虫の好かない国だなぁ。しかし、当該 Web ページでは科学技術ソフトを無償配付しているに過ぎず、利益獲得の機会を喪失したわけじゃなし、実害はありません。

今日も新解析技術のブラッシュアップを続行。RIETAN-FP を 3 箇所修正し、ごく弱い反射におけるフィットを改善するとともに、file_conv.command というシェルスクリプトの雛形も作りました。ものつくりに自ら励むのが性に合っているな、とつくづく感じます。

■ 2011 年 2 月 4 日(金) J-PARC で測定した粉末回折データの解析結果の見た目が♦♦♦♦件

J-PARC の 粉末中性子回折装置で測定したデータを Z-Rietveld とかいうリートベルト法プログラムで解析した場合、概してパターンのフィットが良くないのは、あのショッキングな記者発表資料(2010 年 12 月 25 日)で目の当たりにしていますし、装置のユーザー(NIMS 外の方々です。念のため)からもそういう声が寄せられています。

それらの装置で得た研究成果を報告する論文の中には、積分強度に基づく RB と RF を記載しない、杜撰なものさえあります。通常、RB あるいは RF が 5 % を超えるとイエローカードを突きつけられるのが常ですから、 それらを隠蔽したいのでしょう。しかし、リートベルト解析パターンを見せてしまったら、フィットの悪さは一目瞭然。「頭隠して尻隠さず」です。

このようなフィットの悪さの原因をときどき聞かれます。一々答えるのは面倒なので、ここで私見を述べておきましょう。装置や計測系に問題がなければ、次の四つに大別されます:

  1. 回折データを渡されたまま放置モード入りしたド素人がいい加減な解析でお茶を濁している。
  2. 物理的に◇◇のない、☆☆☆☆としたプロファイル関数二つが組み込まれているが、それらが●●●●に■■■されていない。
  3. いずれのプロファイル関数も★★★★が強く、しかもプロファイル・パラメーター♥♥♥♥が♣♣ので、○○○な□□□に▲▲▲▲やすい。
  4. ▼▼データも解析に含めているのに、△△△を無視して計算している。

No. 1 はよくある話です。中性子回折実験は資格や免許なしに提案できるため、低レベルな初心者でもフィルターにかかりません。結晶学や粉末回折の基礎知識をしっかり学んでもらうか、エキスパートに解析を依頼または手助けしてもらうしかありません。

2〜4 の項目に関しては、それぞれ効果的な対症療法(部分プロファイル緩和にあらず)を知っています。この道三十年の私は、伊達に年を食ってはいません。かなりの改善が見込めます。しかし、何を指摘したところで、馬の耳に念仏でしょう。これらを伏せ字だらけにしたのは、そのためです(笑)。

いや、笑ってる場合じゃないんですよ。こんな状況がズルズル続いたら、♠♠♠♠と呼ばれかねません。おまけに、磁気構造の解析という必須機能(2010 年 2 月 16 日)を Z-Rietveld に実装する当事者能力は持ち合わせていないようです。その結果、鎖国を止めざるを得なくなった、と漏れ聞いています。しかし、たとえ開国したとしても(以下略)

■ 2011 年 2 月 5 日(土) 北関東自動車道が 3 月 19 日に全線開通

北関東道まもなく全線開通 ゆるキャラ祭り!が開催されている、とラジオで聞きました。東京湾アクアラインの海ほたるPA にゆるキャラ 12 体が集結したそうです。都道府県魅力度ランキングで 2 年連続最下位に沈んでいる茨城県が送り込んだのは、「ハッスル黄門」。しかし、「ハッスル」はオイラが高校生だったころ流行った死語ですし、「コーモン」てのは響きが汚すぎます。第一、萌えキャラ全盛時代に高齢者キャラなんて、受けるわけないですよ。黄門様には諸国漫遊からの撤退を勧告したいです。

■ 2011 年 2 月 6 日(日) まさに牛刀割鶏

二組の X-Y データファイル(X は共通)を入力し、Y 同士の差を計算し、新たな X-Y データとしてテキストファイルに出力するという、ごく単純な処理を Excel で行ってみました。普段なら短いプログラムやスクリプトをさっさと書いてしまうところですが、表計算ソフトではどう操作するんだろう、という好奇心からそうしました。

想定外の苦戦を強いられました。まず、行頭にスペースが存在することのあるデータファイル中の X データを正常に読み込んでくれないことに泣かされました。列全体にわたって差の値を計算する方法も、なかなか分かりませんでした。また、スペース区切りテキストとして保存すると、 X と Y のデータの一部がつながったり、余計なスペースが入ったりしました。固定長形式の指定、フィルハンドルの使い方、数式の実体を数値に変換する方法、各列の長さの調節法を知ったのは、大分経ってからでした。

操作法はしっかり Evernote にメモっておきました。しかし、こんな七面倒くさい手続きはもう真っ平。Python スクリプトを作成する方がよほど楽です。

教訓1: Excel を笑う者は Excel に泣く。
教訓2: プログラミングの心得のある者が Excel でテキストファイルを扱うのは無意味である。

■ 2011 年 2 月 7 日(月) 長く待ち望んでいた改善

Mac OS X 用の Evernote を v2.0.4 Beta 1にアップグレードしたところ、ツールバー内でフォントとフォントサイズが変更できるよう改良されていました。ベータ版ですが、安定に動いています。先週から続行している某解析技術のブラッシュアップに関するメモをとっています。

■ 2011 年 2 月 8 日(火) 星の貸し借り —— そうか!

引き続き RIETAN-FP の改良に励みました。今日は、大相撲の八百長騒動から着想した珍妙なアルゴリズムを検証。すこぶる有効というテスト結果が得られ、久しぶりにエキサイトしました。明日から本格的なプログラミングを開始します。楽しみだなぁ。

ちなみに、部分プロファイル緩和は「王妃マルゴ」というフランス映画から思いつきました。断じて FullProf の真似じゃありませんよ。その機能は FullProf よりずっと前に RIETAN に実装し、いち早く IUCr の CPD Newsletter に報告したのですから、むしろ逆です。FullProf の場合、ピーク位置まで緩和するという、タガの外れた実装に堕しています。「過ぎたるは及ばざるがごとし」の誹りを免れません。

今回は相撲界のスキャンダルがアイデアの源だというところが受けます。このところ気分が沈みがちだったのですが、自ら積極的にソフト開発に取り組むことによって元気を取り戻しました。

なお、このたびのブラッシュアップの成果は「RIETAN-FP によるリートベルト解析」入門セミナー(3 月 28 日)で披露する予定です。

■ 2011 年 2 月 9 日(水) 層状ケイ酸塩の構造精密化

新 MEM 解析プログラム Dysnomia を使った MPF 解析の結果が初めて論文となりました:

■ 2011 年 2 月 10 日(木) マジックの種明かしは禁物

この2週間ほど構想を練ってきたアイデアを検証するためのプログラミングが終わり、そのパフォーマンスを調べるための予備テストへと移行しました。細かい点や計算速度には目をつぶり、ざっくり処理します。

ある物質の放射光粉末回折データを対象とし、全回折パターンを対象とするカーブフィッティングにおける重み付き残差二乗和 S(x) を計算したところ

というように S(x) が 3 割弱も下がりました。ごく単純なアイデアなのにもかかわらず、効果てきめん。笑いが止まりません。昨年秋以降に溜め込んできた疲れとストレスはどこかに吹っ飛んでしまいました。

部分プロファイル緩和と MPF 解析も Rwp の改善に威力を発揮しますが、今回の新技術によるフィットの向上はさらに劇的です。それでいて、RIETAN-FP の改造はたった二日しかかかりませんでした。行末の ","(カンマ)が一つ抜けていたというケアレスミスさえなければ、わずか半日で終わったはず。これまで培ってきた数値計算技術がものを言いました。

まるで魔法のように見える、この技法の詳細については、言わぬが花です。真似るのは容易いことですから。口をつぐんでさえいれば、皆様が感嘆の声をあげること、請け合いです。

連休明けから、汎用性のあるルーチンに仕上げる予定です。完成度の向上を楽しみつつ、淡々と作業していきます。

Cu Kα1 特性X線で測定した HUS-1 の粉末回折データを RIETAN-FP と Dysnomia のペアで解析しました。

■ 2011 年 2 月 11 日(金) 不可解な現象

ところで本掲示板ですが、幾度となくグチってきたように、慢性的なネタの枯渇は如何ともし難いです。もう毎日更新は無理じゃないかなぁ。ボケ防止には効き目があるかもしれませんが、もはや限界ギリギリです。

そもそも、私は研究の世界からフェードアウトしていく団塊の世代に属しています。もう訪問者との年齢のギャップが拡がりすぎて、私の主張や言動は意味不明、理解不能なところだらけではないでしょうか。同じような文言の使い回しが目立つ上、概して冗長です。しかも文章表現には加齢臭が漂っており、今時の若者は鼻をつまんでいるに違いありません。

ところが、今年に入ってから、本ホームページの訪問者(セッション数)は突如として約 3 割も増えました。Google Analytics の解析結果からは、特定の日にアクセスが集中したのでなく、全体的に底上げされていることが読み取れます。あらためて今年の分に目を通してみましたが、旧態依然のままでした。この非連続的なセッション数の増加は何に起因しているのか、何がこれほど受けているのか —— 不思議でなりません。

■ 2011 年 2 月 12 日(土) HV 無用生活者の弁

1 月の新車販売ランキングで、トヨタのプリウスは首位から3位に陥落し、ホンダのフィットがトップに立ちました。その 51.2 % が HV(Hybrid Vehicle)です。

こうなると、トヨタは先月のデトロイトショーで発表した低価格 HV、プリウス・C コンセプトの発展形の発売を急ぎ、フィット HV に対抗する必要に迫られるでしょう。しかし、「2012年上半期までに市販」というスローペース振りから見て、現行プリウスにおけるニッケル水素充電池に代わってリチウム・イオン電池を採用しないと、インパクトが弱すぎます。車格の近いフィット HV から2年近くも遅れて発売ですからね。電池の製造技術が固まり、性能が安定し、コストが十分下がるのを待っているのかもしれません。

しかし、ニッケル水素電池という枯れた技術に立脚した HV なら安心して乗れますが、リチウム・イオン電池を採用した初の HV なんかに飛びつくと、最新技術に付き物の初期トラブルに見舞われる恐れが多分にあります。電池の交換なんて事態に陥ったら、目も当てられません。

常に新バージョンのソフトに執着し続け、幾度となく痛い目に合ってきた私ですが、市販ソフトやシェアウェアで、甚大な損害を被ったことはありません。大量の時間を失ったくらいのものです。しかし、高価で、なおかつ大切な命を預ける車となると…

それに、モーターはネオジム(+ジスプロシウム)磁石と高純度銅線の塊ときています。ネオジム磁石はリサイクルを念頭に置いて製造されていないため、モーターを分解しても、回転子から磁石を分離するのは困難だそうです。あ〜、貴重な資源がもったいない。居丈高な国に揉み手し、言い値でレアアースを買わざるを得ないのも気にいらねぇ。

まあ、その辺をチョロチョロ走っているに過ぎない自分が新車を買うとすれば、HV はおろか、大容量の鉛酸バッテリーを積むアイドリング・ストップ車でさえ過剰性能です。いくら経済観念に乏しい私でも、それくらいの分別は備えています。

そういう私にピッタリの推奨品: 中古の軽自動車は如何?

