RIETAN-FP・VENUS システム配布ファイル

われわれは粉末X線・中性子回折データを解析し、得られた結果や電子状態計算結果を三次元可視化するためのプログラムを自主開発し、それらの著作物をインターネット上でフリーウェアとして公開することにより量子ビーム技術の振興に資するとともに、我々の研究成果を社会に還元するアウトリーチ活動に励んでいます。

本 Web ページでは、下に列挙するプログラムの最新版、実行例、RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境、マニュアルなどを含むアーカイブファイル(Windows・OS X 用)を公開しています。

  1. 多目的パターンフィッティング・システム RIETAN-FP v2.83(RIETAN-2000 の後継)
  2. 幾何学的パラメーター計算プログラム ORFFE
  3. *.lst + *.dst → *.cif 変換プログラム lst2cif
  4. 自動 MPF 解析のためのアクロバティックなシェルスクリプト MPF_multi.command
  5. 最大エントロピー・パターソン(MEP)法プログラム ALBA
  6. マーデルング・エネルギー計算プログラム MADEL

本システムのプログラムでは、CPU に対する負荷が高い並列処理を控えています。比較的安価な PC でも十分使えることを考慮したためです。RIETAN-FP の使用にあたっては、同梱した実行例に含まれる入力ファイル *.ins をひな形として編集してください。旧バージョン用の *.ins が現バージョンと互換性がない場合は、正常に動作しません。

MEM に基づく全回折パターンフィッティング(MEM-based Pattern Fitting: MPF)では、RIETAN-FP と Dysnomia の交互実行によってリートベルト解析結果寄りのバイアスを最小化した電子・核密度分布を決定します。MPF_multi.command は |Fo| の誤差を指示通りに調節した複数組の MPF 解析を自動実行するためのラッパー (wrapper) として役立ちます。

なお、VENUS のメンバーの内、VESTA(VICS・VEND の後継)と Dysnomia(PRIMA の後継)は JP-Minerals で配付しています。

1. ドキュメンテーション

RIETAN-FP ・VENUS システムをインストールする前に、まずはアーカイブファイル

をダウンロード・解凍し、documents フォルダを生成させます。同フォルダ中の全 PDF ファイル(*.pdf)がマニュアルです。大半は LaTeX/pLaTeX で組版しました。Windows 版の場合は Readme_Win.pdf を、OS X 版の場合は Readme_Mac.pdf を通読してください。

2. インストール時に忘れがちな手続き

RIETAN-FP・VENUS システムの旧バージョンをインストールずみの時は、下記のアーカイブファイル(Windows_versions_201*.zip あるいは OS_X_versions_201*.dmg)中のアンインストーラーによりアンインストールしてください。

RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境において RIETAN-FP_manual.pdf を表示させる場合は、RIETAN-FP・VENUS システムのインストール終了後に上記の documents フォルダを RIETAN_VENUS フォルダ内に移動する必要があります。

3. Windows 用配付ファイル

をCドライブにダウンロードし解凍した後、Readme_Win.pdf に記されている手続きに従って Windows 7/8/10 機にインストールしてください。このアーカイブファイルは 64 ビット Windows 専用です。32 ビット Windows 上では拙作プログラムを実行できません。

Windows 用 RIETAN-FP・VENUS システムの配付ファイルは RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境を秀丸エディタ(64 ビット版)に組み込むことを念頭に置いて編成しました。同環境については documents フォルダ中の Readme_macros.pdf も併せ読む必要があります。なお、旧配付ファイルに含まれていたバッチファイルによるプログラムの起動は正常な動作を保証できません。

4. macOS 用配付ファイル

をダウンロードし、ダブルクリックすると、macOS_versions という仮想ディスクドライブがマウントされます。Readme_Mac.pdf に記載されている手続きに従ってインストールしてください。OS X 10.8 (Mountain Lion) 以降をお使いの場合は、ブログの記事「OS X 用 RIETAN-FP・VENUS システムのインストール時に注意すべきこと」をお読みください。

なお、インストール時には二つのbash用設定ファイル ~/.bash_profile と ~/.bashrc がバックアップ後に重ね書きされます(Readme_Mac.pdf, 3.3参照)。バックアップファイルはタイムスタンプ入りで改名され永久保存されますので、両ファイルを元に戻したり、必要に応じて再編集するのはごく簡単です。

macOS 用 RIETAN-FP・VENUS システムの配付ファイルは RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境を Jedit X に組み込むことを念頭に置いて編成しました。同環境については、documents フォルダ中の Readme_scpt.pdf に詳述しました。