■ 2011 年 2 月 13 日(日) 奥アマゾンの日常茶飯

しばらく前に観た「ヤノマミ 奥アマゾン 原初の森に生きる」の再放送は衝撃的でした。とくに 14 歳の少女が産み落とした嬰児を自ら手に掛け、へその緒がついたままの遺骸をアリ塚に放り込み、白アリが食べ尽くした後、アリ塚ごと燃やし、精霊として天に帰すという一連の凄まじいシーンには度肝を抜かれました。

ヤノマミの日常生活が淡々と映し出されているだけなのですが、言葉を失いました。文明社会における倫理や価値観など一切通用しない、原始的な世界です。この世に生を受けた直後に実の母親に間引きされ「火葬」される嬰児と、何十年も馬齢を重ねてきた自分のどこに差があるのか、と自問自答しました。答えは、「死後には、名誉も地位も財産もはぎとられて只の骨になり、やがて世界全体から忘れ去られるという点で同じようなもの」という身も蓋もないものでした。いや、さしたる業績も挙げず、善行も積まずに生き延び、煮ても焼いても食えぬ老人と成り果てるより、精霊のまま天に召される方がましなような気さえしました。

■ 2011 年 2 月 14 日(月) 着実な前進

RIETAN-FP の改造を再開し、新方式の最適化エンジンをサブルーチンとして分離するとともに、標準入力ファイル *.ins から当該機能の関連データを入力するよう改訂しました。2 月 10 日に記した放射光粉末回折データでテストしたところ、 残差二乗和 S(x) は 9401.5 から 5795.39 にまで減少しました。Mac Pro での計算時間は 82 s です。

本エンジンの卓越した性能はすでに実証し終えため、今後は計算のスピードアップと利便性の向上を目指します。

RIETAN-FP はまだまだ手を入れる余地が沢山あります。いくらいじったところで、切りがありません。この新テクニックには腰を据えて取り組んでいきます。

すみません。「燃え尽きて灰になった」(2010 年 12 月 22 日)という萎縮した文言は、言葉の綾にすぎませんでした。廃人ならぬ「灰人」が新奇なアルゴリズムを考案したり、?-???????? を罵倒したり、ニヤニヤしながら「デカワンコ」を観たりする訳ありませんから。

■ 2011 年 2 月 15 日(火) たまには景気のいい話をしましょう

最適化エンジンを改造し、一括処理から逐次処理に変更して計算効率を上げたところ、昨日と同じデータが 20 s で処理できました。標準出力も改善しました。ただでさえ短いソースコードが、なおさら簡潔になりました。

まだ相当無駄な計算をしているので、さらなる高速化が望めます。最終的には自動化も果たしたいです。当分、楽しめそうだなぁ。今回のデータ処理の高度化を推し進めていけば、未知構造解析技術の進歩へとつながる可能性があります。

しかし、これほど単純なアイデアを思いつくのに十年を越える歳月を要したのは、我ながら情けない。その程度の頭脳しか持ち合わせていないという現実に打ちのめされました。あっ、最後はまたしても自虐的に…

■ 2011 年 2 月 16 日(水) 幻聴?

無駄な計算は省くよう、最適化エンジンを改良しました。とたんに原因不明のトラブルが発生し、一時は途方に暮れましたが、新たなパーツ(関数副プログラム)を取り付けた結果、正常に動くようになりました。

計算時間はわずか 1.3 s —— 望外のスピードアップです。まだ、細部のリファインは残っているものの、骨格はほぼ出来上がったといってよいでしょう。

この年で時代遅れの Fortran プログラミングにいつまでもしがみつくのは、客観的に見て、醜態をさらしているだけです。「誰ももうあんたになんか期待してない。他にやることはないのかよ」という声が幽かに聞こえるような気がします。まったくもって、仰せの通り。返す言葉はございません。

Mac OS X 用 RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境の基盤となっている Jedit X が Rev. 2.27 にアップグレードしました。

■ 2011 年 2 月 18 日(金) 4 つ目の一里塚を横目で見ながら通過

VESTA に関する newsletter と論文の被引用数の合計が 400 を越えました。すなわち、現時点における

の被引用数はそれぞれ 69(Google Scholar 調べ)と 332(ScienceDirect 調べ)であり、計 401 となります。過去半年間のペースが継続すれば、7 月末には 500 に到達する見込みです。

この群を抜く人気と知名度は、VESTA の将来性と継続性が疑われると、長続きしないでしょう。しかし。心配ご無用。現行バージョン VESTA 2.1.X の背後には魅力的な新機能を備えた次世代版 VESTA 3 が控えている上、門馬君はまだまだ若いですから。

VESTA 3 のベータ版のリリースが遅れており、申し訳ありません。現在、英文マニュアルの執筆を急いでいます。これが相当きつい作業だということを察していただき、もうしばらくお待ちください。

日本セラミックス協会 2011 年年会における口頭発表「次世代三次元可視化システム VESTA 3」(○ 門馬綱一、泉 富士夫)は 3 月 16 日の 1I26(15:15〜15:30)と決まりました。同年会に参加される方は、ぜひ聴講してください。なお、私は直後のセッションの座長を務めます。

■ 2011 年 2 月 19 日(土) こちらはようやく最初の一里塚に到達

RIETAN-FP の正式版をリリースしてから 1 年半余りが経ちましたが、本日、RIETAN-FP を使って得た研究成果を発表する際に引用すべき論文

の被引用数が 100 の大台に乗りました(ScienceDirect 調べ)。

未だに廃物(RIETAN-2000)利用にこだわる人が多いのは残念です。現時点で RIETAN-2000 を使うメリットは皆無です。RIETAN-FP の使用を前提とする「粉末X線解析の実際」第 2 版も出版されたことですし、RIETAN-2000 から RIETAN-FP への乗り換えを強く呼びかけたいです。

2000 → FP の移行は簡単ですよ。RIETAN-FP_manual.pdf 中の「多目的パターンフィッティング・システム RIETAN-FP の新機能について」を斜め読みすれば十分です。回折強度を計算するためのパラメーターや精密化の指標 A と ID、線形制約条件を入力する核心部分はまったく変わっていません。

■ 2011 年 2 月 20 日(日) なんだ、これが原因だったのか

体調の悪さを押し切り、1 月末から取り組んできた RIETAN-FP の新機能の仕上げに土・日を捧げ尽くしました。データ処理の範囲を広げると収束しなくなるというバグが、ついに解決しました。ある関数の冒頭における例外処理のことをケロっと忘れていたのです。そこを修正したとたん、見違えるように収束性と安定性が向上しました。めざましいフィットの向上を享受しうる幸せをかみしめました。

今回のプログラミングを通じて、自分はまだ賞味期限が切れていないことを実証しました。

まだブラッシュアップが必要ですが、「RIETAN-FP によるリートベルト解析」入門セミナー(3 月 28 日)でのお披露目には十分間に合います。放射光粉末回折のユーザーにはとりわけ喜ばれるでしょう。

■ 2011 年 2 月 21 日(月) 我欲の果て

超マシン誕生」の新訳・新装版が昨年夏、出版されていたことを偶然、知りました。DEC の VAX-11/780 対抗の 32 ビット機 Eclipse MV/8000 の開発秘話です。

寝食を忘れて Eclipse の突貫工事に没頭したデータゼネラル社の技術者たちを駆り立てたものは何だったのかが、エピローグで明かされます。それは「我欲」でした。大金が欲しい、いい生活をしたい、より高い地位を獲得したい —— いかにもアメリカ人らしい上昇志向的欲求です。

しかし、Eclipse は市場に出るのが遅すぎました。ハードにせよソフトにせよ、いくら画期的な製品を出荷したところで、タイミングを誤ったら必然的にポシャります。80 年代以降、データゼネラル社は衰退の一途をたどっていきます。1999 年には EMC に買収され、ディスクアレイ装置以外の製品ラインはすべて廃棄され、無に帰してしまいました。亡者の我欲が満たされたとは、到底思えません。

何分にも 30 年以上前の考古学的ストーリーなので、技術的な面白みや新鮮さは味わえないでしょう。最後のページを開き、諸行無常を感じ取るだけで十分です。

■ 2011 年 2 月 22 日(火) RIETAN-FP の新機能を自動化

自動解析のためのコーディングにはかなり手こずり、週末から今日までぶっ通しで作業し続けましたが、その労苦を補って余りあるほど大幅な能率向上を達成し、疲れが吹っ飛びました。

RIETAN-FP の入力ファイル *.ins における当該機能関連の入力データは、二つだけです。後は放っておくだけでぐんぐんフィットが良くなるのですから、楽なもんです。

数年前、某書籍において RIETAN-2000 による粉末 X 線回折データの解析結果を図・表に使ったことがありました。今日ビルドしたばかりの RIETAN-FP で同じデータを再解析したところ、Rwp が 12.21 % から 8.79 % にまで下がりました。単に予備的なテストを実施しただけですから、解析をさらに押し進めていけば、フィットは確実に改善されるでしょう。

この新機能を組み込んだ RIETAN-FP の次期バージョンは一足飛びに v2.0 とする予定です。それくらいの価値は十分あると確信しています。

■ 2011 年 2 月 23 日(水) 今日もブラッシュアップを続行

解析の自動化は喜ばしいことでしたが、細かい不具合が次々に見つかり、デバッグに追われました。体調は相変わらず優れません。最後の力を振り絞っているという悲愴感が漂ってきました。

RIETAN-FP のプログラミングには Intel Fortran Composer XE 2011 for Mac OS X を使っています。同コンパイラ用のプログラミング環境 Xcode では、下記のようにカスタマイズしています。

検索窓の左側の虫眼鏡をクリックし、次の 2 項目をチェックする:

✓ 大/小文字を無視
✓ 折り返す

ツールバーの左下、ファイル名の右に行と列の番号を表示するために、[環境設定... > テキスト編集 > 表示オプション] で次の項目をチェックする:

✓ 列の位置を表示

ソースコード中にタブが挿入されると、エディタによって見え方が異なるため、[環境設定... > インデント設定 > タブ] で次の項目のチェックをはずす:

□ スペースの代わりにタブを挿入
■ 2011 年 2 月 24 日(木) 等式制約条件下の最適化へとアップグレード

気張らずにシンプルな最小化法を採用したため、意外と簡単に片付きました。この技法は去年、磁気構造(化学的単位胞 ≠ 磁気的単位胞)解析の機能を RIETAN-FP に追加したときにも利用し、自家薬籠中の物としています。

RIETAN-FP v2.0 はいい感じに仕上がってきています。

■ 2011 年 2 月 25 日(金) 自作ソフトの利用に関する基本方針

昨年来、RIETAN-FP や VENUS(の一部) の商用ソフトへの組み込みについて、国内外の理化学機器メーカー 2 社から打診がありました。我々が開発したソフトは、配付物をそのまま使う場合、すなわち当方のサービスやソースコードの開示・改変が不要な場合は、たとえ商用ソフトであっても無償使用を許可しています。太っ腹すぎるという批判もあるでしょうが、ネットを通じた著作物の公開によってそれらの波及効果を最大限に高め、社会に役立たせるという理想を貫く所存です。

ただし、どんな商用ソフトで利用されているかを把握しておきたいので、あらかじめ私に申し出ていただくことが望ましいです。今後、RIETAN-FP や VENUS を実装した製品が出荷しましたら、その都度、本掲示板で紹介するつもりです。

VENUS(VESTA, PRIMA, etc.)のパルス中性子源での使用でも同様で、装置グループ、研究室、組織(大学、独立行政法人、民間企業など)を代表する人物が私に利用申請していただき、利用方法に問題がなければ、基本的に無償での利用を許可する(使用許可書を発行する)方針です。もちろん、当方が労力を提供する場合や、技術指導を行う場合、共同研究を実施する場合はこの限りでありません。

■ 2011 年 2 月 26 日(土) 宿痾の全快

今回 RIETAN-FP に追加した新機能と関係して昨日報告があった RIETAN-FP のバグを退治しました。昨日まではにっちもさっちもいかなかった回折データをすんなり処理できるようになりました。その結果、解析エンジンのパフォーマンスが驚くほど向上しました。

RIETAN-2000 のリリース以来、この不具合をずっと抱えこんできたことになります(汗)。大規模なプログラムが十分枯れるまでには長い年月がかかるんだなぁ、と今更ながら痛感しました。ただし、リートベルト解析や MEM 解析とは無関係なパートです。念のため。

RIETAN-FP の安定性が向上したのは嬉しいですが、相変わらず週末がかき入れ時という状況は困ったものです。

上記の仕事をやり終えた午後、この辺ではほとんど見かけぬデカいベンツに乗った方が拙宅にお見えになり、三時間ほど面談および歓談。う〜ん、別な世界の人ですなぁ。あちらもそう感じたでしょうね。

■ 2011 年 2 月 27 日(日) ブラックボックス化すべきか否か

今日は RIETAN-FP に組み込んでいる新機能の標準出力を整形し、データを追加しました。当該機能関係の出力が半減し、見やすくなりました。

テストにご協力頂いている方が、この解析技術は未知構造解析に役立ち、RIETAN-FP に新たな付加価値を与える画期的なものだと太鼓判を押してくれました。そして、独自の名前を付けたらどうかと勧められました。

現段階では、命名などに頭を使うよりブラッシュアップに精を出すべきだと思います。大相撲の八百長スキャンダルに触発されたアイデアを形にし始めてから、まだ20日くらいしか経っていないのですからね。マル秘技術として覆い隠し、優れたパフォーマンスで人を驚かせるのも一興です。

これまで私はいつも義務感や使命感に駆り立てられ、我と我が身に鞭打ちながら仕事してきました。はっきり言って、仕事は「苦役」でした。終始、体調の悪さを堪えながら全力で取り組んだ今回の開発は、自分の頭でアイデアをひねり出し、自ら汗を流し、献身的な協力者とのコミュニケーションを図り、使い勝手と安定度が日増しに改善されていくのを楽しみながら働くことの素晴らしさを教えてくれました。はかない喜び、尊い喜び —— 研究人生の終幕近くになって、初めてこういう気持ちを味わいました。

■ 2011 年 2 月 28 日(月) カウンターバランス

今日で今月はおしまい。諸般の事情から VESTA 3 のマニュアル作成は遅れに遅れていますが、そのおかげで RIETAN-FP v2.0 へのバージョンアップが進捗したのも事実です。マニュアルはいずれ必ず完成するのですから、RIETAN-FP の目覚ましいパフォーマンス向上を素直に喜ぶことにいたしましょう。

現時点での「RIETAN-FP によるリートベルト解析」入門セミナー(3 月 28 日)の受講者はまずまずの人数に達しており、ほっとしました。そろそろ準備にとりかかります。今回はスライドばかりでなく印刷物を使った説明も含めるつもりです。

■ 2011 年 3 月 1 日(火) 解析エンジンをハイブリッド化

RIETAN-FP v2.0 に追加した新機能による解析を、従来の解析が終わった直後に実行する coarse to fine の計算方式に変更しました。最適化方式の異なる二種類のエンジンが相補的に動作し、それぞれの欠点を互いにカバーすることにより、安定・確実に収束へと導きます。

2 月 22 日に記したデータでテストしたところ、R 因子が

Rwp: 12.21 % → 7.79 %
Rp: 8.42 % → 5.35 %
RB: 0.84 % → 0.79 %

というように改善されました。瞠目すべき成果といってよいでしょう。

Windows 用 RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境の基盤となっている秀丸エディタの正式版が v8.03 に、Windows 用 RIETAN-FP・VENUS 配布ファイルに同梱している FastCopy が v2.08 にバージョンアップしました。

■ 2011 年 3 月 2 日(水) 解析の繰り返しが有効なことを実証

昨日の解析で得られた結果を出発点とするだめ押し的再解析により、案の定、フィットがさらに向上しました:

Rwp: 12.21 % → 7.79 % → 7.61 %
Rp: 8.42 % → 5.35 % → 5.09 %
RB: 0.84 % → 0.79 % → 0.57 %

文句なし! 3週間ほど前、この新技術の開発に着手したころは予想だにしていなかったパフォーマンスの高さに酔いしれました。

今回のプログラミングでは、粉末回折データから最大限に情報を抽出するよう工夫を凝らしただけでなく、自分の健全で建設的な面を活かすのにも腐心しました。仕事の停滞に苛立ち、負のエネルギーを溜め込んだところで、百害あって一理なし。「人は人、自分は自分。人をあてにせず、自ら先頭に立って奮闘し、一歩でも前に進む」というのが大人の対応です。もっとも、この度の新機能は、「一歩」どころか「走り幅跳びによるジャンプ」に相当するくらいの飛躍的な前進だと自負していますが。

まだ公表は控えますが、昨日、新解析法の呼称が決まりました。「RIETAN-FP によるリートベルト解析」入門セミナー(3 月 28 日)で初めて発表します。その際に差し上げる PDF 文書中に使用法を詳しく記述する予定です。

■ 2011 年 3 月 3 日(木) リチウム二次電池材料の構造解析

水熱法で合成した Li2FeSiO4(低温相)の結晶構造と電子密度の解析:

放射光粉末回折データのリートベルト解析には RIETAN-2000、MEM 解析には PRIMA、結晶構造と電子密度分布の作画には VESTA が使われました。

■ 2011 年 3 月 4 日(金) 比較的新しい粉末回折と中性子回折に関する書籍
  1. R. E. Dinnebier and S. J. L. Billinge, "Powder Diffraction: Theory and Practice," RSC Publishing (2008).
  2. A. Clearfield, J. Reibenspies, N. Bhuvanesh, "Principles and Applications of Powder Diffraction," Wiley-Blackwell (2008).
  3. E. H. Kishi and C. J. Howard, "Applications of Neutron Powder Diffraction," Oxford University Press (2008).
  4. V. K. Peharsky and P. y. Zavalij, "Fundamentals of Powder Diffraction and Structural Characterization of Materials," 2nd ed., Springer (2009).
  5. B. T. M. Willis and C. J. Carlile, "Experimental Neutron Scattering," Oxford University Press (2009).