本パッケージのプログラムは OS X 10.6 (Snow Leopard) 以降の全 OS で動く 64 ビット CPU・OS 専用アプリケーションです。

5. 参考文献

リートベルト法、パターン分解、MPF 法、MEP 法を含む粉末回折データの解析技術全般については、次の文献が参考になります。

  1. 泉 富士夫, "リートベルト法による結晶構造の精密化", 応用物理, 59, 2–17 (1990).
  2. F. Izumi, "The Rietveld Method," ed. by R. A. Young, Oxford University Press (1995), Chap. 13.
  3. F. Izumi, "Applications of Synchrotron Radiation to Materials Analysis," ed. by H. Saisho and Y. Gohshi, Elsevier, Amsterdam (1996), Chap. 7.
  4. 泉 富士夫, "統合パターン・フィッティングシステム RIETAN-2000 を語る", 波紋, 10, 21–31 (2000).
  5. 泉 富士夫, 池田卓史, "多目的パターン・フィッティングシステム RIETAN-2000 とその微細孔物質への応用", 日本結晶学会誌, 42, 516–521 (2000).
  6. 泉 富士夫, 池田卓史, "RIETAN-2000 を活用した未知構造と不規則構造の解析", 日本結晶学会誌, 44, 30–34 (2002).
  7. 泉 富士夫, "RIETAN 徹底活用ガイド (1) 入出力ファイル", 日本結晶学会誌, 44, 246–254 (2002).
  8. 泉 富士夫, "RIETAN 徹底活用ガイド (2) 粉末回折データから得られる情報", 日本結晶学会誌, 44, 311–317 (2002).
  9. 泉 富士夫, "RIETAN 徹底活用ガイド (3) 電子・原子核密度分布の三次元可視化", 日本結晶学会誌, 44, 380–388 (2002).
  10. 泉 富士夫, "セラミック工学ハンドブック", 第 2 版, 日本セラミックス協会編, 技報堂出版 (2002), 基礎 第 4 編 3.
  11. F. Izumi, "Development and Applications of the Pioneering Technology of Structure Refinement from Powder Diffraction Data," J. Ceram. Soc. Jpn., 111, 617–623 (2003).
  12. F. Izumi "Beyond the ability of Rietveld analysis: MEM-based pattern fitting," Solid State Ionics, 172, 1–6 (2004).
  13. 泉 富士夫, "実験化学講座 11 物質の構造 III 回折", 第 5 版, 日本化学会編, 丸善 (2006), 4 章.
  14. 泉 富士夫, 河村幸彦, "飛行時間型粉末中性子回折データの最大エントロピー法解析による原子核密度の三次元可視化", 分析化学, 55, 391–395 (2006).
  15. 泉 富士夫, "計算シミュレーションと分析データ解析", 日本表面科学会編, 丸善 (2007), 6・1・1.
  16. 泉 富士夫, 門馬綱一, "新世代システム RIETAN-FP・VESTA への招待", セラミックス, 43, 902–908 (2008).
  17. "粉末X線解析の実際", 第 2 版, 中井 泉, 泉 富士夫編, 朝倉書店 (2009).
  18. 泉 富士夫, "リートベルト法と MEM に基づくパターンフィッティングによる中性子回折データの解析", RADIOISOTOPES, 59, 191–200 (2010).
  19. 泉 富士夫, 門馬綱一, "構造精密化・三次元可視化システム RIETAN-FP・VENUS による磁気構造と核密度分布の解析 ", J. Vac. Soc. Jpn., 53, 706–712 (2010).
  20. 門馬綱一, 泉 富士夫, "鉱物科学における三次元可視化システム VESTA の応用", 岩石鉱物科学, 39, 136–145 (2010).
  21. F. Izumi and K. Momma, "Three-dimensional visualization of electron- and nuclear-density distributions in inorganic materials by MEM-based technology," IOP Conf. Ser.: Mater. Sci. Eng., 18, 022001 (2011).
  22. K. Momma and F. Izumi, "VESTA 3 for three-dimensional visualization of crystal, volumetric and morphology data," J. Appl. Crystallogr., 44, 1272–1276 (2011).
  23. 門馬綱一, 泉 富士夫, "次世代三次元可視化プログラム VESTA 3", 日本結晶学会誌, 54, 119–120 (2012).
  24. K. Momma, T. Ikeda, A. A. Belik, and F. Izumi, "Dysnomia, a computer program for maximum-entropy method (MEM) analysis and its performance in the MEM-based pattern fitting," Powder Diffr., 28, 184–193 (2013).
  25. 河村幸彦, 門馬綱一, 泉 富士夫, "粉末回折データの MEM 解析・三次元可視化用ソフトウェアの開発", 波紋, 23, 66–71 (2013).
  26. 河村幸彦, 泉 富士夫, "CO ハイドレートにおけるゲスト分子の不規則配置", 波紋, 25, 22–25 (2015).
  27. 泉 富士夫, "粉末回折データから得られた構造精密化結果の LaTeX 文書化", 名古屋工業大学 先進セラミックス研究センター年報, 5, 57–60 (2016).
  28. 泉 富士夫, "RIETAN-FP・VENUS システムと外部プログラムによる粉末構造解析 — 1. RIETAN-FP・VENUS システムと統合支援環境 —", まてりあ, 56, 393–396 (2017).
  29. 泉 富士夫, "RIETAN-FP・VENUS システムと外部プログラムによる粉末構造解析 — 2. リートベルト解析とパターン分解 —", まてりあ, 56, 453–457 (2017).
  30. 泉 富士夫, "RIETAN-FP・VENUS システムと外部プログラムによる粉末構造解析 — 3. 構造モデルの導出と電子・散乱長密度の三次元可視化 —", まてりあ, 56, 503–507 (2017).