お薦めの好著ということではなく、こういった書籍が販売されていますよ、という情報に過ぎません。念のため。

3番目の本は TOF 粉末中性子回折に関する記述、4番目の本は粉末中性子回折に関する記述がごくわずかだということを指摘しておきます。

■ 2011 年 3 月 5 日(土) Python の最新版

Python v3.2 が公開されました。本掲示板のチェック用スクリプトを実行するのに毎日使っています。

これから何かと忙しくなるので、自分としては異例に早く確定申告書を作成しました。鳩山前首相の脱税に憤慨しているだけでなく、子ども手当の1万円増額(16,000 → 26,000)がバラマキ的色彩の強い政策として民主党のマニフェストに唐突に盛り込まれた経緯を朝刊で読んだ直後だったため、ムカつきながら作業しました。政権担当能力を欠く民主党の崩壊という未来予想図しか思い浮かびません。

■ 2011 年 3 月 6 日(日) 無神経なインタビュー

ニュージーランドの大地震の後に右足の切断手術を受け救出された男性に、フジテレビのアナウンサーが電話取材し、「もうサッカーできなくなるわけですが」と発言した件で、大炎上が勃発しました。人様の災難のことで口角沫を飛ばし、第三者まで巻き込んで大げんかというのは…(絶句)。もっと生産的なことにエネルギーを注ぐべきでしょう。

海外滞在中の危機管理やリスクヘッジについては、個人や組織がきちんと対応するしかありません。ひところ頻繁に海外出張していた私は、ことによると飛行機が落ちたり、犯罪の犠牲になるかもしれないと覚悟した上、渡航していました。実際、盗難にあい、交通事故に巻き込まれたこともありました。

「銀婚式」(1 月 23 日参照)というタイトルの意味がわかったというのは早合点に過ぎませんでした。高澤修平は相変わらず不運に見舞われ通しです。重苦しい雰囲気のまま終わっちゃうのかなぁ。

■ 2011 年 3 月 7 日(月) R 因子が激減!

以前、ヨーロッパの中性子源から送られてきた角度分散型粉末中性子回折データを RIETAN-FP v2.0 により再解析したところ、フィットの良さを示す尺度が

Rwp: 8.17 % → 3.86 %
Rp: 5.80 % → 2.94 %
RB: 0.76 % → 0.31 %

というように著しく向上しました。粉末 X 線回折データ以上に新技法が有効でした。というより、分解能が低いデータほど神通力を発揮するということなのでしょう。

当該機能については、「RIETAN-FP によるリートベルト解析」入門セミナーの参加者に配付する説明文の執筆を残すのみです。今日中に書き終え、一丁上がりとします。平行して取り組んでいる VESTA 3 のマニュアル作成より先に、豊富な経験と高度な知識を要する先進的機能の実装の方が片付くというのは想定外でした。

なお、同マニュアル(というより、その完成途上版)を同梱した VESTA 3 の Windows ・Linux 用ベータ版は、日本セラミックス協会年会が始まる 3 月 16 日までにはリリースする予定です。同年会における口頭発表「次世代三次元可視化システム VESTA 3」は初日の午後(15:15〜15:30)に行われます。

■ 2011 年 3 月 8 日(火) 期待はずれ、四例

今は亡き H 先生からこう伺いました。「将来が楽しみと、鳴り物入りで入ってきた若手研究者がどんどんつぶれていくんですよ、ウチ(匿名希望)は」。でも、その連中だって多少は仕事をしたんでしょう。下を見たら切りがありません。●●●●に職を得て以来ウン十年、筆頭著者の論文をろくに書いたことがないという「研究者」を何人も知ってます。

「多額の予算を投入したにもかかわらず、出来上がったのはなんともショボいジャンクソフトだったので、ネット上での公開は差し控えてます」というのもありそうな話です(特定の著作物を揶揄する文言ではありません)。

神業のようなスピードで入試会場からケータイで知恵袋に英訳問題を投稿したら、速やかに解答が届き、一見まともな答えのように見えたので、それをベスト・アンサーに選び、知恵コインを 20 枚進呈、という京大受験におけるネット・カンニングの形跡が未だに知恵袋で閲覧できるようになっています。その解答なるものが、単に当該問題を Google 翻訳に英訳させた稚拙なものに過ぎなかった、ってのは笑えますね。嘘だと思ったら、ここをご覧あれ。コソ泥の上前をはねる詐欺師 —— 油断も隙もあったものではありません。

待てよ、この予備校生はなぜGoogle 翻訳を直接、使わなかったんだろう?そうすれば中間搾取を防げたのに。そんなサービスがあるとは露知らず、ということですかね。

Google 翻訳は和文英訳が苦手らしいので、 RIETAN-FP の英文マニュアルから

The Le Bail method provides us with the opportunity for estimation of integrated intensities in the absence of any structural model with a simple procedure proposed by Rietveld.

という文を抜き出して和訳させて、その実力を試してみました。回答は以下の通りです:

Le Bailにメソッドは、積分強度を推定するための機会を提供してくれます
リートによって提案された単純な手順で任意の構造モデルの不在インチ

不在インチ? ダメだ、こりゃ。超優秀な技術者ぞろいで定評のある Google の技術力を疑わざるを得ません。これまた期待はずれに終わりました(笑)。

■ 2011 年 3 月 9 日(水) 案ずるより産むが易し

「RIETAN-FP によるリートベルト解析」入門セミナー(3 月 28 日)の参加者に配付する補足資料は RIETAN-FP v2.0 に関する部分の加筆・修正を重ねた結果、11 ページにまで増えました。その執筆中に Superflip との互換性に関連して RIETAN-FP を修正すべきだということに気づき、すぐさま改訂しました。

本掲示板を継続して読んでおられる訪問者はよくご存じでしょうが、私は依頼執筆や依頼講演・講義をプログラミングのためのドライビングフォースとしてしばしば活用しています。一般に、学生は試験の直前にならないと勉強しません。同様に、私も何らかのデッドラインがないと、なかなかプログラミングに励もうとしないのが常です。一方、期限までに間に合わせようという責任感と、それの達成に必要な集中力だけは持ち合わせているため、本末転倒とは承知しつつ、抜け目なくセルフコントロールに利用している次第です。

今日は RIETAN-FP v2.0 に追加した新機能を特性 X 線(Kα1 + Kα2)で測定したデータにも適用できるようプログラムを改造しました。かなりの難事と予想し、二の足を踏んでいたのですが、昨晩就寝した後、厳密な単色ビーム(放射光、Kα1、中性子)にしか使えないようでは、大多数の実験室系 X 線回折装置のユーザーを切り捨てることになるなぁ、と思い煩い、眠れなくなってしまいました。上記セミナーの参加者は、ほとんどが実験室系回折装置のユーザーでしょう。「お前の講義を聞きに来る人たちの期待を裏切っていいのか」という幽かな声がどこかから聞こえたような気がしました。

今朝、寝不足のまま出勤してまもなく、反射の重なりに関する基本的事実に気づき、そのとたんに単純明快なアイデアが閃きました。かくなる上は実践あるのみ。その後、数時間、脇目もふらずプログラミングに没頭し、夕方までになんとか正常に動くようにしました。フッ素アパタイトでのテストでは、Rwp が 9.77 % から 7.19 % に改善されました。まだリファインが必要ですが、後は楽なものです。

嗚呼、孤立無援の身で老骨に鞭打ち、よくぞ頑張った!自分がロシナンテにまたがった憂い顔の騎士のように思えてきました。あっ、ドン・キホーテは今際の際に皆の前で過去の所業を詫びてから、昇天するんだっけ(汗)。

■ 2011 年 3 月 10 日(木) 恐るべし、RIETAN-FP v2.0

昨日の奮闘努力の成果を試用したユーザーから 15 組ものテスト結果を受けとりました。放射光、実験室系X線(Cu Kα、Cu Kα1)、中性子の回折データが含まれています。何の報酬もないのに、よくぞここまで —— ありがたい限りです。すべての解析パターンが抜群の当てはめ能力を証拠立てており、RIETAN-FP v2.0 が素晴らしいパフォーマンスを発揮するのは疑いの余地がありません。

EXPO2009 および Superflip との互換性があるため、今後、SDPD(Structure Determination by Powder Diffractometry)に直接役立つ強力なツールとして広く利用されることでしょう。

VESTA 3 のマニュアル執筆の大幅な遅延が RIETAN-FP v2.0 の開発を促したのは事実です。牛歩の如きスピードではありましたが、そちらの方も大分進捗して来ました。来週初めまでに、ベータ版に同梱するマニュアルとして必要最小限の体裁を整えるつもりです。

■ 2011 年 3 月 11 日(金) マグニチュード 9.0 の巨大地震

回折データによっては最小化が収束しない場合があることがわかり、RIETAN-FP v2.0 中の整数定数一つを変更しました。テストに成功し、門馬君と VESTA 3 のボタンに付ける名前について相談し、一息ついているところに大地震が発生。長周期の揺れが異常に長く続いた後、 停電となり、研究棟から外部に避難しました。寒々としたグラウンドの隅で幾度となく余震に見舞われました。居室に戻っても停電のままで、業務に復帰できる状況ではありませんでした。今日はこれでおしまい。

地震が勃発した際に稼働していた PC 2 台と Time Capsule が壊れていないことを祈ります。幸い、二日前の RIETAN-FP v2.0 のソースコードは自宅に保存してありました。

帰宅したら、多くの物が落下、散乱、移動し、disorder 状態に陥っていました。

■ 2011 年 3 月 12 日(土) 千年に一度の大震災に遭うとは…

いまだかつて、これほど大規模な地震は経験したことがありません。岩手から茨城にかけて甚大な被害が出ています。被災者の方々には心からお見舞い申し上げます。つくばでは未だにときどき揺れを感じます。

昨晩は使用できなかったケーブル TV とインターネットは、朝になったら回復していました。電気、ガス、電話も使えます。水道は正午前からチョロチョロ流れるようになりましたが、夕方に再び断水しました。

昨夜は寝たり起きたりで、年初来、芳しくなかった体調はますます悪化しました。

NIMS は停電となっておりますので、当面、私へのメールは fujioizumi@me.com 宛てに送信するようお願いします。

■ 2011 年 3 月 13 日(日) 祇園精舎の鐘の声

数名の方々から、震災見舞いのメールをいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。つくばは依然として断水したままで、身動き取れません。相変わらず余震も起きています。

このたびの大震災は日本の核心部である首都圏を直撃したわけではありませんが、ただでさえ活力を失いつつある日本の足腰を弱らせ、国力を削ぎ落とすに違いありません。東電福島第一原発 1・3 号機への海水注入により、それらの廃炉が確実になりました。今後、東電管内が深刻な電力不足に陥るのは明らかです。20 年近く前に訪れたことのある五浦海岸の六角堂は津波で流された模様。悪いニュースが次々に飛び込んできます。

病み衰え、縮みつつある日本 —— 自分も似たようなもの。今後どう身を処したらいいのか。もう心は決まっています。

ここで、差し障りのないことを一つだけ事前通告しておきましょう。本掲示板は三月いっぱいで閉鎖します。ご存じの通り、もう何年も前から、ネタ不足なので止めたいとつぶやき続けてきました。本掲示板は集客のための広告塔としての役目を立派に果たしており、アクセス数が非常に多いのは事実です。しかし率直に言って、私の本気度は人気と反比例しています。こういう冗長かつマンネリの文章を長く書き続けるのは無意味です。管理人自身が持て余し気味のお荷物を惰性で背負い続けるのはナンセンスなので、この際、思い切って打ち切ろうと決意しました。

ただし、本 Web サイトが消滅するわけではありません。最重要な責務たる RIETAN-FP のブラッシュアップと配付は来年度以降も続行するからです。念のため。

■ 2011 年 3 月 14 日(月) 大混乱

朝起きて、第一グループの計画停電(6:10〜10:00)が中止になったと知り、普段通り出勤。上水道とトイレが使用できない上、いつ停電になるかわからないため、装置などの点検を終え、ブレーカーを落としたら、帰宅せよとのアナウンスがありました。

幸い、2 台の PC と Time Machine は正常に立ち上がりました。必要最小限のフォルダを USB メモリーにバックアップし終えるや否や、これまでで最大クラスの余震が発生。ただちに避難してください、という緊急放送があったため、速やかに研究棟から退出し、そのまま帰宅しました。

NIMS の Web メールサーバーは依然として停止したままです。一昨日記したように、当面、私宛のメールは fujioizumi@me.com にお送りください。

門馬君と相談し、非常事態発生のため、VESTA 3 ベータ版のリリースは急遽延期することに決めました。

頻度こそ減ってきたものの、余震は相変わらず続いています。まだ油断はできません。

■ 2011 年 3 月 15 日(火) 最悪の状況

出勤途中に、東大通りでガソリンスタンドでの給油待ちの車が長蛇の列となっているのを見かけました。NIMS では相変わらず上水道、トイレ、インターネットが使えないことを知り、早々に帰宅しました。自宅でみっちり仕事します。

東京電力は管内の 1 都 8 県中で最も被害の大きい茨城県を当面、計画停電の対象から外すそうです。つくば市は災害救助法の適用を受けました。本日、つくばエクスプレス(TX)は 10:30 から 20:00 まで運休しています。

交通の大混乱、余震の可能性、その他諸般の事情を勘案した結果、明日から開催される日本セラミックス協会年会への参加は、残念ながらキャンセルしました。座長は代理人にお任せします。同年会における VESTA 3 に関する口頭発表も取りやめ、門馬君には VESTA 3 のベータ版の仕上げに集中してもらうことにしました。今のところ、三連休開けの 3 月 22 日(月)のリリースを目指しています。

3 月 28 日の情報機構セミナーについては、現時点で、昨年 5 月に開催した同セミナーとほぼ同数の参加登録者が集まっているとのこと。参加者の期待に応えるためにも、予定通り開催したいところですが、最終的には諸情勢を考慮して開催するか否かを判断いたします。

■ 2011 年 3 月 16 日(水) 悲しみと無力感に打ちひしがれつつ自宅待機中

NIMS 並木地区のネットワークはまだ回復していない上、上水の供給は不安定とのこと。被災地のうち、断水の世帯数がもっとも多いのが茨城県というのは驚くべきことです。

つくばでは未だに余震が続いていますが、浮き足立つことなく、ひたすらプログラミングに励みます。世のため人のために役立つことで、今の自分に為し得るのはそれだけです。

■ 2011 年 3 月 17 日(木) 原発安全神話(= 絵空事)の崩壊

ヘリコプターで 3 号炉に水を投下? 焼け石に水とはまさにそのこと。JCO 臨界事故におけるバケツ使用を想起させるようなローテク作戦じゃありませんか。えっ、機動隊がデモ鎮圧用に使う高圧放水車が出動だって? そんなマンガチックな… う〜ん、やっぱりプールには届かなかったか。それなら今度は自衛隊の消防車!もう末期ガンの患者がのたうち回っているような凄惨な状況で、目を覆いたくなります。

そもそも、東電や監督官庁が「安全だ、安全だ」と宣伝しまくり、津波が襲来する可能性がある海岸近くに原子炉を密集させていたなんて…(絶句)。無謀かつ無責任な計画にお墨付きを与えた御用学者が何人もいたんだろうなぁ。

3 月下旬に開催される物理・化学・材料科学分野の主要研究集会、

はすべて中止と決まりました。現下の被災・混乱状況からみて適切な判断だと思います。

■ 2011 年 3 月 18 日(金) セミナー中止のお知らせ

情報機構セミナー「RIETAN-FP によるリートベルト解析」入門(3 月 28 日)につきましては予定通り実施する意向でしたが、東日本大震災後の社会情勢、東電福島第 1 原発で起きている深刻な事態、大規模な余震の懸念などを慎重に考慮した結果、中止とさせていただくことにしました。

未だに余震が収まらず、つくば市内でさえ販売中止のガソリンスタンド目指して車が長蛇の列をなしているという状況なのですから、参加者は講義に集中することすら、ままならないでしょう。

同セミナーについては、今月初めから着々と準備しておりました。満足すべき数の参加登録者が集まった上、大震災後はチャリティー・セミナーとする心積もりでおりましたので、開催中止は残念至極ではありますが、客観的に見て開催できる状況でないと判断いたしました。悪しからず、ご了承ください。

ご存じのように、同セミナーは RIETAN-FP のアキレス腱を、逆に強みにしようとする私の背中をグイグイ押してくれました。RIETAN-FP v2.0 は、できるだけ早い時期に公開する所存です。同セミナーの参加者に配付する予定だった補足文書に書き足した v2.0 における新機能に関する説明は、RIETAN-FP_manual.pdf 中の「多目的パターン・フィッティングシステム RIETAN-FP の新機能について」中に含めます。同セミナーでのプレゼンテーション用に作成したスライドの一部は 日本結晶学会講習会「粉末X線解析の実際」(2011 年 7 月 4〜6 日、東京)での講義で使うことにします。大震災の被災者と異なり、灰燼と帰したものがほとんどないのが、せめてもの救いです。

一方、企画・宣伝・実務をお願いした情報機構を泣かせる羽目になってしまいましたが、致し方ありません。

今日まで自宅待機です。年会参加はキャンセル、講義もプログラミングも中止、余震と放射能漏れに怯えガタガタブルブル、虚脱状態では、単なる腑抜け老人に成り果ててしまいます。Never give up! 心の動揺を抑え、ニュースは極力見ないようにし、自宅で RIETAN-FP を改良し、テストユーザーとともにブラッシュアップに努めています。

奮闘努力の甲斐あって、フッ素アパタイト(3 月 9 日)の解析における Rwp は 6.91 % にまで下がりました。しかし、フィットの良さをひたすら追求している自分が、沈み行くタイタニック号の船内で賛美歌を演奏しているオーケストラのメンバーのように思えてなりません。

■ 2011 年 3 月 19 日(土) 大震災に関する報道からは目を背け、

朝から晩まで RIETAN-FP v2.0 のブラッシュアップに従事。被災地から送られてきたテストデータのおかげで、だいぶ安定性が上がってきました。標準出力の改変も進みました。

プログラミングが一段落し、炬燵でぐったりしていた午後 7 時ごろ、茨城県北部で震度 5 強の余震が発生しました。ぐらぐら揺れている最中に何の脈略もなく、若い女が雑草を貪り、吐き出している異様な光景が目に浮かびました。ああ、これは自分が高校生のころ見た「短くも美しく燃え」のラスト近く、飢えに苦しむヒロインの発作的な挙動ではありませんか。綱渡り芸人と妻子ある軍人の逃避行を描いたあの映画では、ピアノ協奏曲第 21 番の第 2 楽章が、ヒロインを演じた女優の高貴なまでの美しさと見事に調和していました。現実はもとよりスクリーン上でも、あれほど美しい女性は未だにお目にかかったことがありません。地震の最中にあの残酷なシーンが突如として脳裏をよぎったのはなぜでしょうか。

■ 2011 年 3 月 20 日(日) 体調の悪さを押し切ってプログラミング三昧

新機能用コードがますます長くなってきたので、モジュラー化を図りました。震災後にかえってパワーアップした感じです。

これほど浮世離れした人も珍しいでしょうね。しかし、非常時には役立たず(足手まとい?)の私は、平和な時代に社会貢献できるソフトを作成するくらいしか能がありません。被災者に対する援助は義援金だけで勘弁してもらいます。

例年 3 月は本ホームページのアクセス数が目立って減りますが、今年は横ばいのままです。休日はかえって増えています。震災後の私の言動がそれだけ注目されているのでしょう。「本掲示板は三月いっぱいで閉鎖します。」(3 月 13 日)という文言に嘘偽りはありません。バックナンバーは一種の「文化遺産」として倉庫に残しておきますが、新規駄文の一般公開は今年度にて打ち切ります。ホームページには What's New を置くことになるでしょう。しかし、今後もプログラミングを続けていくからには、拙作ソフトのユーザー向けのアナウンスや質疑応答のための手段くらいは確保しておくべきです。適当な手段(たとえばメーリングリスト)を探しましょう。