文献 1〜13 は RIETAN-2000 以前の時代に執筆しましたが、RIETAN-FP を使う際にも役立つはずです。事実、RIETAN-FP の英文マニュアル(RIETAN-FP_manual,pdf)は文献 3 をベースとして執筆しました。

一方、「粉末X線解析の実際」第 2 版(文献 16)は同名の日本結晶学会講習会のテキストとして RIETAN-FP, ORFFE, VENUS(PRIMA、ALBA、VESTA)の利用を前提に編集しました。リートベルト・MEM 解析に必要不可欠な結晶学の基礎について詳述しているため、RIETAN-FP・VENUS システムを徹底活用するための必携書といって過言でありません。初版に対し MEM 解析(10 章)、未知構造解析(12 章)、応用事例(13 章)などを追加した結果、87 ページも厚くなっています。

文献 19(オープンアクセス)は整合コリニア磁気構造の解析法について述べています。文献 24(オープンアクセス)では Dysnomia を利用した粉末X線回折データの MPF 解析例三つを詳しく記述しました。日本金属学会会報「まてりあ」の入門講座(文献 28〜30)は最新の RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境を利用した粉末回折データの解析を略述しています。

RIETAN-FP は VESTA との有機的連携を念頭に置いて開発しました。VESTA の概要は文献 16, 20, 22, 23 で紹介しています。

また RIETAN-FP と VENUS の PDF マニュアル(配付ファイルに同梱)は詳細を極めており、それらの使用にあたり必要となる情報のほぼすべてを網羅しています。RIETAN-2000 に習熟したユーザーは、RIETAN-FP_manual.pdf の末尾の「多目的パターンフィッティング・システム RIETAN-FP の新機能について」を通読すれば、手っ取り早く RIETAN-FP に移行できます。RIETAN-2000 は 2009 年に配付を停止して以来メンテナンスしていないため、今後は RIETAN-FP を使うようお願いいたします。

6. 無サポート、無保証、免責

本 Web ページで配付するフリーウェアは、それらのマニュアルに明記されている使用許諾条件を遵守する限り自由に利用できます。ただし、原則として無償サポートサービスは提供せず、なおかつそれらの利用により生じた障害と損害には一切責任を負いません。

なお、RIETAN-FP を使って得た研究成果を発表する際に引用すべき論文は

であり、RIETAN-2000 の場合と違うことにご注意ください。

7. ユーザーに対する要請

不具合、バグ、誤り(マニュアル、文書)が見つかった場合は、お手数でも私に報告していただければ幸甚に存じます。