過去を振り返れば、私は Adobe Acrobat をいち早く購入し、それで作成した PDF ファイルをすぐさま Web で公開したという実績があります。何をアップロードしたのかはまったく覚えていませんが(笑)。理工系の研究者としては、日本でトップクラスの早業でした。インターネットを通じた化学情報の発信というテーマで「化学と工業」や「現代化学」のために執筆するよう依頼されたのは、そういう先駆的な試みが注目を浴びたからでしょう。あれから10 数年が経過しましたが、今後もソフトウェアの提供だけでなく粉末回折に関する情報も発信していくよう心がけます。いつまで持続するかは定かでありませんが。

■ 2011 年 3 月 21 日(月) 文句なしの進捗状況

15 日以来、MacBook Pro のかったるさにイラつきながら、家から一歩も出ることなく勤勉に働き続けた甲斐あって、RIETAN-FP v2.0 の完成度はますます上がってきました。今日はペナルティー関数中の重みを自動調節するよう改良しました。手元のテストデータを解析した限りでは、安定確実に作動しており、極上のフィットをもたらしてくれます。明日以降、新たな関連機能を追加する予定です。

大震災により、かえって仕事がはかどったという人間も珍しいのではないでしょうか。20 数年前の高温超伝導戦争で奮戦した経験のある私は、非常事態に強く、肝が据わっています。けっして浮き足だったりはしません。

福島第一原発の原子炉が軒並み廃炉となるのは必至で、東電管内の電力事情はかなりの年月にわたり悪化するでしょう。鉄道、工場、商店、一般家庭などの電力確保を最優先すべき状況下では、大電力を消費する研究は不要不急、贅沢すぎる「お遊び」として邪魔者扱いされかねないということを懸念しています。直接、社会に役立つわけでない純理学的な研究はなおさらです。数百年に一度の大震災が勃発したのだから仕方ないとは思いますが。個人的にはせいぜい節電を心がけます。

幸い私は「高価なおもちゃ」にはそっぽを向いており、MacBook Pro さえあれば研究に不自由しません。一台で Mac OS X と Windows 7 が使えますから。省エネ、省スペース、省経費の極致と言って過言でありません。今後も、科学技術ソフトウェアの提供を通じて社会に貢献していく所存です。

■ 2011 年 3 月 22 日(火) 自宅待機終了、NIMS に復帰

1 週間ぶりに出勤、RIETAN-FP v2.0 にバックグラウンド計算ルーチンを追加しました。これで NRANGE = 2 or 3 の場合に PowderX を使わなくてもバックグラウンド・ファイル *.bkg を作成できるようになりました。二三日は費やすだろうと予想していましたが、半日で完了しました。

さらに、斜交座標の晶系で単位胞体積 V の標準誤差 σ(V) が正しく計算されないという RIETAN-FP のバグを修正しました。このトラブルをご指摘頂いた京大の H 氏に感謝いたします。

今回キャンセルした日本セラミックス協会年会と年会パーティーの参加費は返金してくれるそうです。東日本大震災の被災者に対する義援金にそのまま回すことにしました。

■ 2011 年 3 月 23 日(水) このテンションの高さを笑えるのも今月限り

ついにVESTA 3のベータ版 v2.90.0b(別称 VESTA 3 beta 1)を公開しました。Windows と Linux 用バージョンを Download から、マニュアル(暫定版)を Documentation からダウンロードできます。残念ながら、wxWidgets ライブラリーのバグのため、Mac OS X バージョンのリリースは当分おあずけです。

大震災後の混乱の最中にベータ版を公開することになろうとは予想だにしていませんでした。しかしVESTA は癒し系のソフトなので、この度の災厄で痛手を負い、萎えた心を慰めてくれる効き目があると確信しています。東日本の復興を鼓舞するのに、わずかながらでも貢献できれば本望です。

VESTA 3 の開発が昨年 2 月にスタートして以来、私が幾度となく門馬君に強調してきたのは、

VESTA 2 はあくまで個人的趣味の産物であり、実質的に門馬(自宅)泉(自宅)の著作物だ。一方、VESTA 3 は NIMS の業務として開発する。VESTA 3 はもっとも知名度が高く、論文の被引用数が断トツで、もっとも多くの人に愛される NIMS の産物としなければならない。将来にわたってメンテナンスを怠らなければ、必ずそうなる。
ということでした。この発言が大言壮語や誇大妄想だとはこれっぽっちも思っておりません。VESTA 3 こそ門馬(NIMS)泉(NIMS)が NIMS に遺す最上の置き土産、と胸を張って言いたいです。

■ 2011 年 3 月 24 日(木) かなり大きな余震が二つ発生

それしきのことで、へこたれる私ではありません。今日は暫定版に留まっていた VESTA 3 のマニュアルを改訂しました。その作業が終わるや否や RIETAN-FP v2.0 のブラッシュアップにとりかかり、新機能関連の出力フォーマット(Igor Pro text format)を拡張子 bkg のファイルに追加しました。これで解析データの可視化が進展します。

全力投球の日々がこれほど続くと、さすがに疲労の色が濃くなってきています。しかし、当面は躁状態のまま突っ走ります。

VESTA と RIETAN-FP に関連する話題をもう一つ。

中の VESTA で描いた図が Powder Diffraction, Vol. 26, No. 1 の表紙を飾りました。リートベルト解析には RIETAN-FP が使われました。

■ 2011 年 3 月 25 日(金) 卒業するのは掲示板のみにあらず

急遽中止にした情報機構セミナーですが、日程を後ろにずらして開催してほしいという声が上がっているそうです。しかし、東日本の大混乱がどれほど続くのかは予測不可能です。仮に開催するとしても、初冬以降でしょう。7 月初旬に「粉末X線解析の実際」講習会で話すので、時間不足気味ではありますが、それで勘弁してください、と言うしかありません。中井 泉氏と二人三脚(猿回しと猿?)で開催してきた同講習会ですが、それをもって「最終講義」とするつもりです。

ときどき「粉末X線解析の実際」講習会を受講したことがあるという方にお会いしたり、メールを頂いたりします。8 年前の 6 月 29 日に記した花嫁のお父さんもその一人でした。過去 10 回弱の講習会の受講者は、延べ人数で千人を軽く越えているでしょう。我が国におけるリートベルト法の普及に大きく貢献したのは間違いありません。粉末構造解析の先達としての使命はすでに十分果たしたと自負しています。

昨日紹介した論文の筆頭著者である名工大の加賀元了君からお礼のメールをいただきましたが、お礼を言わねばならないのはこちらの方です。本掲示板のネタとして使わせてもらったのですから(笑)。来年度も名工大の客員教授として活動しますので、よろしくお願いいたします。

■ 2011 年 3 月 26 日(土) 何事も引き際が肝心

今週の本掲示板のセッション数を合計すると、未だかつてないほどの数字となります。これほど訪問者が多いのは嬉しいですが、たとえこのまま続けても、過去の掲示板に書き散らしてきた冗長かつマンネリな文章を繰り返すだけに終わるでしょう。人気上々で、消え去るものを惜しむ人がいるうちが花、予告通り来週の木曜に幕を引くことといたします。タイトルはすでに決めました。

■ 2011 年 3 月 27 日(日) A day business trip

大震災で延び延びになっていた所用を片付けるため、一日かけて関東 5 県(茨城、千葉、埼玉、栃木、群馬)を巡回してきました。TX は快速が走っていません。東武野田線は間引き運転。東北新幹線は那須塩原以北、両毛線は伊勢崎〜小山間が運休していました。11 日以来蓄積してきた疲労のためか、あるいは耄碌のせいか、大宮駅と守谷駅で一回ずつドジを踏みました(汗)。

■ 2011 年 3 月 28 日(月) ネガティブな情報の発信

今日は本来、情報機構セミナーで講義する予定でした。中止という苦渋の決断は適切な措置だったと信じてはおりますが、参加登録者の皆様には本当に申し訳ないことをしました。この場を借りておわびいたします。

本掲示板の命脈が尽きるまで 4 日を余すのみとなりました。木曜まで、通例より少しはましなことを書き込みたいです。今日は否定的な情報の重要性について述べます。

リートベルト解析では、十分広い 2θ 範囲に出現する反射を対象とし、非線形最小二乗法で重み付き残差二乗和を最小化します。言い換えれば、バックグラウンドに埋もれているような、無視できるほど弱い反射から最強反射に至るまでの全反射の回折強度から結晶構造に関する情報を最大限に抽出します。消滅則ばかりでなく、回折強度が弱いというのも本質的に重要な情報なのです。微弱な反射を無視して解析すれば、当然、結晶構造に関する情報の一部が失われます。もちろん MEM 解析でも同様です。

当掲示板において私は歯に衣着せぬ文言を幾度となく書き連ねてきました。MEED の深刻なバグの隠蔽の暴露(2004 年 4 月 11 日)もその一例です。批判は悪口雑言と違います。人間は神様でありませんから、プログラムにはバグが付きもの。拙作ソフトも例外でありません。本質的な欠陥がわかったら、それを広く周知徹底するのが筋です。プログラムを開発した名大の研究室が口をつぐむという体たらくに陥っていたので、爆弾入りソフトの使用を防ぐため第三者たる私がネガティブな情報を発信だけのことです。「弱い」だけでなく「致命的なバグがある」というのも貴重な情報なのですから。

RIETAN-2001T のバグは MEED に比べれば可愛いものでしたが、あえて公表に踏み切り、最終的にはバグ修正版である RIETAN-TN を配付しました。それは分割型プロファイル関数に関する、原因究明が困難なバグでした。今にして思えば、種明かしされたとたんに興味索然となる「黄色い部屋の秘密」(1月27日)のトリックに似ていました。Z-Rietveld が臆面もなく同じプロファイル関数を採用しているのには呆れ果てますが、当該不具合まで踏襲していないことを祈ります(なにしろバグの詳細については教えていませんから)。

3月17日に「無謀かつ無責任な(原発建設)計画にお墨付きを与えた御用学者が何人もいたんだろうなぁ。」とつぶやきました。ググってみたところ、電力会社や監督官庁の走狗となる学識経験者は 4 年も前にここで指摘されていました。どうせ東電からたんまり研究資金を受けとっていたんでしょう。中には、いけしゃあしゃあと「(中越沖地震は原発にとって)何というか、代え難い貴重な実験だったんですね。歴史的な実験かもしれない」という暴言を吐き、新潟県の技術委員や国の「中越沖地震における原子力施設に関する調査・対策委員会」 を事実上解任された御仁(宮 健三東大名誉教授)もいるとのこと。こういう腐った連中を「曲学阿世の徒」と呼ぶんでしょうね。ネットで実名を晒し、粗雑な原子力行政に対し警鐘を鳴らすのは誠に結構なことじゃありませんか。日本国憲法第21条は「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と規定していますから。自然災害など何も起きていないのに炉内中継装置が落下し、二人目の自殺者まで出た「もんじゅ」なんて、原発よりも危険なように見えます。取り返しのつかぬ事態が発生する前に、有無を言わさぬ科学的根拠を突きつけることにより、ぜひ廃炉に追い込んでほしいです。

といっても、批判する相手や組織と何らかの利害関係がある場合、表立って手厳しいことは言いにくいのは事実です。村人が相互依存しており、物言えば唇寒しの「村社会」ではなおさらです。そういう場合は、高みの見物を決め込んでいる第三者が遠慮会釈なく正論を述べればよいだけのことです。原発御用学者に対する批判はその一例に他なりません。

■ 2011 年 3 月 29 日(火) 被引用数ネタもこれが見納め

RIETAN や VESTA に関する論文が引用されるたびに Scopus Document Citation Alert がメールで届くようにしたおかげで、本掲示板がこれまで維持・運営できたといって過言でありません。

RIETAN や VESTA の被引用数がどうのこうのという話題は「耳にたこ」に決まっていますから、今日は、私が著者に含まれている全論文の累積被引用数を報告してお茶を濁すことにしましょう。Web of Science はごく容易にそれを教えてくれます。たとえば所属が NIMS になってからの論文の場合、Author=(Izumi F*) AND Address=(Natl Inst Mat Sci) で検索し、右側の [Create Citation Report] をクリックするだけです。

結果は

9,595

でした。一万を突破するのは、そう遠い先ではなさそうです。私は研究者としての経歴を一二年後に閉じようとしています。延命治療は望んでいません。私がリタイアした後、一年ごとの被引用数は次第に減衰していきますが、生涯獲得被引用数は一万数千に収束するでしょう。拙作ソフトに関する論文の被引用数は半減期が極端に長いので、それくらいのレベルには確実に到達するはずです。一万数千というと、「私の論文の総被引用数は●●●●大学で 5 本の指に入るんですよ」と豪語していた●●●●大学名誉教授のセンセイが獲得した被引用数を凌駕する数字じゃありませんか。ということは、滅多に達成できないレベルと自慢しても差し支えないんでしょう。

白状すると、このネタは 2007 年 2 月 3 日の掲示板の使い回しに過ぎません。4 年間で約 3,000 積み増ししたことになります。

残念ながら、この類のポイントをいくら稼いでも、商品やサービスと交換できるわけでも、サラリーが上がるわけでも、女にモテるわけでもありません。単なる自己満足に過ぎず、ゲームマシンで■■■■という記録を叩きだしたというのに似ています。ただ、累積被引用数という冷厳な数値データは、研究者としての自分の値打ちを客観的に評価する一つの尺度として有用です。皆様もご自分のポイントを調べ、年齢や研究分野を斟酌して、上の数字と比べてみてください。

集客数や「粉末 X 線解析の実際」初版・第 2 版の発行部数についても語る気でいたのですが、ここで止めておきます。冗長の誹りを免れませんから。

余命 3 日の本掲示板を無粋な話題で汚してしまい、申し訳ありませんでした。ここに至っても、未だにネタ切れに呻吟している私を笑ってやってください。

■ 2011 年 3 月 30 日(水) VESTA 3 のマニュアル: 上々の仕上がり

昨日、VESTA 3 のマニュアルを更新しました。最大の目玉機能である多重構造表示の例を二つ(Figs. 7.2, 7.4)追加するとともに、ユーティリティメニューの 2 項目に関する節(14.7 と 14.9)を補筆しました。

VESTA 3 に投入した結晶外形描画機能は、結晶成長や鉱物学の分野における利用価値が高いです。今日は、VESTA 3 を使ってTiO2の準安定相アナターゼ(鋭錐石)の結晶外形を描いてみました。{101} 面と {103} 面からなる正方両錐状単結晶です。まだ私が 20 代のころ水熱法で育成した単結晶がそういう自形を呈していました。{101} 面を広げて、鋭錐石の名にふさわしい [001] 方向に伸長した形に変えようとしたのですが、そのための手続きがわかりません。門馬君に尋ねたところ、Edit Data ダイアログボックスで、Crystal Shape タブをクリックし、[Distance from origin] の値を試行錯誤で変更すればよいとのことでした。現在のマニュアルはその辺の詳しい記述を欠いているので、書き加えるようお願いしました。アナターゼ単結晶の晶癖を示す図も追加する予定です。

余談ですが、私が育成したアナターゼの高純度単結晶を使って測定したラマンスペクトルの基準振動解析、すなわちラマン活性バンドの帰属に関する論文(Ohsaka, Izumi and Fujiki, 1978)の被引用数は、現時点で 383 という想定外の値に到達しています。その後、TiO2 の光触媒作用が発見され、ラマンスペクトルが同定の手段として広く使われるようになったためです。

マニュアルはプログラマーの「本気度」を計る尺度として使えます。マニュアルがおざなりだと中身も大したことないという可能性が高いです。ところが、プログラマーはマニュアル執筆が苦手かつ嫌いと相場が決まっています。日本人が英語で書くとなったら、なおさらです。それにプログラマーはソフトの使い方やノウハウを知りすぎていて、ドキュメンテーションには不向きという傾向もあります。

とはいえ、ドメスティックなダメソフトの烙印を押されないためにも、充実した英文マニュアルの提供は欠かせません。RIETAN-FP と VESTA のマニュアルは理工系ソフトの手本たりうる見事な出来映えではないでしょうか。量と質を兼ね備えたマニュアルを書き上げた気概と根気を誇りに思います。

われわれは未曾有の大震災にも屈することなくハイブリッド・パターン分解という新機能を RIETAN-FP に実装し終え、なおかつ VESTA 3 のベータ版を上記マニュアルとともに公開しました。RIETAN-FP v2.0 は 4 月中にリリースする予定です。拙作ソフトはさほど税金を費消せずに開発したにもかかわらず、今後 J-PARC や JRR-3M が長期間休止し、膨大な復旧経費(= 税金)をガブ飲みしている間にも日夜至るところで勤勉に働き続け、数多くの研究成果に貢献し続けることでしょう。電力もほとんど消費しませんよ。ノート型 PC さえあれば、計画停電でさえ乗り切れます。4 年前、 J-PARC の関係者の面前で私が言い放った

J-PARC は当分利用できません。一方、我々のソフトはほぼ完成しており、今すぐ誰でも使えます。

というシニカルな言葉(2007 年 3 月 1 日)をここで使い回しておくことにしましょう。補足すれば、「今すぐ誰でも、購入費、旅費、消耗品代をかけずに、プロポーザルや審査ぬきで、何度でも繰り返し最新版を使えます。J-PARC の装置と違って教育にも役立ちます。」ということです。拙作ソフトが「無料」という最重要な機能を有しているからこそ吐ける名セリフです。

なお本日、VESTA-3 は T 社製女性用下着の商品名だというご指摘を受けました(汗)。お言葉を返すようですが、当方の三次元可視化ソフトは VESTA 3であり、VESTA-3 ではございません。絶対にハイフンを入れぬよう、くれぐれもご注意ください。

うっ、この掲示板は明日で一巻の終わりだった! くだらないことをダラダラ書き連ねている場合じゃねぇのに…

すみません、最後にもう一言。RIETAN と VENUS(というより VESTA)が NIMS 製ソフトウェアの「殿堂」に入ることが決まりました(委細略)。

■ 2011 年 3 月 31 日(木) Forty Years in Japan, Once More

平成軽薄体という独自のルールに則った文体で本掲示板に毎日なにがしかを書き込むという、賽の河原の石積みにも似た苦役から解放される日がついに到来しました。慶賀の至りでございます。今日は超臭い最後っ屁を大量にぶっ放します。

本日で 5 年にわたる量子ビームプロジェクトが終了します。門馬綱一君は今日限りで新天地に去ります。私は少なくとも後一年は NIMS と名工大(客員教授)で研究を続けますが、その後は未定です。同プロジェクトにおける私の使命、すなわち粉末回折関係のソフトウェア開発と NIMS における量子ビーム研究のデモンストレーションが成功を収めたか否かは、幾度となく本掲示板でお知らせしてきた被引用数という数値データと依頼・招待講演・講義のリストから明らかでしょう。同プロジェクトからヘッドハンティングされるまで、私は「粉末 X 線解析の実際」第 2 版を編纂し、それをテキストとする講習会を一回開いた後、新規まき直し、狭い日本から飛び出し外国で一旗揚げようと目論んでいました。膨れ上がる一方の国の借金、少子高齢化に伴う活力の減衰、東日本を襲った災厄などを直視すると、そちらの選択肢の方がよほどましだったような気がします。あれから 6 年も経った今、もはや外国に移住する元気はありません(涙)。

J-PARC が東日本大震災で甚大な被害を受け、復旧までには相当の日時を要するため、茨城県中性子利用促進研究会を休止し、事務局の業務を終了するというメールが今日届きました。同研究会からのスパム(2010 年 10 月 3 日)が当分来なくなるのは喜ばしい限りです。4、5 年前の話になりますが、集客、ひいては上記メーリングリスト用データの取得のために、閑古鳥が鳴いていた茨城県の研究会に半強制的に協力させられたのは迷惑至極でした(2007 年 11 月 9 日11 月 17 日)。ドサ回りの旅役者じみた茨城県研究会の講師を務めるのは、苦痛以外の何物でもありませんからね。しかし、私はさほど執念深い性格でありませんから、同研究会に恨みなどは抱いていません。事務局の業務停止の報を受けて湧き起こったのは、真っ先に切り捨てられる末端事務局員に対する憐憫の情でした。

J-PARC が相当深刻なダメージを受けたのは、これらの写真から明らかです。一日も早く復旧することを心から祈っています。しかし J-PARC が復旧したところで、節電地獄が待ち構えています。KEK と同様に、大口電力需要者である J-PARC は東電との間で需給調整契約を結んでいるはずですから、電力事情が好転するまで厳しい節電(= 研究活動の縮小)を強いられ、冬の時代が続くでしょう。不要不急な加速器の運転は極力控え、日本経済の屋台骨である製造業や商業に優先的に電力を供給しないと、ただでさえ疲弊している日本経済が崩壊しかねません。大震災以降、節電の徹底、すなわち運転期間の短縮と出力の抑制こそ J-PARC が掲げている大目標の一つである「産業界への貢献」の最たるものに変わったのです。福島第一原発から茨城北部への放射能の拡散にも不安が募ります。大気中の放射線量は福島県を除けば茨城県が断トツに高いのです。たとえ実際には健康に害がなくとも、J-PARC での実験は長いこと敬遠される恐れが多分にあります(とくに外国人には)。可哀想なのは、中性子の施設で働いているポスドクや任期付き研究者、中性子散乱を研究テーマとする博士課程の学生です。将来パーマネントの地位を獲得するため研究成果を挙げようにも、商売道具が長期間使えないのですから。せいぜい外国の中性子源にプロポーザルを提出するんですね。

研究も一種のビジネスに他なりません。いくら量子ビームプロジェクトに参加するとはいえ、J-PARC という疫病神に関わり合うと消耗するだけで、赤字垂れ流しに陥る、というマイ・カンピュータの警告はぴたりと的中しました。第一に今回の大震災で出鼻を挫かれたこと、第二に長期にわたり節電に努めざるを得なくなったこと、第三に各粉末回折装置用に最適化したリートベルト解析プログラムの開発が至難の業だという事実が確認されたことです。水銀ターゲットに適したプロファイル関数を新たに考案し、格子歪みや結晶子サイズに起因する異方的な回折プロファイルの拡がりを扱えるようにし、室温以上で測定した TOF 粉末中性子回折データの解析には必要不可欠な熱散漫散乱(TDS)の寄与を加えた上、装置やバンクごとにプロファイル関数を最適化するとなると、一筋縄で行きません。それらの努力を怠り、時代遅れで物理的に意味のない既成のプロファイル関数で済ました手抜きソフトを用いたときに直面するフィットの悪さ(2 月 4 日)を凝視してみてください。凡庸な指導者から身の丈を超えた仕事を丸投げされたにわか粉末回折屋の呻き声が聞こえてくるような気がしませんか。KENS の時代より分解能が上がっている分だけ、結晶性がやや低い試料と固溶体でフィットの悪さが浮き彫りになるんです。またブラッグ反射直下で盛り上がる TDS を無視したまま高 Q 領域の強度データを解析に含めると、温度が上がるほど原子変位パラメーター、ひいては観測積分強度の系統誤差が増します。こうなると、MEM 解析どころの騒ぎではありません。

このようなサムすぎる状況を考慮すると、JAEA が組織レベルで要請してきたパルス中性子回折用プログラムの開発からまんまと逃げおおせたのは、まさに「してやったり!」です。そりゃ全力を振り絞り、真っ向からがっぷり四つで取り組めば、なんとかなるでしょう。しかし、モチベーションの上がらぬ難事業を外部資金抜きで請け負うほど、ご立派な人じゃありませんよ、オイラは。たかられ感が強すぎますし、徒労に徒労を重ねても平気の平左という年齢でもありません。JAEA の皆様には、もっと前向きの姿勢を示していただきたいです。徒に J-PARC の長期シャットダウンを嘆くのでなく、ご自分たちの回折装置用のソフトを自主開発する絶好のチャンスと見なしたらいかがでしょうか。そういう高度な技術を持ち合わせている人材は JAEA はもとより我が国の中性子業界にも皆無だという体たらくなのでしたら、色々ご不満はございましょうが、上記のトホホなソフトで我慢するんですね。ただし、単純な強磁性体の磁気構造すら解析できず(2010 年 2 月 16 日)、ろくなマニュアルもないという不都合な真実をお忘れなく。

今年度限りで本掲示板を閉鎖すると宣言し、そのバックナンバーをざっと眺め渡していたとき、"Forty Years in Japan" というタイトルが目に止まりました。RIETAN-FP の前身である RIETAN Pro を開発していたころの述懐です。RIETAN-FP のブラッシュアップとメンテナンスは今後も続行しますので、RIETAN が我が国で 40 年の長きにわたり利用され続けるという文言を撤回するには及ばないでしょう。サイエンスにおける 40 年がとてつもなく長い年月であるのは言うまでもありません。そこまでたどり着けば、RIETAN は十分その使命を全うし、成仏したと評価して差し支えないでしょう。現在 RIETAN-2000/FP を使って頂いているユーザーが将来、他のソフトに乗り換える際には、RIETAN を通じて獲得した知識や経験がそのまま生きてくるはずです。何十年後かに、昔 RIETAN でリートベルト解析に初めてチャレンジしたんだよなぁ、と思い出してくれたなら、I 先生は草葉の陰で感涙にむせぶことでしょう。

世界中で使われているリートベルト解析のプログラムはかなりの数に上ります。そうした群雄割拠の中、RIETAN-FP の存在意義はどこにあるのか —— なんといっても、オリジナルな構造精密化技術である MPF 法です。古典的構造精密化法であるリートベルト法では、粉末回折データに含まれている構造情報を完全には抽出できません。GSAS, FullProf, TOPAS などが実行できるのは、今や陳腐化したリートベルト解析に留まっています。これらの著名ソフトで十分質の高い放射光粉末回折データをリートベルト解析した後、同じデータを RIETAN-FP + MPF_multi により MPF 解析してみてください。全自動ですから、楽なものです。RB と RF の著しい改善に度肝を抜かれ、深い感銘を受けるに違いありません。MPF 法による信頼度因子の向上は、共有結合性の高い有機化合物で頂点に達します。実質的に結晶構造を電子密度で表現する MPF 法の場合、結合電子の寄与も自ずと計算に取り込まれるためです。不規則分布した原子(団)を含む化合物の X 線・中性子回折データの解析でも絶大な威力を発揮します。さらに、レガシーな分割原子モデルに基づくリートベルト解析が苦手とする可動化学種の実空間分布の決定にも有効です。他に類を見ない自動 MPF 解析機能の具備が RIETAN-FP の独自性を際立たせ、その唯一性を強くアピールしています。

RIETAN-FP のもう一つの強みは、強力な三次元可視化システム VESTA との密接な連携です。VESTA は GUI を備えたユーザーフレンドリーなビジュアル系ソフトであり、充実した英文マニュアルが付属していることから、すでに国際的な普及を果たしています。なにしろユーザーの半分強は外国人なのですから。最近、大幅な機能増強を果たした次世代版 VESTA 3 のベータ版をリリースしましたし、門馬君が今後も手入れを続けてくれますので、将来性に不安はまったくありません。長い年月を経て、最終的には VESTA に関する論文の累積被引用数は 3,000 を越すと堅く信じています。もちろん NIMS では他を圧してナンバーワン —— これほどの偉業が確実に達成できるのですから、「それで十二分」感が強いです。人それぞれ研究の方向性、趣味嗜好、器の大きさ、生産性、使命感の強さは異なります。これ以上を彼に期待するのは酷というものです。

死蔵したままになっている並列処理 MEM 解析プログラム Dysnomia は、日本結晶学会講習会「粉末 X 線解析の実際」(7 月 4〜6 日)における C コースの受講者にささやかな「おみやげ」として差し上げることにしました。PRIMA の賞味期限が切れかかっている今、門馬君の講義では当然 Dysnomia に言及しますから、参加者がそれを使えないようでは話になりません。また、大震災後に開催され、しかも本掲示板という巨大広告塔を欠いた同講習会に従来同様、参加者を引き寄せるためには、何らかの手を打つべきです。こういう時は太っ腹になるに限ります。Dysnomia は RIETAN-FP や VESTA のような巨大ソフトとは比べ物にならないほど小さいですが、キラキラ輝く珠玉のようなソフトです。末長く可愛がってやってください。そんな小物だけじゃ足りねぇと仰るなら、サインでも握手でもじゃんけんでも何でもやりますから、ぜひ同講習会に参加するようお願いいたします(AKB48 か、お前は!)。名工大の井田 隆先生の講義(A コース)では、回折プロファイルの解析について詳しく話していただきます。目新しいところでは、近く PDXL に実装される予定の RIETAN-FP 用 GUI に関する講義(B コース、No. 4)もありますよ。

本 Web サイトのリストラは、この掲示板に留まりません。今後、予告抜きで少しずつ進めていくことをご承知ください。

悪名高い本掲示板はこれにて一巻の終わりです。毎日読むのを日課にした結果、拙文から立ちのぼる毒気に免疫ができた方もおられると聞いています。長いこと本掲示板にお付き合いいただき、ありがとうございました。


嗚呼、最後の最後まで饒舌と冗長で押し通しちまった。平成軽薄体が骨の髄まで染み込んだ文章を矯正しないと、社会復帰を果たせないだろうなぁ。そこで 140 文字の制限があるツイッターでリハビリしようと思い立ち、善は急げ、早速登録しました。URL は

http://twitter.com/Izumi_Fujio

です。少なくとも治療が終わるまでは、そこでボソボソ独り言を呟くことにします。差し支えなかったら、フォローしてやってください。フォロワーとは互いに直接メッセージをやりとりできます。本 Web ページについての自注もありますよ。